ほとんど0円大学 おとなも大学を使っっちゃおう

  • date:2016.6.8
  • author:蔵麻子

大学のまち、大阪・茨木

迷える子育てママや介護予防難民を救え! 藍野大学の地域貢献

紙焼き3

茨木市にある総合病院、保育施設(認定こども園)等をグループに備える藍野大学が、市と連携して開講している子育てやアンチエイジング講座が人気だ。茨木市在住であれば無料で受講できるのもメリットだが、何より受講者の心をつかんでいるのは、医療系大学で教鞭をとる専門家による講座であるということだ。講座運営に携わる藍野大学の先生方に、詳しい内容や取り組みの狙いをうかがった。

正しい知識がママを救う。

大学で学ぶ子育て講座 子どものしかり方や、発達への不安、はたまた子育てからくるストレス…。子育てママが直面する悩みは多い。わが子の成長を託されているとはいえ、ママだって子どもの年齢とイコールの経験しかない子育ての新米だ。ネットを検索しても当たり障りのない一般論が多く、友達も同じ不安を抱えている状況。病院や保育園の先生に相談したくても、忙しそうで気が引けてしまう。「自分で判断できるだけの正しい情報って、どこで手に入れたらいいの!?」というのが、迷える子育てママの本音なのだ。

そんな子育てママたちの人気を集めているのが、藍野大学で開講されている『子育てママのおしゃべり広場』。大学で教鞭を取る小児科医らが、子どもの病気への対応法や発達の個人差について、理論やデータに基づきレクチャー。それが子育てに悩み、知識を欲していた、ママの心をつかんだ。受講中は医療人(看護師、理学療法士、作業療法士、臨床工学技士など)をめざす大学生たちが、隣室で子どもを預かってくれるのも嬉しい。

藍野大学 医療保健学部 看護学科教授 若宮英司先生(小児科医・特別支援教育士スーパーバイザー/藍野病院勤務)が講師を務める『子育てママのおしゃべり広場』の様子。

藍野大学 医療保健学部 看護学科教授 若宮英司先生(小児科医・特別支援教育士スーパーバイザー/藍野病院勤務)が講師を務める『子育てママのおしゃべり広場』の様子。

子どもたちと遊ぶ学生たち。子どもたちとの触れあいは、医療の道を志す学生にとっても貴重な学びの場になっている。

子どもたちと遊ぶ学生たち。子どもたちとの触れあいは、医療の道を志す学生にとっても貴重な学びの場になっている。


「この講座は3年前に始まりました。初回は母子5組の参加だったのが、今では毎回25組前後・40名近い母子が申込んでこられます」と盛況ぶりを教えてくれたのは、藍野大学医療保健学部の中西英一准教授。先生によれば、精神論的な子育て論ではなく、エビデンス(データによって客観的に証明された根拠)に基づいた講座であることが、受講者のニーズに合ったという。根拠やデータを示してもらえることで、自分たちの状況を客観的に判断できるようになることも、子育てママにとってこの講座を受けるメリットだったのだろう。なお、茨木市において子育て支援を大学で行っているのは、藍野大学がある太田地域だけ(2016年現在)。大学がある太田地域の地元市民だけでなく茨木市一円から受講者が集まるのも納得だ。

藍野大学 医療保健学部 作業療法士学科 中西栄一准教授

藍野大学 医療保健学部 作業療法学科 中西栄一准教授

トレーナーと理学療法士が教えるアンチエイジング講座

高齢者が健康で長生きできる環境を作ることも市政の重要な役割だ。多くの市町村と同じく介護予防の課題を抱える茨木市からの依頼で、市在住の高齢者に対して健康づくりのための運動指導も行っている藍野大学。それが茨木市保健医療センターで開講している『楽しくアンチエイジング!講座』だ。この講座の魅力は、スポーツトレーナーと理学療法士がタッグを組んで指導を行っていることにある。講座を担当する西村敦教授と後藤昌弘教授に、詳しい内容や取り組みの狙いをうかがった。

『楽しくアンチエイジング!講座』の魅力を語る、藍野大学医療保健学部理学療法学科 後藤昌弘教授(左)と、同学科学科長 西村敦教授。

『楽しくアンチエイジング!講座』の魅力を語る、藍野大学医療保健学部理学療法学科 学科長 西村敦教授(右)と、後藤昌弘教授(左)。


年齢を重ねても若々しく健康でいるためには、運動機能の低下を抑えることが大切だ。しかし運動習慣がない高齢者にとってスポーツクラブに通うのはハードルが高い。スポーツトレーナーでもある後藤教授は、「普段運動していない人が急に体を動かすと、骨・関節・筋肉・神経などの運動器を痛めてしまい、身体機能を低下させる恐れがあります。しかし理学療法士が協力していれば、負荷の限界を見極めながら安全に指導できるのです」と語る。

実際『楽しくアンチエイジング!講座』では、参加者の身体機能を評価したのち、姿勢や歩く能力をチェックして参加者一人ひとりの運動機能の低下状態を把握。必要な運動器を鍛える方法をレクチャーし、教員や理学療法士をめざす学生のサポートのもと運動指導を行っている。運動後に体の変化を測定して数値で見てもらうのですが、『普通に運動するのと、専門家に指導されながら目的を持って運動するのとではちがいますね』という感想を持たれる方が多いですよ」と後藤教授は手応えを語ってくれた。
健康づくり支援活動3 健康づくり支援活動5
藍野大学『楽しくアンチエイジング!講座』の様子。3年前から茨木市保健医療センターで年4回開講。50代を中心に70代の市民も参加している。

理学療法士として医療現場にも詳しい西村教授は、「我々は運動指導、リハビリテーション指導の専門家です。病院で患者さんに対応するのも大切ですが、病院に通院しなくてもいい人を増やすことも使命だと考え、この講座を行っています。年配の方ですと、腰痛が引き金となり体の機能が衰えて行きます。我々のアンチエイジング講座を通じて、どんな姿勢だと腰痛になりやすいのか、運動で姿勢がどのように改善するのかを、地域のみなさんに広く伝えたいですし、将来的には大学のトレーニング施設を市民に開放するなどの施策も検討しています。保健医療センターでの取り組みは、その第一歩なのです」と、これからの展望を語る。藍野大学が地域に開かれた健康づくり支援拠点となる日も遠くないかもしれない。


次回の「大学のまち、大阪・茨木」では立命館大学の「育てる里山プロジェクト」をご紹介いたします。立命館大学の新キャンパス・大阪いばらきキャンパスで取り組まれている、遠い未来を見据えた壮大なプロジェクトに迫ります。


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