ほとんど0円大学 おとなも大学を使っっちゃおう

  • date:2021.3.4
  • author:蔵麻子

福島県立医科大学の医師がレッスン。コロナうつ予防に役立つ『笑いヨガ』をやってみた。

今回お話を伺った研究者

大平 哲也

福島県立医科大学 医学部疫学講座主任教授

福島県いわき市生まれ。心療内科や内科の臨床医としての経験をもとに、笑いを活用した予防医学に取り組む研究者。講演やセミナー活動も多く、そこでの実演を交えた『笑いヨガ』紹介が人気。福島県立医科大学放射線医学県民健康管理センター健康調査支援部門長、大阪大学大学院医学系研究科招へい教授、日本笑い学会理事。

新型コロナウィルスという「見えない不安」と日々向き合い続けている私たち。身体への影響だけでなく、最近では「コロナうつ」と称される精神面への影響も気になるところです。そこで福島県立医科大学の大平哲也教授に、「コロナうつ」「コロナ不調」を防ぐのに役立つという『笑いヨガ』をレクチャーいただくことにしました。動画も用意しているのでぜひお試しを!

大平先生が取り組む『笑いヨガ』ってどんなもの?

『笑いヨガ(Laughter Yoga:ラフターヨガ)』という健康法をご存知でしょうか?1995年にインド人の医師マダン・カダリア博士がつくった健康法で、誰でも気軽に実践できるヨガの一種として世界108カ国に広まっています。

大平先生はこの『笑いヨガ』の健康効果に着目した医学博士。記事の最後で解説付き動画をご紹介しますが、まずは先生が『笑いヨガ』を実演する30秒のショート動画をどうぞ!

 

ほとんど0円大学編集部の無茶振りに、快く「笑いヨガ」を実演してくださった大平先生。目尻の笑いシワがチャーミングな紳士です 。

 

動画にて「ホ、ホ、ハハハ」と謎の動きを繰り返す大平先生。この動きの解説は後ほどご紹介する動画にゆずるとして、まずは先生、なぜ『笑いヨガ』に注目されたんでしょう?

 

『笑いヨガ』を始める以前に話は遡るのですが、私はもともとは『怒り』の研究をしていました。というのも臨床医として働く中で、怒りを我慢する人の中に、循環器疾患を患う人が多いことに気がついたからです」

病気予防のために、患者さんに「怒りを溜め込まないで!」と働きかけた大平先生。しかしなかなか上手くいきません。そりゃあ皆さん、怒りやその原因のストレスを簡単に発散できないから、病気になっちゃってるわけですからね。

「そうなんですよ。なので『怒りを出すのが難しいなら、他の感情を出せばいいんじゃないか』と考えまして。というのも、感情というものは、怒り、悲しみ、喜び…どんなものでも『出す』という方向性は同じなんですね。なかでも一番表に出しやすい感情が笑いだったんです」

笑いの効果を実験するために、患者さんに落語や漫才を聞いてもらった大平先生。ですが、年齢や笑いのツボが違う人たち全員を笑わせるのは至難の業。誰でも笑える方法を探す中でたどり着いたのが『笑いヨガ』だったのです。

「アメリカのミネソタ大学で疫学・社会健康医学部門の研究員として働いていたときに、雑誌で、ニューヨークで笑いヨガが流行っているという記事を偶然見て興味を持ったんですね。その後、帰国して『日本笑い学会』の研究発表に参加したら、笑いヨガを紹介されている人がいて『これはいい!』と。自分でもインストラクターの資格を取り、笑いに関する予防医学の研究へとつなげていきました」

大平先生が『笑いヨガ』の詳細を知ることになった日本笑い学会とは、笑いとユーモアに関する総合的な研究を行う研究団体。約30年の歴史を誇り、医療関係者、教育関係者、弁護士や僧侶まで約800名の会員が所属。本拠地は大阪ですが、お笑いは研究していませんのでご注意を。写真はヨガを用いた健康教室の様子

大平先生が『笑いヨガ』の詳細を知ることになった日本笑い学会とは、笑いとユーモアに関する総合的な研究を行う研究団体。約30年の歴史を誇り、医療関係者、教育関係者、弁護士や僧侶まで約800名の会員が所属。本拠地は大阪ですが、お笑いは研究していませんのでご注意を。写真はヨガを用いた健康教室の様子

医学的に見た「笑い」のすごい効果

病気の予防に『笑いヨガ』を取り入れるようになった大平先生。でもそもそも笑いには、どんな医学的効果があるんでしょう?

「医学的に笑いが注目されるようになったのは、アメリカの有名なジャーナリスト、ノーマン・カズン氏が医学雑誌に発表した自身の体験談がきっかけです。

彼は強直性脊椎炎という難病にかかったのですが、病室でお笑い番組を見るうちに、10分大笑いしたら2時間痛みが軽くなるのを体感しました。コメディ映画などを見て一日中笑うようにすると、3週間後に歩けるようになり半年後には元の職場に復帰したんです」

声を出して笑うって…すごい効果があるんですね(画像はイメージ)

声を出して笑うって…すごい効果があるんですね(画像はイメージ)


そこから世界はもちろん日本でも笑いの効果が注目されるようになったと大平先生。

日本医科大学のリウマチ科では患者に落語を聞かせる実験が行われ、痛みの軽減に加え炎症物質やストレスホルモンも下がるというデータを得たそうです。現在も笑いに対する医学的な研究は進んでおり、免疫力向上から、アレルギーや糖尿病、高血圧などさまざまな病気への効果が研究されています。

「私自身も、歯の本数と笑いの関係を研究した論文を、他の先生との共著で1月に発表(英文)しました。その他にも眼科の先生と、加齢に伴う眼の疾患を笑いで予防できないかと研究中です。また笑いのアンチエイジング効果も注目されているんですよ」

なんと、病気予防だけでなくアンチエイジングにも効果が期待できるとは…恐るべき笑いの効果です。

個人的な話になりますが、そういえば私、最近あまり大笑いをしてない気がします…。コロナ禍でリモートワークや一人の時間が増えたのと、なんとなく気が塞いでオンライン飲み会とかもしなくなってきて…はっ、これって「コロナうつ」の予兆?!

「新型コロナウィルスは目に見えないものですし、コロナ禍で先行きも見えにくくなっていますよね。そういう“見えないことへの不安”が今、皆さんの心身の健康に悪影響を与え始めています。実は、2011年の東日本大震災でも同じことが起こっていたんです」

東日本大震災とコロナ禍の共通点

「東日本大震災では、岩手県、宮城県、福島県に大きな被害をもたらしました。この3県のなかで、震災関連死と呼ばれる、震災のストレスや避難などによる生活環境の変化で持病が悪化して亡くなる人の数が圧倒的に多かったのが福島県です。この原因は、原発事故による放射線への不安だろうと考えられています」

放射線もウィルスと同じく見えないものですし、いつ終わるのかがわからない先行きの不透明さも、コロナ禍の状況に酷似しています。さらに福島県では、放射線の影響を恐れて外出制限措置が取られたようで、これも外出自粛を呼びかけられている今の状況に通じます。

「私は震災後から現在に至るまで福島県民の健康調査を行っていますが、震災直後の福島県では、うつ症状を訴える人が15%に増加しました。コロナ禍の世界中のメンタルヘルスに関する報告をメタ分析した論文でも、うつ症状を訴える人が15%以上に増えたという報告がされています。日本でも、すでにいくつかの論文で精神的不調を訴える人が増加しつつあることが報告されています。また福島県では震災後、肥満や高血圧、糖尿病や脂質異常症といった生活習慣病全般を患う人が増加しました。この増加は、震災から10年間が経つ今でもなお、止まらずにいます」

震災前は全国でワースト15位でしたが、震災以降に増加し2015年にはワースト3位になってしまいました

震災前は全国でワースト15位でしたが、震災以降に増加し2015年にはワースト3位になってしまいました


コロナ禍にさらされている私たちも、肥満や心の健康に気をつけないといけないんですね。でも笑いで病気を予防したいとはいえ、面白くもないのに笑うのってハードルが高いような…。

「だからこその『笑いヨガ』です。『笑いヨガ』ならどんな状態の人も笑いの健康効果を取り入れることができますよ!」

医師が『笑いヨガ』を勧める理由

「そもそも笑いとは感情ではなく行動です。感情が伴っていなくても笑う動作は誰でもできますよね。さらに身体に対する健康効果も、感情の有り無しに関わらず同じです。そこが私が『笑いヨガ』を推している理由です」

なるほど確かに笑いって、顔の筋肉はもちろん腹筋も刺激する運動と言えるかも。大笑いをしていると、カロリーを消費している感がありますしね。

負の感情を変えることは難しくても、行動・動作を変えてみよう(画像イメージ)

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「そうなんですよ。我々医師からすると『笑いヨガ』は、笑いの体操にヨガの呼吸法を併せた有酸素運動であり、笑うことでのストレス解消効果も期待できる健康法です。同じ運動量であればジョギングしたらいいじゃないかという話になるかもしれませんが、通常よりも軽い運動量で同等以上の効果が見込めるのが『笑いヨガ』なんです」

大平先生によれば、世界の医療分野や介護分野でも取り入れられており、日本でも高齢者施設やメンタルケアの現場で活用されることが多いといいます。

「うつの人は、面白いと思えなくなっている精神状態ですし、高齢者も認知症が入ってくると面白いと思えなくなります。ですが『笑いヨガ』で笑う動作をすると、気持ちが上がってきたり、精神機能が落ち着いてくるという研究結果が出ています」

心と身体は相互に作用しているので、どちらかを上げると、もう片方も上がってくると大平先生。

「運動も効果的ですが、コロナ禍の私たちのようにそれが難しい状態にいる人や、体を動かすのが難しい高齢者の人には『笑いヨガ』が有効です。ぜひ試していただけると嬉しいですね」

 

笑う門には福来るというけれど、こんなに要介護リスクに差が出るとは驚き!

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では、『笑いヨガ』をやってみよう!

最後に、大平先生がお手本を示してくださった動画とともに、皆さんもぜひ『笑いヨガ』を実践してみてください。ちなみに、ほとんど0円大学編集部は、この『笑いヨガ』を先生の取材時にやってみると、血流が上昇して身体がポカポカ温まったり、腹筋がいい感じに刺激されたりといい効果をたくさん感じる結果に。笑えないと言っていた私も久々に笑いました…。みんなで「ホ、ホ、ハハハ。イエ〜イ」ってやっているだけで、なんかめっちゃ笑えるんです。

「今回、東日本大震災とコロナ禍の共通点をお話ししましたが、ひとつだけ大きな違いがあります。それは“つながり”です。震災では大切にされた人とのつながりが、コロナ禍では維持するのが難しくなりました」

そうですね、人と人がつながっていれば、自然と笑いは起こっているはず。人とのつながりが難しいコロナ禍こそ、意識して笑っていかないといけないんでしょうね。

「幸いに今は、オンラインというつながり方があります。友達や離れて暮らす家族と、オンラインで会話をしたり一緒に運動したりするといいと思いますよ。もちろん『笑いヨガ』を一緒にやっていただいても! まだ心から笑えない、という人は鏡を見てニッコリするだけでも結構です。ご自身や周りの健康のために、ぜひ笑いを意識してもらうといいなと思います」

先生の笑い顔をみながら一緒に運動するだけで、不思議と前向きな気持ちに。論より証拠、お試しあれ!

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