ほとんど0円大学 おとなも大学を使っっちゃおう

  • date:2022.10.27
  • author:柄谷智子

大阪芸術大学短期大学部をテーマにした展覧会とは? 宝塚市立文化芸術センターで教員にして現役アーティストの作品をたっぷり浴びてきました

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秋が深まってきました。秋といえば、ベタといわれようとも「芸術の秋」です。
というわけで、今回は宝塚市立文化芸術センターで開催された展覧会「宝塚から一番近いア―ティストが生まれる場所―大阪芸術大学短期大学部の現在」(会期終了)のレポートをお届けします。

 

「大学による作品展はよくあるけれど、大学をフィーチャーした展覧会とは……?」
そんな思いをきっかけに取材に訪れた今回の取材。さっそく展示を見てみましょう。

絵画もフィギュアもさまざまな現役アーティストの作品が一堂に

今回は同センターのキュレーターである大野裕子さんにご案内いただきました。展示は3つのテーマで展開。まずは第1章「大阪芸術大学短期大学部の歩み」から。

年表によると、昭和20年に大阪市内のお寺で創設された「平野英学塾」からはじまり、現在の校名「大阪芸術大学短期大学部」になったのは2000年

年表によると、昭和20年に大阪市内のお寺で創設された「平野英学塾」からはじまり、現在の校名「大阪芸術大学短期大学部」になったのは2000年

 

英語塾をはじまりとし、その後、前身となるなる浪速短期大学にはデザイン美術科(当時)、広報科が設置され、「時代が必要とする人材を育成する教育を取り入れてきた歴史があります」と大野さん。1986年にはこちらのセンターがある隣市、伊丹市に学舎ができ、デザイン美術科は移転。それで、今回の展覧会の名称に「宝塚から一番近い」という言葉が入っているんですね。

 

続く第二章は「デザイン美術学科の指導者たち」がテーマ。こちらは、「短期大学部で学生を教える先生方の作品展示です。現役で活躍されているアーティストが、学生を教えているのが特徴。デザイン美術学科は7コースあるので(※)、展示作品のジャンルもバラエティ豊かですよ」と大野さん。ここからは「芸術の秋」らしく、作品を写真で紹介していきましょう。


※デザイン美術学科の7コース:グラフィックデザイン・イラストレーション、空間演出デザイン、アートサイエンス、アニメーション・デジタルデザイン・ゲーム、キャラクター・マンガ・フィギュア、絵画・版画、工芸・立体デザイン

 

最初の展示スペースで出迎えてくれたのがこちら。

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政府広報ロゴです。目にした瞬間、「これ! 知ってる! めっちゃ有名!」とココロの中でミーハー炸裂! 制作したデザイナーの松井桂三さんは、デザイン美術学科の学科長を務めているそう。いきなりすごいアーティストが出てきて、テンションが上がります。

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さまざまな絵画作品、造形作品が展示されているスペースでは、作品紹介のパネルを見て「え、これは絵画ではなく版画なんですか!?」と思わず大野さんに聞いてしまうことも。版画といえば、木版画やシルクスクリーンといったメリハリがある表現というイメージがあったので、版画で透明感ある表現ができるとは。アートの世界は奥が深い……。

 

さらに足を進めると、視覚効果を利用した体感型のアートが並びます。

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色をのせた透明アクリル板を幾重にも重ね、あるポジションに立つと絵が浮き出る「レオナルド」「モナリザ」は、グラフィックデザイン・イラストレーションコースの准教授・小薮昭治さんの作品です。「これは、ズレを楽しむ作品です」という大野さん。その言葉のとおり、立つ位置によって色はただの点となり、存分に“ズレ”の世界を満喫しました。

 

第二章の最後のブースは、フィギュアやマンガの展示。これらが学べるキャラクター・マンガ・フィギュアコースは、大野さんいわく「最近、学生から人気があるコースと聞いています」。

IKEGAMI名義で原型師・造形師として活動する池上陽二さんの作品

IKEGAMI名義で原型師・造形師として活動する池上陽二さんの作品

漫画家・ねもと章子さんの作品。技法書の執筆もされているされているそう

漫画家・ねもと章子さんの作品。技法書の執筆もされているされているそう

 

現役のアーティストである教員の作品をたっぷり堪能し、最後の第三章「藤森照信+学生 茶室プロジェクト」へ。こちらは建築史家・建築家の藤森照信さんと学生による「空飛ぶ茶室」の制作を紹介。

茶室の外装が黒いのは“焼き板”を使っているから。「藤森先生と学生が学内で板を焼いて、焼き板を用意したと聞いています」と大野さん

茶室の外装が黒いのは“焼き板”を使っているから。「藤森先生と学生が学内で板を焼いて、焼き板を用意したと聞いています」と大野さん

 

「空飛ぶ茶室」は学内に制作された作品のため、会場では制作過程のパネルと、スライド上映による展示が行われていました。

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茶室空間にはやわらかい光が差し込み、スライドだけでも癒やされます。これは実際に入ってみたい! 第一章で過去、第二章で現在、そしてこの第三章で未来に続く学生との取り組みと、さまざまな角度から大阪芸術大学短期大学部を体感し、展示は終わりました。

地元アートの“現在”を発信する場

さて、今回の取材は、「なぜ、大学をフィーチャーした展示を?」という思いがきっかけでした。大野さん、大学主催の作品展は多くありますが、なぜこのような企画を?

 

「今年(2022年)の4月から5月にかけて、松井桂三さんの個展を行いました。その際に、“こんなに近いところに、美術、デザインをテーマにした大学があるなんて”と知ったんです」

 

松井桂三さんというのは、政府広報ロゴを制作されたデザイン美術学科の学科長をされている方ですね。まさか、学科長の個展がきっかけとは……!

 

「関西で美術大学、芸術大学というと、京都が多いんです。大阪だと大阪芸術大学がある南河内。阪神エリアにも芸術系の大学があったのか、と発見でした。大阪芸術大学短期大学部は伊丹市にありますが、道1本隔てると宝塚市。最寄り駅も宝塚市内なんです。そこで、これからを担う若いアーティストが学び、現役のアーティストが教えている場が近くにあることをもっと多くの方に知ってもらいたいと、企画しました」

 

そして集まったのが、デザイン美術学科7コースの教員であり、現役アーティストの作品。「会場では『この先生の作品の完成形をはじめて見た』という先生の声も。学内で制作の過程はご覧になることはあっても、完成品は展示会場でお披露目になることがほとんど。絵画とフィギュアなどジャンルが異なるとなおさらです。なので、先生同士がお互いの作品を見て、驚いていらっしゃる光景が新鮮でした」と大野さん。

 

私も素人ながら、こんなに多くの表現世界があるのか、技法があるのかと感嘆した一人。これらのすべてがひとつの短期大学にあるなんて……! たしかに“宝塚から一番近いアーティストが生まれる場所”ですね、これは。

 

「今回は大阪芸術大学短期大学部を紹介しましたが、宝塚の文化的な要素というと宝塚歌劇や手塚治虫のイメージで捉えられがちです。実は多くのアーティストが宝塚にいらっしゃるのに、地元でも知らない方が多いんです」

 

言われてみれば、宝塚市立文化芸術センターの隣には手塚治虫記念館、そしてすぐ近くには宝塚大劇場があり、宝塚どころか日本を代表する文化が息づいています。

宝塚市立文化芸術センターは、展覧会の会場となったメインギャラリーのほか、ライブラリーや庭園がある市民の憩いの場

宝塚市立文化芸術センターは、展覧会の会場となったメインギャラリーのほか、ライブラリーや庭園がある市民の憩いの場

 

「当センターは2021年に開館し、当初から『Made in Takarazuka』というテーマで宝塚ゆかりのアーティストの個展を展開しています。松井桂三さんの個展もこの企画の第3弾で開催しました。そんな文化度が高い街であることを発信し、市民のみなさまが自分たちの文化を作り上げるきっかけの場になれば。私は日常がアートにつながっていると思っています」

 

宝塚市立文化芸術センターは所蔵品を持たない、“現在”を表す展覧会を行うアーツセンターというポジション。そんな第三の視点で切り取られた今回の展覧会で大野さんの話を聞きながら、大阪芸術大学短期大学部だけでなく、すべての “アートが生まれる場”は私たちが立つ場所と地続きにあり、とても身近であることに気付かされた機会になりました。


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