立命館大学にエンタメ系雑誌を発行している学生団体があるらしい。雑誌といっても本屋に陳列される商業紙ではありません。しかし中を見てびっくり。読み応えのある記事に作り込まれた紙面。ぱっと見でこれが学生の作った雑誌だと思う人は少ないのではないでしょうか。
今回はこの「SPOT」をつくったSPOT編集部に話を伺いました。
業界の裏側に光を当てる「SPOT」の目的とは
SPOTとは、立命館大学の登録団体である「SPOT編集部」が定期的に刊行している、エンタメ業界、とくにアニメやマンガ、ゲームなどの業界について取り上げた雑誌です。編集部ではこの雑誌の刊行の他、雑誌に関連するイベントなども実施。
主に雑誌の編集を担う編集部と、イベントを主催する事業部、誌面デザインを行うデザイン部、そして最近新しく立ち上げたアニメ制作部と4つの部署で成り立っています。学生団体ではありますが、最近立ち上げたアニメ制作部では既存企業のように細かく役割分担をし、一般的なアニメ制作と同程度の制作スケジュールでアニメをつくるなど、企業的な体制が特徴です。
所属している部員は現在30人超。エンタメ業界に興味があり、その業界への就職をめざす学生が多く、実際にめざす業界へ就職した卒業生もいます。OBや他大学の学生も関わるインカレサークルとして活動しています。現在は立命館大学だけでなく東京にも支部を置き、活動をしているそう。
「元々は、すでに卒業された先輩方が、 立命館大学内にある『メディア芸術研究会』で季刊誌を発行していたのですが、研究会の色が濃く、さまざまな業界の方にインタビューをしたインタビュー集を別に作ろうということからはじまったのがSPOTです。その後2015年に『SPOT編集部』として独立しました」と語るのは、取材に協力いただいた副編集長の関戸さん。
立命館大学SPOT編集部副代表 関戸覚 さん
「『SPOT』という名称は、普段あまり表に出てこない業界を支える裏方にあたる方々にスポットを当てたものにしようという理念がもとになっています。さまざまなイベントでの販売に加えて通信販売も行っています。また発刊の際には巻頭特集に協力いただいた方を招いての記念イベントも開催しています」とのこと。
2017年10月現在、最新号は7号。11月下旬 には8号の発行も予定されています。
一見商業紙と見まがうデザインだけでなく、掲載されている記事の濃さも一見の価値あり。6号ではジブリ映画のプロデュースにも関わる鈴木敏夫氏のインタビューを掲載。もちろん取材の依頼から当日のインタビュー、記事執筆まですべてこの編集部内で行っています。
今年9月には京都で毎年開催される「京都国際マンガアニメフェア2017(京まふ)」にも学生団体として初めて参加。「来年以降も参加するかは未定ですが、非常に勉強になりました」と関戸さん。
このイベントで発行されたvol.7では同イベントの裏側について取材し、大きく特集記事として掲載しています。
『SPOT vol.7』の紙面。さまざまな角度で「京都国際マンガアニメフェア」について掲載している
「京都国際マンガアニメフェア」当日のブースの様子(提供:SPOT編集部)
「京都国際マンガアニメフェア」のブースで流されていたSPOT編集部の紹介PV(提供:SPOT編集部)
フェアでは7号の表紙を飾った岡本信彦氏が出演する多作品のイベントが開催されていたこともあり、岡本氏のファンが大勢ブースに訪れたそう。一時は長蛇の列ができるなど、盛況だったといいます。
おもしろさだけではなく、業界の現在を伝えたい
企画で重視していることは、業界の現実を真摯に伝えるということ。
「5号、6号 では度々問題になるアニメ業界の人材育成についてなどを深掘りしています。こういった各号の大きな特集には業界の現状をしっかり伝えられるようなものをもってくるようにしています」
とくに反響が大きかったのは、3号の「地方化するアニメスタジオ」という特集。あまり意識したことがありませんでしたが、京都アニメーションをはじめ、有名なアニメ制作会社でも都市圏から離れた地方で活動する制作会社は少なくありません。
記事では制作会社WHITE FOXの伊豆高原スタジオを写真とともに紹介している
今後はSPOT8号の発行のほか、11月には表紙に登場予定の山谷祥生氏を招いた記念イベント、12月には「アニメ業界セミナー」を開催予定だそうです。
「SPOTはエンタメ業界への就職を目標に活動しているメンバーがほとんど。実際にこの編集部からさまざまな会社に就職した実績もあります。今後もこのつながりを大切にしながら、チャレンジを続けていきたいです」