ほとんど0円大学 おとなも大学を使っっちゃおう

阪大のルーツ「適塾」をたずね中之島でランチ♪のご提案

2016年6月3日 / 話題のスポット, 大学を楽しもう

オフィスビルが立ち並ぶ大阪・北浜に、緒方洪庵が江戸後期に開いた蘭学塾「適塾」が今も残る。徒歩圏内には適塾にちなんだメニューが楽しめる場所も。おなかをすかせて出かけてみよう。

日本の近代化に尽くした人々の学舎

外観。ビル街の真ん中に時が止まったかのような空間が

外観。ビル街の真ん中に時が止まったかのような空間が


大阪大学のルーツといわれる適塾は、日本唯一の蘭学塾の遺構として重要文化財に指定された、大阪に残るもっとも古い江戸時代の町家の一つだ。内部には、洪庵の著書などが展示され、ほぼ当時のままの塾生大部屋も見ることができる。

内部は町家らしい風情があり、とても静か

内部は町家らしい風情があり、とても静か


さまざまな展示物からは、洪庵と適塾の功績を知ることができておもしろい。例えば、大阪でコレラが大流行した1858(安政5)年、洪庵が緊急出版したコレラ治療書『虎狼痢治準』※や、ベルリン大学教授フーフェラントの書物の一部を洪庵が抄訳した「扶氏医戒之略」※などがある。これは12条からなる心得のようなもので、「医の世に生活するは人の為のみ」といった、現在にも通じる医学の倫理書といわれている。

手前が『虎狼痢治準』。洪庵はわずか5~6日間で完成させたそう!

手前が『虎狼痢治準』。洪庵はわずか5~6日間で完成させたそう!

肝臓ではなく「観臓」の記録『蔵志』(1754年)※。官許を得た日本初の解剖だった

肝臓ではなく「観臓」の記録『蔵志』(1754年)※。官許を得た日本初の解剖だった

 

もう一つの楽しみは塾生たちの暮らしをちょっと体験できること。町家なので奥に細長い造りなのだが、塾としては狭いのでは!?と思ってしまうような小さい部屋が多く、好成績をとれば、塾生大部屋のうちで一畳分のいい場所がもらえる、なんてこともあったそうだ。藩によっては藩主の命で若者を送り出すなど、全国各地から入門者を集めたため、かなりの人数がひしめきあって勉強していたのだろう。

輩出した偉人といえば、福沢諭吉、大村益次郎、橋本左内など数知れず。1部しかない蘭和辞典「ヅーフ・ハルマ」※を奪い合うようにして勉強したというエピソードも残っており、福沢諭吉はこれ以上ないほど勉強したと述懐している。

2階の塾生大部屋。中央の柱には刀傷が残る。議論が白熱しすぎたのかも!?

2階の塾生大部屋。中央の柱には刀傷が残る。議論が白熱しすぎたのかも!?

塾生名簿には、在籍していた手塚治虫のひいおじいさん手塚良庵の名前が※

塾生名簿には、在籍していた手塚治虫のひいおじいさん手塚良庵の名前が※


常設展のほか、毎年6月10日の洪庵の命日前後には特別展示も開催している。医学を志す人はもちろん、建築や幕末の歴史ファン、手塚ファンなど、幅広い層が楽しめる場所といえる。
(※資料はすべて複製本)

「適塾御膳」で塾生の食生活を体験

名所訪問の後にはこちらがおすすめ。適塾から徒歩15~20分程の、大阪大学中之島センター「カフェテリア スコラ」だ。

ここはリーガロイヤルホテル直営のカフェで、塾生が食べていた献立をイメージした「適塾御膳」(1,030円)が味わえる。福沢諭吉の著著『福翁自伝』を参考に、大学とホテルのコラボで完成した。

当時は質素な食事だったとされるが、うってかわってこちらはボリュームあり

当時は質素な食事だったとされるが、うってかわってこちらはボリュームあり

 

写真右上の小鉢が、毎月1と6のつく日に出されていたネギとサツマイモの難波煮。左上は5と10のつく日に出ていた「豆腐汁」にちなんだ豆腐と鶏肉のつくねだ。

また、当時大阪で牛鍋を出していた店が二軒だけあったという記述から、メインは牛肉のすき焼き風に。福沢諭吉いわく「牛はずいぶん硬くて臭かった」らしいが、ちゃんとおいしいのでご安心を。

「食事の時にはとても座って喰うなんという事は出来た話ではない」とも書かれていたそうで、辞書を奪い合ったという話からなんとなく想像はつくけれども、その貪欲さと情熱が、幕末から明治の激動の日本をつくっていったのだろう。
適塾へお出かけの際は、中之島をお散歩&スコラでランチ。歴史を感じる半日コースをぜひ。

キャンパスの自然に囲まれて。桜の名所・大阪府大へ

2016年4月11日 / 体験レポート, 大学を楽しもう

春ですねー。今年のお花見はどちらへお出かけされましたか?

私はほとゼロ編集会議で大阪府立大学のイベントがあるよ!と教えてもらい、先日ぶらりと行ってきました!

正門を入ると、道が奥へとひたすら伸びてます。桜はどこ~~?

正門を入ると、道が奥へとひたすら伸びてます。桜はどこ~~?


訪れたのは「第7回府大花(さくら)まつり」。正門から歩いて7分ほどでしょうか、受付に到着。学生スタッフたちが迎えてくれました。
そこでクイズ&スタンプラリーの用紙をもらったのですが・・・
「キャンパスの中にある在来種と外来種のタンポポを見つけてみよう!」。あ、これ結構大変&むずかしい;ちゃんと子どもたちが(おとなも)学べるようになっているのが大学らしいですね。

ほとゼロで紹介した「学園菜」の植物工場研究センターにもスタンプポイントがありました

ほとゼロで紹介した「学園菜」の植物工場研究センターにもスタンプポイントがありました「学園菜」の記事はこちら!

 

受付からさらに奥へ進むと、桜が見えてきました!府大池のまわりに桜並木が続いています。
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カメラはオリンパスPEN Liteを持って行き、アートフィルタ(ファンタジックフォーカス)でも調子に乗って撮ってみました;

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府大花まつりは、大阪府立大学ネイチャービュー実行委員会が主催するイベント。桜を愛でるだけでなく、先生や学生たちによる自然や環境についてのセミナーなども開催されています。

府大池の水質調査ツアー、自然素材を使ったクラフトづくりコーナーのほか、キャンパス内の動植物の生態系を学ぶ展示があるなど、理科好きな子どもたちは興味しんしんのようでした。

青いジャンパーは学生スタッフ。水質調査中です

青いジャンパーは学生スタッフ。水質調査中です


他にも、もちつき大会やさくら茶会、学生と一緒に子どもたちが遊べるゲーム企画などいろいろあって、ゆったりお花見に来た人も、家族連れも、穏やかな春の日を楽しんでいました。

府大池のまわりはこんな感じ。なんとか雨が降らないでよかった

府大池のまわりはこんな感じ。なんとか雨が降らないでよかった


大学内なので飲酒やバーベキューはもちろんできませんが、そのぶん静かで、人混みにうんざりさせられることもなく過ごせます。お弁当の販売もあるし、なにより敷地が広いのでのんびりできて快適。

大学側にとっては、他大学にはない素材を存分に活かすことで、地域とのつながりを強め、府大らしさを感じてもらう良い機会となっているようです。

来年のお花見、行き先に迷ったら選択肢にぜひ。

回路に○○も組込まれてる?阪大テルミン講義!

2016年3月11日 / 体験レポート, 大学を楽しもう

ナレッジキャピタルで開催されている大人のための教養講座『「超」学校 MOU-ICHIDO もういちど自分進化論』に、音楽&物理学の授業がお目見えした。テーマは電子楽器テルミン。今回、テルミンといえばこの先生という、大阪大学サイバーメディアセンターの菊池誠教授が登壇した。教授によれば、テルミンには他のどの楽器にもない特殊性あるというのだが、それは一体…!?

今回の講座は「電子音楽の物理学 過去から来た未来の音テルミン」。少し早めに会場に着くと、音響テスト中の菊池教授の姿があった。生でテルミンを聞くのは人生初!文字ではなんとも書きづらい、ふわわ~~ん(?)とどこまでも広がっていくような、少し二胡にも似た不思議な音が響いていた。

テルミンは1920年代にレフ・テルミンという物理学者が生んだ世界最古で最初の電子楽器だ。ある年代の音楽好きなら、レッド・ツェッペリンの「Whole Lotta Love(胸いっぱいの愛を)」でジミー・ペイジがひいていたと記憶している方も多いだろう。

実は菊池教授もレッド・ツェッペリンから興味を持ったそうで、演奏歴は20年近く。趣味の範囲とはおっしゃっていたが、ロックデュオandmo'でその腕前を披露している。

初めて間近で見たテルミン!2つのアンテナ(矢印)と手の距離によって演奏する

初めて間近で見たテルミン!2つのアンテナ(矢印)と手の距離によって演奏する


テルミンは、縦のアンテナで音の高低を(手を近づけるほど高い音に)、水平のアンテナで音の強弱を(手を近づけるほど小さい音に)コントロールできる。「鼻歌のように自由に何でもできるところが魅力」と教授。熟練の技が必要そうだが、手とアンテナの距離を微妙に調節すれば、他の楽器と同じようにドレミの音階も可能だし、手を揺らせばビブラートも表現できる。

男女問わず50名ほどの参加者が集まった

男女問わず50名ほどの参加者が集まった

 

菊池教授はまず、音とは、楽器が音を出す仕組みとは、というお話を「振動」「共振」といった物理用語も織り交ぜて解説。その中でもテルミンは、管楽器と同じ仕組みを持っているという。
例えば、ビール瓶で想像してみよう。瓶にふーっと息を吹き込んだとき、自分が音程を作っているわけではないのに、ある一定の音が鳴るという現象がある。息によって空気中に伝わったたくさんの振動は、目には見えないが瓶の中をいったりきたりしているらしい。その中で、打ち消し合ってしまう振動と、生き残る振動(=固有振動)があり、その生き残った振動が音程となって私達の耳に届いている(=気柱共鳴)。

この「気柱共鳴」を電子の力によって起こすのが電子楽器なのだが、仕組みをつくるには「コイル」「抵抗」「コンデンサー」の3つを組み合わせた「共振回路」が必要だ。しかし「当時は1920年代で、ラジオがようやく出てきた時代。いい部品がなかったことを逆手にとった」と教授。そこで「コンデンサー」の一部として回路に組み込まれたのが「人間」だった。

味のある教授の手書き解説

味のある教授の手書き解説


あらゆる製品に使われている電子部品「コンデンサー」は、電気を通すもの同士の間に、電気を通さないものを挟んだものだ。
「テルミンのアンテナは電気を通します。人間の手も電気を通します。アンテナと人間の手の間にある空気。これは電気を通しません。これがコンデンサーの役目を果たしているんです。つながってないじゃないか、と思うかもしれません。しかし人間は決まった電気をもっているので、回路の中に組み込まれるんです。テルミンの前に立つだけで」。

菊池教授の手とアンテナがコンデンサーに

菊池教授の手とアンテナがコンデンサーに

 

人間が回路の一部!?なんだか信じられないが、教授は「当時はこれしか作れなかったんだと思います」とのこと。電子ピアノやシンセサイザーといった電子楽器には、技術の進歩により人間は組み込まれていない。特殊な構造を持っているのは今もテルミンだけだ。それがむしろ新鮮で、妙に引き付けられてしまう魅力なのかも。

そして、この回路だけでは大きな音にならないため、振動数が近い2つの電気信号を同時に流すと起こる「うなり」現象を使う(ラジオと同じ原理)ことで、テルミンは音を出しているという。

講座の最後を飾ったのは、菊池教授のテルミン演奏。『蘇州夜曲』『G線上のアリア』…ゆったりとした音楽にテルミンの音はぴったり。何もない空気中で、教授の手と指が繊細に動き、音が奏でられていく。まるで魔法を使っているようにも思える。
でも、講義で学んだ回路図を頭に浮かべてみれば、ぼんやり音楽を聞くときとはまったく違ったおもしろさがあった。

普段、教授はサイケデリックな曲を演奏されるそう!!今回は特別

普段、教授はサイケデリックな曲を演奏されるそう!!今回は特別


高校ではもはや選択しなかった物理…。久々に目にした電子回路図におののきながらも、少しは仕組みが分かった気がする。物理ってこういうことを考えるものなんだとやっと気がついたような(恥)。苦手だったことこそ、もう一度学んでみるのが『「超」学校MOU-ICHIDOもういちど自分進化論』の醍醐味かもしれない。

京都造形芸大“卒展”&オーキャンがアツい!

2016年2月17日 / ほとゼロからのお知らせ, トピック

650万。この数字何だと思います?実はコレ、2015年の「京都造形芸術大学卒業展/大学院修了展」の総売上。学生の作品販売も行うこの卒展が、今年は2月27日(土)~3月6日(日)まで開催される。内2日間はオープンキャンパス(事前予約制)とも初コラボ。毎年1.5万人の来場者数を誇る、本気のアートフェアをお見逃しなく!

京都造形芸術大学の卒展は、まずそのスケールに圧倒される。80,000㎡以上ものキャンパス全体を使って、学生作品を展示しているのだ。絵画、立体、染色作品、インスタレーション、建築模型、映画、ドキュメンタリー作品、舞台公演などなど、13学科すべての作品(総勢750名以上!)を一挙に楽しむことができる。

圧巻のスケール

圧巻のスケール

キャンパス全体が美術館

キャンパス全体が美術館


それだけでも十分活気が伝わってくるが、卒展そのものがアートフェア(作品を展示販売するイベント)になっているのがすごい。京都造形芸術大学は、全国の美大・芸大に最も先駆けて卒展をアートフェアとして展開したそうで、未来のアーティスト発掘のため、有名ギャラリストやコレクターが多数やってくるという。


学生は目の肥えた業界人相手に自らプレゼンし、値段交渉を行う。自分がコレクターでなくとも、そんな生々しい現場をチラ見できそうなのはおもしろい。(自分が学生だったら、これはかなりキツイ泣)

作品は個展形式で展示されている

作品は個展形式で展示されている


さらに3月5日(土)、6日(日)は事前予約制(定員100名/2月18日(木)17:00~受付開始)にてオープンキャンパスを同時開催。受験を考えている人向けに、卒展を監修する美術工芸学科学科長、椿昇教授のレクチャーや大学全体説明会、作品の鑑賞ポイント解説、卒展見学ツアーといった充実のプログラムが用意されている。

また、入学個別相談コーナーのほか、3月5日(土)には卒展をきっかけに有名ギャラリーにスカウトされた卒業生を招いて、トークショー『絵を描きつづけて、見つけたこと』もあるので要チェックだ。

学生スタッフに気軽に話しかけてみよう

学生スタッフに気軽に話しかけてみよう

京造ならではのゲストに会える

京造ならではのゲストに会える


ほかにも、学生作品を手頃な価格で買えるミュージアムショップ、カフェ、外部のクリエイターによるレクチャーなど誰でも参加できる特別企画がいっぱい。受験生はもちろん、アート好きからちょっと縁遠い大人も、京造卒展の熱いエネルギーをぜひ感じてみてほしい!

チョコと国際協力を学んでみよう!by龍谷大×Dari K

2016年1月25日 / 体験レポート, 大学を楽しもう

カカオ豆からチョコを作ったことありますか?といっても、なかなかそんな機会は少ないはず。以前ほとゼロで取材した「国際協力×○○○○」がテーマの龍谷大学経済学部講師・神谷祐介先生のゼミが、「チョコレートづくり&国際理解ワークショップ」を開催。インドネシア産のカカオ豆を使用したチョコレートで注目を集める、京都の「Dari K(ダリケー)」と初タッグを組んだ。
「国際協力×カカオ豆」、さてそのお味は…?!
「国際協力×○○○○」がテーマのミクストメディアゼミ。(前編)

原料から作ってみよう!

会場に集まったのは約10組の親子。テーブルには、Dari Kが実際に使用しているインドネシア・スラウェシ島産のカカオ豆キット、フライパン、すり鉢などが用意されていた。おいしいチョコの味は知っていても、初めてみるカカオ豆に子どもたちは興味津々だ。

この日、ゼミの学生たちは会場のセッティングや司会を担当。ゲストとして、龍谷大学大学院の卒業生でもある、Dari Kの足立こころさんが招かれ、チョコ作りを直接指導!親子でわいわい、にぎやかなワークショップが始まった。

チョコ作りその①

洗う!
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まず豆を洗うところから!洗い始めると、クサいというか酸っぱいというか、なんだかチョコの原料とは思えないにおいが漂ってくる。足立さんによれば「このにおいがおいしさの秘密なんです」とのこと!それはなぜか?答えは後ほど。

チョコづくりその②

焙煎!
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水気を切り焙煎。分量にもよるが、15~20分かけてしっかり火を通さないと、ペースト状にしたときドロっとした感じにならないそう。若干ではあるが、チョコらしい香りがしてきた。

チョコづくりその③

皮をむく!
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あら熱がとれたら皮むきスタート!パリっと豆を割り、中身を取り出す。

チョコづくりその④

豆をペースト状に!
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一番盛り上がったのがココ。カカオ豆をフードプロセッサーに入れると、つぶつぶの豆がペースト状に。姿を変えていく様子に子どもたちは大興奮!フタを開けると、こってりとした、見た目はいかにもあま~いチョコ!しかし…


なめてみると「苦い!!!」。顔をしかめる子どもたち…。

砂糖を入れる前なのでそれはそうなのだが、これが本来の、かつては薬としても重宝されたカカオの味なんだと実感できた。

チョコづくりその⑤

砂糖を混ぜ、型に入れて冷やす!
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どっさり砂糖を加えて十分に混ぜたら、動物などのかわいい型に入れていく。この後30分冷やすとできあがり!

見た目、におい、手触りなど五感をフルに活用して作ったチョコ。思ってもみなかった刺激や感覚に、ちょっと困惑しつつもワクワクした子どもたちの表情が印象的だった。


 

カカオ豆の苦い背景とは?

チョコを冷やしている間は、Dari Kの足立さんによるレクチャータイム。世界地図を見ながら、カカオ豆の生産量世界第2位であるインドネシアの特徴や、今回使用したカカオ豆の産地スラウェシ島についての紹介があった。

カカオを手に説明する足立さん

カカオを手に説明する足立さん


ここで足立さんから「発酵」というキーワードが登場した。
発酵は、チョコの香りを決定する大事な工程。約1週間と時間も手間もかかる作業だ。

インドネシアのカカオ豆は世界第2位の生産量でありながら、チョコ業界では「質が悪い」とされてきたそう。それは、この発酵を行わずに出荷していたから。もし仮に発酵させたとしても、ニューヨークやロンドン市場での取引価格は未発酵の豆(低品質な豆)とほぼ変わらないのだという。これでは、カカオ農家は報われない…!

そこでDari Kは、カカオ農家の方に発酵作業の技術指導を行い、直接買い取ることで努力に見合った報酬を得られるよう、流通の仕組み作りを行ってきた。おいしいチョコを作るために、農家の人々主体の意識改革を行い、対等なパートナーシップを築こうというのが、他のショコラティエと一線を画する取り組みだ。

カカオを割ると白い実が。中にあるカカオの種(カカオ豆)を発酵させる

カカオを割ると白い実が。中にあるカカオの種(カカオ豆)を発酵させる


最初に豆を洗ったときに漂った不思議なにおいは、この発酵作業があってこそ!子どもたちには相場の話は少しむずかしいかもしれないが、チョコ作りには、厳しい現実があり、たくさんの工程が必要なんだと体感できたはずだ。

神谷ゼミとDari Kのこれから

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できあがり!

 

さぁ、チョコができあがった。一口食べると、濃厚で苦みのあるペーストの中に強い酸っぱさがあり、今までに食べたことのあるチョコとは全然違う!足立さんに伝えると「カカオはフルーツですから」との言葉に納得。“素材の味を活かす”という言葉はグルメ雑誌に飽きるほど登場する言い回しだが、このチョコにはぴたりと当てはまる気がする。

子どもたちの中には、苦みと酸味に違和感ある表情をする子も。食べ慣れた味よりも、少し「?」と感じる食の記憶は強烈だろう。前回取材した際、神谷先生が「小さい頃に出会ったことは、記憶に鮮明に残ることも多い」とお話されていたのを思い出した。

今回のワークショップで司会を担当した2回生の忠田季空(ちゅうた・りく)さんは「甘いチョコにも苦い背景があることを知ってほしかった。楽しみながら学んでもらえるよう、この活動を続けて、国際協力に興味を持ってもらいたい」と話した。

スタッフとして運営に携わったゼミの学生たち。右から忠田さん、宇山さん、松本さん

スタッフとして運営に携わったゼミの学生たち。右から忠田さん、宇山さん、松本さん


楽しいだけでなく「食育」にもつながった今回の試み。イベント終了後には足立さんを囲んで、神谷先生とゼミ生たちが、これからどんなコラボができるか、さまざまな話に花が咲いた。今回のようなワークショップや製品開発など、切り口はアイデア次第…!龍谷大×Dari Kの取り組みにこれからも目が離せない。

神戸スイーツ×経営学!甲南大学公開講座

2015年12月16日 / 体験レポート, 大学を楽しもう

神戸といえば、ファッション、港町、パン?私はやっぱりスイーツ!と答えてしまう。そんな甘党にうれしすぎる公開講座が甲南大学で開催された。神戸スイーツ学会の中心メンバーである経営学部の西村順二教授の呼びかけで、7人のパティシエがゲストとして集結。さらに街の活性化や洋菓子店の成長戦略についてなど、甘いだけじゃない知的な時間を多数の参加者が楽しんだ。

新作スイーツに目移り!!

土曜日の午後。甲南大学のカフェ・パンセに、ぞくぞくと人が集まってきた。その数約100人!この日の公開講座のテーマは「7人のパティシエが描く神戸スイーツ」。参加費1,000円でミニ講義が聴けて、ケーキとお土産セットまでもらえるという破格の内容だ。

みなさんのお目当ては、7人のパティシエからなる「ORIGINE  KOBE(オリジンコウベ)」の新作スイーツ。
「ORIGINE  KOBE」とは、神戸を中心に活躍する7人のパティシエが、お互い協力し合い、情報発信することを目的として2015年4月に発足したグループ。自身の店舗も運営しつつ、「ORIGINE  KOBE」メンバーとしてのケーキもそれぞれが発表している。神戸っ子や関西のスイーツ好きなら知っているはずの有名店パティシエが揃い踏みなんて…奇跡っ!

こちらが新作。2016年3月まで各店舗にて買うことができる

こちらが新作。2016年3月まで各店舗にて買うことができる


7種の中から選んだケーキを手に席につく参加者の方々。目の前にずらりと並ぶケーキを写真に収めるだけなのはちょっと苦行だったが、おいしいスイーツがこれだけの人を動かす、その大きな力を感じた。

なかなか1つに決めきれない方も…わかります

なかなか1つに決めきれない方も…わかります


講座では、甲南大学ビジネス・イノベーション研究所長で経営学部教授の西村順二教授を司会とし、「ORIGINE  KOBE」の広報も勤めるスイーツコーディネーター、松本由紀子さん、「パティスリーモンプリュ」の林周平オーナーシェフら7人が、新作や「ORIGINE  KOBE」への思い、神戸の洋菓子店としての展望を語った。
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洋菓子店の成長戦略は2種類ある

おいしかった~で終わらないのが大学の公開講座。休憩を挟み、西村教授のミニ講義が始まった。

さまざまなデータを交えて解説する西村教授

さまざまなデータを交えて解説する西村教授


神戸の産業はアパレルやケミカルシューズなどいくつかあるが、売上高、企業数、従業員数が共に堅調に伸びているのが洋菓子だという(神戸ファッション産業規模調査2009より)。

ただ洋菓子は、生ケーキとなると鮮度管理がとても大事。それにバースデーケーキをわざわざ神戸から京都へ買いに行く人はほとんどいないだろう。だからこそ「地域性が高く、小さい商圏となる。そこに宿命的にしばられてしまう」と教授は指摘。

確かに全国レベルの洋菓子店をめざすとなると、パティシエの腕を最も発揮できる生ケーキではなく、保存がきく焼き菓子中心にシフトしていく必要がある。全国の誰もが知っている有名洋菓子店の中には、残念ながら神戸発祥とあまり知られていない店もある。
「対して『ORIGINE  KOBE』のみなさんのお店は地域密着型。持続可能な規模でやっていく成長戦略です。全国に拡大していく成長戦略と共に2種類の戦略が存在している。それがちゃんと両立しているのが洋菓子業界なのでは、という仮説をたてています」。西村教授は自らの研究内容を解説した。

“成長戦略”や“持続可能”といった言葉が飛び交い、経営者でもあるパティシエのみなさんも興味津々。一見キラキラしたスイーツの世界と、リアルな経営のお話で、会場は大学らしい引き締まった雰囲気になった。
講座終了後はパティシエと写真を撮る熱心なファンも。地域密着型の成長戦略が成功した姿が、この風景なのかもしれない。

なぜ甲南大学なのか?

ところで、なぜ甲南大学がこのようなイベントをしているかというと、神戸市東灘区という立地に関係している。
東灘区は市内の中でもっとも洋菓子店が集中している地区だ。西村教授によれば、洋菓子の製造小売業は、中央区では1万人に2.3軒、東灘区は1万人に1.7軒ある計算になるとか。住宅街なのに、繁華街の中央区に迫る勢いで洋菓子店があるのだ。

そんな立地を活かそうと、甲南大学では「神戸スイーツの研究活性化拠点」としてプロジェクトを進めることになった。西村教授が中心となって公開講座を開き、さまざまな形で神戸スイーツを盛り上げようとしているという。

中でも教授がかかわる「ひがしなだスイーツめぐり」は2015年の秋で5回目を迎えた。ルートバスのフリーチケットで好きな洋菓子店をハシゴできる企画だが、今ではスイーツだけではなく街の活性化につながっている。

「ひがしなだスイーツめぐり」のパンフレット。50軒近い洋菓子店を紹介している

「ひがしなだスイーツめぐり」のパンフレット。50軒近い洋菓子店を紹介している


「あちこちにある店=点と点をつなぎ、バスでめぐるようにしたことで、点が線になった。さらに開催期間中に街のイベントを同時に行うことで線を面に。お客さんがバスを降りて、もっと街を楽しめるようにしたんです」と西村教授。今では協力店も増え、店同士の交流も広がりつつあるという。
「スイーツめぐりとは言っているが、スイーツではなく地域のためのプロジェクトとして考えています」。

「甲南スイーツ」が生まれる?!

学生がかかわる企画も目下進行中らしい。過去には卒業式限定のオリジナルスイーツ「スヴニール」やオープンキャンパス等で甲南大学限定の「甲南フィナンシェ」という商品を配ったことはあるが、レシピはシェフにお任せだった。

今度は、カフェなどへの卸専門の洋菓子店とのコラボを考えている。学生は各店舗の商品を調査し、神戸らしさ、甲南大学らしさを考えたオリジナルレシピを研究中という。

最後に…私もケーキをいただきました!

「パティスリーモンプリュ」林周平オーナーシェフのケーキ!

「パティスリーモンプリュ」林周平オーナーシェフのケーキ!


バタークリームの程よい甘さと柔らかさの中に、シュクセという生地のサクサク食感がおいしい!さらにグレープフルーツのコンポートが爽やかな隠し味となり、見た目には分からない重層的な味を楽しみました。

このおいしさに負けない「甲南スイーツ」が生まれる日も近い?!ぜひ「ほとんど0円大学」でレポートしたい。

秋のプチハイキングは阪大でタイムトラベル。

2015年11月6日 / 体験レポート, 大学を楽しもう

大阪大学豊中キャンパスには、ハイキングできる山がある。といっても標高77.3m。この「待兼山」はかつて『枕草子』に登場し、今も大阪大学の前身、旧制浪速高等学校の卒業生や地域住民に親しまれている。そんな歴史ある待兼山を歩く「植物探検隊」イベントに参加した。

予約開始20分で席が埋まることもある「植物探検隊」。春と秋に開催されており、今回(10月末)は30名弱が参加した。栗原佐智子先生(大阪大学21世紀懐徳堂・招へい研究員)の解説を聞きながら山を歩き、大阪大学総合学術博物館に立ち寄った後、講義を聞くという流れだ。
小さな山といえど皆さん山歩きの完全装備。まだ蚊がいるとのことで虫除けスプレーを盛大に吹き付けまくって出発した。

栗原先生が葉の見分け方、植物の魅力を紹介

栗原先生が葉の見分け方、植物の魅力を紹介

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遊歩道に入ると、キャンパス内とは思えないほど自然豊か!キャンパスの周囲にはモノレールや阪急電車が走りいたって街中なのだが、こんな里山があるとは驚き。いい意味でほったらかし状態なため、かつて植栽された樹木もそのまま残っているのだという。

キンモクセイやカイヅカイブキなどはその代表格で、旧制浪速高等学校時代から残る樹齢90年以上の巨木もあり、近年、昆虫ではアブの新種が発見されるなど貴重な場所だということがわかる。

普段は一般開放されていないこんな山深いところも!

普段は一般開放されていないこんな山深いところも!

葉の裏にカタツムリ発見♪

葉の裏にカタツムリ発見♪

この日見た数多くの植物の中から、ほんの少しご紹介。

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(左)三角形の実が服に…。くひっつきむしと言われるが、正式にはアレチヌスビトハギ(覚えられない)
(右)セイタカアワダチソウ。道端でもときおり見かける

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(左)ゲンノショウコの果実。ミコシグサ。形がおみこしに似ていることからミコシグサとも呼ばれる
(右)くるくるっとした形がかわいいコウヤボウキの花

 

山歩きと博物館見学が終わったら、講義室で栗原先生によるミニ講義がスタート。

 

待兼山には弥生時代からから人が出入りし、古墳が発見されているとか、「(恋人などを)待ちかねる」といった歌枕として『枕草子』や和歌にも多数登場したなど、はるか昔から身近な山として親しまれていたことが紹介された。江戸時代の観光案内本にも描かれているのだが、今と違って木がほとんどない!これは木が木材として運び出されていたからだと考えられる。時代はとぶが1919年には大正天皇が行幸した。

山中に残る行幸碑

山中に残る行幸碑

歴史ばかり聞いていると遠くに感じてしまうが、親しみがわくエピソードもある。
以前、植物探検隊に旧制浪速高校の卒業生が参加した際、先生にいろいろな思い出話を聞かせてくれたそうで…
「GHQに接収されていたことや、木が少なくなったのでどんぐりをまいたとか、当時は松茸がそこら中に生えていて、鍋に入れて食べていたなんてお話も聞きました」。
そこら中に松茸!!いい時代…。

「山に記憶が残っているんです」と栗原先生。「弥生人や清少納言の時代から現代まで、待兼山そのものに魅力があるんですね。植物を見るだけでなくその歴史を知って自然に親しんでほしい」。

“小さな山”という印象が“歴史的な場所”にがらりと変わった。植物探検隊に参加できるチャンスは年2回だが、遊歩道は一般開放されている。これからの季節、街中からすぐのプチハイキングに出かけてみては。

草花に詳しい人にもうれしい植物に関する講義も。この日は「雑草」がテーマ

草花に詳しい人にもうれしい植物に関する講義も。この日は「雑草」がテーマ

 

水族館の舞台裏を探検!バックヤードツアー

2015年9月4日 / 話題のスポット, 大学を楽しもう

南紀白浜の名所、円月島を臨むロケーションに水族館があるのをご存知だろうか?! 85年の歴史を持つ「京都大学白浜水族館」だ。今回は夏休み期間中に開催されていたバックヤードツアーに参加。普段は見ることのできない舞台裏へ行ってきた。

白い建物が水族館。2014年にリニューアルした

白い建物が水族館。2014年にリニューアルした

「京都大学白浜水族館」は1930年に開館した、京大のフィールド科学教育研究センター瀬戸臨海実験所の付属施設だ。京大だけに(?)研究所っぽい、なんだか無機質な雰囲気を予想していたが、入るといきなりこの大水槽が現れた!

水量240トン、回遊魚とサメの大水槽

水量240トン、回遊魚とサメの大水槽

名物クエ、スズキ、タイなどおなじみの魚はもちろん、備え付けのルーペで観察できるちょっと不気味系の無脊椎動物約250種が水槽に鎮座し見応え十分。黒潮が紀伊半島へと運ぶ熱帯系の生物を中心に約1万点を展示しており、白浜が豊かな海だということが分かる。

他の水族館ではあまり見られないセンネンダイ

他の水族館ではあまり見られないセンネンダイ

白浜や伊豆大島でしか確認されていないオオカワリギンチャク

白浜や伊豆大島でしか確認されていないオオカワリギンチャク

ひと周りして楽しんだあと、お昼前にバックヤードツアーが始まった。先着10名(小学生以上)限定でスタッフの案内のもと“関係者以外立入禁止”のドアの向こうへ入ることができる。

まずはこの部屋から。奥にあるのはケガや病気の魚などを飼育する予備水槽

まずはこの部屋から。奥にあるのはケガや病気の魚などを飼育する予備水槽

スタッフが働くバックヤードには、なぜかなつかしのダイヤル式電話があったり、カレンダーまで魚の絵だったり、飼育道具やウエットスーツが雑多に置かれたままで、普段の姿が垣間見えておもしろい。

魚用のエサの紹介のほか、さっきまで見ていた水槽を上からのぞくことも。ゲスト用の柵はないので、足を滑らせないように見てみると、エサがもらえると思ったのか、魚がひょこっと顔を出してくる。

魚たちのごはん。魚肉や海藻を使ったエサが数種類

魚たちのごはん。魚肉や海藻を使ったエサが数種類

水槽の裏側はこうなっている

水槽の裏側はこうなっている

冷凍庫を開けると…

冷凍庫を開けると…

エサになるアジのかたまり!

エサになるアジのかたまり!

生物だけではなく、ツアーでは水族館の仕組みを知るさらに奥深い場所へも連れて行ってもらえる。

その仕組みというのが水族館の給排水システムだ。白浜水族館では、海水をかけ流しにする開放式と、設備が複雑な循環式という2つのシステムを採用。前者は新鮮な海水を使えるものの水温調節ができないため、ほぼ循環式を使っているという。

ツアーでは水族館の心臓部といえる循環式システムを見学。薄暗い設備エリアの奥へ進むと、一度使った海水をきれいにするろ過槽、海水をくみ上げる循環ポンプが現れた。生物がいることを忘れてしまうような重厚な雰囲気に圧倒される。

絶え間なく水が流れるろ過槽

絶え間なく水が流れるろ過槽

循環ポンプ

循環ポンプ

そしてツアーのラストを飾るのは、入口にあった大水槽の上部。魚の大きさがよく分かるし、いつもと違った視点から魚の動きを観察できる。
アイキャッチ

約30分間のツアーはここで終了!
バックヤードは意外に広く、見上げるような設備や複雑な配管などが張り巡らされ、工場見学のようなおもしろさもある。ご紹介したのはほんの一部なので、舞台裏ならではの迫力や生物の飼育方法などマニアックな部分もぜひ楽しんで。

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