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  • date:2023.7.18
  • author:柳智子

「本当の意味でのコラボレーションができる人」 京都芸術大学で聞く追悼シンポジウム 「坂本龍一の京都」

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今年3月に亡くなった作曲家・坂本龍一さんは、たびたび京都を訪れ、京都とゆかりの深いアーティストらと作品を作り出していました。その活動をふりかえる追悼シンポジウム「坂本龍一の京都」が6月18日、京都芸術大学の京都芸術劇場 春秋座で開かれ、学者やアーティストらが登壇。坂本さんとの思い出を語りました。

世界を舞台に活躍した坂本さん、京都とどのような関わりをもっていたのだろうと思い、足を運んでみました。

万能のヘルパー

シンポジウムは、浅田彰さん(批評家/ICA京都所長/京都芸術大学大学院教授)による坂本さんの活動についてのレクチャーから。YMOが “散開”した翌年に坂本さんと出会い、40年来の親交があった浅田さんは「クラシック音楽の土台と、古典的な教養のある人。勉強が好きな人だった」とふりかえり、映像もまじえてその音楽活動を紹介してくれました。

浅田さん(右)。坂本さんについて、語っても、語っても、語りつくせない様子でした。左はアーティストの高谷史郎さん。(撮影:顧 剣亨)

浅田さん(右)。坂本さんについて、語っても、語っても、語りつくせない様子でした。左はアーティストの高谷史郎さん。(撮影:顧 剣亨)

 

「坂本さんは『自分の音楽を聴け』というタイプではなく、ジャンルを超え、求められる音楽を完璧に作ることができる万能のヘルパーのような存在だった。テクノ・ポップや、『ラストエンペラー』のような音楽を作ることもできたが、近年は自然の響きそのものを音楽にするところまで突き抜け、『世界がすでに音楽を奏でているのだから、それを配置するだけで音楽になる』というところに至った」と語りました。

 

印象的だったのは、坂本さんが大学時代に作った『分散・境界・砂』という曲を聴けたこと。メロディもハーモニーもない、ピアノの弦やフタを直接たたくような音の入った前衛的な曲で、浅田さんは「YMOや映画音楽などで多くの人に受け入れられる楽曲を作る前に、こういう曲を作っていたことは非常に面白い」とコメント。まったく同感です。

「京都会議」

坂本さんは1999年にオペラ作品『LIFE』を企画・作曲し、この作品でアドバイザーをつとめた浅田さんは、アーティストの高谷史郎さんを坂本さんに紹介。高谷さんはこれを機にコンサートやインスタレーション(※)など、多くの作品を坂本さんと共作しました。(※インスタレーション…現代美術の手法の一つ。様々な装置やオブジェを配置・構成した空間全体を作品として体験する芸術。映像、音、パフォーマンス、コンピュータによるインタラクティブ性のあるものなども構成要素となる)

 

坂本さんは「お寺で、5人くらいで庭を眺めながら音楽を聴くライブをしたい」「茶碗の割れる音を録音したい」などと高谷さんに話していたそうで、それぞれ実現したエピソードなどを紹介(さすがに5人でのコンサートは難しく、70人ほどを入れたそうですが)。

坂本さんは、作品づくりのために浅田さん、高谷さんらの顔ぶれで京都に“合宿”することを「京都会議」などと呼んで楽しんでいたそうです。

大徳寺でのライブ(2007年/撮影:國崎晋)をふりかえる高谷さん。

大徳寺でのライブ(2007年/撮影:國崎晋)をふりかえる高谷さん

 

高谷さんとのインスタレーション作品では、霧の動きを音に変換したり、樹木が出す電位を音に変換して、世界中の木による森のシンフォニーをつくったり……。自然の営みの中に音楽を見出すような意識の働かせ方は、京都という場所とも相性がよかったのではないかと感じます。

遊園地の子どものようだった

ところで、下は本シンポジウムのちらし画像です。この写真で坂本さんが触れている物体は何なんだろう、と思ったのですが……。

坂本さんが触れているのは、1970年の大阪万博でフランスのバシェ兄弟(兄:音響技師、弟:彫刻家)が作った「音響彫刻」です。たたいたり、こすったりしてさまざまな音を出すことができるもので、万博閉幕後に解体された作品の一部を2015年に京都市立芸術大学が復元。その話を目ざとく(耳ざとく?)聞きつけた坂本さんが同大学を訪れ、演奏したときの一枚です。

 

「無心の子どものように音を鳴らしていた」と、このときの坂本さんをふりかえるのは、復元に携わった岡田加津子さん(京都市立芸術大学教授)。「遊園地の子ども状態で、いつまでたっても帰らない。演奏のしかたも、楽器を叩くのではなく『君はどんな音がするの?』と尋ねるような感じ。触り方が音楽的だった」と話すのは岡田暁生さん(京都大学教授)。

坂本さんが演奏・録音した音響彫刻の音は、坂本さんのアルバム『async』(2017年)に収録されています。通常の楽器以外の音がたくさん使われているアルバムで、どれが音響彫刻の音かを判別することは難しいそうですが……。

本当の意味でのコラボレーションができる人

坂本さんとの出会いで大きく運命を動かされたのが、写真家のルシール・レイボーズさんです。ルシールさんは、坂本さんのオペラ『LIFE』で坂本さんと出会い、「日本人と初めて一緒に仕事して、そのクリエイティビティに触れた。驚くべき体験だった」と回想。

日本に魅了され、日本に住むようになったルシールさんは、照明家の仲西祐介さんとともに「KYOTOGRAPHIE 京都国際写真祭」を2013年に創設。以来、毎年春に京都で行われるイベントとして定着しています。

ルシールさん(左)は、坂本さんのことを語ろうとして声を詰まらせる場面も。右はKYOTOGRAPHIE共同創設者で共同プロデューサーの仲西さん。

ルシールさん(左)は、坂本さんのことを語ろうとして声を詰まらせる場面も。右はKYOTOGRAPHIE共同創設者で共同プロデューサーの仲西さん。

 

このほか、公開講座などで坂本さんと対談を行った京都精華大学のウスビ・サコさんや、坂本さんのアナログ盤ボックスで唐紙のアートワークを手がけた唐紙職人の嘉戸浩さんらも登壇。どの方の話しぶりからも坂本さんへの敬愛がうかがえて、改めてその影響力の深さと広さを感じました。

 

「坂本さんはいろいろな人との関係の中で音楽を作り、本当の意味でのコラボレーションができる人だった。京都は、気軽に声をかけあう付き合いの中で、刺激しあえる場所だと思っていたのではないか」(浅田さん)。

その活動は、サコさんとの対談で「対立をおそれていては自分の表現はできない」と言いきるような、譲れない部分をもつものでもありました。

約4時間におよんだシンポジウムは、まるで坂本さんが目の前にいるかのような和気あいあいとした雰囲気。

「坂本さんが亡くなったということがまだ理解できていない。今も刺激をもらっている」(高谷さん)、「私も同じ。巨大な仕事からまだ学ぶべきものがある」(浅田さん)。この言葉を聞いて、坂本さんは今も現役だ、と思いました。

 


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