日本有数の中小企業研究拠点「中小企業・経営研究所」を学内に構える大阪経済大学。同大学にある北浜社会人大学院が、依然厳しい環境にある中小企業が勝ち抜くためのセミナーを全3回で開催する。今回は第2回目に登壇する遠原智文准教授に、中小企業の海外展開についてのお話を伺った。
中小企業と海外展開
中小企業がめざすべき海外展開とは

第2回目のセミナーに登壇する遠原智文准教授
私は中小企業、主に製造業の海外展開を研究テーマの1つとしていますが、中小企業の海外展開には2つのポイントがあります。
1つは、海外展開というと海外に生産拠点と持つことをイメージするかもしれませんが、純粋に海外を相手に商売をする、つまり輸出による販売拡大も大事な方法であるということです。この時、すべてを商社任せにするのではなく、海外のお客様に対して直接しっかり商品の良さが伝わるようにすることはとても重要です。そのような役割を担う人材がいない場合、例えば海外から日本に来ている留学生を雇用するというのも手段のひとつです。
しかしここには問題があります。雇用する企業側はずっとうちに勤めてほしいと考えているのに、雇われた側は数年経ったら母国に帰ろうと思っている人も結構いるんですね。雇用者と被雇用者の間でギャップがあるわけです。でもこれをマイナスに捉えるのではなく、彼らが母国に帰国したあともつながりをもち、自社の海外展開の拠点として現地で活躍してもらう道もあります。そのような視点をもって海外から日本へ来る方を上手く活用していくのはとても重要です。
もう1つは、国内市場で海外と勝負するために、国内でできることを考えることです。
日本の技術力は海外と戦う上で武器となりますが、団塊世代が大量退職した2007年問題のように、ものづくりにおいて高度な技術・技能をもつ人材が年をとり退職していっています。それにより、せっかくの技術・技能が喪失してしまう危険があるわけです。
すでに定年延長や定年撤廃を行っている企業も出てきていますが、永遠にその人がいるわけではありません。そんななか、どのように高度な技術・技能を継承していくかということも、海外を相手に戦う上では見逃せない点です。
今回、私が登壇する第2回目のセミナーでは、このような中小企業に関わる海外展開の課題について話す予定です。
さらに、せっかくたくさんの方に参加していただくわけですから、話を聞くだけでなく交流もできるように、当日はグループディスカッションを行う予定です。業種を超え、さまざまな視点で中小企業の海外展開を考える機会になると思います。
「勝ち抜くための中小企業セミナー」のみどころ
「勝ち抜くための中小企業セミナー」ではほかにも、中小企業や経営の研究に長年携わっている方が登壇します。
第1回目は江島由裕教授が登壇。「何が中小企業の明暗を分けるのか」をテーマに、世界の経営学者がどのように考えているのか、その最新動向にも触れながら、中小企業の成長について考えます。衰退と成長の違いはどこから来るのかを考える絶好の機会になるはず。

江島由裕教授
また、第3回目の太田一樹教授、福田尚好客員教授の回では、「アジアの新時代の中小企業の成長戦略と人材育成」を題材に、中小企業診断士と経営研究者の立場から事例を交えて提言を行うとともに、参加者を交えた意見交換も予定しています。
まさに三者三様、海外という切り口で中小企業について真剣に考える場になることは間違いありません。

太田一樹教授

福田尚好客員教授
今回のセミナーはすべて、大阪市営地下鉄「北浜」駅直結、大阪証券取引所ビルで19時から開催され、仕事帰りでも参加できるものになっています。
中小企業の経営を担う方だけでなく、大企業に所属する方や主婦の方など、少しでも経営に興味のある方にはぜひ足を運んでいただきたいですね。