ほとんど0円大学 おとなも大学を使っっちゃおう

  • date:2020.1.14
  • author:南 ゆかり

1000年以上前の洗練された「土器の美」に嘆息。京都橘大学の学生たちによる企画展。

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平安時代限定のユニークな土器展

京都橘大学で考古学を学ぶ学生たちが主体となって、土器の展覧会を開いた。それも、平安時代の土器だという。土器といえば原始時代では? ちょっとした疑問も持ちつつ、会場となった京都市考古資料館に出かけた。行ってみて改めて気づかされたことがある。古都・京都ではこれまで数多くの遺跡が発掘されており、それらから出土するたくさんの考古学の資料は、当時の人々の生活の様子はもちろん、都があったからこそ作られ集まってきた、当時の文化の最先端を私たちに見せてくれるということだ。

 

発掘調査を行っている京都市埋蔵文化財研究所と京都市は、この貴重な考古学の資料を使った企画展プランを大学生・高校生から公募するというユニークな試みを行っている。どの資料から何を見せるのか、展示テーマはもちろん資料選びから展示方法、配布資料にまで、学生グループの若い感性が光る楽しい展示になっているという。今年の展示は、京都橘大学文学部歴史遺産学科考古学コースの学生たちが企画した「焼き物からよむ平安時代―発掘でみえてきた食器・酒造り・饗宴」である。

会場となった京都考古資料館

会場となった京都考古資料館

イケメン貴族たちの饗宴の脇役は?

展示でまず驚いたのは、1000年以上も前の焼き物なのに今でも十分に使えそうな、美しい器が並んでいたことだ。薄い緑の釉がかかった緑釉陶器、灰色の釉のかかった灰釉陶器ともに、シンプルだが品がいい。同大文学部准教授・中久保辰夫先生によると、これらは中国の陶磁器や金属器にならってつくられたもので、緑釉陶器は高価な鉛の入った釉を使い、灰釉陶器より高級品だとか。釉薬のかかった器を使えたのは貴族でも位の高い人なのだという。

土器一つひとつへの愛着を感じる解説をしてくれた中久保先生

土器一つひとつへの愛着を感じる解説をしてくれた中久保先生

ツヤと文様で高級感漂う緑釉陶器。こんなにキレイな状態で残っているとは!

ツヤと文様で高級感漂う緑釉陶器。こんなにキレイな状態で残っているとは!

灰釉陶器は渋い色合い

灰釉陶器は渋い色合い

 

そんな当時の宴の様子を再現したイラストが一緒に展示してあってわかりやすい。イケメン3人の貴族の衣の色が位の違いを表すから、緑釉陶器を使っている奥の人と、手前の灰釉陶器を使っている人とでは位が違うことがわかる。「このように少ない人数で、位の違う人がどのような座席順で一緒に食事をしたのかはわかりません。ただ、実際、もっと大勢で行う特別な饗宴はありましたので、その際には、位によって器が違うというようなこともあったのではないかと考えられますね」

当時をイメージできるイラスト。奥の位の高い人は、より高級な緑釉陶器を使用している

当時をイメージできるイラスト。奥の位の高い人は、より高級な緑釉陶器を使用している

 

隣で見学していた方は、「灰色の方が、ええ色やと思うけどなー」とおっしゃっていたが、確かに、両方ともレベルは高い。そう、これは土器というより、芸術品としての焼き物である。展示タイトルに「焼き物」が使われているのはそういうことだったのか。

 

そして、それらの気品が際立つのは、展示棚の下段に、素焼きの土師器や釉をかけない須恵器という、いわば素朴系の土器が展示され、比較対照できる展示形式によるところも大きい。企画に携わった京都橘大学文学部3回生・庄司光一さんは、「上の段の器には光の当たり具合や配置も考え、その美しさがわかるようにしました」と話す。なるほど、確かにその差は歴然である。

下の段に素焼きの土器が並び、その違いを見比べることができる

下の段に素焼きの土器が並び、その違いを見比べることができる

「土器を見る眼」も展示

奈良時代まで器といえばほとんどこの土師器と須恵器の二種類だけで、形やサイズは両種に共通していたという。平安時代になると、須恵器は甕や壺、鉢など貯蔵用や大型の器が中心となり、一方の土師器は食の器として使われるようになっていった。「土師器は、今でいう紙皿や紙コップのようにも使われたんですよ」と中久保先生。「清浄の器」としてよく使い捨てられたのだそうだ。使い捨ては清浄を求める気持ちの裏返しなのか、しかもこんな時代から連綿と受け継がれてきたのか、と興味が深まる。

使い捨てだった(!)という土師器。大量生産が可能だったからという

使い捨てだった(!)という土師器。大量生産が可能だったからという

 

土器だけでなく、土器づくりについての展示もある。大原野の洛西窯跡群、岩倉の洛北窯跡群、亀岡の篠窯業生産遺跡などの発掘から、平安時代になると都の郊外にいくつかの窯ができ、それぞれの産地で特色のある土器づくりを進めるようになったことがわかってきたという。「土器づくりは、窯に火を入れたら1週間程度も燃やし続けなければなりません。相当量の薪が必要なため、木材が手に入りやすい山間部に窯が作られました」。

 

窯跡から発掘されるのは、焼いている途中で割れたりしたもの、失敗作でわざと壊したものなどが多い。しかし、それらのかけらを、考古学者は丹念に集めて丁寧につなぎ合わせ、土器から時代背景や文化の特質を読み取っていく。

緑釉陶器素地の皿。重ね焼きをして失敗し、打ち捨てられたものと考えられる

緑釉陶器素地の皿。重ね焼きをして失敗し、打ち捨てられたものと考えられる

 

どのような土器が、どのようなプロセスで作られていたのかなど、発掘でわかることもあれば、より謎が深まることもあるとか。このような調査研究の積み重ねのおかげで、私たちは、1000年以上も前の人々の暮らしぶりをイメージすることができるわけだ。考古学者の緻密な研究の様子は、土器のサイズを正確に計測して描き起こす「実測図」、計測や描画に使う道具などについてのパネル展示から垣間見ることができる。

饗宴好きの平安貴族たち

さらに展示は、平安時代の酒造りにもフォーカスしている。京都市中京区で発掘された遺跡「平安京造酒司倉庫跡」から出土した須恵器の大甕のかけらから推測すると、500ℓが入るような大きな甕が使われていたらしい。造酒司とは宮中の酒や酢を製造していた施設だ。1000杯以上の酒を一度に仕込める大きな甕は、宮中の重要な儀式に備えて作られたのだろうと中久保先生。平安時代には、大規模な儀式から内輪の宴会まで、貴族たちは盛んに宴を楽しんだようだ。

 

土器が平安の人々にどのように使われたのか、土器はどのように作られたのか、華やかなイラストや解説のパネルを見ながらゆっくり楽しめた。「テーマに沿って展示物の数を絞り込み、見る方の理解を深めてもらうことを一番に考えました」と京都橘大学文学部3回生・長澤知真さんが話す、その狙い通り。1000年以上前の人たちの想像以上に洗練された美的感覚やそれを支える産業の存在がわかる面白い展示だった。それに、土器とは実にいろいろな情報を含んでその時代のことを教えてくれる存在だとわかり、土器の見方も変わった気がする。考古学、平安京、焼き物、うつわ…さまざまなキーワードに興味のある人が楽しめる企画なのでぜひ訪れてみてはいかがだろうか。

企画に携わった京都橘大学文学部3回生の長澤知真さん、庄司光一さん

中久保先生と、企画に携わった京都橘大学文学部3回生の長澤知真さん、庄司光一さん

 


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