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大学アプリレビューvol.9 ビッグデータで美人を科学する!「美人科学研究所」

2016年5月30日 / コラム, 大学アプリレビュー

美人か美人でないか、これほど人の主観や好みに左右されるものはありません。顔立ちがはっきりしている、瞳が大きいなど、一般的な美人の概念はあるものの、やはりそれを美人と感じるかどうかはその人次第。
そんなあいまいな感覚をビックデータを使って定義しようというのが、筑波大学と大阪大学、そして美人時計などを手がける企業、BIJIN&Co.が産学連携で開発したアプリ「美人科学研究所」です。

 

個人の中にある「この人は美人か?」の定義は、男女、育ってきた環境、年代とさまざまな要素が複雑に絡み合って形づくられています。育った地域や年代が違えば、自然と美人だと感じる規準も異なるそう。

 

そんなあいまいな美人の定義を、ビッグデータから説き明かすのがこのアプリ。

 

アプリをリリースしたBIJIN&Co.は一般女性がモデルとして出演する「美人時計」を展開。各地域でBIJIN MODELが活躍できるように機会を提供する中で、地域や年代、個人の嗜好によって美人の規準が異なるため、BIJIN MODELの活動の機会を逃すことがあったようです。

 

そこで筑波大学と大阪大学とともに「ある人に対する一般的な美男美女の認識はどのように決まるのか?」を解き明かす共同研究を行い、嗜好の定義づけをするため、画像解析とビッグデータ解析を用いた人工知能技術を開発。その技術を盛り込んだのが「美人科学研究所」です。

 

さて、とはいえ元となるビッグデータがなければ、解析することもできません。
このアプリではユーザーが研究員となり、自分の直感でデータを入力していきます。そうして集まったデータをビッグデータとして解析することで、美人を定義づけるそうです。

 

ではこのアプリをどうやって使うのか、実際に使ってみましょう。

 

 

データ入力は簡単。サンプル入力という画面で、一人ずつ表示される人をフリックで振り分けるだけ。
美人と感じたら右へ、疑問を持ったら左へと振り分けを行っていきます。

サンプル入力画面

ユーザー登録をすることで、美人と感じたモデルのデータや、自分の美的感覚が同世代のひととどれほど一致しているかなどを見ることができます。
サンプル数を多く入力すると、新米研究員から研究員、準主任研究員とランクが上がっていくのもポイント。

 

マイページ画面

情報が表示されるマイページ。

 

マイページ画面。さまざまな情報が表示される

プライバシー保護のため写真をぼかしています。実際の画面では写真が表示されます。

マイページでは年代別の人気モデルや、人気傾向に近い芸能人・有名人などを見ることができます。

 

メニュー画面

こちらが現在使用できるメニュー。

 

世論シンクロ率

世論シンクロ率では、自分の美人の規準が地域や世代でどれくらい合致しているのかを見ることができます。

 

LIKEリスト

プライバシー保護のため写真をぼかしています。実際の画面では写真が表示されます。

LIKEリストはサンプル入力で右へフリックしたモデルたち。この中から特に美人だと感じる人を「ベスト3」として選ぶことも。

 

また、自分自身の写真をアップロードすることで、客観的に自分自身の美人度を測る機能やFacebookと連携して好みの似ている人とのマッチング機能も搭載しています。

 

みなさんも、気の合う仲間をみつけたり、自分でも気付かなかった美人の規準を発見したりしつつ、美人の研究に参加してみてはいかがでしょうか。

総展示数359点!すこしなつかしい「和ガラス」の世界

2016年5月27日 / 体験レポート, 大学を楽しもう

プラスチックや樹脂製品が一般的でなかった頃、日用品としてさまざまなガラス製品が使われていました。そんな数々の和ガラスを堪能できる、関西大学博物館の平成28年度春季企画展「なごみのガラス―坂崎幸之助 和ガラスコレクション―」を楽しんできました!

大阪はガラスの街だった?!商業ガラスの街大阪

大阪とガラス、今の街並みを見ていると無関係なように思いますが、造幣局が大阪市内にあり、造幣で余剰となったソーダ灰(ガラスの材料)が安価で下げ渡されていた大阪天満界隈では、近年までガラスが盛んに生産されていました。全盛期には全国のガラス製造業者の約7割が大阪にあったというから驚きです。


しかし第二次世界大戦後は、産業構造の変化や公害問題による郊外移転、後継者不足による廃業などが相次ぎ、今や大阪がガラスの街であった面影は残っていません。

 

関西大学博物館の学芸員である山口さんによると、「大阪が商業ガラスの中心地であったことは事実なのですが、それを知らない方がほとんど。そこで大阪のかつての産業を知っていただきたいと思い、大阪で始まり、大阪に根ざした関西大学で和ガラスの展示会を行おうと企画したのです」とのこと。

 

企画を立案したものの、当時生産されていたのは安価な日用品ばかり。高価な工芸品や美術品ではないためコレクターもおらず、なかなか展示品を集めることができなかったそう。


しかし今回、「信頼ネットワークの構築」や「学問による社会問題の解決」などをテーマに、天神橋筋商店街で研究活動を行う社会連携施設STEPとのつながりで、偶然THE ALFEEの坂崎幸之助氏とコンタクトを取ることに成功。今回の展示会が実現したそうです。

 

なぜTHE ALFEEの坂崎氏が?と疑問が浮かびますが、坂崎氏は多趣味なことで有名な人物。今回展示されている和ガラスコレクションもその一つなのです。


ガラスに魅了された坂崎氏は、ガラスであれば何でも蒐集されているそうで、おはじきや駄菓子のケースから、日用品として親しまれたプレス皿、さらにビールや飲み物についてくるノベルティ、ラムネの瓶など……板ガラス以外は何でもある(!)そうです。

 

「これまでにも和ガラスの展示会はありましたが、大阪でこの数の展示はめずらしいです。また、こういった日用雑貨としてのガラス製品は、今の若い世代には馴染みのないもの。当時どんなふうに使っていたのか思いを巡らせたり、今身近にある日用品のルーツを考えるきっかけにしてもらえれば」と山口さん。

 

また、訪れる方の中には「まだうちにもあるかもしれない」「よく使っていた」と、懐かしい話に花を咲かせる方もいらっしゃるようです。

日常を彩る和ガラスの世界

実際どんなものが展示されているのか、ここでその一部をご紹介します。

ペロペロ(金コップ):写真撮影 長浜アートセンター 田中仁

ペロペロ(金コップ):写真撮影 長浜アートセンター 田中仁

 

こちらはペロペロと呼ばれる駄菓子の器。小さな器に砂糖菓子が入っていて、そのままペロペロとなめて食べていたので、名前もそのまま「ペロペロ」というのだとか。


子ども向けなので、動物の形をしたものなどいろいろな形があります。

樽型醤油差し

写真撮影 長浜アートセンター 田中仁

 

こちらは樽型の醤油差し。

氷コップ

写真撮影 長浜アートセンター 田中仁

 

かき氷などを盛るための氷コップ。


喫茶店などで氷菓子を提供する際に使われていたもの。足つきの氷コップは主に明治時代ごろ盛んに使用されていたそうです。

プレス皿(角皿)

写真撮影 長浜アートセンター 田中仁

 

昭和の時代に大量生産されたプレス皿の角皿。このほかにもさまざまな種類の模様が施されたプレス皿が展示されています。

 

また、今回は坂崎氏が火付け役となったウランガラスも多数展示されています。


ウランガラスとは、ガラスの色づけにごくごく微量のウランを使用した色つきガラスのこと。ブラックライトを当てると内部のウランが反応し、鮮やかな蛍光色に発光します。

 

当時珍しいものではなかったそうで、「当時は(ウランと)意識せず、ガラスの色づけに使われていました。日用品の中にもこのガラスを使ったものが数多くあります」と山口さんが教えてくださいました。今回の展示では、ブラックライトを当てたウランガラスも見ることができます。

展示されているウランガラスの一部。ブラックライトの光を浴びて妖しく輝きます。:写真撮影 長浜アートセンター 田中仁

展示されているウランガラスの一部。ブラックライトの光を浴びて妖しく輝きます。:写真撮影 長浜アートセンター 田中仁

 

展示品には「National」の刻印が入ったランタンなど珍しい一品も。おそらく、松下電器がNationalの登録をした当時に生産されたものではないかとのこと。


その他にもガラスでできた目薬の小瓶など、今では目にすることのないものが多数展示されています。

工業品だけでなく、骨董的価値の高いガラス製品も展示されています。

工業品だけでなく、骨董的価値の高いガラス製品も展示されています。

「大阪とガラス」コーナーも必見!

その他にも、「大阪とガラス」というテーマで当時大阪で生産されていたガラス製品を集めたコーナーもあります。社名が刻印されたプレス皿やガラス製ビーズ、ガラス製のボタンなど、本当にいろんなガラス製品が大阪の地で作られていたことが伺えます。

 

今回の展示には坂崎氏のコレクションに加え、関西大学博物館が所蔵する美術品や、エジプトから出土したガラス玉なども展示。古代から近現代まで、ガラスの歴史を一度に楽しめる展示になっています。

 

展示品の中には坂崎氏の直筆コメントが添えられているものや、こんなものまで!と思うようなもの、紹介しきれないガラス製品が盛り沢山。


ユニークなものでは洗眼器や、「穴が空いた靴下を繕うために使う」ガラス製品や、今で言うスライドフィルムのようなものもありました。どんなものなのかは、ぜひ直接お確かめください。

 

また、来月6月13日(月)は坂崎氏を交えての学術シンポジウムも開催予定です。


レトロで懐かしい和ガラスの世界に、ぜひ一度触れてみてください。

大学アプリレビュー番外 長崎聖地めぐりの味方 長崎大学「ながさきロケなび」

2016年5月11日 / コラム, 大学アプリレビュー

港が多く、古くから海外との交流拠点でもあった長崎県。居留地であったころの洋館や中華街などが残り、異国情緒あふれる建物や町並みが今も人気です。また、有名な映画のロケ地になることもしばしば。そんな長崎のロケ地を巡る、いわゆる聖地巡礼に最適なアプリが「ながさきロケなび」です。

 

「ながさきロケなび」は情報・システム研究機構国立情報学研究所と、国立大学法人長崎大学が共同で制作したもの。一般社団法人長崎県観光連盟の長崎県フィルムコミッション事業の協力のもと、長崎県内のロケ地情報を利用しやすいオープンデータに変換。誰でも利用できる形で提供されています。
日本語はもちろん、英語・中国語・ハングルと4カ国語に対応。ブラウザさえあればパソコン・スマートフォンどちらからも利用できます。

 

ロケ地の検索はトップページの「ロケ地検索」から。

ロケ地検索

掲載されている作品はアオハライドやJIN-仁-など、9作品(2016年5月現在)。
ロケ地検索は作品ごとの検索のほか、キャストや監督、主題歌などからも検索ができます。

 

「作品から探す」場合の検索画面

作品からロケ地を探す場合。作品とエリアの両方を指定することも可能。

 

検索結果は地図と一緒に表示されるので、場所の確認も簡単。
すでに長崎を旅行中の方は、現在地から近くのロケ地を検索することも。
さらに気になるロケ地を選択し、ロケ地詳細ページへ。

 

ロケ地検索結果画面。

検索結果。数字をクリックすると場所の詳細が表示されます。

 

こちらは「くちびるに歌を」のロケが行われた五島市戸岐の詳細ページ。どんなシーンが撮影されたのかという情報のほか、どのように撮影が行われたかも知ることができます。

「くちびるに歌を」のロケが行われた五島市戸岐の詳細ページ

 

同じロケ地でも、作品によって詳細や掲載されている写真も別なので、こちらのアプリでロケ地を見比べるのも楽しいですよ。

 

「蝶々さん」のグラバー園での撮影風景 「アオハライド」のグラバー園での撮影風景

蝶々さんとアオハライドのグラバー園でのロケ詳細。それぞれのロケ風景を味わえます。

 

このアプリは登録されているロケ地に関する情報を、Twitterからリアルタイムに読み込み、情報を追加していくこともできるそう。


そしてこのアプリの便利な機能がこちら!
気になるロケ地を登録し、自分だけの聖地巡礼プランを作ることができます!

ログインしない状態でもプランを組むことは可能ですが、ログインすることでプランの保存が可能に。Twitterアカウントと連携させることでログインします。

マイプラン編集画面

まずは気になるロケ地を検索し、登録していきます。登録前に右上の「プラン編集」から順番などを編集することが可能です。地図も出るのでこのまま行き先のメモとしても最適です。

 

自分でプランを組むのも楽しいですが、すでに登録されているプランでロケ地めぐりを楽しむことも。その場合はトップの「プランから探す」を選択すると、公開されているプランからロケ地を探すことができます。

「プランから探す」検索画面

公開されているプラン。登録者のコメントもあります

 

誰かが組んだプランを楽しむもよし、自分なりのプランを組んで聖地巡礼をするもよし。異国情緒あふれる長崎の旅のお供に、ぜひ活用してみてください。

大学アプリレビューvol.8 古い仮名を読もう!「変体仮名あぷり」

2016年3月30日 / コラム, 大学アプリレビュー

みなさん、ひらがなにはさまざまな形が存在するということをご存じでしょうか?ひらがなは漢字を崩してできた特性上、実はさまざまな形が存在し、これらを「変体仮名」「異体字仮名」と呼びます。最近では書道や看板などデザインの意味合いで使用されるこの変体仮名。これをアプリで覚えようと試みたのが、早稲田大学の「変体仮名あぷり」です。

 

変体仮名は戦後教育法で「ひらがなは1種類のみ」と定められるまで、日常的に使用されていました。江戸時代ごろまでは、出版・流通していた本、個人の手紙などで当たり前のようにさまざまな形のひらがなが使用されています。ですので、原文で古文を読もうとするなら、変体仮名の学習は必須。

 

しかしこの変体仮名を覚えるということが、古文に親しむ上で大きなハードルになっているのも事実です。

 

そんななか「もっと手軽に変体仮名を覚えられる方法はないか」という考えから生み出されたのが、早稲田大学の「変体仮名あぷり」です。

前置きが長くなってしまいましたが、早速起動してみましょう。

 

タイトル画面

タイトル画面

変体仮名アプリの使い方

初回起動時はこのようにアプリの使用方法を教えてくれます。文字を右から左へフリックするとひらがな、左から右にもう一度フリックすると変体仮名に戻ります。

 

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覚えたらおおきく右から左にフリック。
まだ覚えられていないと思ったら左から右にフリック。

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これを繰り返して変体仮名を覚えます。
復習モードもあるので、覚えきれなかったものは何度も繰り返し覚える事ができます。

 

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実際の練習画面。3文字表示されるのでフリックして文字を覚える。右もしくは左にフリックして文字を減らすと、新しい文字が出てきます。

 

さらに収録されているかな文字を音ごとに見れる機能も搭載。
同じ漢字からでも数種類……昔の人はこれらをしっかり使い分けていたと言うから驚きです。

 

「あ」の文字。安のほか、阿が元になっている「あ」がある

「あ」の文字。安のほか、阿が元になっている「あ」がある

「安」の派生は3つ。他の文字だと5つ以上に派生しているものも。

「安」の派生は3つ。他の文字だと5つ以上に派生しているものも。

 

今は使えない続き書きモード。今後のバージョンアップで使えるようになるとのこと。

今は使えない続き書きモード。今後のバージョンアップで使えるようになるとのこと。

 

使用してみた感想としては、とにかく操作がわかりやすくて軽いこと。テンポ良くさくさく進められると、やはり気持ちいいですね。収録されている文字もとてもきれいな文字なので、見ているだけでも楽しいです。

 

さらにこちらのアプリには、早稲田大学が所蔵する源氏物語の原文資料も一部収録。覚えた変体仮名で源氏物語の原文がどんどん読めるようになります。もちろん源氏物語は活字化もされている有名な物語ですので、正解を確認しながら原文を読む練習ができます。原文で読めるようになると、何となくすごいことをやったような気分になるので不思議です。

 

変体仮名あぷりは無料で利用できます。
教養のため、または書道で変体仮名を覚えたいという方にももってこいのアプリです。
これで勉強して、料亭なんかでさらっと文字が読めたりするとかっこいいかも?!

意識せずコンピュータを操作する?!最新インタフェース(後編)

2016年3月9日 / 大学の知をのぞく, この研究がスゴい!

前回は生活に溶け込むさまざまなインタフェースについて伺いました。今回は、さらにその先の技術、無意識コンピューティングにつながるすごいシステムご紹介します!

前回の記事はこちら(前編)

伊藤先生のインタフェースを使った音楽会の様子はこちら(世界初!阪大×大阪音大の境界をこえる音楽会!)

無意識コンピューティングとは?

前回は人が「触りたくなる」インタフェースなど、思わず行動してしまうユニークなインタフェースの数々を見せていただきました。しかし、それはあくまで先生の研究の入り口でしかありません。

「今研究しているのはユビキタスコンピューティングを超える、『無意識コンピューティング』です」
無意識コンピューティング?聞き慣れない言葉です。
しかし先生曰く「もうずいぶん素地はできている」とのこと。

 

「スマートフォンで天気を見ると、私たちがわざわざ設定しなくても、今いる場所の天気を自動で表示してくれます。ほかにもネットショッピングでオススメ商品が表示されたり、機械が使用者の情報を集めて、その人に適した情報を表示することは日常的になってきました。しかし今はまだ、情報を人が見た後どうするかは、ユーザにゆだねられています。

 

どうするかを人が決めるのではなく、コンピュータが人に働きかけることで人の行動を変化させる。それも、無理矢理ではなく、意識しないうちに行動が変化する。これが『無意識コンピューティング』です。生活に溶け込むインタフェースはその為のツールとなります」

 

無意識コンピューティングはその名の通り、無意識であることが一番重要だと伊藤先生は言います。

 

「人が意識しないままに情報を収集し、その結果を本人が無意識のうちに還元する。その結果よりよい成果をもたらそうというのが基本的な考え方です。知らず知らず日常にコンピュータが溶け込むんです。なので、本人の情報の収集も還元も、人にそれと意識させないものでなければなりません」

 

なるほど、そのための「思わず触りたくなる」インタフェースであったり、その場所にあってもおかしくないものである必要があるんですね。

 

「基本的には特別身につけなくてもよいもの、その場所に馴染むものである必要があります。非装着といっても、例えばめがねや時計など、日ごろ身につけるものは問題ありません。意識しないこと、これが重要です。カメラやマイクはだめですね。やはり『見られている』と意識させてしまうので」

 

こういう意識せずにデータをとるものはどんどん増えているようです。AppleWatchなどスマートウォッチをはじめ、めがねや衣服、靴など、さまざまなものからデータの入手ができるようになってきています。

 

「もちろん表示するだけではなく、触覚や音感など、コンピュータからインタフェースを通じて人に働きかける、そういうことも研究しています。
人の行動を変えるためには直接『こうしなさい』と働きかけるのではなく、マルチモーダル――五感をうまく利用し、身の回りにある物を利用するのも特徴です」

部屋型無意識コンピューティング「Ambient Suite」

さてそんな遠い未来の技術にしか聞こえない「無意識コンピューティング」の世界ですが、実はその先駆けとなるものが既に先生の研究室に用意されていました!

部屋型無意識コンピューティング「Ambient Suite」

こちらが部屋型無意識コンピューティング「Ambient Suite」。
部屋の中の状況を判断し、会話を盛り上げたり中にいるユーザーの行動を誘導するシステムだという。

早速体験させていただきました。

部屋内部にあるカメラ

部屋内部はこんな感じ。四隅には部屋の様子をデータ化するためのカメラが設置されています。

 

部屋内部にいる人の頭の動きを読み取る機器。

頭の動きを計測する機械。これを付けることで相づちを何回打ったかなどを図る。

 

部屋の中で使うコップ。機器が埋め込まれている。

手元のコップには端末が埋め込まれており、参加者の情報を見たり、部屋の装置を操作することが可能。
コップである理由は「手に持っていて不自然でなく、違和感を与えないため」だそう。また足下にはリアルタイムで会話の状況などが映し出されます。

 

さらに壁には部屋の中の盛り上がり度も表示。これは参加者が身につけている機械から読み込まれた頭の動きや、会話(音声)からデータ化されるそうです。

盛り上がり度をモニタリング。赤いほど部屋は盛り上がっていると判断

盛り上がり度をモニタリング。赤いほど部屋は盛り上がっていると判断

会話などから部屋の話題の中心になっている人が分かる

会話などから部屋の話題の中心になっている人が分かる

会話の方向、部屋の現在のリーダーなどもリアルタイムに描写

会話の方向、部屋の現在のリーダーなどもリアルタイムに描写

 

「相づちや会話など、頭の動きと場の盛り上がりは連動してるんです。さまざまな情報を読み取り、機械が『今盛り上がっているか?』を判断します。さらに場が盛り下がったら盛り上がるように映像を切り替え、参加者の会話を誘発するようにしています」

 

実際に体験してみましたが、会話の頻度や方向、盛り上がりなど、なかなかの精度で表示されていました。実際大阪大学の学生による実験結果でも、この部屋のシステムを使った場合、高確率で連絡先の交換ができるまで親しくなったというから驚きです。

 

ユーザは会話をコンピュータに誘発されているが、意識的にそうしたわけではなく、無意識に行動しているそう。これが無意識コンピューティングなのだと伊藤先生は言います。

 

その場にいる人が何に興味を持っているのかなどがわかれば、より短い時間で密なコミュニケーションが可能になります。あくまで会話をするのは人、何を話すかを考えるのも人だが、そこにコンピューターがそっと助け船を出してくれる、そんなイメージを持ちました。

 

最初、無意識コンピューティングと言われると、機械が人を動かすSFのような物を思い起こしてしまいました。しかし、実際は人の何かをしたくなる気持ちを揺り動かし、より良い方向へ導くための研究でした。
いつか気が付いたらやりたいことがすべて叶っている、そういう世界になるのかもしれませんね。

意識せずコンピュータを操作する?!最新インタフェース(前編)

2016年3月7日 / 大学の知をのぞく, この研究がスゴい!

2015年11月に開催された、大阪大学と大阪音楽大学とのコラボコンサート。そこでは人が意識せずデータを取るために、爪デバイスやセンスチェアといった装置(ユーザインタフェース)が使われていました。
今回はこのコンサートで使った装置の開発者であり、さまざまなインタフェースの研究、さらにその先にある『無意識コンピューティング』の実現をめざす、大阪大学の伊藤雄一准教授の研究室を訪ねてきました。

 

前回の記事「世界初!阪大×大阪音大の境界をこえる音楽会!」はこちら

そもそもユーザインタフェースとは?

インタフェースとはものごとの境界となる部分すべてを指す言葉。なかでもユーザインタフェースは、人とコンピュータが情報をやりとりするためのインタフェースのことを指します。
こう言うとよく分からない難しいものという印象を持ってしまいがちですが、パソコン用のキーボードやマウス、スマートフォンのタッチディスプレイ、ATMの操作画面にテレビ、マイクなど、これらすべてがユーザインタフェース。最近では身振り手振りで入力できるKinectや、AppleWatchのような身につけるものも出てきています。
私たちとコンピュータの仲立ちをするところ、それがユーザインタフェースです。

新しい形のインタフェース

伊藤雄一准教授の研究室では、これまでのユーザインタフェースをさらに発展させた新しいインタフェースを開発しています。


「スマートフォンは指で画面に触れることで操作できますが、本当に画面の中にあるアイコンなどに触っているわけではありません。私たちとコンピュータの情報の間はガラスという隔たりがあります。なので目を閉じてスマートフォンを触っても、自分が何の情報に触れているのかわかりません。この境界を曖昧にして、『情報に実際触れる』というのが、私の研究している新しいインタフェースです。より直感的に、目だけでなく五感で情報のやりとりをすることが目標。さらにこれらのインタフェースを応用して『無意識コンピューティング』の実現をめざしています」
形のない情報に触る?!いったいどういうことなのか。

実際いくつかのインタフェースが研究室にあるとのこと。こちらを実際に使用させていただきました。

触れるディスプレイ「FuSA2 Touch Display」

FuSA2 Touch Display

まずはこちら。一見すると白い毛皮のようですが、これが実はディスプレイ。
毛の一本一本はすべて光ファイバー。見た目がふさふさしているので、人の「なでたくなる」気持ちをくすぐります。この、思わずなでたくなる見た目であることが大切なのだそう。
もちろん見た目だけではなく、実際なでることもできます。触った感じは、少し固めの動物の毛のような触り心地で、触っているととても気持ちいい!

 

映像は後ろからプロジェクタで投影し、触ることでディスプレイに埋め込まれたセンサが情報を読み取り、映し出されている映像がリアルタイムに変化します。

「展示会でも、このディスプレイは人気者で、立ち止まってなでる人が多いです。人の行動をこの見た目で誘うんです」と伊藤先生。

 

例えばサイネージ広告などでの応用が考えられるとか。


「デジタルサイネージなどはもう珍しさもなくなって、あまりまじまじ見なくなりました。けれどこれは近寄りたくなる。そうして立ち止まって、さらに触ってもらえることで広告を見てもらう機会が増えるのではと思います」

 

さらに触ることで別の動きを加えるなど、今後の展開が気になります。

 

感情を入力!「Emoballoon」

Emoballoon

そしてこちらが風船型入力デバイス。風船にはマイクと気圧センサが取り付けられ、なでたりたたいたり抱きしめたりすることで色が変化します。

 

Emobaloon

感情や意図を、抱きしめたりたたいたりという動作で入力できるものとのこと。離れた場所にいる人とのコミュニケーションに活用したり、ぬいぐるみに内蔵することで子どもの感情を読み解いたりと、さまざまなことに応用できるそうです。

 

そして、個人的に気になったのがこちら。

ぱらぱらマンガを再現

紙をめくる動作で電子書籍を操作できるデバイスです!
もともとはぱらぱらマンガを電子書籍で再現できないかという発想から生まれたそうです。本をめくる動作をすると、それに応じて画面の電子書籍のページがめくられていきます。持っている手元のデバイスでもモーターが回転するため、本当に手で紙をめくっている感覚で使えます。スピードも指で自在に調整。さらにめくるスピードを変えると内容が変化!

「今電子書籍は本のページをそのままデータにしたものがほとんど。もっとデジタルらしいギミックがあってもいいのではという発想で作りました。見たい情報を探す場合、印刷された紙をぱらぱらめくって探すことは実はとても検索性が高い方法なんです。そしてデジタルならではのギミック。この両方をミックスしたデバイスなんです」

 

その他、情報を「水」という物質で表示する結露ディスプレイ、音楽会でも使用された「Sense Chair」、ブロックの積み方を記録する「Stack Block」などなど……どれもこれも見たことのないデバイスばかり。

ブロック型デバイス

こちらがStack Block。積み上げたブロックの形がリアルタイムで表示される。

こちらがStack Block。積み上げたブロックの形がリアルタイムで表示される。

「子どものころ、曇った窓ガラスに指で落書きしたことありますよね?だめだと言われてもつい落書きしたくなる。結露ディスプレイはその原体験を利用して触れてもらうことが目的です」

 

このように、人の経験や五感から思わず触ってしまったり、知らず知らずの間に使用していたりというのが先生の考える新しいユーザインタフェースの特徴。これらは人に違和感を与えず目的を達成したり、人の生活に溶け込んだインタフェースとして役立ちます。

 

とはいえ、インタフェースはあくまで入出力の部分のみ。

 

先生がめざすのはこのようなインタフェースを使い、人が意識せずにコンピュータに触れる「無意識コンピューティング」にあるとのこと。

 

次回は未来の技術、無意識コンピューティングについてお届けします。

(後編はコチラ

 

大学アプリレビューvol.7 スマホで避難訓練「AR津波ハザードマップ」

2016年2月24日 / コラム, 大学アプリレビュー

2011年の東日本大震災以来、災害についての意識は高まるばかりですが、危険といわれても実際どれほど危ないのかはなかなか実感できません。しかし、「AR津波ハザードマップ」を使えば、津波を想定した避難訓練が可能です!

 

「AR津波ハザードマップ」は関西大学水災害研究室と株式会社キャドセンター、パシフィックコンサルタンツ株式会社の共同で開発された、堺市のハザードマップをもとに作られた防災訓練用アプリです。

 

ハザードマップとは、各自治体で自然災害が起こったときの被害範囲や避難所、危険度などが書き込まれた地図のこと。このアプリではAR※技術を使い、危険度などを見やすく、わかりやすく表示してくれます。

 

※ARとは
拡張現実のこと。カメラを通して映し出される画像にリアルタイムで画像やテキストなど、情報を重ね合わせたりする技術。バーチャルリアリティの一種。

 

大阪府堺市ではこのアプリを用いた避難訓練も実施されたとのこと。


では、早速起動してみましょう。

 

起動したら方位磁針の設定から。iPhoneの場合は端末を傾けながら合わせていくと設定が完了します。

位置調整画面

 

地図は2種類。通常のGoogleマップのほか、Googleアースの画面も使用できます。

 

避難経路と水深の表示は切り替え可能。水深ではどの程度水に浸かるかが一目で分かります。避難経路画面では1番近い避難所の方向を常に示してくれるため、めざす場所がわかりやすくて便利。

水深が地図上に表示される

水深が地図上に表示される

 

避難経路図。危険な場所を避けて避難できるルートになっている

避難経路図。危険な場所を避けて避難できるルートになっている

 

水深を表示している画像。

水深はこのようにARで上部に表示される。人の大きさも表示されるので、万一を想像しやすくなっている

 

最初起動したときは堺市が設定されていますが、位置情報をオンにすることで、今自分がいる場所に表示が変わります。情報は堺市のものに限られているのでご注意ください。

 

あくまで非常時に備えた訓練を想定していますが、実際に自分のいる場所で非常時を想定して、事前に避難所の確認や心構えができるところがいいです。

 

できれば大阪市内だけでも全域見れるとありがたいですね。

 

開発もとの株式会社キャドセンターのサイトでは、新潟市や名古屋市、川口市など他地域の防災アプリも公開されています。

 

災害はないに越したことありませんが、このアプリで万一に備えてみてはいかがでしょうか。

大学アプリレビューvol.6 予約で寄付できる「テーブルクロス」

2016年1月27日 / コラム, 大学アプリレビュー

発展途上国の子どもたちの助けになりたい、利益を生みながら社会貢献できる仕組みを作りたい、そんな思いで立教大学に通う現役女子大生が立ち上げたアプリ「テーブルクロス」。今回はこのアプリの魅力に迫ります。

 

飲食店の予約、皆さんはどうしていますか?食べログやぐるなびといった、口コミサイトやアプリを使う人も多いのでは?

アプリだと予約も簡単にできるので重宝しますよね。

 

そんな便利な予約アプリのなかでも、今回紹介する「テーブルクロス」は一風変わったアプリになっています。なんとこのアプリから予約をすると、1人の予約につき30円、発展途上国の給食費として寄付される仕組みになっています。

 

ということは予約するたびに寄付金が余計に上乗せされているのでは?と思ってしまいますが、予約したお客の支払金額は通常通り、何ならクーポンがあればそれも使えちゃいます。

寄付金はお店からの広告費からまかなう形になっているとのこと。

また、広告費も完全成功報酬型となっているので、お店側も大きな負担なく利用できるそうです。

 

ではこのアプリの使い方をご紹介しましょう。

 

登録はFacebookもしくはメールで登録可能。登録自体のハードルは非常に低くなっています。

登録はFacebookもしくはメールで登録可能。登録自体のハードルは非常に低くなっています。

お店の探し方は検索のほか、GPSから近くのお店を探すこともできます。

また、直接テーブルクロスのスタッフの方に連絡し、お店を探してくれる「コンシェルジュ」機能まで!

 

6種類の方法から加盟店を探せます。

6種類の方法から加盟店を探せます。

 

マップから探す場合は、位置情報機能をオンにする必要があります。

 

マップから探す場合。GPSがオンになっている場合はお近くの登録店がピンで表示されます。

マップから探す場合。GPSがオンになっている場合はお近くの登録店がピンで表示されます。

 

ピンをタップするとお店の詳細が。

ピンをタップするとお店の詳細が。

 

加盟店は1000軒以上。

アイコンもわかりやすく、お肉、お酒、バーなど、地図からでも十分お店を探すことができます。タップすればお店の詳細ももちろん見れます。

 

予約は電話、ネットからどちらでも可能(店舗によっては電話予約のみの場合あり)。

ネットから予約の場合は、利用したい日時などを入れて予約すれば完了です。

 

このアプリが他の口コミアプリなどと違う点は、予約した人の数が「エンジェル数」としてカウントされることです。

 

エンジェル数は予約利用者が増えれば上がっていきます。

エンジェル数は予約利用者が増えれば上がっていきます。

これがそのまま、このお店から寄付した人の数になっているようです。

エンジェルカウンター画面

さらにカウントの項目では、自分が支援した給食数、さらに自分がこのアプリを紹介した人の給食数も知ることができ、自分がどのくらい社会貢献したかが見える形になっています。

 

 

寄付金額だけではなかなかピンと来ませんが、「何食分の給食になりました」と可視化することで、自分の寄付が社会貢献につながっていることを実感できるのがこのアプリの利点ですね。

 

 

さてこのアプリ、実は立ち上げたのは現役の女子大生。海外で発展途上国を訪れたことや、アルバイトで広告を取り扱った経験から、「企業が儲けつつ社会貢献活動もできる仕組み」を考えて立ち上げたのがこの「テーブルクロス」とのこと。

飲食店は宣伝を行うことができ、利用者は飲食店を利用することで社会貢献に協力できる。

まさにWin-Winなこのアプリ、ものはためしでぜひ一度使ってみては?

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