ほとんど0円大学 おとなも大学を使っっちゃおう

  • date:2016.9.30
  • author:中村 光兵

科学をもっと身近に! 京都大学「アカデミックデイ2016」

p9187533

「科学」と聞くと、学生時代の嫌な思い出とばっちり結びついている! という方もいらっしゃるのではないでしょうか。かくいう私もその一人。高校を卒業してからというもの、科学とは無縁というよりも、むしろ避けて避けて、避け続けてきました。

そんな私に科学と触れ合う機会が訪れました。京都大学が開催する「京大アカデミックデイ」という企画。
「京大アカデミックデイ」とは、市民や研究者、文系、理系を問わず誰もが学問の楽しさ・魅力に気づくことのできるコミュニケーションの場となることをめざし、京都大学が「国民との科学・技術対話」事業の一環として開催しているもの。2011年度よりスタートし、今回で6回目の開催となりました。

主な企画は3つ。様々な分野の研究者と交流できる「研究者と立ち話」、研究者とじっくり対話できる「ちゃぶ台囲んで膝詰め対話」、1つのテーマにそってみんなで話し合う「お茶を片手に座談会」です。

当日は台風の影響もあり天候が悪かったのですが、それでも会場はかなりの賑わいを見せていました。来場者はまさに老若男女問わずといった様子で、熱心な面持ちで研究者の話を聞く人がたくさんいて、溢れんばかりの活気を感じました。

研究者と立ち話をしよう!

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こちらは「研究者と立ち話」ブース。ここでは研究内容がポスターにまとめられ、その前に研究者のみなさんが立っていらっしゃいます。興味のある研究について研究者本人から詳細を聞ける貴重な場となっていました。研究者たちの熱心な顔つきもさることながら、来場者も真剣そのものでした。

研究ブースはかなりの数があり、その数なんと49! 果たして全てのブースを回った猛者はいたのでしょうか……。
一例を挙げると、「ネズミと会話ってできるの?」「iPS細胞技術による血小板製剤の開発」「待ちに待った重力は物理学の到来」「生きることが『アート』であるということ」「悪口ってなに?『悪口』で学ぶ言語哲学」などなど。
ザ・科学といった内容のものから、科学とはなんぞや? という方にとっつきやすいもの、子どもが興味を持ちそうなものなど、多種多様な研究がずらりと並んでいます。

文系人間の私が興味を持ったのは、「痛みってナニ?」「アフリカの潜在力が世界を救う」などでした。

八田太一先生(京都大学iPS細胞研究所)が発表されていたのは「痛みってナニ?」という研究。
「痛みを無くすことはできないが、それを少しでもラクにできないか? という思いから研究をはじめました。痛みには様々な種類があり、単純ではありません。擦りむいたような身体的な痛み、失恋などで感じる心の痛み、仲間はずれにされる社会的な痛み。それらの痛みをめぐる事象を領域横断的に概観し、痛みがひどくなってしまうメカニズムについて検討する。そして最終的には幅広い痛みをやわらげる方法を確立するのが目標です」と話してくださいました。
心の痛みを軽減できるようになれば、心の病気など、他分野で応用が利きそうですね。

八田 太一先生(京都大学iPS細胞研究所)

八田 太一先生(京都大学iPS細胞研究所)



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こちらは、松田素二先生(京都大学大学院文学研究所)の「アフリカの潜在力が世界を救う」という研究。正直、アフリカに対して、私自身、発展途上だというイメージがあり、そんな地域が世界から“救われる”のではなく、逆に“救う”のだというタイトルに強く惹かれました。

「この研究では、アパルトヘイトや大虐殺を経験した社会が、どうやってそれらの後始末をしたのか、彼らはどのような知恵を持っているのか、という部分に着目しています。
例えば「裁判」。現在私たちは殺した側を捕まえ、罰します。しかしこの方法では加害者と被害者の本来の和解というのはむずかしい。一方、アフリカではガチャチャ裁判と呼ばれる、市民同士の対話によって罪の評価をするという知恵があります。このような知恵を、現代社会では過小評価していますが、それは逆ではないかというのがこの研究。私たちが持っていない伝統的な知恵から学ぶことがあるのでは、と研究を進めています」

最終的にはNGOを通し、政策などにアプローチしていければということでした。
発展途上と認識されがちな土地の知恵に着目するという視点が、新鮮で興味深かったです。

展示されていたアフリカの道具に興味津々の子供たち

展示されていたアフリカの道具に興味津々の子供たち

研究者の本棚をのぞいてみよう!

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こちらでは、研究を発表している研究者の方々のお勧めの本が展示されていました。
「今の仕事(研究、進路)を選ぶきっかけになった本」や「若者にお勧めしたい本」など、テーマに沿って選ばれた本がおよそ120冊も!
メイン会場の賑わいからは一転、静かな空間で休息をかねて、じっくり読書を楽しむ方もちらほらいらっしゃいました。

ほとゼロプロデュースの「関西の大学を楽しむ本」も展示されていました!

ほとゼロプロデュースの「関西の大学を楽しむ本」も展示されていました!

「進撃の巨大科学」を考えよう!

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「進撃の巨大科学」と銘打たれているのは、「お茶を片手に座談会」企画でのメインテーマ。
ここでは笠田竜太先生(京都大学エネルギー理工学研究所)と呉羽真先生(京都大学宇宙総合研究所ユニット)が登壇し、先生方が研究している「核融合炉」や「宇宙科学」、そしてそれら二つを含む「巨大科学」について、参加者と語り合いました。

そもそも「巨大科学」とはなんなのか。膨大な経費と研究者、装置、組織、計画、長い年月…とにかく全てにおいてスケールの大きな科学のことを「巨大科学」と呼んでいるそうです。この巨大科学については、研究者内でもさまざまな意見が飛び交っているとのこと。
「ゴールの見えない研究になんの意味があるのか」「研究にかかる費用を他の研究に回せば良いのではないか」などなど。

何百億円という私たちでは到底想像もつかない額で動いているものの、将来どんなことに役立つのか、どれぐらい時間がかかるのかがはっきりと言えない巨大科学に関して、研究者は一般人である参加者に意見を求めました。
「核融合炉に対するイメージは?」という簡単な問いかけから、「宇宙科学には賛成か反対か」という簡単には答えられない深い問いまでありました。
会場には多くの人が集まり、小さな子どもたちも真剣に話を聞いていました。それに対する科学者の先生もまた真剣で、参加者の小さな疑問にも丁寧に答えを返していました。

宇宙科学に賛成か反対かというテーマで書かれた子どもの意見。純粋で場が和みました。

宇宙科学に賛成か反対かというテーマで書かれた子どもの意見。純粋で場が和みました。


普段、科学に関わらない人間である私にも、わかりやすい話で、興味を持つことができました。科学者なんて聞くと、映画ではたいてい何かしでかしてしまうイメージがありますが、現実の科学者はとにかくまっすぐで熱心でした。

笠田先生が趣味のレゴブロックで作った核融合炉「iter(イーター)」も展示されていました

笠田先生が趣味のレゴブロックで作った核融合炉「iter(イーター)」も展示されていました

まとめ

今回アカデミックデイに参加したことで、科学に対して苦手意識しかなかった私にも分かる部分があるのだと少し自信を持つことができました。
「京大アカデミックデイ」の他にも、京都大学ではさまざまな公開講座やシンポジウムなど、京大の学びを体感できるイベントが全国各地で行われています。
苦手だから…と敬遠することなく、ぜひ参加してみてください。苦手分野に対する意識が変わるかもしれません。


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