阪急烏丸駅、地下鉄四条駅から下車すぐのCOCON KARASUMA内にある京都精華大学のサテライトスペース「kara-S」。大学直営のショップ!? それも四条烏丸という街中にある!? 「kara-S」と一般的なショップとの違い、他の学外施設との違いはどのようなところなのか。行って確かめてきました。
並ぶ商品は唯一無二のものばかり!
「kara-S」は、展覧会・授業発表などを行うギャラリースペース、アートグッズの販売を行うショップスペースの2つのスペースからクリエイティブな活動を発信しています。
この日、ギャラリースペースでは京都精華大・テキスタイルコースに通う学生による展示が行われていました。
作品をゆっくり見ることができる落ち着いた雰囲気のギャラリースペース
外から見るギャラリースペース。鮮やかな作品群に思わず足が立ち止まります
ショップスペースに置いてある商品は京都精華大の卒業生の作品や、京都を中心に活動する作家さんの作品など、京都にまつわるものが多いそう。
商品がていねいに並べられたショップスペース
商品の多くは手仕事で作られていて、例えデザインが同一だとしても全く同じではない、唯一無二のものばかり。
「お客さまの約8割は女性の方ですが、年齢層は幅広く、kara-S横にある京都シネマのお客さんが、映画の前後にふらりと訪れることもあります。プレゼントとして購入される方も多いですね」とスタッフの川良謙太さん。
流行に流されない商品は老若関係なくこだわりの強い女性の心をつかむようです。
手刺繍で作られたブローチ。台紙には偉人たちの名言が書かれている
こちらは陶器製のブローチ。京都精華大・卒業生の作品
商品は陶芸・染織・イラストレーション・版画などなどさまざまな手法で作られているので、いくら見ていても全く飽きがきません。何時間でも見ていられそう・・・。
ショップスペースの一角には2週間ごとにフェアが行われている場所があり、伺った時には京都精華大の版画コースに通う学生の作品が売られていました。
シルクスクリーンや木版画といったさまざまな版画の手法で作られた作品たち
こうして在学生の作品を商品として扱うことも少なくないそうですが、持ち込んできた作品をなんでも販売するわけではないとのこと。
「kara-S」スタッフの川良さん
「学生が持ち込んでくる作品の中には、質であったり価格であったり、まだ販売レベルに達してないものがあります。販売レベルに満たないものを、いくら京都精華大の学生が作ったものだからといって、お客さまに販売するわけにはいかない。時には『これは置けない』と断ることもあります。ただ断るだけでなく、パッケージの改善を提案したり、価格設定を見直すようアドバイスをすることもあります」と川良さんは言います。
自分では気づけないところをショップスタッフとして指摘してくれる、こんな頼もしい先輩がいてくれるから、学生は作家としての一歩を踏み出すことができるんですね。
京都精華大の魅力を街中へ
「京都精華大の良いところを広めたいんです。せっかく四条烏丸という好立地に位置しているのだから、一般の人に京都精華大に興味を持ってほしい」。そう語ってくれたのは店長の佐藤詩織さんです。佐藤さんと川良さんは、京都精華大の卒業生。卒業後間もなく「kara-S」オープンに関わり、以来ずっと「kara-S」に携わってこられました。
「kara-S」店長の佐藤さん
運営する上で苦労されたことはなんでしょうかと、たずねてみました。
「お店の経営なんてしたことがなかったので、最初は分からないことだらけでした。でも分からないことは、とりあえずやってみよう!って。でも大学の名前があるので、100%自分の好きなようにはできない。その部分が、自分のなかでうまく消化できなくて、つらい時期もありました。最近はその中でどうすれば京都精華大をもっとアピールできるのか分かってきました。大学側の担当者の方も積極的ですし、楽しいです」と、本当に楽しそうに佐藤さんは話してくださいました。運営している方が楽しんでいらっしゃるからこそ、こんなステキな雰囲気のお店になるんですね。
学生と関わることの多いお二人に、「積極性が見えない」そんな風に言われがちな最近の学生について聞いてみました。
「表現の出し方が下手というか慣れていないだけで、学生たちと話をしていると内に秘めているモノを感じます」(佐藤)
「上手に導いてあげれば大丈夫。なにか面白いことをしたい!と思う学生がいて、そんなときにkara-Sを使えるのなら、どんどん使って欲しいと思っています」(川良)
学生に対してこのように考え、発表できる場を提供してくれる。そんな先輩がいれば心強いでしょうね。今後もkara-Sでは京都精華大・在学生が活躍する展示・イベントを行っていくとのことなので、要チェックです。
「kara-S」の由来
ユニークな店名の「kara-S」。最後にその由来を聞かせていただきました。
「いくつか由来はあるんです。『烏丸』という地名から、というのがひとつ。『・・・からスタート』という意味、そして『精華から』という意味です。当時の学長がお考えになった店名です」(川良)
なるほど。複数の意味がこめられているんですね。「さすが芸大!」と感じたのはわたしだけでしょうか?
実は、わたしも芸術大学の学生なのですが、わたしが通う大学にはこのように作品を販売できるスペースがありません。学内外のイベントに向け、販売目的で作品を作る学生もいますし、芸大生としてこのようなスペースが常設で存在することはとても羨ましいです。
販売という目標ができれば制作モチベーションもあがります。また、大学の名前がついたショップで自分の作品を販売することで、京都精華大の学生であることへの誇りも生まれるはず。
「京都精華大のいいところを広めたい」と佐藤さんはおっしゃっていましたが、まずは学生たちが京都精華大の良いところを理解しないといけない、そんなときにもkara-Sは一役買っているんだなと感じました。
kara-Sは店名の由来通り、烏丸という土地、そして京都精華大からスタートを切る学生に大切にされているところでした。