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  • date:2021.1.12
  • author:蔵麻子

覆面トーク企画がアツイ!ネットが沸いた「京大100人論文・オンライン全国拡大版」

100人論文7

《京大100人論文》とは、京都大学の研究者が研究テーマを匿名で掲示・意見交換を行うことで、肩書きや立場に縛られない本音での学問的対話をめざすイベントです。8回目の開催となる2020年度は、新型コロナの影響から初のオンラインでの開催に。京都大学関係者に限らず全国誰でも研究テーマを掲示できるようになりました。

 

昨年もこのイベントを取材したほとゼロとしては、果たしてオンラインでもこれまでのような研究者同士の交流ができたのかが気になるところ。企画を担当した京都大学 学際融合教育推進センターの宮野公樹 准教授に、イベントを終えての感想を伺いました(昨年のレポートはこちら)。

papers

昨年のリアル開催の様子。研究テーマ掲示者87名に対し、来場者は534名。書き込まれた付箋は約1300枚に及んだ

オンラインだからこそ、オンタイムでの対話が実現

《京大100人論文》は主に京都大学を会場に毎年開催されてきたイベントです。従来のリアル開催では、研究者が「生涯かけて追いかけたいテーマ」を端的にまとめ、ポスター発表のように会場に掲示。そこに来場者がコメントを書いた付箋を貼りつけていくことで、肩書に囚われない研究者同士の交流や研鑽を生み出していました。

 

しかしオンライン開催となった今回は手法を一新。バーチャルホワイトボードMiroに研究テーマが並び、ネットを通じて誰でも自由にバーチャル付箋でコメントすることが可能となったのです。これにより前回よりも付箋でのやりとりが格段に増えたと、宮野先生は言います。

 

「やってみたら100人論文は、想像以上にオンラインがぴったりなイベントでした。取り組みの本質は同じなんですが、まず参加者が九州から東北と門戸が大きく開けました。またリアル開催のときは、付箋で感想や意見を募り、希望者には後日マッチングという流れでしたが、今回はバーチャル付箋でのオンタイムでの対話が発生。勝手に線を引っ張って付箋と付箋を紐付けるなど対話を拡大する人まで出てきまして(笑)。まるで生命が生まれるかのように、主催側の意図を超えて独自ルールが発展していったのが衝撃でした」

100人論文4

オンライン開催の会場となったバーチャルホワイトボードMiroの様子。2020年12月11日〜15日の5日に、研究テーマ掲示者は127名。来場者はカウントできなかったが、付箋紙はおよそ2010枚と昨年を大幅に超えた

 

数多くの学術的な研究テーマの中には、「なぜ人は化粧をするのか」という女性としては気になるテーマや、「学校で『働くこと』をどう伝えるか?」という教育者の苦悩が垣間見えるものも。またイベント自体への感想や意見を貼り付けられる掲示板には、地方参加者からの「長野です。今日は雪」というような情緒あるコメントも。全国各地から仕事や勉強の合間にMiroを開いて参加していた人が多いことを伺わせました。

 

「開催にあたってはギリギリまで試行錯誤していたので、全体的に『こういうオンラインイベントを待っていた!』という反応が多くてホッとしました。遠方の方ですとなかなか京都まで来れませんからね。『ずっとうらやましかった』とか『オンラインになったおかげで参加できた』なんて感想も寄せられ、イベントが時空を超えたように感じました」

100人論文5

掲示された研究テーマには、多くのコメントが付箋にて寄せられた。最も付箋の数が多かったのは「自死を問う:生きる理由と死ぬ理由」という研究テーマ。救急集中医療医のコメントもあり本気・本音の対話が発生

予定調和は一切なし!トークセッションでフェスのような盛り上がりに

《オンライン拡大版!》と銘打った今回の京大100人論文では、新たな取り組みとしてラジオ形式のトークセッションを同時開催。平日や深夜のオンエアがあったにもかかわらず、多くの視聴者を集めました。

 

「ライブトークを取り入れたのは、『論文を掲載するだけのオンラインイベントに人が集まるのか?』という疑問があったからです。ならば『フェスのような感じで、トークセッションをライブ配信し、それを聴きにくる人がついでに論文を見るというスタイルにしてはどうか』と考えました。僕自身がラジオ好きだったのも影響していますね(笑)。音声だけの配信なら、何か作業しながらでも聞くことができるでしょう?」

プリント

院生から学術界の大御所にジャーナリスト、企業人や省庁職員までが登場してそれぞれの視点で自由に意見を交わした《Live TALK》は5日間で6回開催された

 

プログラムに出演者が顔出しで紹介された《Live TALK》に対し、論文を発表した研究者の中から『この研究者とこの研究者が対話したら面白いのでは?』と宮野先生が出演をオファーしたのが《X-TALK》です。こちらはなんと、全員が完全に初対面での覆面対談!

 

「《X-TALK》は、顔も名前も肩書も一切出さずに学問への関心を本音で自由に語り合えるというのが良かったんでしょうね。実に面白い発言がたくさん飛び出しました。中には『この対話をやるためにこの企画をやったんだ』と思うほど、深い学問的対話が生まれた回もありました」

 

即興トークの盛り上がりを、来場者もオンラインでコメントしながら楽しく視聴。まさにフェスのような一体感が生まれた5日間だったのです。

研究の道を選んだときの初心を思い出そう!

自分の学問的関心を自由に主張できるこのイベントですが、研究テーマを受け付けるにあたり、宮野先生には譲れないポイントがありました。

 

「募集の段階では、今ある課題をなんとかしたいという課題解決型研究もいくつか寄せられていました。ですが《100人論文》が主としてやりたいのはそこではない。課題解決型研究もとっても大事なのですが、例えばその課題をなぜ僕ら人類が持っているのか、あるいはそれを解決するとはどういうことなのか。一体何をしようと何をしているのか、そしてそれは何を“していることになる”のか……、歴史や経緯、根本的な思想を踏まえてこの世を一歩引いたところからみる、つまり、自分自身の関心ごとこそをも疑うのが学問の構えであり、それを磨き合おうというのが当イベントの目的なんですよ」

 

『現代社会でのニーズが高い生産性のある研究も大事だけども、そうした世俗的な要素はいったん横におき、研究の道を選んだときの初心を思い出して、自由にピュアに語り合おう』。本イベントの公式サイトでも、宮野先生はそう発信していました。

 

そうした宮野先生の発信に呼応した人が集まったからこそ、論文や付箋のコメントからトークセッションまで熱量がものすごく、みんなで何か大きなムーブメントを作り出しているような真面目で誠実なお祭り感が、オンライン空間に生まれていたのでしょう。

 

「今回の成功体験から、来年もおそらくオンライン開催になると思います。もちろんトークイベントも継続。もしかしたら今回以上の規模になるかもしれないですね」

 

ちなみに、今回の《京大100人論文・オンライン全国拡大版》の会場は公式サイトで今も閲覧が可能(ページ中頃の「GO!」をクリック)。熱いフェスの名残を、ぜひ感じてみてください。

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5日間の開催期間中、イベント進行から問合せまでこなして大忙しだった宮野先生。イベント最終日に取材したほとゼロ取材班に、疲れ顔で丁寧に対応。本当におつかれさまでした!


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