大手前大学で非常勤講師を務めておられる山田義弘先生。どのような経緯で小惑星に「Otemaedaigaku」という名前をつけることになったのでしょうか? 後編では気になる疑問、全部伺ってきました!
山田先生が教える“数式を使わない宇宙科学”については前編をチェック!→星に大学名が付けられた!? 小惑星「Otemaedaigaku」(前編)
山田義弘先生(大手前大学 非常勤講師)
喫茶店の会話から生まれた「Otemaedaigaku」
――「Otemaedaigaku」誕生のきっかけを教えてください。
「2016年は大手前大学が創立50周年を迎えるので、何か記念になることをしたい」と元々大手前大学の教授で、天体の軌道計算を研究してらっしゃる長谷川一郎先生と話をしていて。それならば小惑星に名前をつけてはどうかと提案したんです。
そして準備をはじめて、IAU(国際天文学連合)小惑星センターに申請をして…という流れです。
――準備で大変だったことはなんでしょうか?
小惑星に名前を付けるには、なぜその名を付けたいのかを説明する必要があります。それも感情論では通用しないので、論理的に書かなくちゃいけない。大手前大学では宇宙に関する学問に専門的に取り組んでいるわけではないので、どうして小惑星に「Otemaedaigaku」という名前をつけたいのか、その辺りを説明しなくてはいけなかった。ですから、大手前大学がまだ女子大だったころ校章に星が使われていて星に由縁があることだとか、天文サークルがあり、天体に興味を持つ学生がいるのだとかそういったことを英語で文章に起こすのが大変でしたね。
あと、一度その名前が認められると、修正が効かないんです。だから間違いが無いか、何度も確認しました。
――IAUが名前を決める基準ってどのようなものですか?
名前が決定したら学名となりますので、宗教家、政治家、ペット等の名前は付けられないことになっています。現在は民間会社の社名もダメですね。営利目的としての利用が許されていないんです。
あとは、名前候補の発音が、各国の言葉で公序良俗に反したモノではないかどうかなどでも判断しています。日本ではキレイな意味でも、他国では卑猥な意味になってしまう、というのもありますから。品位を意識して認定するかしないかを決めています。
――ユニークな名前がついた小惑星は他にどんなものがあるんでしょうか?
「Issunboushi(一寸法師)」、「Anpanman(アンパンマン)」、「Kaguyahime(かぐや姫)」、「Totoro(となりのトトロ)」などの童話やアニメ系、「Shijimi(しじみ)」、「Jakoten(じゃこ天)」などの食べ物系もあります。
あと、2001年に行われたJAXAのイベントで子どもを対象にアンケートを行い、その結果を小惑星につけよう! という企画があり、私の仲間であり「Otemaedaigaku」の発見者でもある渡辺和郎氏が「Takoyaki(たこ焼き)」という名前をつけました。たこ焼きについて、真面目に英文で説明するのは大変な作業だと言っていました(笑)
――今回、他にも名前の候補はあったんですか?
今回は「Otemae University」という候補がありました。でも、それだと英語圏の大学だと思われてしまうかもしれないと「Otemaedaigaku」になりました。
――「Otemmaedaigaku」は夜空のどこを見れば見えますか?
「Otemaedaigaku」は火星軌道と木星軌道の間にあり、地球から約3億1千万キロ離れた場所で、太陽の周りを3.5年かけて1周しています。直径が約8キロメートルと小さく、肉眼では見えない明るさなので、観察するには天体望遠鏡が必要ですね。
「Otemaedaigaku」の場所がこちら
――今回、大学の名前がつけられたということで、周りからの反響はありましたか?
大手前大学が女子大だったころ、校章が星のカタチをしていたんです。そして今年50周年を迎えるにあたり、星に大学の名前がついた。それには大きな意義があるとの声を学内より、いただいています。
今も校舎の一部に残る当時の校章
今回お届けしたのは大学が50周年を迎えることを記念して、小惑星に大学名が付くという、なんともロマンあふれるお話でした。卒業生の方々からすると、母校の名前が空に浮かんでいるんですよね。なんだかすごく夢があって羨ましいです。
もしかすると、みなさんの母校の名前が小惑星になる日がやってくるかもしれませんね。私も楽しみに待っていよう…! そう思った一日でした。