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  • date:2020.7.6
  • author:南 ゆかり

第84回日本循環器学会学術集会「人生100年時代の健康長寿」

若いうちから健康長寿を選び取る。人生最大の決断をはじめよう。

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木村 剛

第84回日本循環器学会学術集会会長

京都大学大学院医学研究科循環器内科学教授。京都大学医学部卒業。京都大学病院内科、小倉記念病院循環器科にて勤務。その後、京都大学循環器内科助教授を経て現職。

今、医療現場に“Shared Decision Making”が求められている。

病気で医者にかかった時、どのような治療をするのかは誰が決めるのでしょうか。日本の場合、とくに大きな病気だと「先生の言うことを聞いてお任せ」というケースが多いように思います。しかし、本当に医師任せにしていていいのでしょうか。

 

医師が治療方針を決める時には、「適応」が重要です。医療分野における「適応」とは、患者さんにとって、その医療行為が正当であるかどうかや、妥当であるかどうかといったことを意味します。いわば医療の基本です。医師任せとは、「適応」を医師が決めることを意味します。

 

私は、心臓のカテーテル治療で世界的に有名な小倉記念病院と京大病院で、30年近く心臓のカテーテル治療に携わってきました。その間、基本的に「適応」は医師が決めるものだと、私も考えていたように思います。その後、教授になって現在まで10年が経過する間に、私の主たる仕事は、現場でのカテーテル治療から臨床研究へと徐々にシフトしていきました。現場から離れて治療効果などについて研究する時間が増えるにつれ、医師だけが「適応」を決めることへの問題意識が大きくなっていきました。カテーテル治療について現在わかっていることを患者さんに正確にお伝えして、患者さんとしっかり情報を共有して適応を決めていくべきだと強く考えるようになっていったのです。

 

たとえば手術や薬物治療は、症状を改善する、あるいは症状がなくても、心筋梗塞、脳卒中、死亡など取り返しのつかない事故を予防するために行われます。一方で、手術をすると合併症が起こる可能性があったり、薬物には副作用が起こる可能性があったり、治療によって患者さんが不利益を被ることがあり得ます。患者さんは治療をすることによる利益と不利益についての正しい情報を受け取ってしっかり理解し、その上で決断する、というのが治療方針決定の正しいプロセスであるべきでしょう。とくに、治療方針の最終決定において、患者さんの価値観が尊重されることが重要です。このように、医療者と患者さんが情報や価値観を共有したうえで治療方針を決定することを「シェアード・ディシジョン・メイキング(Shared Decision Making = SDM)」と言い、最近では日本でもよく聞かれるようになってきました。

 

情報を十分に得て自分が価値あると考えるものを選ぶのは、日常生活では当たり前のことです。取引をしたり、買い物をしたりする時には、意識しなくてもSDMをしているわけです。なのに、生命にかかわる医療については医療サイドと患者サイドの情報の非対称性 (患者サイドの情報不足、理解不足) から、残念ながら適切なSDMが行われていないことがしばしばあります。

SDMの重要性を語る木村先生。

SDMの重要性を語る木村先生。

 

医学研究者が先頭に立ち、医師と患者でSDMを醸成する。

治療を行うかどうかを決定するにあたって医師が患者さんにお話すべきことは、患者さんの病状を勘案した上で、治療を施行した場合に何が得られるかと、治療にともなうリスクや負担です。実際では、医師は患者さんに「治療を強くお勧めする」「どちらかといえば治療をした方がよい」「治療をする必要はない」の3段階の推奨を行う必要があります。正しい推奨ができるかどうかがプロフェッショナルであるかどうかの規準です。

 

一方、患者さんがすべきことは「大変な病気が見つかった、医師の言う通りにしていたらよいだろう」と考えることではなく、自分の症状を詳しく把握して「このまま治療をしなかったらどうなるか?」「治療をした場合に何が得られるか?」「治療にともなうリスクは何か?」を医師に尋ねること、そして自ら考えることです。SDMを行う上で患者さんの価値観を、医師と共有することは極めて重要です。

 

私自身のライフワークは循環器疾患の臨床研究ということになります。患者に提供すべき正しい情報を科学的に究めることこそが臨床研究です。現時点で、例えば心臓のカテーテル治療の治療効果と合併症について明らかになっていることというのは、実地臨床での患者さんの多様な病状を考えると極めて不十分なものです。臨床研究にはまだまだ未到達の部分が非常に多いことがよくわかります。我々は今後の臨床研究を通じて、より多くの有益な情報発信をしなければなりません。よい臨床研究は、よい診療につながると信じています。現場で診療しつつ臨床研究にも関わる我々こそが適切なSDM実践の先頭に立たないといけないと思っています。

日本循環器学会発、健康長寿のための知見を一般のみなさんへ。

現在の医療は、薬物治療や侵襲的治療に偏重しすぎであると感じています。血管病や心臓病の予防や治療は本来、生活習慣改善にあるべきです。人間は元気な時には、健康は当たり前だと考えています。病気になってはじめて健康のありがたさに気が付くというケースも多いのではないでしょうか。しかしながら健康長寿のためには、若いときから医療や健康に関心を持つことが大事です。とくに、血管病や心臓病は一生のリスクの積み重ねで病気になるため、病気のことを考えたこともない50歳ぐらいまでに何をしたのか、あるいはしていないのかが、その後の人生を左右します。

 

このような想いから、私が会長を務める「第84回日本循環器学会学術集会」では、「人生100年時代の健康長寿」と題した生活習慣改善の重要性をテーマにする広範なプログラムを企画しました。すでに述べましたように、私はカテーテル治療を生業としてきましたし、学会の中でもそのように認識されていると思いますので、その私が会長を務める学術集会で生活習慣改善の重要性を大きく取り上げることはインパクトが大きいのではと考えました。多くの方々からアイデアをいただき自分としても満足がいくプログラムが完成すると、これを医療関係者だけに聴いていただくのはもったいない、ぜひ一般の方にも御聴講いただきたいと思うようになり一般公開することを決めました。

 

今回のプログラムは、通常の市民公開講座とは異なり、多くの医療関係者も参加する学会の一部を市民に公開する試みになります。ここで登壇いただく高名な講師の方々はテーマを長く、深く研究してこられた方ばかりで、医療関係者が興味を持つような研究成果を一般市民にもわかりやすく講演いただきます。このような企画はあまり例がないのではないかと思いますが、市民にメッセージを発信するという学会本来の使命を果たすには新たな重要な試みになるのではと考えております。また、「第84回日本循環器学会学術集会」は史上空前の規模のオンライン学術集会として開催されます。「人生100年時代の健康長寿」シリーズ以外にも、京都大学iPS細胞研究所 山中伸弥教授と北海道大学 西浦 博教授の特別対談“新興感染症の流行における意思決定 〜未曾有の状況下でどう考え、どう判断するか〜”、多摩大学 田坂広志名誉教授の特別講演“パンデミックに強い「デュアルモード社会」の構築を – 危機を好機に変える逆境力”を無料一般公開いたします。自分の価値観や生きる喜びを大切にしながら、今から健康長寿を選び取る。人生最大のSDMの第一歩を、ぜひここからはじめていただきたいと願っています。

 

◎一般公開企画「人生100 年時代の健康長寿」の詳細⇒こちら

◎公式パンフレット⇒こちら(PDF)  


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