選挙権が十八歳に引き下げられてから、二年が経ちました。
まだまだ効果はピンとこないですが、若者たちはこれに対してどう考えているのでしょうか。
今回はこれまで制作風景を取材してきた大阪芸術大学文芸学科の長谷川ゼミが作る『我樂多文庫』が完成したとのことで、その内容をご紹介。
(過去の記事はこちら:学生が作る本格雑誌『我樂多文庫』@大阪芸術大学①・②)
今号のテーマは「セーラー服と投票箱」。選挙権引き下げにより、増えた有権者の数は240万人。大阪芸大内で行ったアンケートでは選挙について興味がないと答えた人が多かったそうです。
そんな状況のなか、本誌では若者と政治というテーマに真っ向からぶつかっています。
企画は政治や将来に関することを幅広く扱っていて、「ゆとり」「就職」「奨学金」「ブラックバイト」「マイナンバー」「人口」「TPP」などなど……。
「今世間の何が問題か」ではなく、「今私たちの問題は何か」と若者を啓発していくかのようで、その熱意を感じることができます。
各企画ごとに統計データ等を使って視覚的にわかりやすくしていて、読者を意識した工夫を感じました。これなら政治に興味のない学生たちに少しでも興味を持ってもらえるのではないでしょうか。
いくつか企画の内容をご紹介します。
『十八歳、選挙権。』
先にも触れたように大阪芸大内でのアンケートにおいては、選挙に対する興味が薄い学生がほとんどでした。なにがわからないのかが、わからない選挙状態。
企画の中では新しく選挙権を得た十八歳の一回生と選挙に行き、フレッシュさのある文章を掲載しています。
「たった五分をめんどくさがらずに、日本の未来のために行動してほしい」
「選挙に行かなかった若者たちも、日本の未来に責任をもち、考え、積極的に選挙へと参加してほしい」
という言葉は、私にも突き刺さりました。
『「ゆとり」を言い訳にしない』
そもそも、ゆとりとはどういうものなのかといった疑問から、なぜゆとりが批判されているのか。学力低下が叫ばれているが、それはゆとりのせいなのか。
勉強以外にも「ゆとり」という言葉が侮蔑的に使われがちだが、「敬語が話せない・やる気がない・言われたことしかやらない・打たれ弱い」等という特性はゆとり世代だけの特性なのか。ゆとりについてさまざまな角度から解説しています。
最後には「自分から進んで学び、行動し、実現させていくというのはどの世代の人にもたいせつだ」という言葉がありました。
本当にその通りだと思うし、ゆとり世代の私自身も、「ゆとり」の言葉のイメージが変わりました。
『ブラックバイト~働く学生を苦しめるもの~』
ブラックバイトとは、学生が学生らしい生活を送れなくなるバイトのことを指しています。この企画では、ブラックバイトのチェックシートやアンケートグラフ等を用いてこの問題をわかりやすく説明。また、筆者の体験談などを交え、具体的に例を挙げています。
被害を受けた時はとにかく相談し、場合によっては学生団体に頼るのも手なんだとか。なるほど、学生には必要な知識ですね。
『政府の監視が強まるマイナンバー』
記事の中で、マイナンバーを「刑務所の一元管理と一緒」という言葉があり、それと同時に、「今まで分散されていた個人情報が一元化することによって、どこかでひとつ漏れるとその人のすべての情報が露わにされてしまう。もしそれが犯罪に使われたら大変だ」と。
これまではふわふわとしたマイナンバーへの認識に、危機感を持ちました。この情報社会では、どのような手段で自身の情報を悪用されるかわかりません。非常に興味深い記事でした。
上記のものはごく一部ですが、学生が主体性を持ってこれらの問題にぶつかっていくというのは、それだけで価値があると思います。
若者たちだけでなく、大人たちにとっても、かなり濃い内容の雑誌となっているのではないでしょうか! 若者の本音をぜひ読んでみてください。