“働き方改革”や“女性活躍”という言葉、最近よく耳にしますね。企業など働く場だけではなく、大学でもその社会的課題を解決しようという動きが生まれています。そこで2017年2月に開催された大阪大学のシンポジウムを取材しました。
女性活躍が社会問題解決の一手に!
今回お邪魔したのは、大阪大学シンポジウム「共創の好循環へ ―女性が輝く関西をめざして」。定員を超える約400名が来場した注目度大のイベントでした。
シンポジウムでは、元厚生労働事務次官の村木厚子さん(大阪大学男女協働推進センター招へい教授)、西日本電信電話株式会社代表取締役社長の村尾和俊さんの講演が行われ、村木さんは世界と日本の女性活躍の動向について、村尾さんは関連会社の女性技術社員の活躍について、ユーモアたっぷりにお話。
多くの参加者が熱心に聞き入った
続いて、大阪大学の西尾章治郎総長、国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所※の米田悦啓理事長、ダイキン工業の澤井克行執行役員が、それぞれの取り組みを紹介し、村木さん、村尾さんを交えてのパネルディスカッションも行われました。
※創薬科学研究による知識、技術の創造、健康、栄養及び食品に関する研究等を行う。
パネルディスカッションでは質疑応答も
では、今、なぜ女性活躍が必要なのか。シンポジウムによると、日本の人口減少に理由があるようです。少子化や高齢化はもちろん、生産年齢(15歳〜64歳)人口と呼ばれる、社会を支える人の数が減り続けていることが問題となっています。
しかも生産年齢人口の約半分を占める女性は出産や育児などで、仕事をしていない、または辞めてしまう人が多く、生産力は低くなってしまう。だからこそ、女性が出産後も育児中も活躍できる環境やシステムが不可欠なのです。
さらにシンポジウムでは、環境を整えることは、女性を優遇するという意味ではなく、男性にとっても、またどんな立場の人にとってもメリットにつながることが話し合われました。
大阪大学がはじめる新たな事業とは?
では、そんな社会状況をふまえた阪大による取り組みとはどんなものでしょうか?
取り組みについて話す大阪大学の西尾総長
実は大阪大学は10年以上にわたって、医薬基盤・健康・栄養研究所とダイキン工業株式会社と連携し、共同研究を進めてきました。
その実績もあり、この3機関を共同実施機関として、文科省科学技術人材育成補助事業「ダイバーシティ研究環境実現イニシアティブ(牽引型)」(平成28年度~平成33年度)に採択。
この事業は主に“リケジョ”とも呼ばれる女性研究者の活躍を推進するもので、共同研究や人的交流、学び直し・学位取得を図る「女性研究者循環型育成クラスター」を形成し、その仕組み、運用方法を3機関が拠点とする北摂から日本の産学官連携、女性活躍に広げていくことが目標です。
リケジョ、リケママが未来を担う!
大阪大学ではプロジェクトの運用がさっそく始まっており、女性研究者がプロジェクトリーダーを務める共同研究は5つの分野で実施中。国立大学最大規模の学内保育園があるので、ママ研究者も多いといいます。
また、大学と企業、企業と研究機関など複数の機関に所属して活躍、給与をもらえる「クロスアポイントメント」という制度も導入。職場で研究を続けながら大学で学び直し、学位を取得することも安心して行えるのです。そんな女性研究者が身近にいれば、女子学生にとっては憧れのロールモデルになるはずです。
さらに阪大では、ダイキン工業で女子学生向けのインターンシップを行ったり、女子中高校生に向けたリケジョセミナーの開催、現役リケジョによる魅力発信も行っています。
というのも、「リケジョは就職や活躍が難しい」と思っている受験生や保護者が未だに多いことが理由の一つ。もちろん、女性研究者の活躍の場がもっと整えば、リケジョを目指す人は増えるでしょう。
2018年度からはこのプロジェクトに新たに7つの企業、研究機関が参加をする予定です。日本の未来の希望にもなるこのプロジェクトに期待したいですね。
取材協力:大阪大学21世紀懐徳堂