ほとんど0円大学 おとなも大学を使っっちゃおう

和洋折衷の名建築!大阪樟蔭女子大学の母体・樟蔭学園創立者の私邸「樟徳館」を探訪

2024年12月3日 / 体験レポート, 大学を楽しもう

創立100年を超え、作家・田辺聖子の出身校としても知られる大阪樟蔭女子大学(東大阪市)。今回訪れたのは、その母体である樟蔭学園の創設者の私邸「樟徳館」です。

国の登録有形文化財に登録され、その和洋折衷の美しい内装から『カーネーション』や『あさが来た』など多くのテレビドラマの撮影地にもなってきました。現在では入手困難な銘木が随所に使われ、関西で最高の松普請といわれます。

歴史的建造物を所有する大学は多いですが、創設者の私邸を見学できる機会は貴重です。今回、8年ぶりに一般公開されるということで訪問してきました。

 

樟徳館外観

 

樟徳館は、樟蔭学園の創設者、森平蔵の私邸として1939年(昭和14年)に建てられました。森平蔵は16歳で大阪の材木商に奉公に入り、26歳で独立。材木商を営み、のちに海運業を興し巨万の富を築きます。女子の高等教育に力を注ぎ、樟蔭高等女学校(現・学校法人樟蔭学園)を創立。自身も学園の近くに私邸を構え、逝去後、遺志により樟蔭学園に寄贈され樟徳館と名付けられました。

 

樟徳館は近鉄長瀬駅近くの長瀬川沿いの閑静な住宅街にあります。訪問時は樟徳館の見どころについての説明会も開催され、その内容も合わせてご紹介します。

説明会の様子。大勢の方が訪れていました

 

森平蔵は奥様と晩年を過ごすために、65歳頃にこの建物を建てられたそうです。

門をくぐり敷地に足を踏み入れると、大きな屋敷であることがわかります。車寄せから建物の中へ入り、まずは大玄関の左手の応接室へ。和洋折衷の絢爛豪華な空間が広がっています。

応接室

 

縁側が開かれていて庭が一望でき、ステンドグラスと丸い窓からは優しい光が差し込んでいます。そして室内には窓や調度品、壁紙など、いたるところに緻密な植物の紋様が施されています。

 

天井には楠の一枚板が使われています。原木はどれだけ大きかったのでしょうか。材木商であった森平蔵の木に対する想いが伝わってきます。

楠の一枚板が使われた応接室の天井。見上げると、まるで木のなかにいるようです

 

樟徳館の木へのこだわりは各所に見えます。洋風居間にやってきました。

洋風居間

 

床をよく見てみると、幾何学模様の寄木張りになっています。

また床の四隅には象嵌(ぞうがん)という技法で飾りが施されていて、緻密な職人技を感じます。

洋風居間の床。幾何学模様の寄木張り

床の四隅には柿の木を使った象嵌(ぞうがん)が

 

洋風居間からつながっている広縁の床材には、建築当時としては珍しい外材のチークが使われているそうです。チークは日光に強く年を経るごとに色に深みが増していく木材であり、まさしく適材適所だと感じました。建物の他の床材には、国産の松材が用いられているとのことです。

洋風居間の広縁のチーク

 

続いては食堂へ。

目を引くのは照明です。幾何学的な形のアールデコ調のモダンなデザイン。中央の照明は建築当初からあるものです。食堂の位置が建物の中心近くで外光があまり入ってこないため、照明の淡い光が心地よく、陰影のなかで静かな時間が流れています。

 

廊下を歩いていると曲がり角に合わせて木のキャビネットが丸く作られていることに気がつきました。設置場所に合わせて家具も形を整える細やかな配慮が素敵です。

廊下のキャビネット

 

また廊下の床材は10mほどの継ぎ目のない一枚木になっていると解説を聞き、実際に目にして、本当に一枚だ!と感嘆しました。

一枚木で作られた廊下

 

和室に入ると空間の雰囲気が変わります。

畳敷きで二つの窓から庭を望むことができるのですが、四分円の形になっている障子窓が印象的。また、庭に面した障子窓は、足もとまで開いた掃きだし窓で、雨に濡れることを想定して窓際には松板が敷かれており、双方の対比が目を引きます。天井には薄い木の板を織り込んだ網代という技法が使われているそうです。

和室

 

特別な客人を招いた応接室に対して、この部屋は、身近な客人を招いた和室(客間)です。森平蔵が経営していた自社社員が業務報告に訪れた際、この部屋で一緒に鍋を囲み、社員の労をねぎらったようです。

 

住み込みの女中さんたちの仕事部屋も見学できました。下の写真に写っている黒っぽいパネルのようなものは、各部屋でボタンが押されるとどの部屋から呼ばれているか表示される仕組みのようです。現代のファミリーレストランのようだと感心する見学者もいました。時代に先駆けた合理的な設備ですね。

女中仕事部屋の呼び鈴パネル

 

暮らしぶりを感じる設備はほかにもあり、配膳室には当時のガス式冷蔵庫も置かれていました。この本体の上部に、冷蔵庫内を冷やすためのコンプレッサーなどが備え付けられていたようです。ご自身の昔の家を思い出して歓談している見学者もいらっしゃって、ほっこりとしました。

冷蔵庫

 

樟徳館は、木へのこだわりが随所に感じられ、伝統的な日本家屋の美しさとモダンな要素が調和した魅力あふれる建築でした。貴重な一般公開に参加することができて大満足です。次の一般公開の際にはぜひ訪れてみてはいかがでしょうか。

 

最先端研究を体感!大阪大学のイベント『キラめく科学・トキめく未来』に行ってきました!

2024年7月16日 / 体験レポート, 大学を楽しもう

万博記念公園近くのららぽーとEXPOCITY。ここで大阪大学の最先端研究にふれられるイベントがあると聞き足を運んでみました。

 

体験イベント、ミニレクチャー、展示など通じて、子どもから大人まで、科学・研究・学術の魅力を楽しみながら学ぶことができるそうです。10を超えるブースがあり、宇宙地球科学、基礎工学、医学、情報科学、人間科学など分野は実にさまざま。いったいどんな研究内容が見られるのでしょうか。早速行ってみましょう。

シマシマ模様でぶつからずに歩ける?

混雑した駅で人とぶつかってしまうことってありますよね。

対面から歩いてくる人を避けきれなくてお互いに気まずくなってしまったり……

そんな困りごとを解決しようという研究がありました。

 

ここは情報科学研究科 人間情報工学講座のブース「ぶつからずに歩ける床をあるいてみよう!」です。

 

ステージの上に、なにやらシマシマ模様のパネルが敷いてあります。子どもも大人も興味深そうに歩き回っています。

ふしぎな床の模様ですが…!?

 

まずは私も歩いてみることにします。

下を見ながら歩いていると、床の色・模様がだんだんと変わって、気がつくと斜め右へと進んでいました。たしかにこれなら、対面から歩いてくる人は自分と反対に歩いてくるのでぶつからないですね!

 

これはどういう仕組みなんでしょうか。スタッフの解説によれば、シマシマ模様は見る向きで絵が変わるような印刷がされているので、人が歩くと模様が動いて見えるようになっているとのこと。

向きを変えると絵が変わる印刷。見たことがある方もいるのではないでしょうか

 

人は歩くときにシマシマ模様の動きを床の流れとして錯覚しながら進むので、歩く方向がその流れに誘導されます。その結果、今回の場合は斜め右に自然と進むため、対面から人が来ても、互いにぶつからなくなるというわけです。

 

展示の解説よると、パネルは駅や商業施設などたくさんの人が歩く場所で、人がぶつからないために開発されたそうです。「一方通行」などの文字は、他の言語を使う人には伝わらないこともありますし、矢印のような記号も読み取って判断しないといけません。それに対してシマシマ模様の仕組みは人の錯覚を利用しているので、文字や記号のような制約がないと紹介されていました。公共空間のような人が多く集まる場所に適した解決方法なんですね。

 

パネルを開発した人間情報工学講座では、人間の感覚と運動の関係について研究が進められており、人の行動を変容させたり、ゲームやVRなどへの応用ができるそうです。

街中でシマシマ模様を見る日も近いかも?

AIバイオロギングで賢く動物の生態を観察!

次に訪れたのは、情報科学研究科 マルチメディア工学専攻の「バイオロギングで体験! 動物と共に生きる未来」をテーマにしたブースです。

 

バイオロギングとは、動物に小型のセンサーロガー(記録装置)を取り付けて行動を観察する研究手法。センサーロガーデバイスには位置を測るGPSや、動きを測る加速度センサ、そして撮影用のカメラが搭載されています。

手のひらサイズのセンサーロガーデバイス

 

なかでもとくに力を入れているのは、AIバイオロギング。加速度センサやGPSのデータ、過去に蓄積した行動データを人工知能が認識・参照して、動物が貴重な行動をしたときだけカメラが作動し記録するというものです。

 

カメラは消費電力が大きいので、これまでのバイオロギングでは興味深い行動の記録は難しかったそう。それに比べて、ここぞというときに撮影してくれるAIはバイオロギング研究者にとって助かりますよね。

 

お話を聞くと、装置の小型化が難しかったり、一つ機能を足すと他の機能が使えなくなったりするなど、限られたデバイスの大きさと性能のなかでやりたいことを実現すための苦労が大きかったようです。

 

また、ブースでは2種類のゲームを体験できました。実際にバイオロギングを行った、日本近海に生息するオオミズナギドリというウミドリに関するゲームです。

 

一つは、オオミズナギドリのぬいぐるみを動かすと、その動きを彼らが行った際の映像を見ることができるというもの。潜水(採餌)はレアな行動だそうで、その映像が出せるよういろんな動き方を試してみました。実際の映像は迫力満点。鳥たちはこんな光景を見ているんですね。

参加者はぬいぐるみを盛んに振ったり動かしたりして体験

 

ふたつめは、ジョイコン(ニンテンドースイッチのコントローラー)を手に持ち、オオミズナギドリの動きを真似て、その飛行を疑似体験できるゲーム。鳥になった気持ちで羽ばたいて餌を採る動きを再現することで、高スコアを狙います。

子どもたちが夢中になって羽ばたいている様子を、まわりの人がほのぼのと眺めていました

子どもとおとなの世界はどう違う?

 次は人間科学研究科 比較発達心理学研究室のブースに来ました。「のぞいてみよう!子どもの世界・おとなの世界」というテーマです。

研究紹介など展示の様子

 

この研究室では子どもの見ている世界や、子どもの世界が大人の世界へと変わっていくプロセスを研究しているそうです。

 

たしかに子どものころと大人になってからでは世界の感じ方に違いがあるように思います。身体の成長やできることが増えるという変化もありますが、他にはどのようなことがあるのでしょうか。

 

展示のなかから興味深かったものを紹介すると、生後4ヶ月半の赤ちゃんでも、もうすでに物理法則を理解しているようです。そんなに早くからなんですね。研究によると、赤ちゃんは浮かんでいる車を見てびっくりする(=長く見る)のだそう。子どもにも大人と同じように世界が物理法則にしたがって見えているようです。

 

一方で、子どもたちのなかには9歳頃まで空想の友だち(イマジナリーフレンド)を持つことがあると知られており、大人にはない子どもの世界があるようです。空想の友だちがいる子どもは、他の子どもよりも他者の心の推測が上手だったり、コミュニケーション能力が高い傾向があるそうです。子どもたち独自の世界も成長に役立っているんですね。

ロボットとのおしゃべりを体験!

なにやらかわいいロボットがじっとこちらを見ています。ここは基礎工学研究科システム創成専攻のブース「未来では当たり前?ロボットとおしゃべり!」です。

新しいものが好きか?お気に入りを大事にするか?などの質問をしてくれる

 

2体いるロボットから交互に質問をしてもらって答えていくと、最後に自分の性格について教えてくれるというものでした。ロボットは単純に音声を発するというだけでなく、こちらの反応をみてしゃべってくれるので話しやすかったです。

体験会の様子

 

お話を聞くと、この研究室では、人間とはなにかということをテーマに、ロボットがどのような動きをすれば人間らしくなるのか、ロボットはどのくらい人間とおしゃべりできるのかを研究しているそうです。

 

今回の体験では2体ロボットがいることにより、片方がもう片方をサポートする狙いがあるとのこと。そのおかげでおしゃべりが止まってしまうことがなかったり、役割が分かれているので想定外の回答を受けても、会話を続けやすかったりとメリットがあるそうです。

 

近年は急速にAIが発展して会話の技術が進んでおり、より人間らしさについての研究が盛んになってきていると伺いました。

さまざまな科学・たくさんの知らないこと

いくつか体験内容をピックアップしてご紹介しましたが、他にも感染症について学ぶブースや、外国語の絵本の読み聞かせ、月の石の展示、未来の教育について意見を発信できるブースなど盛りだくさんでした。

【左上から時計回りに】「目指せ!未来の感染症博士!」感染症総合教育研究拠点(CiDER)/先端モダリティDDS研究センター(CAMaD)、「ことばを知ってボーダーレスに!」OUグローバルキャンパス(外国語学部・外国学図書館)、「身近な天体「月」を知ろう」理学研究科 宇宙地球科学専攻、「どうなる!?未来の学校!!2024」社会技術共創研究センター(ELSIセンター)

 

会場では誰もが体験を通じて楽しく学んでいる様子が印象的でした。学問や研究の世界に気軽にふれられる絶好の機会となるイベントで、知らないことを知るという楽しさを実感しました!

 

 

RANKINGー 人気記事 ー

  1. Rank1

  2. Rank2

  3. Rank3

  4. Rank4

  5. Rank5

PICKUPー 注目記事 ー

BOOKS ほとゼロ関連書籍

50歳からの大学案内 関西編

大学で学ぶ50歳以上の方たちのロングインタビューと、社会人向け教育プログラムの解説などをまとめた、おとなのための大学ガイド。

BOOKぴあで購入

楽しい大学に出会う本

大人や子どもが楽しめる首都圏の大学の施設やレストラン、教育プログラムなどを紹介したガイドブック。

Amazonで購入

関西の大学を楽しむ本

関西の大学の一般の方に向けた取り組みや、美味しい学食などを紹介したガイド本。

Amazonで購入
年齢不問! サービス満点!! - 1000%大学活用術

年齢不問! サービス満点!!
1000%大学活用術

子育て層も社会人もシルバーも、学び&遊び尽くすためのマル得ガイド。

Amazonで購入
定年進学のすすめ―第二の人生を充実させる大学利用法

定年進学のすすめ―
第二の人生を充実させる …

私は、こうして第二の人生を見つけた!体験者が語る大学の魅力。

Amazonで購入

フツーな大学生のアナタへ
- 大学生活を100倍エキサイティングにした12人のメッセージ

学生生活を楽しく充実させるには? その答えを見つけた大学生達のエールが満載。入学したら最初に読んでほしい本。

Amazonで購入
アートとデザインを楽しむ京都本 (えるまがMOOK)

アートとデザインを楽しむ
京都本by京都造形芸術大学 (エルマガMOOK)

京都の美術館・ギャラリー・寺・カフェなどのガイド本。

Amazonで購入

PAGE TOP