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慶應義塾ミュージアム・コモンズで虎づくしな新春展に、どうして雷様まで?!「虎の棲む空き地」に行ってきた!

2022年2月8日 / 体験レポート, 大学を楽しもう

今年の干支は、寅(虎)! 虎といえば、どんなイメージがありますか。アートや文学、スポーツの世界でも、虎にまつわる作品やアイテムは多々存在します。慶應義塾ミュージアム・コモンズ(通称KeMCo)で開催されている「KeMCo新春展2022 虎の棲む空き地」は、そんな今年の干支にちなんだ「虎」づくしな展示会。絵画や詩、機械など、さまざまなジャンルの「虎」を展示。学生がつくった虎とデジタルを融合した体験型企画も同時開催しています。

虎にまつわる展示会なのに、なぜか「雷様」や「戦う武将」の絵画もある……そんな「KeMCo新春展2022 虎の棲む空き地」をレポート!

※KeMCoオープン企画展の様子も取材させてもらっています。くわしくはコチラ

KeMCoで開催された「KeMCo新春展2022 虎の棲む空き地」

左側手前の白い建物がKeMCo。写真奥には慶應義塾大学の東門や東京タワーが見えます。

左側手前の白い建物がKeMCo。写真奥には慶應義塾大学の東門や東京タワーが見えます。

 

開催場所のKeMCoは、2021年に慶應義塾大学 三田キャンパス東別館内にオープンした、慶應義塾初の博物館。この施設ができて初の新年を迎えスタートした企画が「KeMCo新春展2022 虎の棲む空き地」です。来年以降も新春毎に、干支にちなんだ展示会の開催を予定しているそうです。来年も、要チェックですね!

5つのカテゴリーにわかれて展開

入り口から撮影。写真の右側から「道具に棲む虎」「物語に棲む虎」「装いに棲む虎」「図譜に棲む虎」。そして写真に写っていませんが入り口右側には「詩に棲む虎」のカテゴリーにわかれています。

入り口から撮影。写真の右側から「道具に棲む虎」「物語に棲む虎」「装いに棲む虎」「図譜に棲む虎」。そして写真に写っていませんが入り口右側には「詩に棲む虎」のカテゴリーにわかれています。

入り口から入り、左奥から撮った展示会場。奥に見えるのが「詩に棲む虎」のエリア。

入り口から入り、左奥から撮った展示会場。奥に見えるのが「詩に棲む虎」のエリア。

 

KeMCoは学生や近所の人たちが、緩やかなルールのもとに楽しめる「空き地的な場所」でありたいというコンセプトのもと生まれた施設。そのため「KeMCo新春展2022 虎の棲む空き地」という展覧会名やカテゴリー名も、空き地を意識しているそう。それぞれのカテゴリーから興味を持ったものをピックアップしてご紹介します。

〈詩に棲む虎〉

入り口すぐにある「詩に棲む虎」のエリア。右側中央にある広げられた色紙帖は「十二支歌仙歌合色紙帖」。奥のスクリーンでは、虎をモチーフにした舞踏の様子が映し出され、その下の展示ケースには、虎について書かれた土方巽「舞踏譜スクリプトシート」などが展示されています。

入り口すぐにある「詩に棲む虎」のエリア。右側中央にある広げられた色紙帖は「十二支歌仙歌合色紙帖」。奥のスクリーンでは、虎をモチーフにした舞踏の様子が映し出され、その下の展示ケースには、虎について書かれた土方巽「舞踏譜スクリプトシート」などが展示されています。

 

入り口右側にある「詩に棲む虎」エリア。この中で気になったのは「十二支歌仙歌合色紙帖」です。天神様と崇められている菅原道真が時刻の「子丑寅……」にちなんで詠んだうたとともに、十二支が描かれています。

ちなみに「十二支歌仙歌合色紙帖」は、うたを競い合う「歌合」なので、虎はウサギと競い合っているそうですよ!

擬人化した虎が描かれています。「十二支歌仙歌合色紙帖」江戸時代前期(17世紀)、慶應義塾(センチュリー赤尾コレクション)

擬人化した虎が描かれています。「十二支歌仙歌合色紙帖」江戸時代前期(17世紀)、慶應義塾(センチュリー赤尾コレクション)

虎の左側には、干支の並びに従い擬人化された「ウサギ」の姿。ちなみに虎の右側では、擬人化された「ウシ」がうたを詠んでいます。

虎の左側には、干支の並びに従い擬人化された「ウサギ」の姿。ちなみに虎の右側では、擬人化された「ウシ」がうたを詠んでいます。

 

虎は銀が黒くなっていて少々見えにくいのですが、よく見ると舌をペロッと出しているんです。個人的には、舌を出した虎の表情が最高にかわいくて、とても気に入りました。同時に舌を出すという行為は、虎の持つ「獰猛」「強者」とは親和性の薄いイメージ。虎の別の側面を感じた気がしました。

〈道具に棲む虎〉

「道具に棲む虎」のエリア。手前のブースが古鏡等、中央が陶器、壁側にはタイガー計算機。

「道具に棲む虎」のエリア。手前のブースが古鏡等、中央が陶器、壁側にはタイガー計算機。

 

道具に棲む虎のエリアには、古代から現代まで時間をワープするように「物」に棲む虎が展示されています。とくに興味をひいたのは、「四神十二支文鏡」です。

「四神十二支文鏡」 唐時代(7世紀)、慶應義塾(センチュリー赤尾コレクション)

「四神十二支文鏡」 唐時代(7世紀)、慶應義塾(センチュリー赤尾コレクション)

 

中央にある紐を通す丸い凸部分の真下(6時の方向)に描かれているのが白虎です。今回は虎にまつわる展示会なので、白虎が正面に見えるように展示されています。ちょっと尻尾の長い猫のようにも見える白虎でした。

唐時代の鏡と一緒のエリアに、タイガー計算機が並ぶセレクトが面白い!

「タイガー計算機」1957年、慶應義塾ミュージアム・コモンズ

「タイガー計算機」1957年、慶應義塾ミュージアム・コモンズ

 

〈物語に棲む虎〉

「熊野権現縁起絵」江戸時代前期(17世紀)、三田メディアセンター(慶應義塾図書館)

「熊野権現縁起絵」江戸時代前期(17世紀)、三田メディアセンター(慶應義塾図書館)

 

「熊野権現縁起絵」の中央に出てくる人間の子供(王子様)を、獣たちが守り、子供は森の中で成長していくという物語の1シーンが描かれているそうです。

ちなみに人間の子供に花をあげている、青い装いの獣が虎。

この浮世絵の中に描かれている虎が、ポストカードにもなっています。こんな愛らしい虎なら仲良くなりたいものです。

「熊野権現縁起絵」の虎を切り抜き、ポストカードにしたもの。館内にあるので要チェック!

「熊野権現縁起絵」の虎を切り抜き、ポストカードにしたもの。館内にあるので要チェック!

〈装いに棲む虎〉

「装いに棲む虎」エリア。写真右は「幼稚舎ラグビー部ユニフォーム」2000年代、個人蔵

「装いに棲む虎」エリア。写真右は「幼稚舎ラグビー部ユニフォーム」2000年代、個人蔵

 

「装いに棲む虎」エリアだというのに、なぜか雷様の姿が描かれた「雷」の掛け軸を発見。一体、どこに虎が隠れているのでしょうか。

小林清親「雷」明治時代(19世紀末–20世紀初)、慶應義塾大学文学部美学美術史学専攻。小林清親の肉筆画

小林清親「雷」明治時代(19世紀末–20世紀初)、慶應義塾大学文学部美学美術史学専攻。小林清親の肉筆画

 

「黄色と黒のしま模様といえば、鬼のパンツ。鬼のパンツも、虎の毛皮からできています」と教えてくれたのは、博物館を案内してくれた慶應義塾ミュージアム・コモンズ 専任講師 松谷芙美さん。

まさかの鬼のパンツつながりとは!

「虎の毛皮は舶来物で貴重だったため、武将の太刀のさやを覆う尻鞘(しりざや)や、馬に乗るときに使う鞍の下に敷く鞍褥(くらしき)にも虎の皮は使われていました。豊臣秀吉も虎を愛用していたんです」

「小敦盛」室町時代末~江戸時代初(16–17世紀)、三田メディアセンター(慶應義塾図書館)

「小敦盛」室町時代末~江戸時代初(16–17世紀)、三田メディアセンター(慶應義塾図書館)

 

まさか虎から鬼のパンツや武将、秀吉に飛ぶとは思いもせず、ビックリ。正直なところ、虎の絵などが展示されている一般的な展示会と思っていたのですが、さまざまな角度から「虎」が、想像力をビシビシ刺激してくれます。

次のエリアではどんな発見があるのでしょうか?

〈図譜に棲む虎〉

「図譜に棲む虎」エリア。写真左側に孤立して設置されたケースには、コンラート・ゲスナーの『博物誌』。

「図譜に棲む虎」エリア。写真左側に孤立して設置されたケースには、コンラート・ゲスナーの『博物誌』。

 

最後は「図譜に棲む虎」。図譜に描かれた虎に関する資料が集められています。右側のケース内には、中国の詩経に出てくる動植物を解説した図譜が複数展示。実在する虎と、虎に似た白い珍獣「騶虞(すうぐ)」などが一緒に描かれている点が特徴的です。

左側のページが虎、右側には珍獣「騶虞」。挹芳斎国雄(画)北村四郎衛ほか(刊行)「毛詩品物図攷 獣虫魚部 五之七」天明5年(1785)刊行、個人蔵

左側のページが虎、右側には珍獣「騶虞」。挹芳斎国雄(画)北村四郎衛ほか(刊行)「毛詩品物図攷 獣虫魚部 五之七」天明5年(1785)刊行、個人蔵

 

壁側には、鎖国が終わり開国したことで英語が身近になってきたことがうかがえる、今でいうアルファベット表のようなものもありました。当時は、絵とともに英語を伝えるこのような浮世絵が、たくさん刷られたそうです。

歌川広重(三代)(筆)、福田熊次郎(版元)「英語図解 11」明治20年(1887)3月15日届、三田メディアセンター(慶應義塾図書館)ボン浮世絵コレクション

歌川広重(三代)(筆)、福田熊次郎(版元)「英語図解 11」明治20年(1887)3月15日届、三田メディアセンター(慶應義塾図書館)ボン浮世絵コレクション

 

中でも興味をひいたのは、歌川芳虎の「〔英語図解(ローマ字イロハ入)〕」。獅子(左側の絵)のとなりに、うちわの絵が描かれているなど、秩序があまり感じられない並びで、見ていて飽きません。

歌川芳虎(筆)万屋孫兵衛(版元)「〔英語図解(ローマ字イロハ入〕」明治時代(19世紀後半)、三田メディアセンター(慶應義塾図書館)ボン浮世絵コレクション

歌川芳虎(筆)万屋孫兵衛(版元)「〔英語図解(ローマ字イロハ入〕」明治時代(19世紀後半)、三田メディアセンター(慶應義塾図書館)ボン浮世絵コレクション

 

ちなみに虎は、左側の絵の右下に描かれていますが、綴りが「ATIGER」となっています。その他にも、同じ絵の左上のほうに「FUR」(「毛皮」の意)と英単語が書かれた箇所に虎の皮がペロンと1枚だけ描かれています。

 

「大学の所蔵品から、なるべく古いものから現代のものまで、さまざまなジャンルのものを集めました。普段ならとなりに並ばないものが、横に展示されています。『ほかにも虎はいないかな?』と探してくれたら嬉しいですね」

と松谷さんが言うように、本当にいろいろな角度から虎の知識が得られて楽しい本展示でした。

KeMCoM Project「虎×デジタル」

本展示を楽しんだあとは、ぜひ寄ってもらいたいのが、学生ならではの斬新な視点から、文化や芸術などの新しい可能性を探求する「KeMCoM Project」として開催されている、虎とデジタルを融合した体験型企画です。本展示のとなりのフロアで開催中です。

フロアの中央にある、KeMCoM Project「みんなの書き初め」コーナー。KeMCoM(@kemcomembers)のインスタでは、学生たちがつくったフィルターがもらえます。

フロアの中央にある、KeMCoM Project「みんなの書き初め」コーナー。KeMCoM(@kemcomembers)のインスタでは、学生たちがつくったフィルターがもらえます。

 

大きく分けて「コンテスト」と「おみくじ」、そして「書き初め」の3つが楽しめる企画です。すべてKeMCoM Projectの、所属を超えた慶應義塾の学生たち(通称KeM CoM)が集まって考えだしたものというから驚きです。

 

まずは入り口左側にあるエリアへ。大きなモニターには学生たちが描いた虎のイラストがふわふわと動いていました。

モニターには、学生が描いたたくさんの虎のイラストが浮かぶ。

モニターには、学生が描いたたくさんの虎のイラストが浮かぶ。

 

ここでは、虎のアクリルキーで気に入ったイラストに触れると、イラストに対して「清き一票」が入れられるという、ちょっと変わったスタイルの「イラストコンテスト」が開催していました。タッチすると、自動で日集計されるそうです。このシステムも、学生たちが考えているとのこと。すごい技術です! 私も虎のイラストに1票入れさせてもらいました。

虎のアクリルキーの尻尾部分を動物のイラストにタッチするとイラストに投票できるシステム。

虎のアクリルキーの尻尾部分を動物のイラストにタッチするとイラストに投票できるシステム。

 

続いては「虎みくじ」のコーナーです。筆者もトライしてみました。虎のアクリルキーの尻尾部分で、虎のイラストをタッチすると画面が変わり、おみくじの結果がモニターに表示されます。

筆者の結果は、なんと凶!

今年初のおみくじだったのですが、まさかの凶で唖然。

イラストコンテストと同様、虎のアクリルキーでタッチすると「虎みくじ」が引けるシステム

イラストコンテストと同様、虎のアクリルキーでタッチすると「虎みくじ」が引けるシステム

「凶」の紙には、源俊頼朝臣の句が。

「凶」の紙には、源俊頼朝臣の句が。

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おみくじをすると、もれなく引いたくじに準じて、百人一首の句が記された紙をもらえます。凶から大吉まで各3パターンずつ、違う句が用意されているそうですよ。筆者のように、残念なおみくじを引いた人でも、気持ちが切り替えやすい句を選んでいるのだとか。ありがたいです!

 

最後は書き初めに挑戦! 「虎」に関する書き初めを行い、それをスキャンしてネットにアップし、気に入ったものがあれば「いいね」を押して楽しむという「虎×アナログ×デジタル」な企画。「虎」というしばりがあるだけで、書き初めの内容はどんなものでもいいそうです。

フロア奥のスクリーンには、「みんなの書き初め」に参加した人たちの作品が映し出されていました。

フロア奥のスクリーンには、「みんなの書き初め」に参加した人たちの作品が映し出されていました。

こちらのURLにアクセスすると、みんなの投稿が見られる画面にアクセスでき「いいね」が押せる仕組み。

こちらのURLにアクセスすると、みんなの投稿が見られる画面にアクセスでき「いいね」が押せる仕組み。

 

日頃、虎について考えたことのない筆者にとって、虎の書き初めはけっこう難儀でしたが、できあがりはこちら。

虎を描いた書き初め。

虎を描いた書き初め。

 

筆者は4児の母なので、4匹の子虎くんに愛を贈っている絵となっています。気に入った作品があれば、「いいね」を押して楽しもう! という企画なので「ぜひ、清き一票を」と言いたくなる、帰宅してからも楽しめる展示会でした。

ハンコは日付け入りなので、入場記念にも。

ハンコは日付け入りなので、入場記念にも。

 

テーブルには、日付け入りのハンコも。このハンコは、同建物の別階にあるクリエイション・スタジオ「KeMCo StudI/O(ケムコ・スタジオ)」の3Dプリンタで出力してつくられているそうです。毎日、日付を変えてつくっているので、行く都度、ちがう楽しさがあります。

ミュージアムで鑑賞する「虎」というと、屏風絵に代表される限られたイメージがほとんどでした。視野を広げると世の中にはいろいろな「虎」が潜んでいることに気づかされました。ユーモラスだったり、愛らしかったり。行って楽しめ、帰宅してからも自分の書き初めの「いいね」具合を見守れる、楽しい展示会でした。

クローンが実物超える? クローン文化財の生みの親、東京藝大の宮廻先生に聞いてみた

2021年11月11日 / 大学の知をのぞく, この研究がスゴい!

これまで数多くのSF映画の題材になってきた、「クローン」の存在。実はアートの世界にも「クローン文化財」と呼ばれるモノがあり、展覧会まで開催されているんです。本物の文化財と見た目は同じですが、これまでの複製品とは違う……。そんなクローン文化財を制作する東京藝術大学の宮廻正明先生に、その成り立ちや、今後の展開についてオンラインでインタビュー。進化したクローン文化財には、驚きの展開が待っていました。

インタビュー前にクローン文化財を見てびっくり!

宮廻先生にお話を伺う前に、横浜そごうで開催されていた、謎解き「ゴッホと文化財」展に行ってきました(2021年7月31日~8月31日開催)。

横浜にある「そごう美術館」で行われた、謎解き「ゴッホと文化財」展

横浜にある「そごう美術館」で行われた、謎解き「ゴッホと文化財」展

 

展覧会では、ゴッホの作品のほか、モネの「睡蓮の花」、セザンヌの「サン・ラザール駅」、ドガの「ダンスのレッスン」など、さまざまな名画の複製品、いやクローン文化財が展示されていました。

とくに印象に残ったのは、ゴッホが描いた「星月夜」のクローン文化財。ニューヨーク近代美術館(MoMA)で本物を観たときは、深い闇を感じる美しさに、身体中に電流が走ったのですが、クローン文化財の「星月夜」もまた素晴らしく、見事な再現力にしばらく動けなくなりました。

ゴッホ「星月夜」のクローン文化財。横浜にいながら、ゴッホの「星月夜」が楽しめるのも、クローン文化財ならでは

ゴッホ「星月夜」のクローン文化財。横浜にいながら、ゴッホの「星月夜」が楽しめるのも、クローン文化財ならでは

 

さらに、重ねられた色を分解した展示もありました!

「星月夜」で使われている色を分解。多くの色によって成り立っていることがわかります。

「星月夜」で使われている色を分解。多くの色によって成り立っていることがわかります。

 

クローン文化財って、こんなこともできるの? 自由過ぎませんか? と驚いてしまった筆者。早速、宮廻先生にクローン文化財について話を聞いてみようと思います!

数年かかっていた「模写」を変えたデジタル技術

まずは文化財の基礎知識から。文化財の価値は、公開によって共有できる一方、劣化の問題があるため、非公開にして保存する方が良いという、矛盾を抱えています。

しかし保存する場所や状態によっては、欠損、剥落、変色などの劣化がおこってしまうため、これまでも文化財の保存や修復がおこなわれてきました。宮廻先生によると、絵画の場合、文化財と同じものを写し描く「模写」の手法が必要になるそうです。

「これまでの文化財保存における模写は、絵の上に薄い和紙をのせて、和紙を転がしながら確認し模写をする『上げ写し』がメインでした。たとえば法隆寺の金堂壁画は、数年間の年月をかけていろいろな絵描きの先生方が模写をされました。しかし作家の先生方はみなさん、描き方に個性があるんですね。私たちが見ると『これは、誰々先生が模写されたもの』と分かることがあるわけです」

展示会には、法隆寺の金堂壁画と釈迦三尊像のクローン文化財の写真も、展示されていました

展示会には、法隆寺の金堂壁画と釈迦三尊像のクローン文化財の写真も、展示されていました

 

「そこで模写をする作家の個性を出さず、なおかつ本物により近づけられないかと、デジタル技術とアナログの利点を活かした、新しい手法を考えたのです。この方法ならデジタル技術を使っているため、描く人の個性が出ることもなく、オリジナル(元の文化財)の持ち味が再現されます」と語る、宮廻先生。

クローン文化財の生みの親、宮廻正明先生にオンラインでインタビュー

クローン文化財の生みの親、宮廻正明先生にオンラインでインタビュー

 

ちなみに文化財の最終的な仕上げは、科学分析した絵具を使うため、分析上では、ほぼ本物と同じになるそうですよ。恐るべし、最新技術!

では、この最新技術とアナログの融合で生まれたものが、「クローン文化財」なのでしょうか?

「そうですね。最初はクローン文化財という名称ではなく『模写』というかたちで発表していました。ただ、模写は英語に訳すと『コピー』。いかにこの技術がすごくても、コピーだと海外の美術館では門前払いです。

そんな時に、東京藝術大学のある上野恩賜公園を歩いていたところ、見上げるとソメイヨシノが咲いていたのです。ソメイヨシノは、接ぎ木で増えたクローン桜。ここからインスピレーションを得て、『クローン文化財』と名付けました」

 

東京藝術大学ならではのネーミングだったんですね。さらに宮廻先生は、クローン文化財の商標登録をおこなったそうです。

「私たちのつくったものが売買の場に出てしまうとマーケットが混乱するため、しっかりと管理する必要があります。基本的にオリジナルを持っている美術館などにしか提供していません」

実際に宮廻先生のもとには、外国からつくりかたを教えて欲しいと、いくつかの相談がきたことも。誰にでも教えてしまうとマーケットが混乱するため、控えているそうですよ。

クローン文化財は、超ハイテクアートだった

ところで、クローン文化財は、制作にどれくらい時間がかかるのでしょうか。

「『1年くらいかかります』と言ったほうが、みなさん感動されるんでしょうけれど(笑)、うちは短いんですよ。どんなに大きいものでも、数ヶ月間でつくり上げます。絵画だけでなく仏像なども手掛けていますが、今では、大きな仏像は、ロボットがやってくれています」

 

ロボット! 愛嬌ある人型ロボットが、宮廻先生の言葉通りに動いて、仏像をつくっている姿が浮かび、筆者の脳内は大興奮!

しかし実際のロボットは、宮廻先生いわく「美術館で撮ったデータをパソコン上でデジタル処理をして、地下室にあるロボットアームのところにデータを飛ばすと、対象物を削ってくれる」という、オートメーションタイプの、超機械的な「ロボット」でした。

 

ここでロボットにできないのが最終仕上げ。最後は藝大の中でも優秀な卒業生たちが仕上げを担当しています。仏像の場合、100種類以上のヤスリを使い分けて、完成させていくそう。先進技術と、東京藝大ならではの高い創作的技術力があるからこそ生まれたのが、クローン文化財なのですね。

模倣から新たな芸術を「スーパークローン文化財」で発信

インタビュー前に訪れた謎解き「ゴッホと文化財」展では、マネの「笛を吹く少年」が立体再現されていたり、1945年に空襲で焼失したゴッホの幻の名作、通称「芦屋のひまわり」が甦っていたり、ふつうでは考えられない展示物もありました。

左がマネの「笛を吹く少年」の立体再現、右は油彩画のクローン文化財

左がマネの「笛を吹く少年」の立体再現、右は油彩画のクローン文化財

 

こちらの説明書きには「スーパークローン文化財」と書かれていたのですが、スーパーなクローン? これまで話に出てきた「クローン文化財」とは、どう違うのでしょうか。

「クローン文化財は、いかにオリジナルに近づけるかを目指してつくられます。一方、スーパークローン文化財は、オリジナルを“いかに超えるか”を目指しているのです。

たとえば、法隆寺金堂の国宝・釈迦三尊像の背後にある『大光背』。飛天と呼ばれる天人が取り付けられていたと考えられる痕跡が残っていたため、飛天も復元しました。このように欠損、剥落、変色などを元の状態に戻したクローン文化財を『スーパークローン文化財』と呼んでいます。

日本画の世界では一般的に、オリジナルの上に描き足すこと、付け足すことはタブーとされています。そこで私たちは、オリジナルとほぼ同じクローン文化財を制作して手を加えているのです。オリジナルを痛めずに、完成した当初の姿を再現しているわけです」

 

クローン文化財とスーパークローン文化財には、そんな違いがあったんですね。ではなぜ、スーパークローン文化財は、オリジナルを“超える”必要があるのでしょうか。

「芸術を模倣し、変容させ、超越することで、新しい芸術が生まれます。今、重要文化財などで残されている文化財も、かつて中国や韓国から渡ってきた芸術を模倣することから始まっています。そして19世紀後半から、西洋諸国で浮世絵が注目され、ジャポニズムと言われるまでになったのです」

“模倣”は、文化を躍進させる可能性を秘めているんですね。

 

「私たちは、デジタルとアナログを融合させてクローン文化財をつくりました。クローン文化財は、いかに現存するオリジナルの状態に近づけるかを考えてつくります。ところがそれでは、浮世絵から誕生したジャポニズムに達しないわけです。要するに、模倣の後、変容させ、超越できていない。そこでオリジナルの現状を超越した、スーパークローン文化財をつくりました」

空襲のため焼けてしまった「芦屋のひまわり」を復元した、スーパークローン文化財。このように、失われてしまった絵画を復元できるのも技術があってこそ

空襲のため焼けてしまった「芦屋のひまわり」を復元した、スーパークローン文化財。このように、失われてしまった絵画を復元できるのも技術があってこそ

 

「欠落したものを修復するなどの場合は、美術史や保存科学の分析をおこなう先生方の意見を聞いて反映させていきます。その中でも大事にしていることは、聞く耳を持つこと。展示中に『ここが違う』とご指摘があれば、精査し謙虚に取り入れています。

ですからスーパークローン文化財には、最終版がありません。資料と現在の能力を最大限に詰め込んだものをつくっていくのです。もし修正がある場合も、デジタルを活用しているため、従来に比べて簡単に直せます」

お話を伺うまでは、クローン文化財やスーパークローン文化財は、芸術を後世に残すための手段の1つと考えていました。でも実際は、1つの芸術作品として成り立ちつつ、進化もできる。新しい概念の芸術なのですね。

スーパーから進化! ハイパー文化財は完全にSFの世界!

2021年10月4日~10日には、東京・丸ビル「藝大アーツイン丸の内2021」で、クローン文化財、スーパークローン文化財のほかに、ハイパー文化財が展示されました。

このハイパー文化財とは、どのあたりがハイパーなのでしょうか?

「ハイパー文化財は、現実にないものをつくりたいという考えで制作しています。奈良の法隆寺の釈迦三尊像は、門外不出なので本堂から出たことはありません。これをクローン文化財としてつくり、富山県高岡市で人の目に触れることができました。『現在』の釈迦三尊像をクローン文化財としてつくったので、次に『過去』、つまり欠損や変色した箇所を修復したスーパークローン文化財を制作しました。

『現在』と『過去』の釈迦三尊像ができ、次は何をするか。『未来』をつくらないといけないと私たちは考えました」

 

未来をつくる? まさにSFの世界ですが、一体、未来の釈迦三尊像とは……。

「我々は釈迦三尊像の未来を、ガラスとアクリルでつくりました。仏様の頭にある螺髪(らほつ)は、右巻きの渦巻きになっています。しかし世の中を見ても、渦巻き型の髪の毛は見たことないでしょう? パンチパーマはありますけどね(笑)」

たしかに、仏様レベルの渦巻きヘアの人に、出会ったことはないですね。

ガラスとアクリルでつくられた釈迦三尊像のハイパー文化財/画像提供:東京藝術大学COI拠点

ガラスとアクリルでつくられた釈迦三尊像のハイパー文化財/画像提供:東京藝術大学COI拠点

 

「しかも、最初につくられたオリジナルの頭は青く塗られているという文献がありますが、実際は青い髪が地毛の人はいません。ではなぜ仏様の頭が渦巻いて青いのかと考えました。

釈迦三尊像の頭の青は、空や水と同じ青です。永遠につながると色は青くなるのです。

これをヒントに、下から光を当てると頭の渦巻きから天井に星が現れる、ガラスの釈迦三尊像をつくったのです。このように『未来』を想像して現実にないものをつくるのが、ハイパー文化財です。芸術と仮説と妄想ですね」

 

ちなみに「藝大アーツイン丸の内2021」では、スーパークローン文化財(過去)、クローン文化財(現在)、そしてハイパー文化財(未来)と3体の釈迦三尊像が並び、展示されました。

「藝大アーツイン丸の内2021」で展示された、3体の釈迦三尊像。左からスーパークローン文化財(過去)、ハイパー文化財(未来)、クローン文化財(現在)/画像提供:東京藝術大学COI拠点

「藝大アーツイン丸の内2021」で展示された、3体の釈迦三尊像。左からスーパークローン文化財(過去)、ハイパー文化財(未来)、クローン文化財(現在)/画像提供:東京藝術大学COI拠点

 

門外不出の釈迦三尊像に加えて、時空を超えた3体も外に出るなんて、クローンだからこそできること。そもそも、本物は1体しかないので、“並ぶ”こと自体、本来はファンタジーの世界です。

クローン文化財を、地域の人材育成につなげたい

先ほど話にも出た、富山県高岡市でお披露目になった法隆寺の釈迦三尊像のクローン仏像には、同市の銅器鋳造の職人さんたちが携わったそう。

「藝大にも工芸科があるためブロンズ像はつくれますが、高岡市は鋳物のプロがいる地域なので、お願いしました。

法隆寺の釈迦三尊像をつくるにあたり、これまで独自で仕事をされていた職人さんたちが、一つになり共同作業で制作したのです。今まで自分たちの技術を表に出さなかった職人さんたちが、この釈迦三尊像の制作によって協働するコミュニティができたことは、良かったですね」

職人さんたちの技術向上や地域活性につながる、いい取り組みですね。

「たしかに、一緒につくることで技術が進歩したと思います。地域のみんなで力を寄せあって、法隆寺の釈迦三尊像をつくって、観に行って。地域が栄える1つの大きな礎になったのではないでしょうか」



では最後に、宮廻先生の今後の展望を教えてください。

「最終的な目標として、人材育成ができればと考えています。ミャンマーやアフガニスタンなど、文化財の破壊や流出がある地域で、信頼できる人や機関に私たちの技術を伝えて、その地域の人たちで文化を守れたらいいなと思っています。ただ戦争などの影響でそれは実現していません。またルールが浸透しなければ量産されてしまい、マーケットは混乱します。その辺りの仕組みがしっかりした段階で、考えていきたいですね」

学習院大学特別講義・夏目房之介先生に学ぶ 「マンガ表現のしくみ」

2021年10月9日 / 体験レポート, 大学を楽しもう

「マンガをつくるうえで大切な要素」について、考えたことはありますか? 子どもの頃から身近にあったマンガについての表現やしくみを解説してくれる特別連続講義「マンガの語り方」(全4回)の第2回目「マンガ表現のしくみ」が、2021年8月28日に行われました。

 

語ってくださったのは、学習院大学大学院・身体表象文化学専攻を2021年3月末に退任されたばかりの、夏目房之介先生。夏目先生といえば、日本を代表するマンガコラムニストで、NHK「BSマンガ夜話」の出演をはじめ、マンガ研究や評論の著書などを出されている方です。

 

今回の講義では、マンガに出てくる「あるあるなキャラクター・言葉・表現」などを、言語化して解説してくれています。これはどんなストーリーにも当てはまることなので、マンガに限らず物語を考えたい人や、アイデアに行き詰っている人にも参考になる内容になっていますよ!

※退任直前の3月6日に開催され、大好評を博した夏目房之介最終講義「マンガ研究はなぜ面白いのか」とあわせてお楽しみください。

マンガは類型的な記号表現の組み合わせで成り立っている

まず画面に、横縞柄の服を着た、頰かむり姿の男のイラストが映し出され、「職業は何だと思いますか?」「なぜそう思いましたか?」と、質問が出されました。

最初のスライドで出された、夏目先生が自ら描かれたイラスト。ⓒ夏目房之介

最初のスライドで出された、夏目先生自らが描かれたイラスト。ⓒ夏目房之介

 

このクイズは講義でも行われたそうで、大抵の学生は職業について「泥棒」と解答。その理由としては「頰かむりや横縞柄の服を着ていたため」と答えたそうです。中国やイタリアの学生にも同様の質問をしたところ、上記の職業は「泥棒」と言い当てたとのこと。ちなみに私も同じ回答が浮かびました。

しかし、続けて同じ学生に質問したところ、「なぜ頬かむりや横縞柄の服を着用していると泥棒なのか」の問いに、「ええと、TVの影響かな?」ともごもご状態。夏目先生いわく、他の学生たちも明確な解答はなかったそうです。実際にこのような服装をした泥棒を見たことはないけれど、何らかの影響により、上記イラストのような服装をしている人物を「泥棒」と解釈していると、夏目先生は語ります。

(キャプ)マンガではイラストを見るだけで職業がイメージできる、ステレオタイプのキャラクターが多数活躍している。ⓒ夏目房之介

(キャプ)マンガではイラストを見るだけで職業がイメージできる、ステレオタイプのキャラクターが多数活躍している。ⓒ夏目房之介

 

マンガは、試験管を持って白衣を着用している人物は、研究熱心な博士や科学者、杖をついて着物を着て、髪の毛を一つに結んでいるのは、時折、核心をついた発言をするおばあちゃん、というように、職業や特徴がわかりやすく描かれていることが多いです。夏目先生によると、このような表現方法で描かれた絵を「人物の記号化」と呼び、作中における世界観の現実レベルにより「記号」化の程度が変わってくるそうです。

 

たとえば、『ドラえもん』と『ゴルゴ13』では、この「記号」の描かれ方に違いが見られ、幼い子ども向けマンガやギャグマンガなどは、記号が多く活躍しているそうです。たしかに、ドラえもんに出てくるおばあちゃんの多くは、上のイラストのように腰がまがって和服姿ですし、子どもに人気の『名探偵コナン』の阿笠博士は、白衣姿ですよね。その反対に『ゴルゴ13』に出てくる人物は、それぞれ個性があり現実にいそうなリアル感があります。

博士は博士らしく白衣を着ていると、余計な説明を省くことができるので、会話文が少なくなり、子どもでも読みやすいマンガになるのかなと感じました。このようにステレオタイプ・類型的な描き方は、マンガにとって重要な要素となっているんですね。

「役割語」の持つ、役割

次に夏目先生が語ったのは、登場人物の「話し方」についてです。マンガで高齢者や仙人、学者などが話す際に「○○なのぢゃ」という喋り方をすることがあります。しかし夏目先生自身、実際に「○○なのぢゃ」と話す高齢者に会ったことはないそうです(筆者もありません!)。それが「一つの話し方の類型として存在している」と語りました。

 

このような類型化された人物を想定させる特定の話し方を「役割語」と呼ぶそうです。たとえば山の手の奥様たちが話しがちな「ざます」言葉や、お嬢様言葉として使われている「~でしてよ」なども、役割語です。

 

ちなみに、この役割語は、日本語学者の金水敏氏によって提唱されたそうですよ。

※同氏には、以前、ほとんど0円大学でもインタビューをおこなっているので、あわせてお楽しみください。

役割語によって、キャラクターのイメージがより鮮明になりやすい。ⓒ夏目房之介

役割語によって、キャラクターのイメージがより鮮明になりやすい。ⓒ夏目房之介

 

筆者も思い返してみると、子どもの頃、おじいさんは「ぢゃ」というものだと信じていたので、実際に会ったおじいさんはそう言わないことに衝撃を受けたことがあります。マンガの中で「○○ぢゃ」と話すのは「主に老人や仙人、博士などです」と、たしかに教えてもらったことなどないのに、なぜか、筆者を含めた多くの人は、さまざまな情報から役割語を認識しているんですよね。

夏目先生によると「フィクションの世界の約束ごとを、どこかで学び、リテラシー(知識やそれを活用する能力)として獲得している」そうです。

 

さらに夏目先生は、日本語を学習する際のことを例に取って解説してくださいました。「日本語で話すときに、女性言葉を使うか、男性言葉か、あるいは謙譲語で話すべきかなどは、ある程度教育として受けてはいるが、具体的にどこで習い、どこで覚えたかは、ほとんどの人が記憶していないでしょう。それでもできるのは、知らず知らずのうちにリテラシーを獲得して理解できるようになっているからです」と述べたうえで、「マンガの場合は、絵と言葉とそれを結びつけるコマの構成が、リテラシーとして成り立っているのではないかと思うのです。言い換えますと、マンガも言葉と同じようなルールや文法が成り立つのではないか」と夏目先生は語りました。

 

なるほど。マンガにも文法が成り立つかもしれない、とは面白い考えです。同時に物語の先が知りたくて読んでいるマンガですが、ストーリーを追いながらも、「マンガの読み方」までも、誰に習ったわけでもなく、学習しているのですね。

そうなると、マンガはとても情報量が多いため、「ぢゃ」を使う白衣の博士を登場させたほうが、スウェット姿の博士よりも説得力があり、情報も簡素化できてストーリーに入りやすいのかもしれないですね。

マンガは「ありえない虚構」と「ありうる虚構」で成り立っている

その後、マンガ研究の歴史をざっくりと説明されました。

「マンガはありえない虚構と、ありえる虚構でできている」点はマンガ表現を知るうえで、とても重要な要素だと夏目先生。ⓒ夏目房之介

「マンガはありえない虚構と、ありえる虚構でできている」点はマンガ表現を知るうえで、とても重要な要素だと夏目先生。ⓒ夏目房之介

 

次にマンガの虚構と、ありえるかもしれない虚構について語った内容が、マンガ以外のストーリー性のある映画や小説でも「あるある」な話で、非常に興味深かったです。たとえば夏目先生は「科学を無視して、何でも作ってしまう博士など、ありえないことが面白いのは、一方に現実的な世界が想定されているからなんですよ」と語ります。

 

『ドラえもん』がポケットの中から、いろいろな道具を出してのび太を助けてくれるという、ありえない面白さ。それと、勉強も運動もイマイチだけど、優しい主人公という、いかにもありえそうなキャラ設定。この両輪が互いにしのぎを削り、反発し助け合うことで、読者が面白さを感じるということのようです。

 

これは人気アニメ『鬼滅の刃』にも言えて、鬼を倒せるさまざまな技が繰り出されるという、現実社会ではありえない設定ですが、それぞれのキャラクターに共感できるストーリーがあるため人を惹きつけているのです。きっと『鬼滅の刃』が、単なる戦いの物語だけなら、あそこまでのヒットにはならなかったでしょう。

 

「つまり『ありえない虚構』と『ありうる虚構』の混合で、ほぼマンガやアニメは成り立っている。これは押さえておくべきポイントです」と夏目先生は強調します。

格闘技系のマンガでは、絶対ありえない技などが使われているが、その一方で「関節はこちらの方向には曲がらない」という現実的な「ありうること」を織り交ぜていくことで、荒唐無稽なエピソードの方も面白くなっていくそうです。

マンガ表現論の3要素は「絵、言葉(文字)、コマ」は、今後変化する可能性も

次にマンガ表現論について話題が及びます。夏目先生によると、現在のところマンガの構成要素は「絵」、「言葉(文字)」そして「コマ(の連続と構成)」で成り立っていると言います。

マンガ表現論の3要素。海外では「絵」と「言葉」だけの構成要素で考えられている。ⓒ夏目房之介

マンガ表現論の3要素。海外では「絵」と「言葉」だけの構成要素で考えられている。ⓒ夏目房之介

 

そこで次は、「言葉」の中でも、マンガを面白くするためによく使われている「形喩(けいゆ)」と「音喩(おんゆ)」について解説してくださいました。

(形喩の描かれたイラスト)-(形喩部分)=(時間の経過や動いている感じのしないイラスト)となる、とスライドで紹介。ⓒ夏目房之介 出展:『マンガはなぜ面白いのか』88Pの図版を再構成

(形喩の描かれたイラスト)-(形喩部分)=(時間の経過や動いている感じのしないイラスト)となる、とスライドで紹介。ⓒ夏目房之介
出典:『マンガはなぜ面白いのか』P88より

 

形喩とは「キャラクターの感情や心境、状態を符号化もしくはデフォルメした形状で描写し、読者に伝える手法」で、夏目先生が作った造語です。顔の紅潮を表現するためにほほに斜線を引いたり、フラフラした様子を表すために、足の周りに曲線を描いたりする表現方法です。

 

スライドでは、形喩の描かれたイラストから形喩のみを取り除いたイラストを見せることで、形喩の持つ意味を伝えました。スライド左側の「形喩の描かれたイラスト」の女性は、寒い中、懐中電灯の明かりを夫にあてて、困惑している様子が線で表現されています。その線を抜いてみる(スライド右上のイラスト)と、右下の暑いのか寒いのかもわからない、動きのない絵になると、わかりやすく教えてくれました。

こうやってイラストで見せられると、形喩の有無で印象はだいぶ違いますよね。とくに寒さを感じさせる線がたった数本あるだけで、より状況が伝わるようになるんだなと感心してしまいました。

 

このような形喩は、ヨーロッパのマンガのように写実性の高いマンガになるとあまり使われなくなるそうです。(そういわれると、ヨーロッパのマンガが気になります!)

 

次に、俗にいうオノマトペ(擬音擬態語)と同じ意味になる「音喩」の解説が行われました。音喩も、夏目先生が考えた造語なのですが、「ガタッ」や「うわああああ」など、言葉にはできない感覚的な表現は外国人に人気があるそうです。

この音喩にはさまざまな使い方があるそうです。たとえばマンガのページ全体に斜めに「キキキキー」と描かれ、そのわきに車がとまるような絵があったとします。その場合、音喩がコマの真ん中に載っているため、読者が最初に目にするのは、音喩という場合もあります。

「音喩はコマよりも強い、目線の運び屋でもあるわけです。コマに近い働きもしている。手書きで描かれているため絵画性もあります」と音喩の重要性を語ってくださいました。

ちなみに夏目先生は、そんな音喩について外国人から取材されたこともあり、その注目ぶりに夏目先生ご自身も驚いたようでした。

 

最後にマンガ表現論の三要素の1つである「コマ」についての話となりました。

コマに対する考え方はとても複雑で、日本では1960年代にマンガ論が始まると、「絵、言葉、そしてコマ」が注目され、解釈されるようになりました。しかしヨーロッパなどでは、絵と言葉でマンガを考えることが伝統的なのだそうです。

 

「たしかに論理的に言いまして、『絵と言葉』という概念の対と、『コマ』という概念を同レベルで並べてしまうのは無理があります。ただマンガの歴史的にコマというものが、前面にでるかたちで日本のマンガが発展してきたため、今後は概念の構造を変えていく必要があると思っているところです」

と自らスライドで示した「マンガ表現論の三大要素」に対して、結果的に否定するコメントを述べた点は、とても興味深く感じました。

 

「コマに関しては短い時間ではできないので」という前置きで表示された、図版スライド。ふだん何気なく見ているマンガの構造が、とてもわかりやすく記されています。ⓒ夏目房之介 出典:『マンガの読み方』

「コマに関しては短い時間ではできないので」という前置きで表示された、図版スライド。ふだん何気なく見ているマンガの構造が、とてもわかりやすく記されています。ⓒ夏目房之介
出典:『マンガの読み方』P199、P205より

 

さらにコマに関しては、「マンガ論の少し上のレベルといえる『視覚文化史』あるいは『物語論』という形まで、抽象度を上げてもう一度考え直す必要がある」と訴えました。要するに、マンガだけを見ていないで、他の分野を交えた視点で考えることが大切ということです。

その例として、夏目先生は、「絵巻などのコマのない世界と、コマのあるマンガを比べてみると、視覚文化史的に視野を広げて考えていける」と語りました。
これはとても斬新なご提案です。同じように紙面に描く、ストーリー性のある絵でありながら、全然違う見え方のする2つを比べることで、また違うコマの法則や特徴が見えてくるのではないでしょうか。

 

さらに夏目先生は、マンガ研究家の野田謙介氏や伊藤剛氏が、コマやフレームについての概念を、改めて考えていこうという動きがあることに触れ「そういうものを取り入れていく必要があるのではないか」と結び、講義は終了しました。
ふだんマンガを読むときに「コマ」について考えたことはなかったので、改めてコマを見てみると、思った以上にバリエーションが多くコマの奥深さを感じました。
同時に、最近ではネットでマンガを観る人も多いので、そういう場合のコマ割りの役割はどうなるのか……今後の夏目先生の研究がさらに気になる講義でした。

今後、第3回、第4回と続くので、興味のある方は視聴してみてはいかがでしょうか。

実は私たちは「見えてない」?武蔵野美術大×DNPが「見えてないデザイン展」をする理由

2021年8月26日 / 体験レポート, 大学を楽しもう

私たちは日頃何を目にし、何を見逃しているのか。展覧会のタイトルに惹かれ、市ヶ谷にあるDNPプラザで開催中の「見えてないデザイン展」(武蔵野美術大学、大日本印刷株式会社共催)に行ってきた。果たして見えてないデザインとは何なのか?

暮らしの中の発見や違和感=「問い」が400枚の木札に

会場を訪れたところ、15cm四方の木札約400枚が奥までずらりと並んでいて、少々驚いた。木札には、写真とともに一言コメントが書いてある。これは過去に行われたワークショップでさまざまな参加者から集まった、社会や何気ない日常に対する「問い」の数々なのだという。解決策が描かれたものもある。木札がペアに並んでいるものが、それだ。

2枚並んでいるのがペアのもの。写真の入ったものが日頃の発見などで、イラストが描かれているほうが解決策やアイデア、コメントが書かれた木札だ。

2枚並んでいるのがペアのもの。写真の入ったものが日頃の発見などで、イラストが描かれているほうが解決策やアイデア、コメントが書かれた木札だ

 

母親が卵にひよこの顔のイラストを描いた写真(画像左上)には、このような文章が記されている。「冷蔵庫を開けたらひよこ(?)がいた。らくがき。多分犯人は母。」。実は温泉卵と生卵を区別するための“らくがきアイデア”だという。

もう1枚の木札には「日常をほっこりさせる母の愛」と記されている。ここには「卵に絵を描くというちょっとした行動で生活を楽しむというアイデア。お母さんの卵への家族への愛を感じる。いろいろなスタンプを作ってほっこりした表情をつくる提案」とある。

 

たしかに冷蔵庫を開けると、かわいいスタンプが迎えてくれたらハッピーな気分になる。口に入れても大丈夫なインクでできていたら、他の食べ物にも応用できるだろう。兄弟それぞれのスタンプを持っていれば、兄弟げんか撲滅計画にも役立つかもしれない。いやペンで描いても楽しそうだ……など、素朴ながら身近なネタが多いため、木札と自分の発想を掛け合わせて、新たな発想を得てもらえれば、というイメージのようだ。

 

ちなみに今回のコラボは、武蔵野美術大学が市ヶ谷キャンパスにクリエイティブイノベーション学科を開設したのを機に、近隣の大日本印刷株式会社(DNP)とタッグを組んで実現した。

 

もともと武蔵野美術大学は、六本木ミッドタウン「デザイン・プラザ」において、2012~20年までデザインの社会実験の場として、社会と連携したさまざまなプロジェクトやイベントを開催していた。

武蔵野美術大学は、社会と連携した取り組みを行ってきた結果、課題は教育、地域、産業、文化、生活、多様性の6つに分類されることに気づいたという

武蔵野美術大学は、社会と連携した取り組みを行ってきた結果、課題は教育、地域、産業、文化、生活、多様性の6つに分類されることに気づいたという

 

その一環として、昨年、六本木ミッドタウンで開催された「見えてないデザイン-社会に問い続けるムサビ-」を再編集したものが今回の展覧会となっている。

写真は後継者不足という牛乳屋のおじさん。黒板には解決策の案が書かれている。さすが美大、イラストがかわいい!

写真は後継者不足という牛乳屋のおじさん。黒板には解決策の案が書かれている。さすが美大、イラストがかわいい!

電車の本数が少ないため学生専用の自習室を作ってくれた駅に対して思いやりを感じたという木札や、塾帰りの我が子を待つ親たちの写真に対して、勉強することも大事だが「もっと大事なこともある(のでは)」投げかけるなど身近なものばかり。一つひとつ読んでいくと、なかなか面白い

電車の本数が少ないため学生専用の自習室を作ってくれた駅に対して思いやりを感じたという木札や、塾帰りの我が子を待つ親たちの写真に対して、勉強することも大事だが「もっと大事なこともある(のでは)」投げかけるなど身近なものばかり。一つひとつ読んでいくと、なかなか面白い

「赤いトイレ」「お墓の新商品」など思いがけないところで見つかった不思議が並んでいる。なぜこれが?何のために?と考えると想像力が鍛えられていく

「赤いトイレ」「お墓の新商品」など思いがけないところで見つかった不思議が並んでいる。なぜこれが?何のために?と考えると想像力が鍛えられていく

会場からの参加も可能だ。葉っぱに日頃自分が思っている疑問などを書き込むこともできる

会場からの参加も可能だ。葉っぱに日頃自分が思っている疑問などを書き込むこともできる

 

「見えてないデザイン展」への思い

展示会への思いや今後について、大日本印刷株式会社のコーポレートコミュニケーション本部 プレゼ・コラボ推進室 坂元美穂さんと、武蔵野美術大学の大学企画グループ社会連携チーム チームリーダー 河野通義さんに話を伺った。

坂元美穂さん(写真左)、河野通義さん(右)

坂元美穂さん(写真左)、河野通義さん(右)

 

「もともと大日本印刷では、印刷事業だけではなく、『問い』をもとに企画開発し製品化していきたいという思いがありました。そのため、この施設、DNPプラザは、オープンイノベーション施設として今年の4月にオープンしました」(坂元さん)

現在は、試運転もかねて営業中。本格営業は、秋頃を目指しているそうだ。

DNPプラザには、展示会のほかに、飲み物を片手に課題解決のヒントになる書籍が読めたり、武蔵野美術大学の蔵書を一般公開したりしている「問いカフェ」がある

DNPプラザには、展示会のほかに、飲み物を片手に課題解決のヒントになる書籍が読めたり、武蔵野美術大学の蔵書を一般公開したりしている「問いカフェ」がある

 

オープンイノベーション施設まで作った大日本印刷と、「問い」を集めてアート作品として展示をしてきた武蔵野美術大学。両者の根底には、「問いから社会問題を解決したい」という思いがあった。そのため両者がコラボ展示会を開催したのは、必然だったのかもしれない。

 

展示されている木札の多くは、ワークショップによって集められたものだ。どのような流れで、ワークショップは行われてきたのだろう。

ワークショップの風景。集まった意見が付箋に貼られていく

ワークショップの風景。集まった意見が付箋に貼られていく

 

「ワークショップは、一般の方や高校生を対象に、六本木で数回開催しました。2回ワンセットになっており、1回目に、不思議だなと感じたものの写真を撮ってきてもらい、参加者と意見交換をして視点を広げていきます。2回目は、再度撮ってきてもらった新たな写真をみんなの前で発表するんですが、より視野が広くなっていて、1回目とは違うものに変わっているんですよ。

 

また地方の学生と東京の学生でも、違う。地方の学生のほうが、課題に敏感な気がします。それだけ地方は、課題解決をしないといけないことが日常風景の中に潜んでいるのでしょう」

という河野さん。

武蔵野美術大学が考えるデザインの作り方。ちなみに観察力は絵を描くことで鍛えられるという

武蔵野美術大学が考えるデザインの作り方。ちなみに観察力は絵を描くことで鍛えられるという

 

ここで言う「写真が変わる」というのは、カメラの設定の問題でも、被写体選びをちょっと変更した、という表面的なことでもない。人の言葉に耳を傾けることで視野が広がり、視野が広がることで思考が深まりやすくなり、ものごとの本質がわかっていく。要するに「見えなかったものが、見えるようになっていく」。だから写真に変化が現れるというのだ。

 

「我々はよく受験生から『美大にはどうしたら入れますか』と聞かれるんです。そのたびに『つねに問題意識を持つことが大事』と答えています。今回のワークショップも同様で、常に問題意識を持つ視点があると、普段なにげなく接しているものへの見方が変わってくるんです」

 

なるほど。かなり奥が深い取り組みだ!

美大は絵を描くだけじゃない、本質を見る目を磨くところ

展示会内の様子

展示会の様子

 

そもそも武蔵野美術大学は「問い」を集めることで、何を目指しているのか。

 

「我々は、美大の学びを正しく伝えたいと思っています。地方に行くと顕著なのですが『美大って、絵を描くだけなんでしょう』『デザイナーって、ポスターの文字をきれいに並べるのが仕事でしょう』などと、よく言われます。正直、そんなのどうでもよくって。絵を描くプロセスの中では、視点のほうが大事なんです」

 

正直、美術大学の学びが、どんなものかあまりよく知らなかった筆者。耳が痛い……。

 

「たとえばポスター製作の依頼を受けたとします。そのときに美大では、クライアントが言っていたことを、そのまま制作物の反映させるのではなく、クライアントの要望や課題を掘り下げ『こうした方がいいですよ。なぜなら……』という根拠を示して提案できる教育をしています。それが本質的な課題を見いだせる、ということなので。

 

しかし世間では、先ほどお伝えしたように、ただ表面をきれいに整えるだけという、ステレオタイプのイメージがついてしまっている。大日本さんと組んだのも、大日本さんに、美大の学びを知って欲しいから。それは社会に知って欲しい、ということなんですよ。いろんな企業さんとつながって、ポスターに、ぺこぺこぺこっと字を書いているだけじゃないですよって」

 

そう熱く語り、河野さんは笑った。大日本印刷の坂元さんも、その言葉を受け止めつつ、強く頷く。何だかいいな、この関係……。

アイデアの宝庫、木札のこれから

とはいえ、なぜこの展覧会が、木札を集めるという極めてシンプルながら少々変わっているかたちになったのだろう。

 

「『本当はみんながデザイナーになれるよ』と、我々は思っているんです。アウトプットを美しくすることがデザインじゃなくて、課題を見つけて提案することがデザインなので。それを展覧会にして、可視化する手法として、みんなの課題あるいは解決策を木札にして並べていく、この見せ方となりました。それぞれの課題をより多く、見やすくするための結論ですね」(河野さん)

 

開催期間後の展開はどう考えているのだろうか、河野さんはこう語る。

 

「実はこの展示物、足下に小さなキャスターがついているんです。移動式なので日本中どこでも、ワークショップをしながらまわれる仕様に最初からしているんです。大学の教授の中にはこれを“神輿”に見立て、祭りのように担いで全国をまわりたい、なんて言っている人もいるんですよ」

展示物はキャスター付き。白い箱は段ボールなので、移動も簡単だ

 

たとえば大日本印刷の地方の工場でワークショップを行えば、その地方拠点ならではの課題が見つけられ企業としての価値向上にも役立つ可能性がある。武蔵野美術大学としても、地方の「問い」を集めることができるという、メリットがある。

 

「ここ数年、課題がわからなくなった、という人が多い気がしています。今までは、速いクルマをつくってください、といった技術ソリューションをどう解決するかでした。しかし技術も進化し、さらにSDGsの問題や家族のかたちの変化など時代は複雑になった。そのときに美術大学でやってきたことは、本質的な課題を見つけること。そうすれば、何が必要で、何が課題で、何を残すべきかという視点が生まれます。

 

この展覧会に明快な答えはありません。答え探しではなく、みんなの思っている課題を、もっと深く考え、掘り下げるまでのことをこういう活動を通してやっていくことが、美大としての我々のやるべきことだと思っています」

 

河野さんが語るように、ここには「問い」から生まれ、商品化されたものが並んでいるわけではない。だからこそ、ビジネスに発展できる可能性の宝庫なのだ。

 

大日本印刷の坂元さんも「大きなビジネスチャンスがあると感じています」と話す。「まだ実際に展示会から生まれた商品はありませんが、弊社自身も、『問い』から製品化につなげるプロジェクトは行っています。最近では、光の反射を軽減した『DNP超低反射フェイスシールド』を開発しました」。

とても視界がクリアな「DNP超低反射フェイスシールド」

とても視界がクリアな「DNP超低反射フェイスシールド」

 

「これはSNSなどで話題となっていた、耳の聴こえない方などがマスクで口元が見えずに困っているという課題から生まれた商品です。この商品そのものは、武蔵野美術大学さんとは関係ないのですが、今後は武蔵野美術大学さんが集めた『問い』から、製品が開発できればいいと考えています」

大日本印刷のさまざまなプロジェクト

大日本印刷のさまざまなプロジェクト

 

たくさんの木札を読んでわかったのは、普段見ているようで見えていないことの多さだ。また河野さんの「アウトプットを美しくすることがデザインじゃなくて、課題を見つけて提案することがデザイン」という言葉に、本質を見る目を磨くことの大事さを、改めて感じた。私も見えていないものを見えるように、日頃からいろいろなモノを観察していきたいと思った。

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