緊急事態宣言が解かれたとはいえ、さまざまな「想定外」の状況が続く日々。不安やイライラに心が揺れてしまうことも多いのではないでしょうか。
想定外の時代を生き抜くためにはどうすれば良い?そんなタイムリーなテーマで行われた、関西大学梅田キャンパス「KANDAI Me RISE」(以下ミライズ)主催のオンライントークイベントに参加してきました。
ほとんど0円大学初、オンラインイベントのレポートです
展開は予測不能。想定外のトークがスタート!
今回のトークイベントのテーマは「想定外の時代を楽しむリーダーシップ」。7月から開講される「ビジネススキルとしての“EI=感情的知性”開発セミナー」第2期のキックオフイベントとして開催されました。
当初はミライズで対面型イベントとして行われる予定でしたが、外出自粛要請に伴い急遽オンラインでの開催となりました。
ゲストに迎えるのは、ABCテレビ「探偵ナイトスクープ」の番組立ち上げから関わり、初代探偵としても知られる越前屋俵太さん(関西大学 総合情報学部特任教授)。
聞き手は、EIセミナー本講座でも講師を務める組織変革コーチの吉田典生さんです。
関西大学の先輩後輩でもある2人が、「想定外を楽しむ」をテーマに参加者も交えて大いに語り合いました。
ゲストの越前屋俵太さん。専門は「現場の実論」。京都大学では「京大変人講座」のディレクター兼ナビゲーターとして、関連本もプロデュース
ホストは吉田典生さん。一般社団法人マインドフルリーダーシップインスティテュート理事
「今回はできるだけ双方向で、やりとりしながら進めたい」と吉田さんが水を向けると、「今日は全員としゃべるよ!」と俵太さん。「●●さん、何飲んでるの?」「●●さん、その背景いいね」と40名を超える参加者にどんどん語りかけます。
お二人のトークで進むのかと思いきや、いきなり想定外の展開!
道行く一般人をいきなりテレビ番組に巻き込む手法を考案した俵太さんにとって、参加者との双方向のやりとりは、いわば十八番ともいえるスタイル。独特のゆるい雰囲気に包まれ、皆さんの緊張もすぐにほどけていきます。
イベント中の入退室や離席、飲食なども自由で、それぞれが自宅でリラックスしながら参加できるのもオンラインならではの環境です。
オンライン会議ツール、zoomを使って実施。画面には参加者の顔が並びます。越前屋俵太さんのファンや吉田典生さんの講義の受講生という方が続々と集まりました(参加者の方はプライバシー保護のためぼかしています)
「今日はなんで参加したんですか?僕に何か聞きたいことある?」と問いかける俵太さんに、参加者からは次々と質問が。
「私も今50代半ばですけど、この先に走れる期間って限られている。俵太さんはこの先10年何をして生きていこうとされていますか?」と質問が挙がると、「何にもわからないよ」と俵太さんは笑います。
「僕が大学で教えている学生たちも、みんな何をしていいかわからないんだよ。でも僕もわからないよって言ってる。自分はこうだと決められないことを、自己否定してしまう学生が多いんだけど、僕は決まってなくてもいいんじゃないかと思う。やりたいことも毎日変わるしね。出会う人によって変わるじゃない。ピカソなんて付き合ってる彼女が替わるたびに芸風変わってたわけよ(笑)。そんなもんだよ」
心を軽くしてくれるような、軽妙な語り口に引き込まれていきます。
とことん考え尽くしたら本能に従う。
ある日一切の仕事を辞め、5年間山に籠もった経験を持つ俵太さん。会社を辞めるか悩んでいるという参加者からは、「俵太さんにとって辞める覚悟とは?」と質問が挙がりました。
「僕もずっと考えていたけど、覚悟とは何か、言葉で理解しようとしているうちは無理だよ(笑)。例えば大人は、無にならなきゃって思ったりするけど、子どもの頃そんなこと考えてました?楽しいから夢中で遊んでたら、いつの間にか無になっている。大人は思考する力が付いてしまったがために、本能で生きることを忘れてますよね」
ただし、考えることはけっして無駄ではないと俵太さんは続けます。
「考えるのがダメだとは言いたくない、僕も考え続けてきたから。考える時は考え倒したほうがいいです。これ以上考えられへんってくらい考え倒したら、ちゃんと休む。あとはやりたいことをやってたらいいんじゃないですか」
ついあれこれ考えてしまって、がんじがらめになってしまうという経験があるのは筆者だけではないようで...チャット画面には「楽しいことを本能で選んでいけばいいですね」などのコメントが多く寄せられていました。
参加者の反応がリアルタイムで見えて、「そうそう!」と共感したり「そんな考え方もあるのか」と気付いたりできるのもオンラインならではの面白さです。
前のめりに参加者とのやりとりを楽しむ越前屋俵太さん
吉田さんは時折俵太さんに時折ツッコミをいれつつ、参加者との会話を橋渡し
いったん壊して再構築する勇気を。
ほとゼロ編集部にも質問の機会が巡ってきたので、現在7つの大学で教鞭を取る俵太さんに、これからの大学についてお聞きしてみました。
大学のリモート授業でも「全員としゃべる」と決めているという俵太さん。従来の授業のように教員が一方的に話すのではない、教員と学生の新しい関係性が生まれていると語ります。
「リモート授業をきっかけに、授業の在り方、大学の在り方が変わってほしいと思います。改革派、変えなきゃいけないと思っている人たちにとってはすごくチャンスではないかな」
「現状に満足しない人は必ずいる。でも現状に甘んじて自分のポジションを守りたい人もいる」と俵太さんは続けます。革命を嫌う人もいる、そしてその気持ちは他人だけでなく自分の中にも存在すると指摘します。
「せっかく頑張ってきたんだから、キャリアはつぶしたくない。それでもやっぱり僕は、昨日の自分を否定してみようと思って、一切の仕事を辞めた。辞めたことで新しい自分に会えたような気がする。スクラップアンドビルド、いったん壊して再構築するっていうことだよね。大学では、リフレーミングという手法を学生たちに伝えています。枠をチャラにして、もう1回枠を作り直す。リフレーミングの手法を身に付けると楽しい。でも勇気がいるよ」
そんな俵太さんの言葉に対し、「リフレーミングしたいけど、なかなかできない。もう数年悩んでいる」という参加者も。「僕も辞めようと思ってから3年くらい悩んだ。そういう時は無理しないほうがいいよ。いずれ何かきっかけが出てくるから」と答えてくれました。
今だからできることを考えてみよう。
あっという間に90分が過ぎ、イベント終了の時間に。「最後に一言だけいいですか?」と俵太さんがこんなエールを送ってくれました。
「今の状況をネガティブに捉えるんじゃなくて、今だからできることって何だろう?と考えることで面白くなるんじゃないかなと思います。ニュートンはペストの流行で大学が休講になった期間に万有引力を発見した。彼はその期間を“創造的な休暇”と呼んでいたそうです。そう考えると、今も大切な時間なのかなという気がしますね。日本人はちょっと頑張りすぎ、忙しくて考える時間がない。だから今は考える時間を与えてもらったんじゃないかと僕は思ってます」
5年の山ごもりを経て毒素が抜け、身体が軽くなったという俵太さん。実体験を経た言葉には重みがありました
終了後のチャット画面には、参加者から前向きな言葉が次々と書き込まれ、皆さんの表情もどこか晴れやかに見えたのが印象的でした。
まだまだ先が見えない日々ですが、この想定外の今をしっかり大切にしようと自然に思えるようなひとときでした。