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  • date:2017.10.17
  • author:河上 由起子

動物の行動を読みたい!科学者たちのプロジェクトX @阪大ラボカフェ

大阪大学_アートエリアB1_ラボカフェ1

子どもの頃アリを観察したり、動物番組が好きだったりした人は多いでしょう。でもそこから、動物の行動を読み解いて社会問題を解決しよう!とはなかなかなりませんよね。ところが今、さまざまな分野の専門家たちが集結し、動物の行動パターンを解明することで社会に応用しようというプロジェクトがあるんです!アートエリアB1でのイベントに参加してお話を聞いてきました。

GPSなしであなたはたどり着けますか?

参加したのは、ラボカフェ『「なぜたどりつけるの?」を科学する・第2回 〜ロボットと人工知能で、動物の心を読む〜』。大阪大学大学院の木村幸太郎先生(理学研究科准教授)が語り手です。

木村先生は生物の脳や神経科学の研究者。初心者にもわかりやすい解説

木村先生は生物の脳や神経科学の研究者。初心者にもわかりやすい解説

 

このプロジェクトが始まったのは2016年。「生物ナビゲーションのシステム科学(生物移動情報学)」という文科省から予算を受けたプロジェクトで、5年間で今までにない新しい学問分野を作ることを大きな目標としています。

 

ナビゲーションというのは、ヒトや動物にとって目的地に移動する、ということです。どこかへ行って、帰ってくる。これだけですが、もし人里離れた知らない場所に放り出されたらどうでしょう。スマホのGPSなしで家に帰るなんて、少なくとも私にはムリ。

 

一方、クジラの大回遊やサケの母川回帰、渡り鳥の生態を考えてみると、彼らは自らの力で行動しています。ナビゲーションは最も重要な生命活動の一つであり、驚くべき能力なのですね。

 

このナビゲーションを理解・解明して予測や制御が可能になれば、鳥インフルエンザや蚊が媒介するデング熱・ジカ熱など伝染病の拡散防止のほか、害獣の侵入予防、効率的な駆除などに役立つ可能性があるんだとか!

 

さらには高齢者の徘徊や迷子の行動予測など、広い範囲で社会問題の解決への可能性が見込まれています。

最新の研究を知ろうと多くの人がつめかけた

最新の研究を知ろうと多くの人がつめかけた

 

まずは測ること!苦労の末に世界初の快挙

動物は見たり、聞いたり、においを嗅いだりと何かに刺激を受け行動しています。刺激を取捨選択して行動につなげる「仕組み」を知りたい。そのためには次の4段階が必要です。

 

①動物の行動や環境を測る 

②分析する 

③彼らの頭の中の計算を数式で表す 

④数式が本当かどうかを確かめる

 

なんだか壮大!とても1つの専門分野では対応できません。そこでプロジェクトでは「ロボット工学」「データ科学」「行動生態学」「神経科学」の専門家が集結。組織立ってナビゲーションを研究しているのは世界でもここだけなんだそうです。

 

第1段階クリアのために、研究チームはまず「ログボット」というロボット機能を搭載した8㎝ほどの小型カメラを開発しました。例えば、海鳥の飛行ルートのビッグデータをもとに、飛び方の特徴を人工知能(AI)に学習させ、特徴的な動きが出たときのみ撮影するようプログラミングされています。

 

数年前から、動物にカメラを付けての撮影は行われてきたのですが、長時間撮りっぱなしだったそう。大学院生が長時間映像をすべて見ながら「○時○分○秒 エサをとる」など一つひとつメモしていたとか・・・。必要なところだけオンになれば、バッテリーの消費も抑えられます。

 

しかし、高機能をわずか数センチに詰め込んだオリジナルの最先端装置は壊れやすく、10個のうちなんとか回収できた唯一のログボットの映像を、今回見せてもらうことができました!

 

水面すれすれを飛び、水中にもぐり、また水面へ!とまさに生き生きとした鳥の目線。

 

AIを利用してこうした映像を撮影したのは世界初だそうです。

スピード感もあり迫力満点の映像でした

スピード感もあり迫力満点の映像でした

 

ポケモンのアレがあれば検証できる!

動画は撮ることができたので、次は分析が必要です。

 

ここで木村先生は問いかけます。「動画にエサが映っていた場合、例えば鳥が旋回するなど特徴的な動きを始めたとします。それはエサが見えたからだ、と言っていいでしょうか?」

 

答えは「NO」。因果関係がないからです。

 

特徴的な動きをするのはエサが原因か、映っているだけではわかりません。因果関係の有無の確認には、人為的にエサを存在させ、そのとき特徴的な動きが出れば証明されます。

 

今は動画を撮影するのみですが、今後先生たちが挑戦しようとしているのは、エサだけではなく人工的な刺激を存在させ、何に反応しているのかの検証です。

 

どうやって・・・?と思っていると、「拡張現実(AR)」という言葉が登場!現実世界の映像に、別の映像を上乗せしている「ポケモンGO」と同じ技術です。これを使って,動物や生物が現実から感じている刺激に人工的な刺激を上乗せして,反応がどう変わるのかを確認しようというわけです。

 

共同研究の可能性に期待がふくらむ!

日々メディアを賑わすAIやビッグデータという言葉がいくつも登場しましたが、技術がすごいというだけでなく、エキスパートたちがそれぞれの知性とアイデアを絞り、プロジェクトに挑んでいることが伝わってきました。

 

市役所で鳥獣保護区の管理に携わる女性参加者にお話を聞いたところ、「もっと自然に学ぶことがこれからは必要なんだと思いますね」と期待を寄せていました。

渡り鳥の生態に長年興味があったという女性。熱心にメモをとっていた

渡り鳥の生態に長年興味があったという女性。熱心にメモをとっていた

 

プロジェクトでも、普段はコンピュータと向き合う分野の若手研究者を無人島に連れ出し、野鳥にカメラを取り付ける経験(糞まみれになるそうです!)をするなど、自然にふれ視野を広げるような育成にも力を注いでいます。

 

素人目には、AIならもっとすごいことができるのでは?と思ってしまいますが、専門家の先生が言うには、人口知能(専門家的にいうと機械学習)ができるのは、膨大なビッグデータがあれば「AなのかBなのか」「似たグループが○個あるのか」といったことが分かるだけといいます。

 

「何でもできるように思いますが、せいぜい分類することと例外を見つけること」。そうシンプルに教えてもらえると、納得できるような気がします。

 

最新技術は万能ではありません。それが導き出したデータをどう活用するかは人間の知性や探求心がもっとも重要なんだと思えます。この共同研究がこれからどう進んでいくのか。わくわくしながら次の開催を待ちたいと思います。

 

取材協力:大阪大学21世紀懐徳堂

 


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