ほとんど0円大学 おとなも大学を使っっちゃおう

  • date:2019.2.26
  • author:南 ゆかり

闘う!大学交通広告に「必殺技」が出た。by 大阪経済大学

今、この瞬間もスマホを見ているあなた。いつも、読んでくださってありがとうございます!……いや、お礼は別の機会に述べさせていただくとして、今回は、電車内でもそうしてスマホばかりに向けられている人々の視線を振り向かせるべく死闘を繰り広げている、大阪経済大学の交通広告のお話である。

誰の胸にも届く「経済」の大学

2012年、大阪経済大学は、経済を学べる大学という特徴を訴える「経済」押しの交通広告シリーズをスタートした。広告のトーンを、それまでのオープンキャンパス・入試日程などの告知目的、あるいは広報キャラクター「はてにゃん。」浸透目的の若干かわいい系から一変。「アカデミックさや専門性の高さをアピール」する方向にかじを切った。受験生向けというよりは、保護者や学生の就職先となる企業のほか、普段、「大学」との接点があまりない方にも大学の名前を知ってもらうという目的を鮮明にした広告である。

 

「『大阪○○大学』という名前の大学はたくさんあります。一般の方に興味を持っていただくには、やはり、経済を学べる大学であることを訴求することだろうと考えました」(総務部長・山下一佳さん)

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総務部広報課のメンバー。左・総務部長の山下さん、中央左・広報課長の田中さん、中央右・白神さん、右・小林さん。

 

交通広告は対象を選ばず幅広い人に訴求できるので、大学の認知度アップのための広告メディアとしてふさわしい。そこで伝える経済の面白さは、高校生だけでなく広く一般の人にも腑に落ちるはずである。この試みの中で評判になったのは、2014年1月の交通広告だ。ここではモノトーンのリアルな町工場の写真から「経済とは何か」と呼びかけた。学内には「暗いのでは?」と危惧する向きもあったが、このポスターを見てわざわざ大学に連絡してくれた中小企業関係者もいた。「素敵なポスターを作ってくれてありがとう」。経済は、誰の胸にも届く可能性を秘めているのだ。

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町工場をテーマにした交通広告は、大学らしくない少しダークなイメージ

賛否両論は広告の当たり前

大阪経済大学では交通広告を、毎年、夏のオープンキャンパスがはじまる7月、推薦入試の出願がはじまる10月、一般入試時期の1月と、1年に3度、それぞれ1週間ずつ関西5私鉄、大阪市営地下鉄に掲出している。

 

「電車の中といえば、スマホに釘づけという人ばかり。そういう人にも、『えっ?』と目を向けてもらえるようなインパクトがどうしても必要です」(総務部広報課長・田中美也子さん)

 

2018年度までの7年間21本の歴史は、スマホ画面との闘いの歴史なのである。近年一番のヒット作となったのは、分厚い札束を手にした子どもたちが駄菓子屋で買い物をしている「ハイパーインフレはやってくるのか」だ。銀行や中学校の先生から、研修や授業に使いたいと連絡があった。

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何気ない日常と札束のギャップが面白い、ハイパーインフレ広告

 

インパクトを追求し注目される広告であればあるほど、賛否両論がある。個人情報をどこまでも守るなら将来こんなふうになってしまうかも? と後ろ向きの人ばかりが載った卒業アルバムの写真を使った作品では、「後ろ向きはイメージが悪い」という意見が寄せられた。超高齢社会をマイナスイメージばかりで捉える見方を変えようというキャッチコピー「高齢者を、日本が世界に誇る知的資源、と考えてみる。」には、「人を資源扱いするとは失礼だ」と叱られたこともある。

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後ろ向きの教師と生徒が目を引く、卒業アルバムを題材にした交通広告

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超高齢社会を扱った交通広告。資源という言葉が引っかかった人も

 

「見る人全員が100%褒める広告などあり得ません。むしろ、2、3割でも、ものすごく気に入ってくれたり、興味を持ってくれたりしたらすごいこと。本来、広告の役割はそういうものですよね」(山下さん)

 

批判を恐れるよりは、面白いものをつくろう。そうした流れの中で、機は熟したというのか、満を持してというべきか、いよいよ、かなりエッジの効いたインパクトのある広告が車内を飾ることになった。2018年度「必殺技シリーズ」である。

この「念」は経大のパワーだ

まずは、この3種の広告を見ていただこう。

 

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一つひとつの熱も結構あるが、3連チャンで見るといわゆるクセがすごい。最初にイラストとキャッチコピーが目に飛び込み→なんじゃこれはー?と思って視線を下げて大学名を確認し→コピーを読んで妙に納得する。キャッチコピーはどれもれっきとした経済用語なのだそうだが、どう見ても何かの必殺技にしか見えない。イラストレーターは回ごとに違う人を起用している。「コンドラチェフ波動」ならロボット系が得意な人といったように、それぞれの世界観にあった画風の人をわざわざ選んでいるのだ。

 

みなさんはどれがお好きですか? 私は「コンドラチェフ波動」です。コンドラチェフとは経済学者の名前だそうで、失礼ながら、よくもまあこんな武闘系のお名前があったものだと感動してしまった。「デューディリジェンス」では、おわかかりの方もおられるかもしれないが、はてにゃん。が化けちゃっている。

 

学内外問わず、SNSも含めて一番リアクションがあったのは7月に掲出した「神の見えざる手」だという。「制作会社さんと議論を重ねて仕上げていくのですが、当初はここまで神々しくなかったんです。『手と念をもっと強調しよう』『髪型はアダム・スミスにしよう』など、インパクトと独自性を持たせながら変化していきました」(総務部広報課・白神康裕さん)

 

アダム・スミスの髪型? ほんまや。世の中の動きを映し出す経済用語を、インパクトのあるイラストとともにどどーんと紹介する、という基本路線が決まった後、アイデアがほんとに数々でた中で絞り込まれた3本だけに、完成度へのこだわりは並々ならぬものがある。コピーの監修はもちろん各専門分野の先生方に依頼している。学内外からの反応はさまざまにあるが、担当者の方々は、一見ははじけているようでいて「ちゃんと実はある」というところが伝わったという手ごたえを感じている。

 

「今、本学にはパワーを感じます。学生や大学内に元気がある。それを伝えていると思います。しばらく続けることで『これは大経大だ』という認知につなげたいですね」(田中さん)

 

大阪経済大学では、2019年4月に新学長が就任する。新しい学長さんは、なんと44歳という若さ。しかも、4人いる学部長も同時期に新しいメンバーに代わる。13年後の2032年に迎える100周年に向け、新たなミッション、ビジョンもそろそろ発表される予定という、まさに改革の節目。そんな機運を表現するには、賛否両論大いに結構の話題性のある広告でなければ、ということなのだろう。

 

実は、田中さんには今年度の3点と迷い抜いた1点があるとか。「みんなに、今はやめとけと言われた」というから、次年度以降にぜひ見てみたくなる。次年度は、この基本路線に沿った広告アイデアを学生と教職員からも公募する「学内『必殺技コンペ』(もちろん仮題)」の構想もあるそうだ。

 

今回、取材にあたって、歴年の広告シリーズを見せていただいたのだが、並べると圧巻だった。経済とこんなふうに出会えると、もっと人は経済を知りたくなるのかもしれないな、とも思う。さあ今年7月、どんな広告が車内の視線を奪還するのか、必殺技を期待して待て!

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