ほとんど0円大学 おとなも大学を使っっちゃおう

舟盛りにすき焼き!? 個性派メニューがそろう、南山大学「SWEETS MAGIC Lab.」

2024年11月14日 / 美味しい大学, 大学を楽しもう

学食で登場するメニューと聞くと、プレートランチやカレー、パスタに丼ものなどがまず頭に浮かぶのではないでしょうか。しかし南山大学の「SWEETS MAGIC Lab.(スイーツマジックラボ)」には、学食とは思えないメニューがいくつもあるとか。おまけに、特定の日だけ登場する料理もあるそうです。特別感たっぷりの品々を求めて、行ってきました!

南山大学C棟にある学生食堂

キッチンに掲げられた、大きなロゴが目印

 

地下鉄「八事日赤駅」で下車し、歩くこと10分ほど。南山大学C棟にある「SWEETS MAGIC Lab.」に到着です。

 

店内には、テーブル席やカウンター席、テラス席が計200席ほど用意されています。気軽に訪れられるカフェテリアとして、学生や教職員、地元の方々でにぎわっているお店です。親子連れやグループでの利用者の姿も見られます。

毎月10日限定の舟盛りをチェック!

「SWEETS MAGIC Lab.」ではプレートランチや麺類など、15種類ほどのメニューをラインナップ。地元企業とコラボしたものや、「南山スタミナ丼」(600円)など大学名にちなんだものもあり、目移り必至です。

舟盛り(999円)。ごはんとドリンクも付いてくる

 

さらに、特定の日だけ登場するメニューもあります。たとえば、この「舟盛り」!舟盛りは「赤字覚悟の月イチメニュー」の1つで、毎月10日にだけオーダーできます。この日は、エビ・マグロ・ネギトロ・イカ・サーモンの5種類が登場しました。

 

「これだけ手頃な価格なら、刺身のサイズも小さめ?」と思ったものの、ご覧あれ、このサイズ!街中で売られている刺身と変わりない大きさです。

 

食べてみると、エビはプリプリ、ネギトロもなめらかな口当たりで満足感がありました。今回はシンプルに刺身として食べましたが、ごはんに全部乗せて海鮮丼風にして食べるのも良いかもしれません。

学食で、まさかのすき焼き!?

飛騨牛すき焼き鍋(999円)。+50円でご飯の大盛りもできる

 

そしてもう1つ気になるメニューを発見。それは、この「飛騨牛すき焼き鍋」です。岐阜県のブランド和牛・飛騨牛に、えのき、豆腐、にんじん、白菜が入っています。

 

肉は手の平がいっぱいになりそうなほどの量で、ボリューム満点。さらに、生卵とごはん、ドリンクも付いてきます。

煮込んでいるとき、ちょっぴり周りの目線を感じました

 

注文すると、ガスコンロを貸してもらえます。そして自席で点火し、鍋を乗せてぐつぐつ煮込むこと2~3分。本格的なすき焼きのできあがりです!

 

タレは甘さ控えめで、濃すぎず薄すぎずのちょうど良い味付け。ついつい、箸が進みます。肉はブランド和牛だけあって非常に柔らかく、野菜や豆腐も大ぶりで食べごたえがありました。そのまま食べても良し、生卵につけて食べても良しで、一回で二度おいしいメニューです。

種類豊富なスイーツにも目移り

インパクトのある食事に目が行きがちですが、デザートもぜひチェックを。店内にはさまざまなケーキやプリン、パンも並んでいます。

ケーキは4種類ほど並んでいました。見た目からしっとり感が伝わってきます

パンもずらり。お手頃な価格もうれしい!

 

実はこの「SWEETS MAGIC Lab.」を運営しているのは、名古屋市内でレストランを展開し、高級プリンの製造も手掛ける企業だそう。店名に「スイーツ」と付いたり、豪華なメニューが登場したりするのも納得がいきます。

 

パンやスイーツはテイクアウトもできるので、ご飯を食べつつ、気になったスイーツやパンをおやつに買って帰るのも良さそうです。

 

さらに14時からはカフェタイム営業になり、また別のスイーツやドリンクが登場するとのこと。カフェタイムのメニューも、これまたおしゃれでバラエティに富んでいるようです。「今日はランチに」「今日はカフェタイム目当てで」と、何度も訪れたい学食です。

熟練シェフの味を手軽に!名古屋市立大学「waichi@TAKI teria」

2024年10月22日 / 美味しい大学, 大学を楽しもう

2023年4月に、名古屋市立大学 滝子キャンパスにオープンした「waichi(ワイチ)@ TAKI teria」。大学によくあるカフェテリアかと思いきや、プロの料理人が1皿ずつ丁寧に作る料理が、手頃な値段で楽しめるお店だとか。特にタコライスの評判はかなりのもの!お腹を空かせて行ってきました。

滝子キャンパス内に2023年にオープン

コンテナのような外観がおしゃれ

 

地下鉄「桜山駅」で下車後、住宅街を10分ほど歩くと見えてくる名古屋市立大学の滝子キャンパス。敷地内には、人文社会学部・経済学部・総合生命理学部・データサイエンス学部の4学部があります。

 

このキャンパスに2023年4月、新施設「TAKI teria(タキ テリア)」がオープンしました。そして、TAKI teriaの中にある飲食店が「waichi@TAKI teria」です。もともと市内で営まれていたイタリアンレストランが移転し、開店に至ったそうです。

店内はモノトーン調で統一され、落ち着いた雰囲気

 

テーブル席とテラス席があり、その数は約100席。気分や利用する人数などに合わせて、自由に選べるのも嬉しいポイントです。

看板メニューのタコライスは必食!

「waichi@TAKI teria」のスゴイところは、なんと料理人歴15年以上のシェフがメニューの考案から調理までを行っているところ。レトルト食品を一切使わないのもこだわりだとか!これは、かなり期待が高まります。

「タコライス」(650円)

 

まずは、看板メニューの「タコライス」。お茶碗2杯分ほどのご飯に、自家製タコスミート、トマトやレタス、アボカドがたっぷり入っています。温泉玉子もトッピングされていて、満足感はかなりのものです。ほどよく酸味とスパイシーさを感じる味付けで、一口食べるとやみつきになります。

黄味を絡めて食べるとマイルドに!

 

このタコスミート、なんと1時間も煮込まれているそうです。「タコライスがおいしい!」という噂は聞いていましたが、それだけ丁寧に作られているなら納得ですね。

 

「小柱と舞茸のペペロンチーノ」(680円)

 

パスタもひそかな人気メニュー。「小柱と舞茸のペペロンチーノ」は、小柱と舞茸のうま味を存分に味わえる、シンプルなペペロンチーノです。

 

香り付けのハーブも良いアクセントになっていて、レストランのパスタそのもの。辛さとにんにくは控えめで、辛いものが苦手な方、ニオイが気になる方でも安心して食べられますよ。

 

他にも、「自家製ボロネーゼ」(650円)や「ナポリタン」(680円)、「シチリア風唐辛子パスタ」(700円)など、バラエティ豊かなパスタが揃います。毎日食べても、飽きが来なさそうです。

このサラダとスープも、主役級の味わい!

 

さらに、各メニューに+250円でミニサラダとスープをセットにできます。取材日はキャロットラぺ・ポテトサラダ・ササミの和え物と、コーンスープが付いてきました。

 

このサラダの1品1品やスープも、じっくり作られていることが分かる味。特にキャロットラペは、「ボウルいっぱい食べたい……」と思ってしまうほどでした。

クレープも充実!季節限定メニューも

「レモンクレープ」(580円)

 

デザートメニューも充実。中でも14時から注文できるクレープ(330円~)は、おかず系も含めてなんと約40種類ものラインナップ!季節限定のメニューもあり、取材日には「レモンクレープ」が用意されていました。

トッピングにはドライレモンが!

 

もちもちの生地に自家製マーマレードと生クリームがたっぷり。甘さ控えめなので、食後でもあっという間に完食できそうです。クレープはテイクアウトもできるとのことで、おやつに持って帰っても良いかもしれません。

 

スタイリッシュな雰囲気の店内で、おしゃれな料理を手軽に楽しめる「waichi@TAKI teria」。こんなお店が学生時代に自分の大学にあったらかなり充実したランチ&おやつタイムが過ごせただろうな、と思わずにはいられませんでした。ランチタイムは学生や職員の方で混み合っていたので、開店直後か13時以降の来店がおすすめです!

行きつけにしたくなる味!名城大学「Green Bakery BOOK CAFE」のパンを食べ比べ

2024年9月5日 / 美味しい大学, 大学を楽しもう

10学部・24学科からなり 中部圏最大級の規模を誇る名城大学。名古屋市内に3つのキャンパスを構え 、それぞれに個性豊かな学生食堂やカフェが店を構えています 。

 

なかでも興味を惹かれるのが、天白キャンパス内の「Green Bakery BOOK CAFE」。店内のキッチンで焼き上げるおいしいパンを、たくさんの本と一緒に楽しめるとか。 パン好き・本好き必見の店内へ、いざ!

名城大学 天白キャンパス内のブックカフェ

地下鉄「塩釜口駅」3番出口を出て歩いていると、右手に郵便局や理容店が入った建物が見えてきます。この建物は名城大学の「校友会館」で、その2階にあるのが「Green Bakery BOOK CAFE」です。

「焼きたてパンあります」の看板にテンションが上がる!

 

広々とした店内には、テーブル席にカウンター席、1人がけのベンチシートなどがずらり。至る所にグリーンも飾られており、「本当にここが大学の食堂なの?」と思ってしまうほど落ち着ける空間です。

木目調で統一された、ナチュラルな雰囲気

1人でもグループでも使いやすいのもポイント。ブックスタンド付きのテーブルも数カ所あり、各テーブルでジャンルの異なる本が並ぶ

 

「ブックカフェ」と言うだけあって、店内のあちこちに本が並ぶのも特徴です。種類もさまざまで、文芸書やビジネス書もあれば、写真集もあります。購入はできませんが、どれも店内で自由に読むことができるので、お気に入りを探してみてください。

店内中央にも、大きな本棚が。インテリアもおしゃれ!

店内キッチンで焼き上げるパンに目移り!

「Green Bakery BOOK CAFE」にはキッチンが併設されており、毎日たくさんのパンが焼き上がっています。

 

カレーパンやサンドイッチをはじめとした惣菜パンに、食パンやバゲットなどの食事パン、フレンチトーストやドーナツなどのおやつ系パンまで! ざっと数えただけでも、30種類ほどが並んでいました。こんなにたくさんあると、どれを買おうか迷うこと間違いなしです。

惣菜パンは、生地がハード系のものが多め

見るからにサクサクのクロワッサンにも心惹かれる

大学の名前や地元の地名(八事山・やごとやま)にちなんだパンも!

安い!大きい!具だくさん!種類豊富なパンを食べ比べ

これだけの種類のパンが並ぶとなれば、いろいろと食べてみたくなる! そこで今回は、店内利用時に選ぶ人が多そうな惣菜パンとおやつパンの中から気になるものを見つけ、食べ比べをしてみました。

「バジルチキンサンド」(350円)とホットコーヒー。パンの価格+150円で、好きなドリンクとセットにできる。

 

まずは、ランチにもちょうど良い「バジルチキンサンド」。もっちもちのパンに、バジル味の鶏肉や新鮮なトマト、レタスがたっぷり!噛めば噛むほどバジルの香りや小麦の味わいが広がる、ごちそう感覚のサンドイッチです。このセットがワンコインで買えてしまうのは驚きです。

「名城カレーパン」(230円)。大人の手の平がいっぱいになるほどの大きさ!

 

大学名が付いた惣菜パンも発見! その名も「名城カレーパン」。持つとずっしりと重い、ビッグサイズのカレーパンです。一見普通のカレーパンですが、食べてみて驚き。なんと中には、カレー風味のパスタが!

生地の端から端までパスタがぎっしり。かなり食べごたえがあります!

 

持ったときこそ「こんなに食べきれるかな?」と思うものの、サクサクの生地と、濃すぎず薄すぎずのほどよい味付けのパスタが相まって、ついつい食が進みます。気付けばペロリと完食してしまいました。

左から「生ドーナツ(抹茶)」(240円)、「自家製発酵ドリンク(しっかりジンジャー)」(300円)、「フレンチトースト(はちみつ)」(180円)。

 

 

おやつ系のパンも要チェック。人気No.1の「フレンチトースト(はちみつ)」は、しっとりとした食パンを丁寧に焼いて作った一品です。一口かじると、優しい甘さが広がります。「生ドーナツ(抹茶)」も抹茶味のクリームがふんだんに入っていて、ケーキを食べたかのような満足感があります。

 

ドリンクだけの注文やパンの購入だけでの利用も可能で、お昼ごろになるとお目当てのパンを買いに来る人もちらほら。学生食堂でありながら、街のパン屋さん感覚で利用できる名城大学「Green Bakery BOOK CAFE」に、ぜひ訪れてみてください!

 

 

大人が自分のネガティブな感情に向き合うコツは?名古屋大学情報学研究科の川合先生に聞いてみた

2024年7月23日 / 大学の知をのぞく, この研究がスゴい!

2024年4月に名古屋大学から、こんな研究結果が発表されました。「怒りを感じたときは、その状況を紙に書き、クシャクシャにして捨てたりシュレッダーにかけたりすると鎮まる」。本当にそんなことだけで怒りが鎮まるの?そもそも、どのような仕組み?この研究結果を発表した名古屋大学の川合先生に、インタビューしてみました。

「怒りを書いて捨てると気持ちが鎮まる」って本当?

まず今回、川合先生が発表した研究とその結果の概要を大まかに解説します。

結論としては、「怒りを覚えたとき、なぜそういった気持ちになったのかを紙に書き出してから、その紙を捨てたりシュレッダーにかけたりすると怒りが収まりました」とのこと。

実験は次のような方法で行われました。

 

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1.  実験参加者(大学生100名ほど)に、指示したテーマで文章を書いてもらう
2.  1.の内容に「大学生が書いた文章とは思えない」と酷評をした用紙を渡す
3.  実験参加者に、2.を見てどう感じたか、それはなぜかを紙に書いてもらう
4.  3.で書いた紙を参加者自身で30秒間、じっくり眺めてもらう
5.  3.の紙を手でクシャクシャに丸めて捨てる・シュレッダーにかける・ただ裏返しにしておく、の3つを実施し、怒りがどの程度収まったか比較する

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評価した用紙。文章の内容を問わず、全員にこの評価で返却したそう

 

結果はこちら。横軸の「Baseline」が実験前、「Provocation」が酷評を見たとき、「Post-writing」が怒りを感じた状況を紙に書いた後となっています。縦軸の「Anger experience」は感じた怒りの度合いで、白い丸は紙を裏返したとき、黒い丸は紙を処分したときを指しています。

画面左のExperiment 1がゴミ箱に捨てたとき、画面右のExperiment 2がシュレッダーにかけたときの結果を示している(提供:川合先生)

 

白い丸と黒い丸の位置をそれぞれで見比べてみると、その差は歴然。怒りを感じるまでは白い丸も黒い丸も同程度の怒りを感じていますが、その後は黒い丸、つまり紙を処分したときのほうが明らかに怒りの度合いが減っています。

 

なお、紙をゴミ箱に捨てても、シュレッダーにかけても、同じくらい怒りを抑えられる効果があったそうです。

それは「ただのモノ」ではない?認知科学とプロジェクションとは

ところで、こんなユニークな研究をするに至った背景はどういったものがあったのでしょうか? 川合先生に尋ねてみると、さまざまな要素が関わっていることがわかりました。

 

――そもそも、なぜ今回の実験をしようと思われたのですか?

 

「私が十数年取り組んでいる研究テーマの1つに、『怒り』があります。普段は運転中に感じる怒りや高齢者の怒りなどを調べているのですが、さまざまな調査研究をしているうちに、腹が立つ気持ちを抑えたい、怒りをコントロールしたいと思っている人がかなり多いとわかってきました。

 

実は、怒りを抑制することは大切だといったことはローマ時代の書物にも記載があるものの、現在に至るまで怒りの効果的な抑制方法はほとんど見つかっていません。少し前からアンガーマネジメントという考え方も注目されてきていましたし、手軽にできる怒りの抑制方法はないかと考え、今回の実験を行うことにしました」

 

――今回の実験では、「書く」「眺める」「捨てる」という3STEPが重要だとのことですが、この「眺める」というのは何のために行う工程なのでしょうか?

 

「自分が書いた紙に、意味を重ねるためですね。認知科学で言う『プロジェクション(投射)』という考え方を活用しています」

 

――「認知科学」という言葉は初めて聞きました。どんな学問なのでしょうか?

 

「認知科学は、心の働きをコンピュータの処理になぞらえて理解しようとする学問です。コンピュータは、キーボードで何かを打ち込むことで入力という処理がされて、画像が出たり音が出たりという出力がされますね。それと同じように、人間の心を考えるんです。

 

人間があるモノを見て、これはこういうものだと判断するまでには、まず目から入ってきた情報を脳が処理し、記憶と照合するという流れがあります。たとえば私たちはリンゴを見ただけで『おいしそうだな』と思いますが、ではなぜ食べてもいないリンゴを『おいしそうだな』と思えるのでしょうか?……これを追究するのが認知科学です。

 

認知科学は世界的に見てもまだ新しい学問で、その歴史も60年ほどです。よく似ていると言われる心理学と比べると、方法論もまだそれほど固まっていません。でも、だからこそ色々な研究ができる面白い学問なのです」

 

――だから、今回のような研究もできたのですね。では、“プロジェクション”とは?

 

「簡単に言うと、モノや人に自分なりの意味を重ねて見る働きですね。青山学院大学の故・鈴木宏昭先生が提唱した考え方です。

 

たとえば一見何の変哲もない古いマグカップでも、ある人にとっては『小さいころから使ってきた大切なマグカップで、誰にも譲れない』といったように、お金にはかえられない価値があるモノとして感じることがありますよね。それは、その人がマグカップに対して特別な意味や価値を投影しているからなんです。

 

宗教もわかりやすい例ですね。神様の姿はどこにも見えませんが、信者達は『いる』と思っていて、古くから伝わる慣習に従ったり、財産を寄付したりしています。無神論者や他の宗派の人から見れば理解が難しい行為でも、信者にとってはとても価値のある行いなのですね。

 

プロジェクションについては、『ラバーハンド錯覚実験』という実験でも興味深い結果が出ています。まず自分の片腕を衝立で隠し、その隣に偽物の腕を置いてその腕を触ったり動かしたりする様子を見せて、偽物の腕が自分の腕のように感じる状態にするのです。そのうえで偽物の腕を叩かれると、痛みを感じた人がいたそうです。つまり脳が偽物の腕に見える情報を重ねた結果、『自分の腕だ』と認知してしまうんですね」

ラバーハンド錯覚実験の話は、なんだか脳のバグのように感じる……

 

――とても面白いですね。プロジェクションを私たちの暮らしに取り入れると、どういった効果が期待できますか?

 

「はい。プロジェクションが起こることを知っていれば、誰かに嫌な思いをさせる、あるいは自分が誰かから嫌な思いをさせられないで済むのではないかと考えています。

 

たとえば私のデスクにあるぬいぐるみたちは、他の人から見ればただのぬいぐるみです。でも、私からすれば、これは去年の卒業生のAさんが持ってきてくれた大事なもの、これは数年前に何かでもらったもの、といったように、全て違う意味を持つモノたちなのです。

 

つまり私なりにぬいぐるみたちに対する愛着やこだわりがあるわけで、勝手に捨てられたら困ります。そういったことが自分にも他人にもあるとわかれば、相手の気持ちになって物事を考えやすくなり、お互い気持ちよく接せられるのではないかと思いますね」

お話を伺った後に「これは川合先生が大切にしているぬいぐるみだから、優しく触ろう」といった気持ちになれたのも、プロジェクションの1つだろう

 

――確かに相手が持っているモノがただのモノではないとかれば、相手やそのモノに対する接し方も変わりますね。

 

「そうですよね。それにプロジェクションの考え方を応用すれば、人間がモノのどこに意味を見いだしたり、価値を与えたりしているのかがわかりますから、たとえばビジネスとして新しいサービスを開発するときにも大いに役立つのではないでしょうか」

大人が自分のネガティブな感情に向き合うには?

プロジェクションという言葉は耳慣れない言葉でしたが、例を聞くと「確かにそうだな」と思うことがたくさんありました。

 

では、このプロジェクションを意識的に行えるようになれば、自分の気持ちもコントロールできるのかも?川合先生に聞いてみました。

 

――プロジェクションは、物事に自分なりのフィルターをかけて見るようなことですよね。ということは、イラッとした出来事があったときも意図的にプロジェクションを行うことで、気持ちが落ち着けられるのでしょうか?

 

「そうですね、今回の研究結果と同じような効果が期待できるのではないかと思います。

 

自分の感情は目では見えませんし、『怒りという感情を消す、鎮める』とだけ言うと抽象的で想像しづらいので、怒りを覚えてもなかなか抑えられないでしょう。しかしそれを紙に書くなどして形として見えるようにして、その紙を処分すれば『怒りを消す』という行為が可視化できますからね」

 

――ちなみに怒りを覚えたとき、近くに紙とペンがない場合はパソコンやスマホを使っても良いでしょうか?

 

「はい、紙に書いて捨てたときと似た結果になると考えられます。

 

今ちょうど、デジタル媒体でも似た結果になるのか調査しているところですが、パソコンだったら、メモ帳などに怒りを覚えた理由を書いて眺め、名前を付けて保存した後にゴミ箱に入れれば似た結果になるでしょう。

 

タブレットでも同様のことが言えそうです。最近はタブレットをノート代わりに使う人も多いので、タブレットにペンで書いたものを眺めてから削除すれば、ある程度の効果が出るのではないかと」

 

――ではSNSに「こんなことがあった、ムカつく!」と投稿した後に、その投稿を削除するのはどうでしょう。要するにそれも「怒りの客観視」ではないかと思いますが……。

 

「データをとったわけではないので感覚的な話になってしまいますが、SNSに短文で愚痴を吐いて消しても、思うような効果が得られないかもしれませんね。

 

実は他の実験でも、怒った理由を客観的に書くのではなく『ムカつく』といったように簡潔に書いていた場合は、それほど怒りは抑えられなかったという結果も出ています。やはり、今回の実験のようにどういう状況で、なぜ怒りを覚えることになったのかをしっかり書いて眺め、そのうえで書いたものを処分することが重要そうです」

 

――ちなみに、先生なりの怒り発散術があれば教えてください。

 

「心理学でいう『再解釈』を心がけています。これは物事を別の角度から捉えなおすことなのですが、これを活用して腹が立った状況をそうでない状況に捉えなおしていますね。

 

たとえば電車で足を踏まれたときはムッとしますけど、その人は妊婦さんで足元が見えなかったのかもしれないとか、お年寄りで足がふらついてしまったのかもしれないと考えるようにするのです。

 

もちろん、なかなか難しいこともありますが……なるべくそういった考え方をしようと心がけていますよ」

 

 

 

***

 

日常生活を送る中でついカッとなったり、腹が立ったりすることは誰しもあるもの。でもその気持ちをなくそうとするためには、怒りに身を任せるのではなく、自分のネガティブな感情にきちんと向き合うことが大切なのかもしれませんね。

 

そうした意味でも、今回川合先生が発表した「怒りを感じた状況を紙に書いて眺め、処分する」という方法は効果がありそうです。怒りを覚えたときは、まず紙とペンを探すという習慣を身に付けたいものです。

人類や技術の“はじまり”に出会える場所。名古屋大学博物館

2024年6月13日 / 体験レポート, 大学を楽しもう

博物館は、どちらかと言えば「見る」時間が長くなる場所。でも名古屋大学博物館には、見て、触って、聞いてと、全身で楽しみながら学べる資料がたくさん!しかも、「日本でここだけ」の貴重な展示も多いとか。

名古屋大学に行ったことはあっても博物館は完全にノーマークでした……そんな展示が見られるなら!と、さっそく出かけてみました。

元・図書館を博物館に

博物館の外観

 

名古屋大学博物館は、国内5番目の大学博物館として2000年4月にオープンしました。

 

この建物はもともと「古川記念館」という名前で、名古屋大学の中央図書館として活用されていたもの。その後に新たに中央図書館が作られ、図書館としての役目を終えたことから、名古屋大学にゆかりのある資料を展示する博物館として再出発しました。

 

取材時に対応してくださった、門脇誠二先生(名古屋大学大学院環境研究科 教授)によると「収蔵点数は26万点ほどに上ります。大学所蔵の学術標本に、教員や卒業生が携わった多数の研究・開発の成果、教員からの寄贈コレクションなど貴重なものがそろっています。さらに、地域社会への還元も大切なミッションとして考えています」とのこと。どんな未知のものと出会えるのか、期待が高まります。

2階の常設展示室の様子。大きなマッコウクジラの標本がインパクト大!

 

建物の2階は「岩石・化石から学ぶ地球と生物の進化」「電子回折装置と名古屋大学電子顕微鏡開発の歴史」など5つのカテゴリーにわかれた常設展示室です。

 

3階は年1~2回の特別展が行われるスペース。常設の「ノーベル賞コーナー」があり、名古屋大学が輩出したノーベル賞受賞者の研究についても学ぶことができます。

受賞対象となった研究に関する実物模型なども見ることができる

 

「日本でここだけ!」を間近で

常設展示のなかで特に注目したいのは「国内でここだけ」「国内初」の貴重な資料。名古屋大学は、世界的な自動車メーカーもあり、モノづくりが盛んな東海地方を代表する国立大学であることから、さまざまな機器の開発にも携わってきました。

 

たとえば、日立製作所が1941年に開発した電子顕微鏡「HU-2型」。日本で最初の本格的な電子顕微鏡として作られた試作品2台のうち一方が、1942年に名古屋大学に設置されました。以降、学内では電子顕微鏡の研究・開発が盛んに。現在も研究は続けられており、最先端の電子顕微鏡開発にも大いに貢献しています。

どことなく、現在使われている顕微鏡のシルエットを彷彿とさせますね

 

博物館の入り口には、ドローンのプロトタイプもあります。こちらは1988年に、名古屋大学の教員と日立造船とが共同開発した、世界初の民生用ドローンです。

ダクテッドファン型 垂直離着陸(VTOL)実験機。大人の身長以上の高さがあり、迫力満点

 

これほどの大きさがありながら民生用とは驚きですが、今日使われている小型のドローンと比べると、進歩の度合いを実感できますね。

 

一方、歴史を遡って石器時代の資料にも注目を。こちらは175~30万年前の原人や旧人が使っていたとされる、人類最古のハンドアックス(握斧)です。名古屋大学の調査団が、1968年~1989年にかけてケニアやタンザニアなどの東アフリカで発見・収集した資料で、国内ではここにしか収蔵されていないのだとか。

じっくり見比べてみると、刃の形も少しずつ違うことに気づく

 

さまざまな時代の「はじまり」を表す資料を見ていると、それだけで人類や技術の壮大な進化の歴史を感じられます。

手でふれて楽しむ展示も

館内をめぐっていると展示物が思いのほか近くにあり「あまり博物館っぽくないな」と感じます。それもそのはず、館内は前身である名古屋大学中央図書館時代のつくりのままであるからです。

 

特に2階の常設展示室は、読書スペースとして活用されていた場所。最初から博物館としてつくられた訳ではないからこそ、展示品との距離が近くできているのでしょう。ガラスやショーケースで囲われている資料は比較的少なく、中には手で触れられるものもあります。

展示室中央に鎮座する骨格標本

 

ぜひ手ざわりを確かめてみたいのが、常設展示室中央のクジラの全身の骨格標本。全長は12mにもなります。これは2009年に名古屋港に流れ着いたマッコウクジラを名古屋大学が標本にしたもので、顔や歯、脊髄など、全身どこでも触ることができます。

背骨の部分。大きさは言うまでもないですが、太さや密度もスゴイ!

 

触ってみると、ゴツゴツ&ザラザラ……軽石やサンゴのような感触でした。骨格標本の展示をしている博物館は数あれど、本物をじっくり触れるのはなかなか珍しいのではないでしょうか。

 

ちょっとテイストの違う“触れる展示”もありました。こちらは、アザラシ型のロボット「パロ」。名古屋大学の卒業生が開発したロボットで、現在は国内外の児童養護施設やデイサービスセンター、病院などで、セラピー目的で導入されています。「世界で最もセラピー効果のあるロボット」として、ギネス世界記録でも認定されています。

ポーランドでも、ウクライナ避難民の心のケアのために活躍しているそう

 

ふわふわの体を撫でてみるとかわいい声で鳴いたり、手足を動かしたりしてくれて、とっても癒やされます!多くの人に愛されている理由がわかる気がしました。

学生発案の催しも要チェック

名古屋大学博物館は、子どもから大人まで参加できるイベントが充実していることも特徴です。年に1~2回の特別展に合わせたワークショップや、近隣のショッピングモールで収蔵資料を展示する「出張博物館」、屋外での自然観察と博物館での学習・実験を組み合わせた「フィールドセミナー地球教室」といったイベントを開催しています。フィールドセミナーでは、参加者と講師とで、名古屋市近郊に化石や鉱物の採集に行ったこともあるそうです。

 

また、展示室を会場にコンサートを開くこともあります。歴史ある資料に囲まれながら音楽を聴く…という体験ができる博物館は、筆者は初めて知りました!

館内でのコンサートの様子

 

こうした活動ができているのは、学生ボランティア団体「MusaForum(ムーサ・フォルム)」の協力が大きいそうです。名古屋大学博物館には、他大学の学生も含めて約140名のメンバーが在籍。イベントのアイデア出しから運営までを、活発に行っているとのことです。

 

今回、博物館を案内してくださった門脇先生からは、次のようなお話も伺うことができました。

「実は愛知県には“県立博物館”がありません。ですからその代わりというわけではありませんが、当館では地域の自然史や愛知のモノづくりにかかわる資料を多数展示したり、ワークショップやフィールドセミナーといったイベントも頻繁に開催したりしているんですよ」

 

なるほど、だからこそ展示のジャンルが幅広く、ユニークな催しも多いのですね。取り組みが功を奏し、創設当初は年間数百人にも至らなかった来館者が、現在では年間3万人を越えているとのこと。これからもおもしろい企画が登場しそうです。ふらっとお出かけする感覚で、定期的に訪れてみてはいかがでしょうか。

ご当地を感じるメニューも!おいしいパンとコーヒーが楽しめる、名古屋大学「CAFE BLANC」でホッと一息

2024年3月5日 / 美味しい大学, 大学を楽しもう

「旧帝大」のうちの1校で、東海地方を代表する大学である、名古屋大学。広々としたキャンパスには、何軒ものカフェやレストランがそろいます。なかでも注目は、駅からすぐの場所にある「ジェンダー・リサーチ・ライブラリ」と、併設の「CAFE BLANC(カフェ ブラン)」。いつ訪れてもおいしいパンとコーヒーが楽しめるとのウワサを聞き、さっそく伺ってきました!

「ジェンダー・リサーチ・ライブラリ」とは?

地下鉄「名古屋大学」駅の1番出口を出てそのまままっすぐ進むと、茶色の建物が見えてきます。こちらは、「名古屋大学ジェンダー・リサーチ・ライブラリ(GRL)」。名前の通り、ジェンダー問題を取り扱った書籍が多数そろっている図書館です。

学生以外でも閲覧・利用可能。企画展やブックトーク、講演会などが開催されることも

学生以外でも閲覧・利用可能。企画展やブックトーク、講演会などが開催されることも

 

小さな図書館ですが、多種多様な文献を収集・展示しており、フェミニズムやジェンダー問題に関心を持つ人々の学びの場として親しまれています。このジェンダー・リサーチ・ライブラリに併設されているのが、「CAFE BLANC」です。

CAFE BLANCはガラス張りの外観と、窓に描かれたパンのイラストが目印

CAFE BLANCはガラス張りの外観と、窓に描かれたパンのイラストが目印

 

読書の合間の食事にもぴったりなサンドイッチやドリンク、“名古屋”を感じるメニューがそろいます。学生や教職員、地元の人々でにぎわい、ランチタイムには満席になることも珍しくありません。

野菜たっぷりのメニューで栄養補給!

ランチにおすすめなのが、種類豊富なサンドイッチ。胚芽パンにハーブチキンと数種類の野菜を挟んだ「SANDWICH 1」(530円)など、8種類ほどを毎日店内で手作りしています。サンドイッチはパンのすみずみまで具が詰まっていて、食べごたえばっちり。希望すればホットサンドにしてもらうこともできるので、気分に合わせて食べ方を変えるのも良いですね。

 

お供のコーヒーには、「こくまろブレンド」(レギュラー350円)をどうぞ。豆は、名古屋市内のカフェ「ゴルピーコーヒー」のものを使用しています。ゴルピーコーヒーは、コーヒー豆の焙煎競技会で日本一に輝いたことのあるオーナーが営む人気店。酸味・苦味が控えめの優しい味で、サンドイッチの豊かな風味を引き立ててくれますよ。

「SANDWICH 1」と「こくまろブレンド」

「SANDWICH 1」と「こくまろブレンド」

 

もう少しボリュームが欲しい!という方は、「スープランチセット」(500円・フォカッチャ付き)を追加してみてください。スープランチセットは、具だくさんのスープにフォカッチャ2個が付くお得なメニュー。ヘルシーで食べごたえがあり、栄養チャージにもぴったりです。数量限定なので、早めの時間に行くと良いかもしれません。

撮影日は、オクラやごぼうなどの野菜と春雨が入ったスープが登場した

撮影日は、オクラやごぼうなどの野菜と春雨が入ったスープが登場した

 

これぞ、名古屋の味!おやつパンも要チェック

ちょっと小腹が空いたときに訪れて、カフェ時間を楽しむのもおすすめです。おやつに、「コッペアソート」(370円)はいかがでしょうか。ふわふわのコッペパンに、ピーナッツバターとあんバターを挟んだメニューです。

 

特にあんバターは、名古屋のモーニングには欠かせない小倉トーストを彷彿とさせる、「あんこ+バター」が手軽に楽しめる一品!「はちみつレモン(ソーダ割)」(470円)などお好みのドリンクもオーダーして、ほっこりおやつタイムを過ごしましょう。

ピーナッツバターは濃厚な味わい、あんバターは甘すぎない仕上がりで、ぺろりと完食できる

ピーナッツバターは濃厚な味わい、あんバターは甘すぎない仕上がりで、ぺろりと完食できる

 

ほかにも店内では、「パン・オ・ショコラ」(300円)を始めとした菓子パンやキッシュ、タルト、クッキーなども販売しています。店内でパンやコーヒーとゆっくり過ごす人もいれば、クッキーだけをテイクアウトする人もいて、思い思いの使い方ができるカフェでした。名古屋大学に訪れた際は、ぜひ立ち寄ってみてください。

ショーケースにはバラエティ豊かなパンが並ぶ。明日の朝ごはんに買っていくのも良いかも?

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