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  • date:2019.10.15
  • author:中橋 由香

消費者目線で「夏でも売れる和菓子」を作る!関西大学池内ゼミのチャレンジ

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2019年8月1日から、関西大学社会学部・池内裕美研究室と株式会社プラタの産学連携による新しい和菓子が販売されている。夏に売上が落ちるという和菓子をテーマに、学生の自由な発想を取り入れ、「夏でも売れる和菓子」をコンセプトにした。結果的には和菓子だけでなく、洋菓子の要素も取り入れた和洋菓子も考案。計4つの商品を販売することになった。


産学連携といえば、大学のもつ研究成果を商品化する、企業を悩ませる課題が出発点になることが多い。今回和菓子を考案したのは、社会学部で消費者行動や心理学を学ぶ学生たち。社会学部の学生ならではの視点で開発された4つの和菓子についてお話を伺った。

消費者の心理から売れる商品を導き出す
社会学部流ものづくり

夏でも売れる和菓子作りに挑んだのは、関西大学の池内裕美教授の研究室に所属する学生たちと、今回初めて食物食品販売にのぞむ株式会社プラタ。


研究室では主に、消費者行動や心理学について研究をしている。学んだ知識を当てはめながら、製品の開発や販売促進にどうつなげるか、企業の協力のもと、実地で学ぶのもこのゼミの特長だ。


昨年はスマートフォンケースを開発。今年は夏に団子の売上が落ちがちなことにヒントを得て、「夏でも売れる和菓子」にチャレンジすることになった。

 

大学と企業のコラボといえば、研究成果をそのまま商品やサービス、企業の課題解決へ転用するものが多い。しかし、このゼミでは「どう伝えれば、どう見せれば、消費者の心をより動かせるのか」ということが要になっていると池内先生。


出来上がった商品をどう売り、どのくらい売れるのかも学びの一貫になっている。

実際に販売中の和菓子

実際に販売中の和菓子

 

販売している和菓子は「ひんやりフルーツの花柄和風タルト(手前)」、「冷んやり!もっちり!ぷりんあらもぉどら(中央左)」、「ぷるっと美しくずアイス(中央右)」、「ふわふ和豆乳ティラミスムース」の4種類。

 

今回は店頭販売ではなくECショップでの販売となるため、味はもちろん、見た目や検索ワードを意識したネーミングなど、隅々までこだわっている。

 

しかし、こだわっているからこそ、すんなりと開発が進んだわけではない。


企業とのコラボ、実際に販売する商品だからこそ苦労した点もあるという。

 

「冷んやり!もっちり!ぷりんあらもぉどら」に携わった小西真由さんは「プリンの入ったどらやきというのは決まっていましたが、商品にするにあたって中に入れるものは、かなり変更が入りました」と語る。

ぷりんあらもぉどらの企画に携わった小西真由さん

ぷりんあらもぉどらの企画に携わった小西真由さん

 

「はじめはクリームチーズを入れようと考えていましたが、サイズが大きなこともあり、重いんじゃないか、と。他にも高さを出したいが、皮の重みで高さが出ないからどうしようか、とか。実際に商品を作ってくださる企業の方と試行錯誤を重ね、現在の形になりました。商品として成立させることの難しさを実感しました」。

 

「ひんやりフルーツの花柄和風タルト」の担当班だった山中菜摘さんも「当初のアイデアから完成まで、ターゲットの見直しから商品案の変更まで、かなり苦労しました」という。

花柄和風タルトに携わった山中菜摘さん

花柄和風タルトに携わった山中菜摘さん

 

最初は小学生の子どもをもつ30代のOLを想定し、家から出ずともオリジナルドリンクを作れる商品を考案。しかし、「子供がいて忙しい人が手間をかけてわざわざ作るだろうか?」など、企画とターゲットのニーズのズレを指摘されたそう。紆余曲折を経て、「外に出ず、すぐに食べられる商品ということで、小さいタルトにたどり着きました」という。

 

「『アイス』というアイデアを出したところ、デリコの担当者の方から『くずアイスというものがある』ことを教えていただきました」と語るのは、「ぷるっと美しくずアイス」を担当する嚴樫幸美さん。

ぷるっと美しくずアイスに携わった嚴樫幸美さん

ぷるっと美しくずアイスに携わった嚴樫幸美さん

 

「開発に関わる中で、自分たちのやりたいことをどう表現し、間違いなく伝えるかということに苦労しました。メールでのやり取りが主だったので、文章だけで自分たちの思いを伝える難しさがありました」と、共同での開発ならではの苦労があったという。

開発途中の商品提案書。販売中の商品と大きく異なるものもある

開発途中の商品提案書。販売中の商品と大きく異なるものもある

 

試行錯誤を重ね、4つの商品の完成までこぎつけた。

見た目も名前も行動も重要。「売る」ために細部を工夫

商品の完成=ゴールではない。今回は実際に「売れる」ことも目標となる。


今回は、直に手に取って選ぶわけではないECショップでの販売であり、ライバルは大きなECモールでの同じカテゴリ内の既存商品となる。


商品の見栄え、ネーミング、商品説明だけではなく、検索から購入まで消費者がどう行動するかというところまで、「売るため」のあらゆる工夫が凝らされている。

ふわふ和風豆乳ティラミスムース企画班の松本栞奈さん(右)、片岡麻菜美さん(中央)、中戸和香奈さん(左)

ふわふ和風豆乳ティラミスムース企画班の松本栞奈さん(右)、片岡麻菜美さん(中央)、中戸和香奈さん(左)

 

たとえば「ふわふ和豆乳ティラミスムース」は、ムースやマスカルポーネクリーム、お団子など3つの層が特徴。「写真でも3層であることがわかるように撮影にかなり気を使いました。ウェブページでも商品をイメージしやすいように、『ふわっ』『とろっ』『もちっ』というオノマトペを使った説明をしています」。

楽天「食べモア」内の紹介ページ。こだわりとイメージが写真と文字両方から伝わるようになっている

楽天「食べモア」内の紹介ページ。こだわりとイメージが写真と文字両方から伝わるようになっている

 

また、「ひんやりフルーツの花柄和風タルト」では、競合がひしめく中、原料に「宇治抹茶」や「宇治ほうじ茶」を使用していることなどをアピール。「既存のブランドの力も借りて消費者の目を引き、ページに誘導することを狙っています」(山中菜摘さん)という。「冷んやり!もっちり!ぷりんあらもぉどら」も、もともと競合が少ないカテゴリではあるが、さらに皮を白くして他のどらやきとの差別化を図ったり、名前に「プリン」と入れたりすることで目を引き、購入へつなげている。

 

「ぷるっと美しくずアイス」では、商品名にくずアイスならではの「ぷるっ」とした触感を入れたほか、美容を意識したネーミングに。さらにSNSに載せるときは、検索されることを想定し、アイスとフルーツ名など、一般的な言葉のタグを使用。検索に引っかかりやすくして、ページに誘導する形にしているという。

 

「こういったことは日頃学んでいる心理学からの気づきだと思います。学生たちはマーケティングのセオリーももちろん踏まえていますが、そこから先、どのように消費者の心を動かすのかというところで、心理学の知識が生きてきます」と池内先生。


「ネーミングひとつとってもどれも長くなっています。学生たちは商品名を覚えてもらおう、ということはあまり考えていないと思います。商品名をあえて長くすることで、目に留まり、『なんだろう?』と思わせるなど、とにかく消費者の興味を惹こうと工夫した結果だと思います」と語る。

 

各商品は株式会社プラタが運営する「お取り寄せ絶品グルメ 食べモア」のサイトから取り寄せ可能。


まだ暑い日が続くので、自宅で冷たくて美味しい和菓子を楽しんでみてはいかがだろうか。


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