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羽毛や消化管まで残る化石の謎を探るため“化石化”を研究する名古屋大の片田さんに聞いてみた

2024年2月13日 / 大学の知をのぞく, この研究がスゴい!

古生代の海には奇妙なかたちの生きものが泳いでいたり、ジュラ紀や三畳紀には巨大な恐竜たちが跋扈していたり、人類が誕生するはるか昔の地球にロマンを感じる人は多いだろう。これら昔の生物に思いを馳せられるのも、化石が残っているからこそ。ところが、化石よりも化石になる過程=“化石化”に注目している研究者もいるという。その一人、名古屋大学の片田はるかさんに話を伺い、化石化に着目したきっかけや古生物学の魅力について教えていただいた。

なぜ化石となって残ることができたのか、その理由を探る

始祖鳥、アンモナイト、ティラノサウルス…。いろいろな化石が見つかっているが、化石とは大昔の生物の遺骸などが地中で保存され、他の生物に食べられることなく、微生物分解されながら、周りの土砂などから石のもとになる成分が染み込んで鉱物(石)に置き換わったもの。硬くて残りやすいので骨や歯、貝殻の化石が多く見られる。化石ができるには、環境にもよるが少なくとも1万年はかかるといわれ、その間に地殻変動や圧力、熱などで壊れるとなくなってしまうため、私たちが目にする化石は奇跡の産物ともいえる。そんな化石があることで生物を特定したり、生物の進化史や行動様式を知ることができるのだが、片田さんの興味は化石そのものではなく、化石になる過程だ。

 

「化石から生物の生態や機能を調べる研究者の方が多いと思いますが、私はその化石がどうやってできたのか、生物が化石になるまでの歴史を知りたいと思いました。化石の中には、消化管や胃の内容物、羽毛など驚くようなものが残っている化石もあり、過程や環境によって千差万別です。それらがどうして保存されたのかを知りたいのです」と話す。“化石化”についての研究はそこまで盛んではなく、明らかになっていないことが多いという。

 

生物の特定などのため骨の形に注目するなら、化石の成分には特に意識しなくてもよい。化石になる過程に注目するなら、化石を構成する鉱物の成分や元素、微生物がどう分解したのか、まわりの環境・地層はどうだったかなどを研究することになる。化石と化石化では研究手法が異なるのだ。

 

そもそも片田さんが化石化を研究することになったのは偶然ともいえることだったという。大学の卒業研究にあたって、本来はモンゴルへ化石の調査に行くはずだったが、コロナ禍で海外渡航や屋外調査が難しく、愛知県の「蒲郡市生命の海科学館」から標本を借りることになった。

 

「ものすごく幸運な機会で、普段は簡単に触れない標本を貸していただきました。科学館の標本なので壊しても傷つけてもいけません。そこで、化学と鉱物学からのアプローチによって、化石の持つ情報を明らかにしようと考えました」と片田さん。

 

このとき片田さんが借りた標本は、マルレラまたはマーレラと呼ばれる節足動物の一種。5億年ほど前のカンブリア紀の生物で、長い角のような突起を持つ不思議な姿をしている。

「マルレラは、おしりの辺りに黒っぽいシミのようなものがある化石が多いんです。これまでシミの由来や血液成分の有無などが議論されてきましたが、まだ決着がついていません。それが面白いなと思って、私もシミの分析をしました」

マルレラはこのような生き物だったと考えられている(片田さん私物のフィギュア)

マルレラはこのような生き物だったと考えられている(片田さん私物のフィギュア)

 

具体的には、化学的な特徴を明らかにするためにX線顕微鏡で化石表面スキャンし、どこにどんな元素がどのような濃度であるのか調べる元素マッピングを行う。これによって、どういう元素で化石がつくられているかがわかる。ただ、同じ元素でもいろいろな鉱物がつくれるので、特定するためにレーザー光を使用するラマン分光分析という方法で鉱物を測定していく。そうして化石を壊すことなく成分や元素を分析できるのだ。

 

それらの分析の結果、シミに血液由来成分は見られず、またシミの大きさと体の大きさに相関関係があることから、片田さんは「シミは生体由来のもの」との結論を導き出し、卒業論文にまとめたそうだ。

今はハダカイワシの化石を対象に、発光器まで残った理由を研究

博士課程(後期)に進んだ今、片田さんはどんな研究をしているのだろうか。

「今は、ぐっと時代が新しくなって、1700万年前くらい前のハダカイワシの化石を研究しています」と片田さん。ハダカイワシは深海魚で、目が大きく、脇腹の辺りから発光するのが特徴だ。

 

「愛知県南知多町の師崎(もろざき)層群からは、骨だけでなくお腹の発光器まで残っているハダカイワシの化石が発見されました。この珍しい化石の発見はニュースでも取り上げられたので、覚えている人もいるかもしれません」

ハダカイワシの実物と化石

ハダカイワシの実物と化石

お腹部分に発光器がある

お腹部分に発光器がある

 

なぜ発光器まで残るほどの保存ができたのか。元素マッピングや鉱物学的な分析の結果から、片田さんは黄鉄鉱という鉄と硫黄からなる金属鉱物が関係していると考えた。今、黄鉄鋼ができる環境や条件などについて論文をまとめているところだという。

 

化石化の研究では、保存状態のよい理由、環境やプロセスなどを調べること多いが、片田さんが特に注目しているのは化石化における化学反応(元素の移動)だ。

 

「化石の元になった元素はどこから来たのか。もともと生物が持っていた元素は化石になった後、外へ出ていったのか、あるいは化石として残っているのか。元素の移動まで明らかにしたいと思って研究しています」と片田さん。

 

「古生物学では、よほど新しい時代などでない限り、化石の元になった生物はもう地球上に存在しないことがほとんどです。でも、ラッキーなことにハダカイワシは今も深海で生きています。生物がもともと持っていた元素も化石になっている元素もわかるので、その間に何が起こったのかを明らかにしたいと考えています」

 

シーラカンスとは比べようもないが、ある意味ハダカイワシも生きた化石といえるだろう。元素の移動がわかれば、化石化する・しない条件もわかるかもしれない。

余談だが、ハダカイワシという名前は、網にかかると鱗がすぐに取れてハダカのようになってしまうことに由来する。高知県では「やけど」と呼ばれ、丸干しなどが名物になっている。見た目はちょっとアレだが、とても美味しいという。ごく身近なところに古い時代とのつながりがあったとは感慨深い。

博物館などで、化石の魅力や自然界の複雑さを伝えたい

ところで、化石の魅力とは何か、改めて片田さんに伺ってみた。

 

「姿かたちは多少変わっても、大昔の生物が目の前にあって、それを見ていることにシンプルに感動します」と話した。今とは大きさも形もまったく違う生物たちが生きていたと思うと、驚きや自然の不思議を感じてしまう。その辺りは一般の人たちと同じ感覚だが、研究者ならではのユニークな視点だと感じたのは「死なないことが化石の一番の魅力」という点だった。

 

「化石はだいぶ前に死んでいるので、逃げることなく、ずっとそのままいてくれるのでいい」と片田さん。「また、化石は石なので、元の生物と同じ形をしていても、成分や硬さ、手触りがぜんぜん違います。でも、多くの人は生物として認識します。生物としての側面もあり、岩石や鉱石としての側面もある。それが化石の魅力です」

 

こうした化石や鉱石、古生物学の魅力を伝えたいと、片田さんはサイエンスコミュニケーターとしての活動も行っている。昔から理科教育や博物館教育に興味があったという。大学1年時から名古屋市科学館で鉱物や化石を用いたワークショップを行ったり、名古屋大学博物館でイベントの企画・運営にも携わってきた。来館者に説明する際に気をつけているのは、一方的な関係にしないことだと片田さんは話す。

 

「私の持っている情報をただ渡せばいいのではないと気づきました。私には私の好きな分野、知っていることがありますが、相手には相手の好きな分野、知っていることがある。たとえ小さな子どもであっても、私より詳しいこともあります。ある種のリスペクトを持ち、対等の相手として接することが大切だと考えています」

 

押し付けにならず、主体的かつ双方向的なサイエンスコミュニケーションを目指しているのだ。化石や古生物学の研究はもちろん、博物館教育にも興味を持つ片田さん。将来の進路として学芸員を考えている。

研究についての展望を語る片田さん

研究についての展望を語る片田さん

 

「自分の研究をしながら、サイエンスコミュニケーターとして化石の魅力や自然科学の面白さ、重要性、自然界の複雑さなどを伝える活動をしたい」と話した。

 

大昔の生物が化石として残るだけでも奇跡的なことだと話す片田さん。次に化石を目にする機会があれば、化石そのものの姿だけでなく、それができる過程も想像して、自然界の複雑さを感じてみたい。

「妖精って何?」佐賀大学・木原先生に聞く、妖精が教えてくれること。

2024年1月18日 / 大学の知をのぞく, この研究がスゴい!

ファンタジー小説や映画ですっかりおなじみになっている妖精。何となく知った気になっているものの、改めて考えると妖精って何?妖怪との違いは?などと疑問が湧いてくる。そこで、妖精学を研究している佐賀大学の木原先生にお話を聞いてみることにした。実際に妖精に出会った経験をお持ちなので、おもしろいお話が聞けるに違いない。

 

妖精とは何か。鬼太郎は妖精で、一反木綿は妖怪?

“妖精”と聞けば、小さくて羽が生えていて…と、ティンカー・ベルのような姿を思い浮かべる人が多いだろう。実際のところ、妖精の定義はあるのだろうか。木原先生は「あくまでも持論ですが」と断りをいれつつ、妖精の定義を話してくれた。

 

木原先生によると、妖精、妖怪、幽霊の違いを考えるとわかりやすいという。幽霊は、憑依することはあるかもしれないが、手を繋いだり一緒に過ごしたりはできないことから、実体として存在していないといえる。それに対して妖精や妖怪については、相撲を取ったり一緒に遊んだりといった話が数多く残っている。現実の世界にいて、触れることができる存在と区別ができる。では、妖精と妖怪の違いは何か?

 

「私は、恋愛対象になるかどうかの違いだと、学生に説明しています」と木原先生。
「妖怪を恋人にしたいかと問われるとNOでも、妖精だったらYESと答える人が多いでしょう。人魚姫を例にするとわかりやすいのですが、妖精ならお互いに恋をしたり、片思いしたりできる。でも、『ゲゲゲの鬼太郎』に出てくる一反木綿や、顔が魚で体が人間の魚人に恋できるでしょうか。つまり、顔をはじめ人間により近いのが妖精ということになります」

 

木原先生は、妖精と妖怪の違いはドキドキ感や人間としての感情を持てるかどうかだと語る。確かに、ペットなら楽しいかもしれないが、一反木綿や魚人が自分の恋人になるのは想像しにくい。ただ、この定義には異論も多く、『ゲゲゲの鬼太郎』の作者である水木しげる氏は妖精と妖怪に差はないという考えだったのだとか。先生の説では、一反木綿や塗り壁は妖怪で、鬼太郎や猫娘は妖精。さらに、砂かけ婆や子泣きじじいも妖精ということになるが・・・。以前、学生から「子泣きじじいも恋愛対象になるのか?」と質問された際には、「若いから疑問に思うだけで、高齢になったら素敵! と思う可能性もある」と返したそうだ。

 

シンデレラの靴が履けないのは彼女が妖精だから

皆さんは、グリム童話『靴屋のこびと』を覚えているだろうか。夜中の間にこびとが靴づくりを手伝ってくれるという心温まる話だ。このこびとは、アイルランドの妖精レプラコーンだといわれている。手伝ってくれるのはありがたいが、レプラコーンは片方の靴しかつくらないという。なぜ片方だけなのか?


「それはシンデレラ仕様だからだと、考えられています。皆さん誤解していますが、実はシンデレラも妖精なんです」と木原先生。妖精は、半身は地上(この世)に、もう半身は天(あの世)にいる存在なのだという。片足だけガラスの靴を履いているシンデレラも、片足は地上、もう一方の足は天と、二つの次元を生きているといえる。誰もシンデレラのガラスの靴を履けなかったのは、妖精の靴だったからなのだ。

 

妖精の本場アイルランドやスコットランドはもちろん、世界各国に妖精にまつわる話が童話や民話として残っている。先生によると、日本の『鶴の恩返し』のツルも、妖精がツルに化けたもの。「ツルは片足だけ地面に足をつけていることが多い。となると、シンデレラの理屈と同じで、妖精ということになります」。

 

先生の話で、妖精の存在がどんどんリアルになってくる。そんな妖精たちは人間と触れあい、さらに結婚したり、子どもを生んだりといった話も残る。「火のないところに煙は立たないというように、実際に人間が妖精に遭遇したのではないか。妖精にまつわる話は、フィクションであると同時に事実でもあったのだろうと思っています」と木原先生。何らかの事実を元に、フィクションとして広がったというのが木原先生の考えだ。

 

アイルランドで出会った妖精がライフワークに

なぜ先生は、妖精は“存在する”と肯定できるのだろう。先生と妖精との出会いについても聞いてみた。19歳のときのイギリス旅行で、アイルランドのダブリンに足を伸ばした先生は、現地の人に「もうダブリンではあまり見かけないが、もっと西に行けば妖精に出会えるよ」と薦められたそうだ。まだ妖精という存在を信じていなかったものの、とりあえずさらに西にあるスライゴへと向かった先生。


スライゴはダブリンの北西に位置する海辺の街

 

スライゴに到着したものの宿もなく困っていたところ、そこで出会ったおじいさんの家に泊めてもらうことになった。その家に、空の鳥かごがあったので不思議に思って聞いたら…。「妖精の家だと真顔で言うんです」と木原先生。「うちは貧乏なのに妖精がぜいたくばかりするので、おばあさんが叱ったところ、妖精が出て行ってしまった、と」。アイルランドでは妖精が身近な存在なのだろうが、それにしてもごく当たり前に、妖精を話題にするのに驚く。日本でも、座敷童に会えるかも知れない宿が紹介されたりするが、そのような感覚なのだろうか。

 

おじいさんから「妖精はイニスフリー島にいる」と聞いた先生は、さっそく島へ向かう。イニスフリー島はギル湖の中にある島で、先生が訪ねたとき、まさに妖精が白鳥の背中に乗るところに出会ったという。「大きさは30cmから50cmくらい。フワッと輝いていました。何か共鳴するものがあって、恐ろしいとは思いませんでしたね。たとえるなら、きれいな女性に出会ったときのようなトキメキ、ワクワク感がありました」

白鳥に乗って移動する妖精がいるとは、想像するだけで神秘的だ(写真はイメージ)

白鳥に乗って移動する妖精がいるとは、想像するだけで神秘的だ(写真はイメージ)


意図したわけでもなく、偶然に偶然が重なってのことだった。この出会いから木原先生は「妖精は一生探し続ける価値がある」と考える。当時は妖精を学問として研究している人がいない中、探検家や冒険家のように、ライフワークとして研究しようと決めたそうだ。

 

最近の日本でも妖精の存在が信じられ、いろいろな目撃談がある。木原先生も、沖縄の大宜味村で妖精が建てた家に暮らしていた人を取材したと話す。また、ドラマ『北の国から』の作者として知られる倉本聰氏は、著書『ニングル』の中で「富良野の森にニングルはいたのだ」と記しているという。なお、ニングルとは北海道の森に住む小さな妖精のこと。

 

日本にも妖精がいるのなら、どうすれば出会えるのだろうか。尋ねてみると「妖精を探すときに注目するのは際(キワ)です」と木原先生は教えてくれた。あの世とこの世の狭間、キワに立つものが妖精だ。夕暮れか夜明け、つまり朝と夜のキワだったり、何らかの狭間で妖精に出会えるという。そういえば、先ほどから登場するシンデレラも、12時という今日と明日のキワで魔法が溶けてしまう。

 

興味深い話も伺った。童謡『かごめかごめ』に「夜明けの晩に鶴と亀がすべった」という歌詞があるが、この一文だけでも3つのキワが含まれている。夜明けという朝と夜のキワ、天と地のキワに存在する鶴、そしてカメは水と陸のキワを象徴する。どこか不穏な雰囲気のある『かごめかごめ』には、もしかすると妖精や異界につながるメッセージが込められているのかもしれない。

 

妖精という異質な存在を考えることで想像力が育まれる

ところで、妖精という存在は人間にとってどのような意味があるのだろう。「信じる人も信じない人もいるだろうが、妖精は人間界と異界をつなぐもの。異界の気配みたいなものを絶えず醸し出してくれている。妖精や異界について考えようとすることで人間の想像力が育まれていくのではないでしょうか」と木原先生。

 

どの国でも「昔は妖精がいたんだけど…」という声を聞いたそうだが、今、妖精を見ることができないのは、私たち人間の想像力が衰えてきているからかもしれない。アイルランドでは、もともと妖精は巨人だったが、人間が敬わなくなったため、どんどん小さくなっていったという説もあるという。大人になるほど、また現代になるほど、豊かな想像力が失われていくということか。見えないものに心を寄せる、そんな余裕があっても楽しいだろうと思う。

 

ちなみに、19歳で初めて妖精に出会った木原先生は、その後、スコットランドなどで2回、妖精と出会ったそうだ。だが、本気で研究を始めると出会わなくなったという。「でも、いいんです。片思いが好きだから(笑)」と木原先生。「妖精学ほど探求していてワクワクするものはありません。死ぬ間際でも考えているだろうし、きっと死んでからも研究していると思います」と、妖精への熱い思いを語ってくれた。

「非流暢に話す」とは? 京都大学・定延先生に“非流暢性”の 研究とその先にあるものを聞いた。

2023年11月28日 / 大学の知をのぞく, この研究がスゴい!

皆さんは自分のしゃべりに自信がある?ない?「えーっと、私はねぇ、ちょっと、流暢にしゃべれないから」という方もいるはず。筆者自身も、よくつっかえるし、「あの-」などと余計な言葉も多いし、しゃべりには全然自信がない。でも、近年、「非流暢に話す」ことが研究されていると聞き、がぜん興味を抱いた。何を目指して研究するのか?いったいどんな利点があるのか?「非流暢に話す」ことを研究テーマのひとつにしている京都大学の定延利之先生に話を伺った。

実は、話し言葉は宿命的に非流暢だった

定延先生は、言語学や日本語文法などが専門。記述言語(書き言葉)ではなく、音声言語(話し言葉)に着目し、現在はその非流暢性について研究を進めている。

 

定延先生によると「音声言語が言語の本場」という。その理由の一つは、文字のない言語は珍しくないこと。世界に数千ある言語のうち約4割は文字を持たないという。もう一つの理由は、自然習得できるのは音声言語のみだから。確かに、話し言葉は子どものころから自然と覚えて話せるようになるが、文字の場合は教育を受けなければ身につかない。

 

「人間という生きものにとって本質的なのは音声言語だといわれています。そして、音声言語は宿命的に非流暢です」と定延先生は話す。それは文字と音声の性質の違いによる。古くから文字は保存・運搬できたが、音声はなんらかの機器がなければできない。また、読む速度にあわせて速く書くのは非現実的だが、話す速度に聞く速度をあわせることは簡単だ。

 

「文字は保存・運搬できるので、いつどこで誰が読むかわからず、どうしてもフォーマルになる傾向がある。一方、音声は“ここだけの”“いま顔をつきあわせているあなたとの”話になり、相手の反応を見ながら話すので即興的になる。推敲はできず、非流暢になる傾向にあります」

 

これまでは障害などがない限り母語なら流暢に話すのが当たり前だと思っていた。世間一般でもおそらくそうで、流暢に話せないのは、緊張や焦り、頭の中が整理できていないなど、話し手に何らかの原因があるとされていただろう。ところが、そもそも音声言語は非流暢なものだったのだ。

 

とはいえ、音声言語の非流暢性が認められてきたのは、それほど古い話ではないという。
「伝統的な言語学では、理想的には母語話者の話し手は流暢に話すものと考えられてきて、非流暢性は顧みられることがありませんでした」と定延先生。流れが変わってきたのは2000年代に入り、話し言葉研究用の大規模なデータベース(「日本語日常会話コーパス」など)ができてから。大量の話し言葉データを調べた結果、母語話者、つまり生まれてからずっと日本語を話している人たちも基本的には非流暢だとわかってきたのだ。

「あのー」も「ほ、ほんとに?」も非流暢の一種

非流暢性にはどのようなものがあるのだろう。定延先生によると、話している途中でテーマが変わっていく場合などを別にして、簡単に形式だけをみれば大きく3つにわけられるとのこと。

 

一つめは、「えー」「あのー」などの言葉でフィラーといい、間つなぎ語といわれるもの。日本語にも数十個あるという。二つめは、スラスラと話さず細切れに話す、コマ発話と呼ばれるもの。「昨日のね、夜に、京都で、田中さんとね…」などのように、内容的には理路整然としていても、文節ごとに細かく区切って話すことをいう。三つめは、つっかえたり、音を伸ばしたりするもの。例えば、「ほ、ほとんどゼロ円大学」や「ほとーんどゼロ円大学」など、出だしでつっかえたり、単語の途中で音を切ったり伸ばしたりするのがこれにあたる。

 

どれも、誰もが日常的に使っている言葉や話し方ではないだろうか。こうした非流暢な話し言葉には、何らかの役割や意味がありそうだと考えてしまう。実際に、フィラーは間をつなぐため、コマ発話は相手がわかりやすいようにするため…といった“説”はあるという。しかし、定延先生は「こうした話し方は無意識にしているもの。非流暢性を利用する場合もありますが、そのための道具として非流暢な言い方が開発されたのではないでしょう。どういうことなのか、そこも知りたいことのひとつです」と話す。

文節ごとに細かく区切って話すコマ発話の例

文節ごとに細かく区切って話すコマ発話の例

 

定延先生の研究プロジェクト(非流暢な発話パターンに関する学際的・実証的研究)には、記述言語学や大量のデータを分析するコーパス言語学といった言語学分野に加え、会話分析、言語教育、言語障害、AIでの音声合成など、さまざまな分野の研究者が集まっている。

 

「非流暢といってもいろいろあります。最近ようやく光があたってきた母語話者の非流暢性、語学学習者の非流暢性、言語障害を持つ人の非流暢性。これら3つの違いや共通点を明らかにしようとしています」と定延先生。例えば、日本語を母語とする人の非流暢性と日本語を母語とせず、それを学んでいる人の非流暢性の違いがわかれば、日本語学習者にこれまでとは違う教え方が可能になるという。

 

「語学を勉強するときはスラスラと話す練習をしますが、実際の母語話者はたどたどしく話すことが多い。そのパターンを学習者に教えれば、アナウンサーのようには話せなくても、普通の母語話者のようにうまく話すことができるはずです。母語話者と学習者の差をできるだけなくすことができます」

 

同様に、健常な人の非流暢性との違いや共通点を明らかにすることで、言語障害のある人とのコミュニケーションに役立てることもできる。
「話す言葉や話し方で不平等がおきないようにしたい」というのが定延先生の思いだ。「そんな社会にするために必要な基礎的知識を開拓しているところです」

定延先生の研究は、たとえるならブラックライト

「近現代の言語学研究者たちは『言語学の本場は音声言語にある』と認めつつ、文字言語を専門にすることが多い。そんな中、非流暢な音声言語という、ちょっと変わったところをあえて見ています」と、定延先生は自身の研究をブラックライトにたとえて説明してくれた。ブラックライトとは特殊な紫外線を発するライトで、通常の光では得られない反応が出るため、汚れや傷のチェック、宝石の鑑定などに使われている。

 

「よく推理ドラマなどに出てきますが、ブラックライトをあてると肉眼で見えない血痕などが壁に浮かび上がる。非流暢性の研究にはそういうところがあります」

 

実際に、母語話者の非流暢な発話を詳しく調べてみると、いろいろな規則性が見つかったという。流暢性の研究では発見できなかったことが、まるで特殊な光で浮かび上がったかのように見つかり、説明がつくようになったのだ。

 

「規則性がわかれば学ぶことができます。だからこそ、日本語学習者に教育でき、また、AIの音声合成にも活かすことができるのです」と定延先生。

人間とつきあうAIは非流暢に話すようになる

現在、定延先生たちは、母語話者のように非流暢に話す音声合成システムを開発している。よどみなく話すようにするのではなく、あえて非流暢に話す合成音声とはかなりユニークだ。

 

aとbは人間の言葉か?合成された音声か?

 

「方言を含めて、普通の人の普通の発話をAIに学習させようとしています。よく先生にスラスラしゃべられると身につかないということがありますが、インタラクティブにすることが大事。AIが話す場合でも、何かを読んでいるのではなく、聞き手を見て考えながらしゃべっていると感じてもらうことが大切になります。そのためには、母語話者流の適度な非流暢性が必要だと考えています」

 

AIの話し方を不自然に感じるのは、非流暢性が足りなかったとは。ただ、人間の声と区別がつかない合成音声が開発されれば、悪用される恐れもあるので使い方には注意が必要と定延先生は話す。しかし、今後ますます対話型AIがいろいろな場面で人間と関わるのは間違いない。

 

「今は電子文字コミュニケーションで対話していますが、いずれは音声出力で対話するAIが登場します。最初は、ちゃんとした言葉をちゃんとした発音で話すものでしょう。もっと生活に入り込むと、もっと親しみやすい合成音声で話すAIが必要になります。アナウンサーではなく、普通の人間のような内容と構文で話し、ところどころ非流暢に話す。もし人間とつきあうAIをつくるんだったら、言語の研究はそこまで行かないといけないと思っています」

 

40年近くにわたって言語を研究してきた定延先生。研究生活でよかったことを尋ねてみると、「謎が解ける瞬間は何ものにも代えがたい」との答えが返ってきた。

 

「わからなかったことがサッとわかる、その瞬間は自分と世界だけがあると感じます。その瞬間をすべて足しても数時間ないだろうけど、わかる瞬間は何ものにも代えがたい」

穏やかな語り口の定延先生

穏やかな語り口の定延先生

 

最後に、定延先生から「非流暢でいこう」とのメッセージをいただいた。誰もがアナウンサーや司会者のように流暢に話せるわけではないし、そうしなくても大丈夫。ゆっくり、たどたどしく話しても、お互い認めあえばきっとコミュニケーションはうまくいく。

 

 

◎動画の答え:①~③とも「b」が合成音声

農業と水産業が融合する陸上養殖とは? 琉球大学の竹村先生と羽賀先生に聞いてみた。

2023年9月7日 / 大学の知をのぞく, この研究がスゴい!

魚の養殖は海や川で行うもの…というのは、もはや過去の常識なのか、最近では山の中や都会のビル内でも養殖が行われているのをよく耳にする。とはいえ、海に囲まれた沖縄県で陸上養殖をしているはやや不思議に感じないだろうか。養殖しているのは、沖縄県では馴染みのあるミーバイ(ハタ)。クエの仲間である高級魚で、淡泊な白身が美味しく、バター焼きや鍋料理、魚汁が人気という。沖縄県で陸上養殖を行うことになったきっかけやその狙いなどについて、琉球大学の竹村明洋先生と羽賀史浩先生に話を伺った。

先生のお写真

【今回お話を伺った研究者】

◎竹村明洋(写真右)/琉球大学 理学部 教授 (水産学)

農水一体型サステイナブル陸上養殖共創コンソーシアムプロジェクトリーダー。大学院生の頃から魚類の生殖活動の仕組みに興味を持ち、現在はサンゴ礁に生育する魚類の活動リズムについて時間生物学的な観点から研究を続けている。

◎羽賀史浩(同左)/琉球大学 研究推進機構 共創拠点運営部門 特命教授。博士(工学)

同コンソーシアム副プロジェクトリーダー。自動車メーカーの総合研究所で燃料電池やリチウムイオン電池などの材料研究、人材育成、研究企画などに携わり、2019年から琉球大学へ。


「タンパク質危機」対策として陸上養殖に着目

「きっかけは、プロテインクライシスに危機感を持っている民間会社から相談を受けたことです。再生可能エネルギーを活用した陸上養殖を行いたいという話で、じゃあやりましょうかと軽く答えてしまったのがはじまりでした」。プロテインクライシスとは「タンパク質危機」ともいい、人口増加やそれによる食肉消費量増加、さらに温暖化や飼料高騰などの影響により、世界規模でタンパク質の供給量が不足すること。早ければ2025年から2030年にかけて訪れるといわれ、その解決策として代替たんぱく質や昆虫食、養殖が注目されている。

 

陸上養殖の話が具体的に進み、自治体の許可を得て養殖場所は県内の中城町に決定。一般社団法人中城村養殖技術研究センター(通称NAICe/ナイス)を設立し、陸上養殖の研究に着手したのが、5年ほど前だという。

理学部海洋自然科学科 教授の竹村明洋先生は生物成長促進研究を担当

理学部海洋自然科学科 教授の竹村明洋先生は生物成長促進研究を担当


中城村養殖技術研究センターで養殖しているのは、ミーバイの一種、アーラミーバイ(ヤイトハタ)という魚種。アーラミーバイを選んだ理由について竹村先生は「ひとつには沖縄県がミーバイを養殖対象魚種に指定していることがあります。また、アーラミーバイは成長が早いうえ病気に強く、養殖に適していたから」と語る。

 

アーラミーバイは高級魚として知られると同時に、釣りのターゲットとしても人気で、中には体長1mから2mサイズになるものもある。ただ、養殖する場合は出荷後のことも考え、一尾まるごとを煮付けや姿蒸しにして皿に盛ったときに見栄えのよいサイズを目安にしているという。「重さにすると600gから800gを目安にしていますが、そこまで育てるのに通常の養殖では1年かかります。これをなるべく早くしたい。成長を2倍早めて半年にすることが目標です。研究では1.5倍くらいまではできていて、あともうちょっと早められるかなと感じています」と、竹村先生は状況を説明する。

 

早く大きく、かつおいしく成長させることができれば、それだけ光熱費やエサ代といったランニングコストが下がり、収益性も確保できる。その実現に向け、琉球大学が中心となってさまざまな養殖技術を研究・開発しているのだ。
「生きものの特性を重視し、魚にとって心地よい環境をつくってあげて大きく育てています。魚にとって心地よい環境と、消費者にとっての安心安全。その両方が大切」と竹村先生。水温や光、色、塩分濃度を操作して魚がストレスを感じない環境に整え、エサ喰い(エサの転換効率)をよくして、早く成長するように工夫している。

 

そうして育てたアーラミーバイは、「琉大ミーバイ」あるいは県外向けには「美らハタ」というブランド名をつけ、沖縄県内のホテルやスーパーで販売したり、琉球大学の学食で提供したりするほか、通信販売も展開。例えば、オリオンビールの公式通販では、「琉大ミーバイじゅーしぃの素」「アクアパッツァじゅーしぃの素」「ミーバイ汁」を販売している。今回は「ミーバイ汁」を取り寄せ、食べてみた。
じゅわっと味わい深いミーバイの身とプリッとした魚皮、しっかりと歯ごたえのある島豆腐のバランスがよく、行儀は悪いが白ご飯にかけたらさぞおいしいだろうなと感じるお味。柔らかな白身だからかアーラミーバイの身はやや崩れていたが、その分、汁いっぱいに魚の旨味が染み渡るようだった。

ミーバイ汁はレトルトパウチなので、パウチのまま熱湯で温めるだけと調理も簡単

ミーバイ汁はレトルトパウチなので、パウチのまま熱湯で温めるだけと調理も簡単


陸上養殖の先へ。めざすのは“農水一体型”の沖縄モデル確立

ところで、周囲が海に囲まれた沖縄県において、陸上養殖のメリットとは何だろうか? 素人目線では海水温の上昇といった影響を受けないことかと考えていたら、竹村先生が真っ先にあげたのは「漁業権の問題」だった。海上では漁業権を持っている漁師しか養殖ができず、さらに養殖に適した場所も内湾などに限られるうえに、エサで水が汚れて赤潮の発生につながることもある。「もう海上養殖は限界にきている」と竹村先生は言う。「その点、陸上なら漁業権は関係なく、海を汚す心配もなく、魚が心地よい環境をコントロールしやすいという利点があります」

 

陸上養殖のなかでも、琉球大学が行っているのは農水一体型の完全閉鎖循環式だ。完全閉鎖循環式というのは、飼育水を浄化しながら循環利用する方法で、海を汚すことはない。さらに「農業との親和性を持たせた閉鎖循環式にしたいと考えた」というように、農業から出る植物性残渣を魚のえさに使用し、魚から出る排泄物などを肥料にして農業に利用するなど、グルグル循環させているのが特徴。また、電気エネルギーがかかるのが陸上養殖のデメリットだが、なるべく太陽光や風力といった再生可能エネルギーを使うことによってエネルギーコストを下げるよう工夫している。「農水一体型サステイナブル陸上養殖というひとつのモデル、システムをつくることが大きな目標です」

 

農水一体型というアイデアが生まれた背景については、おもしろい話も伺った。「もともと農業や水産業、林業といった一次産業は、それぞれ別のものという考えが一般的にありました。でも、高校生を交えたワークショップで『自分たちが大人になる頃には、そんな区分けはしていないかも』と言われ、ハッとしました。農業と水産業は別々などと勝手に分けているだけで、実は一体化できるのではないかと検討しはじめたのです」

 

次世代の陸上養殖を追究するなか、若い世代の柔軟な発想によって大人の思い込みが覆され、新たな研究につながったという話はなかなか象徴的だ。一次産業、特に水産業は高齢化が進み、沖縄県では80代の人が現役漁師だったりするという。サステイナブルで収益性も高い、新しい一次産業が生まれることで、「若い人たちが魅力を感じて参入してくれれば」と竹村先生は語った。


全国の大学、企業、自治体との共同研究で変わる琉大

ちなみに、「農水一体型」に関してはまだ研究段階。ミーバイ商品をECショップで販売するオリオンビールから、ビール製造過程で出る麦芽カスなどの廃棄物を受け、魚のエサに利用にできないか研究中だ。ほかにも、さまざまな大学や企業が新しい陸上養殖システムの研究に参画している。

 

5年ほど前に始まった琉大ミーバイの陸上養殖研究は、その後、大学や県の枠を超えてさらに進化することとなった。2021年、琉球大学は「農水一体型サステイナブル陸上養殖共創コンソーシアム」を設立。当初28機関でのスタートだったが、現在は全国の大学やオリオンビールをはじめとする企業、自治体など70以上の機関が参画するまでになった。コンソーシアムの拠点ビジョンとして「私たちは農業と水産業の垣根をとりさり、世界の若者が主役として職を育て提供する循環社会を実現する」を掲げて、情報交換・交流から共同研究までさまざまな活動を行っている。

 

共創拠点運営部門特命教授の羽賀史浩先生によると、コンソーシアムの中でも共同研究を行うのは「琉球大COI-NEXTプロジェクト」参画機関のメンバーで、6つの研究課題を設けて役割分担をしながら研究を進めている。

研究推進機構共創拠点運営部門 特命教授の羽賀先生はプロジェクト成果の社会実装担当

研究推進機構共創拠点運営部門 特命教授の羽賀先生はプロジェクト成果の社会実装担当


「例えば、『再生可能エネルギー100%による電源供給』という研究では、福井大学や大阪工業大学といった県外の大学先生たちと一緒に研究していますし、『物質循環型農水一体養殖技術の開発』という研究では東京海洋大学の先生がリーダーになるなど。テーマごとに得意分野の先生たちが中心となってプロジェクトを進めています」。このように、陸上養殖技術のみならず、再生可能エネルギーやICTの活用までテーマは多岐にわたる。

 

農水一体型サステイナブル陸上養殖共創コンソーシアムは、始まって間がないが、「いろいろな人と関わりながら一つのものをつくりあげていくなかで、大学も変わってきている」と竹村先生。

 

琉球大学が陸上養殖に着手したきっかけも、農水一体型を思いついたきっかけも、さらにはオリオンビールとの共同研究も、実は「たまたま」「人との出会い」があったからという。養殖の在り方を変えようとする大きなプロジェクトのはじまりが、偶然の人との出会いだというのは印象深い。「琉大ミーバイは一つのきっかけ、シンボル。ミーバイを売るのが目的ではなく、これをきっかけに大学が変わっていけば」と話すように、開かれた大学として、さまざまな人と交流を進めてきた背景があってこそだと感じた。

日本最大級の偽文書「椿井文書」とは? 大阪大谷大の特別展で実物を見てみた

2023年5月18日 / 体験レポート, 大学を楽しもう

贋作や偽文書、最近ではフェイクニュースなど、いつの時代にも世の中にはニセモノが存在し、関わる人を惑わせるわけですが、つい最近までホンモノとして信じられていた文書群があることをご存知でしょうか。それが「椿井文書(つばいもんじょ)」です。一体どのような文書なのか自分の目で見たくなり、大阪大谷大学博物館の春季特別展「椿井文書をめぐる人々―拡散する偽文書-」に訪れ、特別展にあわせて4月15日(土)に開催された博物館講座「尾張椿井家文書の史料的価値」も聞いてきました。

*冒頭の絵図は、椿井文書の一つとされる「河州石川郡磯長山寺伽藍全図会」(個人蔵)

研究者さえ騙されてしまった、江戸時代のフェイク

大阪大谷大学博物館では春と秋に特別展を開催しており、特別展期間中は一般の人も見学することができます。やや照明を落とした春季特別展会場内には、家系図や書状、巻物、絵図などが展示され、多くの人たちが一つひとつの展示物にじっくりと見入っていました。中には「確かにこの辺りの文字は……」などとつぶやく人もいて、歴史好きの方々の熱い思いが伝わってきました。

家系図や書状、巻物、絵図など、約40点のが展示されている

家系図や書状、巻物、絵図など、約40点のが展示されている

 

そもそも「椿井文書」とは何でしょうか。会場にあった説明によると、江戸時代後期に山城国相楽郡椿井村(現在の京都府木津川市)出身の椿井政隆(1770~1837年)が創作した偽文書群の総称とのこと。実際には江戸時代につくられたにも関わらず、中世に作成されたという体裁をとっています。ホンモノの中世史料として研究者が用いたり、町おこしに使われた例もあるというので、椿井文書が与えた影響は大きいといえます。今回の特別展は、椿井文書の特徴はもちろん、偽文書が拡散された経緯や背景が垣間見られるものとなっていました。

 

偽文書をつくる動機は、家や地域を由緒正しく見せたり、何らかの出来事の正当性を高めたり、あるいは売買が絡むのであれば金銭目的などが考えられます。椿井文書がつくられたのも同様に「うちが本家本流だ」と主張することが主な目的だったようです。また、権威づけを求める寺社などの依頼に応じて系図や絵図を作成するケースもあったといいます。そうして創作された文書は、なんと1000点以上にものぼるのだとか。

 

今回展示されているのは40点ほどですが、びっしりと書かれた文字や精緻な古地図などから察するに、作成するには相当なエネルギーが必要だったでしょう。文書によっては、書き足したような印象が出るようにあえて途中から筆跡を変えていたり、さまざまな用紙を使ったり、巻物の装丁を古めかしく演出していたり、さまざまな工夫が見られます。寺社や古城跡の周囲を描いた絵図などは、実際の地形とも合致していたようで、現地まで行ったのだろうかと椿井政隆の熱量や妄想力には感心するばかりです。

一人の人物が作成したと疑われないよう、さまざまな布や紙を使用していた

一人の人物が作成したと疑われないよう、さまざまな布や紙を使用していた

 

一方で、冗談でつくったと言い訳できるようにするため、実際には存在しない日付を用いたり、名前と花押の位置を微妙に変えたりするなどの細工も随所に散りばめられています。「フェイクだ!」と突っ込まれた際の対策まで考えているとは、なかなか抜け目がないといえます。

 

椿井文書は、こうした巧妙な技術を駆使して作成されたことや、椿井政隆本人ではなく第三者が販売したことなどから信ぴょう性が高まり、広く拡散したと考えられています。そして、ホンモノとして近畿の自治体史などに使われ、研究者が活用することになったのでした。

「筒城天王宝堅流記」(大阪大谷大学図書館蔵)

「筒城天王宝堅流記」(大阪大谷大学図書館蔵)

 

偽文書も、作成時の歴史観や思想を分析する役に立つ

特別展で椿井文書の実物を楽しんだ後は、同館2階で博物館講座「尾張椿井家文書の史料的価値」を聴講しました。講師の馬部隆弘先生は2023年3月まで大阪大谷大学で教鞭を取り、現在は中京大学文学部の教授を務めています。椿井文書が話題になったのは、先生の著書『椿井文書―日本最大級の偽文書』(中公新書/2020年3月刊)が世に出てから。この講座では、尾張椿井家文書を中心に、著書刊行後の研究でわかったことをお話しくださいました。

博物館講座で熱弁をふるう馬部隆弘先生

博物館講座で熱弁をふるう馬部隆弘先生

 

椿井家は、戦国期には山城国一揆にも関わったと考えられる家でしたが、その後各地に仕えるようになります。先生の研究から、尾張藩の重臣に仕えた尾張椿井家、徳川家に仕えた旗本椿井家、椿井政隆の属する山城椿井家は交流があったことが判明しました。3つの椿井家は、家系をめぐって主張が食い違っており、椿井政隆は山城椿井家を本家だと装うために尾張椿井家へ偽文書を送っていたと考えられます。

 

ところで、ニセモノとわかった時点で偽文書に価値はなくなるのでしょうか。ニセの情報からは正しい歴史がわからないので、もう研究する意味はなくなるのでは?という疑問が沸きます。

 

馬部先生は「研究者も長らく偽文書の史料的価値を見出していませんでした。ただ、ここ最近は偽文書に対する視線が変わってきています。作者の歴史像や思想を分析する素材としては有効なのです」と話します。椿井政隆が生きてい江戸時代、人々は何を重んじていたかが偽文書から読み取れるというのです。文書の真偽だけでなく、ニセモノをつくってまで表現したかったことを考えると、その時代や人物像を少し身近に感じられるような気がします。

あいにくの雨にも関わらず多くの歴史愛好家が聴講

あいにくの雨にも関わらず多くの歴史愛好家が聴講

 

尾張椿井家文書には、尾張椿井家に代々伝わってきた古文書もあれば、椿井政隆から送られた家系図や古文書があるのですが、それらを研究していると、「どこからが嘘で、どこまでが本当なのか混乱することもある」と馬部先生。そんな迷宮にはまってしまうような感覚も偽文書研究の面白さのひとつかもしれません。

 

これだけ偽文書について語りながら、実は、馬部先生は江戸時代や椿井文書が専門ではないというので驚きました。主なテーマは戦国期の畿内政治史で、「椿井文書はあくまで趣味で、本当の研究は細川氏綱や玄蕃頭国慶(細川国慶)」と馬部先生。細川国慶が三度の飯より大好きだと話します。でも、趣味で続けている偽文書の研究によって専門分野の細川国慶に関する大きな発見があったそうで、嘘から出たまことではありませんが、これもまた驚きです。

 

講演後、少し時間があったので再び博物館へ。あらためて偽文書を見ながら、椿井政隆のいた江戸時代とはどのような時代だったのかとか、椿井政隆は意外と偽文書づくりを楽しんでいたのかも?などと思いを巡らせました。椿井文書は、令和の人間も引き付ける魅力があるようです。

 

なお、大阪大谷大学博物館の令和5年度春季特別展「椿井文書をめぐる人々―拡散する偽文書-」は6月19日(月)まで入館無料で開催されています。興味のある方は足を運んでみてはいかがでしょうか。

昆虫が人類の危機を救う!? 九州大学のシンポジウムで食糧難と昆虫食について考えてみた。

2022年8月30日 / 体験レポート

皆さんは昆虫を食べたことがありますか? あるいは、食べたいと思いますか? 筆者自身は殻付きのエビやシャコでも極力触りたくないので、昆虫となると、目も口もきつくきつく閉じてしまいます。ですが、やがて来る食糧不足への対策として“昆虫食”は避けて通れないかも…。ということで、7月13日にオンライン形式で行われた九州大学のシンポジウム「知の形成史#3 食資源としての昆虫~昆虫の新たな価値創造~」を聞いてきました。

 

肉が足りない!タンパク質クライシスがもう目の前に

このシンポジウムは九州大学の人社系協働研究・教育コモンズが主催。3回目となる今回の講師は、九州大学経済学研究院 産業マネジメント部門 助教の荒木啓充先生です。

 

先生はまず「昆虫とは何か?」という話からはじめました。必ずしも「虫=昆虫」ではなく、例外はあるものの、定義は6本脚、頭・胸・腹の3部構成、頭に一対の触覚があること。仲間と思いがちですが、クモやムカデ、ダンゴムシは昆虫ではないというのがちょっと意外でした。

調べてみると、辞書にも「昆虫:昆虫類に属する節足動物の総称。体は頭・胸・腹の三部からなる」とありました(シンポジウム スライドより)

調べてみると、辞書にも「昆虫:昆虫類に属する節足動物の総称。体は頭・胸・腹の三部からなる」とありました(シンポジウム スライドより)

数字のデータから、食用昆虫の必要性について講演する荒木先生(写真右)

数字のデータから、食用昆虫の必要性について講演する荒木先生(写真右)

 

その昆虫は、世界にどのくらいいるのか?今、世界中で100万種の昆虫がいるそうで、地球上の全生物種における割合はなんと54%! 種の半分以上が昆虫ということになります。そのうち食べられている昆虫は1900種あり、伝統的に昆虫を食べる人は20億人もいるのだとか。世界の人口はそろそろ80億人に達するといわれているので、乱暴に平均すれば、4人に1人が昆虫を食べていることになります。

食べられる昆虫が1900種! この数字だけでも驚きです(シンポジウム スライドより)

食べられる昆虫が1900種! この数字だけでも驚きです(シンポジウム スライドより)

 

昆虫を食べるといえば、思い浮かぶのは、ぷくぷくとした幼虫を食べるアフリカの人たち、タガメやコオロギのフライが並ぶ東南アジアの屋台…。ごく限られた地域の限られた人しか昆虫を食べないと思っていたので、4人に1人という数字は驚きです。

 

荒木先生によると、日本でもほんの5、60年ほど前まではさまざまな昆虫が食べられていたそうです。そういえば、蜂の子やイナゴの佃煮は信州地方の名物ですし、今でも土産物屋やスーパーでごく普通に購入できますね。

『昆虫食先進国ニッポン』(亜紀書房/野中健一著)内の「昆虫食日本分布図」には、蜂の子やイナゴの佃煮など、昔から全国各地で昆虫が食べられていることが記載されています(シンポジウム スライドより)

『昆虫食先進国ニッポン』(亜紀書房/野中健一著)内の「昆虫食日本分布図」には、蜂の子やイナゴの佃煮など、昔から全国各地で昆虫が食べられていることが記載されています(シンポジウム スライドより)

 

今、昆虫食が注目される背景に人口増や食糧問題があるのは想像がつきますが、一体どのくらい深刻なのか気になるところです。

2010年から2050年にかけて、人口は1.3倍に増える見通しですが、畜産物の需要は1.8倍にまで上がると考えられています。人口増加の割合よりも多くなるのは、所得水準と食肉消費に関係があるからとのこと。

「何かがんばったらお肉を食べようと考えるのは世界共通の話で」と、荒木先生。「所得が上がると食肉の消費量が上がる。新興国の所得水準が上がると、それに伴って食肉の消費量が増えることになります」

人口増加にともなった食料需要量や畜産物需要量の見通しグラフ(シンポジウム スライドより)

人口増加にともなった食料需要量や畜産物需要量の見通しグラフ(シンポジウム スライドより)

 

畜産物を増やすには、飼料をつくるための農地も必要です。でも、温暖化の影響で、2010年から2050年で農地面積はわずか2%しか増えないと予測されています。需要は180%増えるのに、農地はたった2%しか増えないとは! さらに、温暖化で気温が上がると、畜産の生産性そのものも下がってしまいます。

魚の養殖にとっても飼料不足やエサ代の高騰は大きな問題。つまり、牛や豚、鶏、魚などのあらゆる肉が足りなくなることに。その結果として起こるのが、“タンパク質クライシス”です。

 

「2025年から2030年に、タンパク質クライシスが訪れるといわれています。実は世界の穀物消費の約1/3は飼料ですが、タンパク質の需要量がどんどん上がっていって、今の穀物供給量では追いつかなくなると予想されているんです」

早ければ3年後。決して遠い未来のことではなく、大人にとって3年なんてあっという間です。そこまで危機的な状況にあるというのです。「がんばったから焼き肉!」は夢のまた夢、本物の肉を食べられるのは富裕層だけという日も近いかもしれません。

 

このように、人口増加や食肉消費量増加、地球温暖化、飼料高騰によって、将来的には食糧需要量が食糧供給量を上回ると考えられ、新たな代替タンパク質が必要とされています。期待されている代替タンパク質は3つ。大豆などの植物・藻類由来のもの、培養肉など合成物質、そして昆虫由来のタンパク質です。

期待される代替タンパク質として、話題の3種類(シンポジウム スライドより)

期待される代替タンパク質として、話題の3種類(シンポジウム スライドより)

 

荒木先生は、「牛肉や豚肉よりも、昆虫を好んで食べる人は少ないでしょうが、いろいろな社会的問題を踏まえて昆虫が注目されている」と話しました。また、FAO(国連食糧農業機関)が2013年に出したレポート「食品及び飼料における昆虫類の役割に注目する報告書」も大きな転機で、これを機に昆虫食ブームがはじまったといいます。

 

昆虫食のメリットは?どうすれば昆虫を食べたくなる?

では、昆虫食のメリットは何か。荒木先生は、昆虫食の社会的意義として「飼料効率・可食部」「温室効果ガス」「飼育にかかる資源」「感染症リスクの軽減」「有機物の分解」という5つの観点から説明してくれました。

 

まず、「飼料効率・可食部」について。可食部は牛40%、豚55%、鶏55%に比べて、昆虫(コオロギ)は80%と高く、「カイコの幼虫なんて100%、捨てるところがない」と荒木先生。牛や豚は、胃や腸などをホルモンとして食べているので可食部は多そうと思いましたが、意外と少ないのですね。確かに、革は靴や服、バッグなどに利用できるとばいえ、食べられる部分は半分強になるのでしょう。また、必要なエサの量も大きく異なります。牛の場合、可食部1kgあたりに10kgもの飼料が必要なのに対し、コオロギは2kg程度で済みます。

可食部80%という驚異の数字をたたき出す昆虫(シンポジウム スライドより)

可食部80%という驚異の数字をたたき出す昆虫(シンポジウム スライドより)

 

「温室効果ガス」は、コオロギはほとんど出さず、牛の1/2000くらいだそうです。「飼育にかかる資源」も昆虫は少なく、1kgのタンパク質を生産するために必要な面積で比べると、鶏や豚に比べて昆虫(ミールワーム)は半分以下。牛に比べるとさらに少なくて済むといいます。

 

そして、荒木先生が「これが結構大切」と指摘したのが、「感染症リスクの軽減」です。今世界中で問題となっている新型コロナウイルス感染症(COVID-19)をはじめ、エボラ出血熱や鳥インフルエンザなどは人獣共通感染症。動物から人に伝播可能な感染症ですが、昆虫は系統的に哺乳類とはかなり離れたところにあるため、人獣共通感染症のリスクが低いといわれています。

「例えば、鶏インフルエンザが発症すれば、養鶏場全てを対象に何万羽という鶏を殺処分することになる可能性があります。昆虫の場合は、昆虫が媒介する感染症もあるものの、少なくとも人獣共通感染症のリスクは低い」と説明しました。

昆虫は感染症のリスクも低いなんて人間にとっていいことだらけ!(シンポジウム スライドより)

昆虫は感染症のリスクも低いなんて人間にとっていいことだらけ!(シンポジウム スライドより)

 

さらに、昆虫は食資源であるだけでなく、「有機物の分解者」でもあります。そこで、「食品廃棄物を雑食性の昆虫にエサとして与え、その昆虫を家畜のエサにしたり人間が食べたり…。まさにサスティナブル、循環型の食糧供給プロセスができる」と荒木先生。これが、昆虫食が注目されているもう一つのポイントだそうです。

 

こうして説明されると、いいことだらけのようですが、果たして昆虫は体によいのかが心配です。

「まだ研究レベルの段階の話もある」としつつ、荒木先生は昆虫の栄養価について解説しました。昆虫の種類によってバラつきはあるものの、今食べている肉と同じくらいのタンパク質含有量があり、バッタにいたっては牛やサバの3、4倍ものタンパク質を含むとか。先生も触れていましたが、バッタといえば畑を荒らす害虫の代表格で、高い農薬を使い、高タンパク質含量のバッタを駆除しているという皮肉が現実に行われているそうです。また、アミノ酸や脂質も、既存の肉と変わらず、むしろビタミンやミネラルは昆虫の方が豊富だとか。

 

さらに、機能性も優れています。バッタやカイコ、コオロギはオレンジジュースの5倍の抗酸化物質を含み、他にも抗肥満作用や腸内細菌改善の機能を持つ昆虫もいるそうです。

「栄養素だけでなく、機能的にも優れている」というのが荒木先生の結論でした。

タンパク質含有量がぶっちぎりで1位のバッタ。明日からバッタを見る目が変わるかも?!(シンポジウム スライドより)

タンパク質含有量がぶっちぎりで1位のバッタ。明日からバッタを見る目が変わるかも?!(シンポジウム スライドより)

 

さて、ここまでの話を踏まえて、あなたは昆虫を食べますか?

 

昆虫食には社会的意義があり、昆虫が栄養面・機能性でも優れていることがわかりました。筆者は、そんなに肉が足りないなら、昆虫からタンパク質を摂るのも仕方がないと思います。ただし、原型を留めていなければ…です。やはり「どうしても見た目が…」という人もいるでしょう。

昆虫食が普及するには、社会的意義や栄養価をアピールするだけでなく、粉末にして原型を見せないなど、食べ方や伝え方にもひと工夫いりそうです。大豆ミートのように、昆虫を粉末にしてナゲット型に整えれば、意外といけるかもしれません。

 

それでも食べない! という方へ。「実は、私たちは日常的に昆虫を食べているんです」と荒木先生。ハムやソーセージ、かまぼこ、いちごジャムなどの赤色着色料として使われるコチニール色素の原料は、なんとカイガラムシでした。知らなかったとはいえ、私たちは既に昆虫を口にしていたのですね。“タンパク質クライシス”を目前にした今、昆虫食は意外と身近なものと捉え、前向きに考える必要があると感じました。

普段食べているハムやいちごジャムまで! 普段からすでに昆虫を口にしていた可能性大(シンポジウム スライドより)

普段食べているハムやいちごジャムまで! 普段からすでに昆虫を口にしていた可能性大(シンポジウム スライドより)

(写真左)オンラインショップでの即日完売された無印良品の「コオロギせんべい」。(写真右)兵庫県佐用町産コオロギを使用した「こおろぎカレー マッサマン風」(シンポジウム スライドより)

(写真左)オンラインショップでの即日完売された無印良品の「コオロギせんべい」。(写真右)兵庫県佐用町産コオロギを使用した「こおろぎカレー マッサマン風」(シンポジウム スライドより)

 

最後に、荒木先生は面白い話を教えてくれました。昆虫といえばアンリ・ファーブル著『ファーブル昆虫記』ですが、著者のひ孫にあたるヤン・ファーブルが昆虫タンパク配合ビールの開発に携わったのだそう。その名も「BEETLES BEER」。昆虫食もビールならハードルが低い! と探してみましたが、残念ながら今は売り切れでした。

昆虫タンパク配合ビールならば、ハードルが低いので試してみたい!(シンポジウム スライドより)

昆虫タンパク配合ビールならば、ハードルが低いので試してみたい!(シンポジウム スライドより)

 

アンリ・ファーブルは2023年に生誕200年を迎えるので、もしかすると、来年あたり昆虫食ブームはさらに盛り上がりを見せるかもしれませんね。

 

なお、九州大学でも大学公式グッズとしてカイコクッキーの商品開発を進めているそうです。この秋、生協で発売予定なので、ぜひお楽しみに。

 

▼「ほとんど0円大学」の過去の記事でも、食用コオロギの取り組みをご紹介!

食用コオロギが地球を救う!? ベンチャーを立ち上げた徳島大学の先生たちに聞いてみた。

温暖化で海氷が激減!?北大の公開講座で北極海の現状と極域研究の面白さを知る

2022年8月18日 / コラム, 体験レポート, 大学を楽しもう

“北極”と聞いて思い浮かぶのは? ホッキョクグマ、犬ぞり、探検家、真っ白い氷の世界……でしょうか。でも、何年も前から「北極の氷が融けている」といわれており、どうもイメージとは様子が変わってきているようです。自分では決して行くことのない場所だけに、余計に興味が募るもの。北極のリアルを知りたくて、北海道大学水産学部の公開講座「凍る海のふしぎ」にオンライン参加しました。

(トップ画像:16 Aug 2020 (C) S. Graupner)

 

今回の講師、野村大樹先生(北海道大学 北方生物圏フィールド科学センター 准教授)

今回の講師、野村大樹先生(北海道大学 北方生物圏フィールド科学センター 准教授)

北極海の海氷が減ると、地球温暖化がさらに進むことに

「凍る海のふしぎ」は、北海道大学水産学部公開講座「海をまるごとサイエンス!」(全5回)の第1回講座。北方生物圏フィールド科学センターの野村大樹准教授が講師を務めました。野村先生は北極や南極など極域研究が専門。今回の講座も、実際に数ヵ月間にわたり北極に滞在して行った研究をもとにしているとのことで、北極での生活も垣間見られるとワクワクしました。

 

野村先生が参加したのは、MOSAiC(モザイク)計画。北極海の海氷現象(海水が凍る現象)が引き起こす地球規模の影響について研究するというプロジェクトです。

 

プロジェクトについて触れる前に、1980年から2016年にかけて、北極海の海氷の面積を調べたデータが紹介されました。それによると、最も氷が少なくなる夏(9月ごろ)も、最も氷が多くなる冬(3月ごろ)も、どちらも明らかに右肩下がりになっています。

 

「海氷が減っているのは夏だけじゃない。これが重要です。夏に温度が上がって、冬になっても温度が下がらず、氷ができにくくなっている。北極海の海氷は、凍りにくく、かつ、融けやすくなっているのです」と野村先生は説明しました。

 

北極の氷が減っているとは知ってはいましたが、こうしてデータで示されると思っている以上に深刻な状況なのでは?と危機感を覚えます。衛星写真はさらに衝撃的です。1980年に比べると、2016年の写真では北極圏の氷の大きさが半分くらいになっているように見えます。

1980年から現在までの北極海の海氷の現象の様子。グラフ青線が3月、赤線が9月の海氷の面積を示している

1980年から現在までの北極海の海氷の現象の様子。グラフ青線が3月、赤線が9月の海氷の面積を示している

 

海氷には、太陽光を宇宙に跳ね返すことで温暖化を防ぐ役割があります。その他に、「氷ができるプロセスも重要」と野村先生。液体は塩分などの不純物がないところから凍るため、海氷に含まれなかった塩分や栄養によって、その周囲の海水の比重が大きくなり、深く沈み込むことで循環が起こります。ところが、海が凍らなくなるとその循環もなくなります。海に栄養が循環しなくなるとプランクトンが減り、魚が減り……。私たちの食生活にも影響が出てくるのだそうです。

 

MOSAiC計画は、温暖化防止にも海の循環にも大きな役割を持つ北極海の海氷を調べるために行われました。ドイツの砕氷船を北極海の氷原に閉じ込めた状態で、2019年9月から2020年10月にわたってフィールド観測を行うというもの。世界20ヵ国から合計440人の研究者が参加した、史上最大規模の北極海研究観測でした。野村先生は「1年以上にわたって氷の中で観測できるという夢のような研究」だと、MOSAiC計画を表現。同様の研究観測が以前に行われたのは、もう30年も前になるというので、いかに貴重な計画だったかがわかります。

 

ほとんど外部との接触はなく、船で寝起きし、氷の世界に閉じこもって研究に没頭する。宇宙ステーションで生活するようなものでしょうか。筆者は何の研究もできませんが、非日常的な環境で長期間過ごすという経験には憧れます。もっとも、研究者であっても期間中ずっと北極海にいるのは仕事や家庭の都合上なかなか難しく、ほとんどの研究者は交代しながらの参加。野村先生が参加したのも、2020年7月から10月でした。

 

もともとMOSAiC計画では、砕氷船はつねに氷原内に位置するようにし、海氷とともに南下する予定でした。ところが、野村先生が現地に行ったときには、砕氷船は氷原から出てしまっていたそうです。これも海氷の融け方が早いからなのでしょう。大急ぎで北上し、船を係留できる海氷を探したといいます。

 

写真を見ると、海氷の上にはところどころにメルトポンドと呼ばれる水たまりができ、川のようになった場所もありました。雨が降ると一気に海氷が融け、さらに水たまりが広がるのだとか。北極海に雨が降るとか、海氷の上にも水たまりや川ができるなんて、自分にとっては意外な話ばかりで驚きましたが、考えてみれば地球上どこでも雨が降る可能性はあるわけですね。

メルトポンドを調査する観測隊員

メルトポンドを調査する観測隊員

楽しかった氷の上の生活。ホッキョクグマに研究を邪魔されることも

北極海での研究生活は、どのようなものだったのでしょうか。

 

海氷の上・下・内部に観測機材を取り付けてデータを取ったり、ヘリコプターやドローンで上空から撮影したり、船から歩いていける場所にステーションをつくって定期的に観測したり。野村先生は、なんと水深4211メートルの地点から海水を採取したのだとか。

 

メルトポンドについても新たな発見があったといいます。

 

「メルトポンドから、オキアミの死骸や珪藻が見つかりました。ただの水たまりだと思っていましたが、実はメルトポンド内で生物が死んだり生まれたりしている。この生物によって、海洋や大気との間で二酸化炭素循環が起きていることがわかりました」と野村先生。メルトポンドのサンプル採取には、野村先生が日本から持って行った「おたま」が活躍したとか。そんな話を聞くと、難しそうな研究もちょっとだけ親しみが湧いてきます。

 

また、ホッキョクグマに研究を邪魔されたこともあったといいます。大切な機材がホッキョクグマにかじられていたり、ホッキョクグマが近くにいるせいで船から降りることができなかったことも。そんなときは、ホッキョクグマがどこかに行ってしまうのを待つしかないそうで、3、4日外に出られなかったこともあったとのこと。「貴重な研究時間を削られた」と野村先生。映画やドラマの撮影では雨待ち・晴れ待ちという言い方をしますが、熊待ちをするなんて北極海ならではですね。

 

野村先生は、砕氷船内での生活の様子も紹介してくれました。長期間にわたる船内生活で、食べ物をどうするのかは気になるところ。もちろん、最初から1年分の水や食料を船に積んでおくわけにはいかないので、途中で何度かロシアやスウェーデンから砕氷船で補給に来たそうです。水や食料、そして、ドイツの砕氷船なのでやはりドイツビールもたっぷり補給。同時に、研究者の交代も行います。

 

船内のトイレやシャワーはごく普通に使えて快適で、さらにサウナや水風呂も完備。野村先生もよく利用して、研究で疲れた心身をリフレッシュしていたそうです。

 

氷の上での生活はすべてが楽しかったという野村先生。ドイツビールはおいしくて飲みまくったと話しましたが、食べ物だけは少し苦労したようです。料理は基本的にドイツ料理で、ハムやニシンの酢漬けが毎晩のように出ていたとのこと。

「ドイツ料理はおいしいのですが、毎日ハムばかりだと……。酒の肴にはよいのですけども」と、持ち込んだ日本食でしのいでいたと話しました。

数々の課題を乗り越えながら極域で生活することも、MOSAiCに課せられた挑戦のひとつだ

数々の課題を乗り越えながら極域で生活することも、MOSAiCに課せられた挑戦のひとつだ

 

今回の講座では、簡単には行けない北極海での研究について、裏話を交えながらお話いただき、地球温暖化について改めて考える機会にもなりました。講座の最後に野村先生は「今、北極海がどういう状況にあるのか、しっかり調べて伝えていきたい」とおっしゃりました。地球は温暖化していないとする説もありますが、今回紹介されたデータを見る限り、北極海の海氷が減っているのは一目瞭然です。決して他人事でなく、遠い未来の出来事でもありません。真剣に考えなければいけないことだと感じました。

 

なお、凍る海の話や海氷の役割、北極海観測の話などは、野村先生の著書『凍る海の不思議 インドア派研究者の極域奮闘記』(北水ブックス)にまとめられています。興味のある方はぜひご覧ください。

 

佛教大の特別講演に『麒麟がくる』脚本家が登場。光秀を通して描きたかった日本人像とは?

2022年6月21日 / 体験レポート, 大学を楽しもう

皆さんはNHK大河ドラマ『麒麟がくる』をご覧になっていたでしょうか。2021年2月まで放送された話題作ということもあり、ドラマは見ていなくてもタイトルを知っているという方は多いと思います。その脚本を担当した池端俊策氏の話を聞けると知り、5月28日、佛教大学オープンラーニングセンターの特別講演をオンラインで聴講しました。第1部の講演「脚本家の仕事」と、第2部の対談「脚本家と生涯学習」の2部構成による様子をお届けします。

大河ドラマは3年かかる。最初の1年はとにかく勉強。

池端俊策氏は、竜の子プロダクション(現:タツノコプロ)などを経て映画監督の今村昌平氏の脚本助手となり、その後独立。NHK大河ドラマでは『麒麟がくる』のほか『太平記』を、テレビドラマでは『イエスの方舟』『聖徳太子』『夏目漱石の妻』など数々の作品を手掛けています。今回の講演では、『麒麟がくる』制作の経緯や気になる脚本家の仕事の進め方のほか、ドラマ制作時の裏話も飛び出しました。

 

『麒麟がくる』のオファーを受けたのは2017年、池端氏71歳の時。全4回のドラマ『夏目漱石の妻』が終わった後、半年ほどぶらぶらしていたそうで、「70歳を超えたら仕事は来ないものだな、老後の過ごし方はどうしようか」などと思っていたところに、NHKのドラマ部長から「大河ドラマを書きませんか?」と連絡を受けたと言います。
前回の大河ドラマ『太平記』(1991年放送)を打診された際には、「3年間、一緒に過ごしませんか」が口説き文句だったとか。大河ドラマは基本的に毎週1回、1年で約50回の放送があり、その制作には3年もかかるというのです。大河ドラマに抜擢された役者は1年間みっちり拘束されて大変という話はよく聞きますが、脚本を作る方はさらに長丁場なのだと知りました。

 

「最初の1年は勉強。とにかく本を読みます。脚本家は2週間に1本の脚本が書けるかどうかですから、脚本を書くのに2年かかります」と池端氏。2週間に1本のペースで約50回分を書き続けなければならず、撮影中の調整も必要でしょうから負担の大きな仕事です。実は、依頼をしたNHKのドラマ部長も「体力を理由に断られる」と考えていたとか。

 

にもかかわらず、執筆の依頼を受けたのには、池端氏ならではの理由がありました。「戦国時代のはじまりを取り上げたい」というドラマ部長の提案を無視できなかったからです。
戦国時代のはじまりは、室町時代の終わりにあたります。池端氏は、『太平記』で室町幕府の初代将軍である足利尊氏を主役に、室町時代のはじまりを描きました。今回のオファーを受けると、室町時代のはじまりと終わり、その両方を大河ドラマで描くことになります。
「室町時代の最初と最後を書く。自分のやるべき仕事のような気がしました」と池端氏はそのときの気持ちを語りました。

誰を主役に置くかで、世の中の見え方が変わってくる。

時代が決まれば、次は誰を主役にするかを決めなくてはいけません。織田信長や豊臣秀吉はあまりにも取り上げすぎているのでNG……などと話し合っていくうちに、残るのは明智光秀だけに。「光秀、やる?」と池端氏が言うと、ドラマ部長は「光秀は謀反人なので印象が悪いですよ。信長を討った人間が1年間主役でやれますかねぇ」。

 

でも、そのとき池端氏には『太平記』での経験が思い浮かびました。『太平記』で主役にした足利尊氏も、後醍醐天皇を追い払ったことから長い間、国賊のようにいわれていました。それでも大河ドラマが成り立ったのです。
「足利尊氏を演じた真田広之という役者がまた良かったんですけど、やっぱり主役が主役らしくふるまうと、その歴史上の人物もよく見えてくる。これは物事の真理を伝えていると思うんです。誰を主役にするか、つまり誰の目線でその時代を描くかによって、世の中が変わって見えてくる。信長を暗殺した人物の目線で当時を見ると、今までと違う風景が見えるかもしれない」と池端氏。悪が正義になったり、正義が悪になったり。立場によって変わるのは今も同じですね。むしろメディアを通して玉石混合の情報が手に入る今だからこそ、どの視点で見ているのかを見極める必要があると、池端氏の話を聞きながらつくづく感じました。

 

池端氏によると、脚本家は主役の目線と自分の目線を合致させて描いていくのが仕事だそうで、「登場人物がそのとき取るだろう行動を描く。ドラマを見る人も納得できる考え方、行動を持たせておけば筋が通っていく」とのこと。
歴史上の人物は史料からしか理解することができません。記録に残されている歴史的な出来事が“点”とすると「『点』と『点』をつなぐ『線』をつくるのが脚本家の仕事」と池端氏。この“線”とは、資料には残されていない、日々の営みのこと。登場人物の肉付けをするために、彼らが日常において何をしていたかを想像力を働かせて描き、ドラマを構築していくのだそうです。

明智光秀の生き方を通して、“日本人論”をやりたかった。

ドラマの題名を作るのも脚本家の仕事です。池端氏は、光秀の主君である織田信長が“麒麟”の花押を使っていたことから『麒麟がきた』という題名を考えていました。この麒麟とは、素晴らしい君主が世の中を平和に納めたときに舞い降りるという、中国の神話に登場する伝説の動物です。ところが、大河ドラマの前の番組が「ダーウィンが来た!」なのでダメになったのだそう。「来たがダメなら来るにしようと、『麒麟がくる』に決まった」と裏話も教えてくれました。確かに、新聞のテレビ欄に『ダーウィンが来た!』『麒麟がきた』と並ぶと、ちょっとゆかいな感じになってしまいますね。

 

また、主役などキャスティングも半分は脚本家の仕事だとか。光秀が史料上に現われたのは彼が41歳の時。人生50歳の時代にあって、やっと41歳で登場するのです。そのとき、信長は35歳、家康は27歳。登場人物の関係がわかるように年表をつくり、いつ誰がどこで何をしていたか把握することで、登場人物が自然と見えてくると話します。

講演会では年表も公開。登場人物たちの動きや関係性を年表にして整理しています

講演会では年表も公開。登場人物たちの動きや関係性を年表にして整理しています

 

では、主役の明智光秀役は誰か……? 池端氏は直感的に長谷川博己さんと感じたそうです。ドラマ『夏目漱石の妻』で一緒に仕事をしたことがあり、「とてもナイーブでちょっと神経質なところがあって、でも嘘をつかない顔をしている」と、光秀役に選んだ理由を教えてくれました。

 

ドラマの中で、光秀は斎藤道三や織田信長らに振り回され、それを受ける役回りです。文字通り“受けの芝居”と表現するそうですが、「受けながらも、自分をどう通していくかが光秀の仕事」と池端氏は話します。

 

「41歳から世の中に出た人間が『オレが、オレが……』と(リーダーシップをとって)やっていく訳がない。周囲の強烈な人たちの中で、成り上がりの男がどう生きていけるかなんです。日本人は昔から大体そうなんですよ。日本は島国なので外の動きと連動してダイナミックに動くことに慣れていない。古代から、まわりで起こった結果を受けて、どう対処するかでやってきたんじゃないでしょうか」

 

受け身だけれど、どう自分の立場をはっきりさせて自立していくか。それを光秀で体現したかった、光秀を通してその時代の日本人像を描きたかったと言います。

 

大河ドラマで、それぞれの人物の面白さや当時の事件をエンターテインメントとして描くのは当然のこと。「それを通して何を描こうとしたのか。脚本家としての1本のテーマを持っていないと、“面白かったね”で終わってしまう」と池端氏。
「室町時代末期が舞台ですが、現代にも通じる日本人として普遍的な姿が書けたのではないか。すごいヒーローではなく、宙ぶらりんで、強い者と強い者の間でふわっと生きている。今の日本人に似た人物を描けたと思っています」と締めくくりました。

好きなことをちょっとだけ勉強して、世界を広げていく。

第2部は、池端俊策氏と佛教大学オープンラーニングセンター長の篠原正典氏による対談が行われました。テーマは「脚本家と生涯学習」。脚本家に必要な資質や描きたい人物像、これからの学びについてなど、さまざまな話題が飛び出しました。

学びについて語り合う池端氏(右)と篠原氏

学びについて語り合う池端氏(右)と篠原氏

 

特に対談の中で心に残ったのは、「人間を見ること」について。篠原氏が「発想力をどう育てるのか」と質問すると、池端氏は「人間を面白がること」と答え、例として庭の雉を見に来た近所の人の話をしてくれました。
池端氏は庭にオスとメスの雉(キジ)を飼っていて、雉のオスは色がキレイで、メスは地味。それを見ていた近所の人が「メスは、自分はこんなにキレイなんだと思っているから幸せだね」と話したそうです。オスとメス1羽ずつしかいないので、互いに自分の目に映る相手の姿しか知らず、自分も相手と同じ姿だと思っているはず。だからメスは自分がキレイで、オスは自分が地味だと思っているだろうというのです。「人間とは面白い物の見方をするものだな」と池端氏は感心したと言います。近所の人のユニークな考え方に驚くとともに、その出来事を宝物のように話す池端氏の様子も印象的でした。

 

そのほか、篠原氏は「人間が他の動物と違うのは知識欲があること」だと、自身の考えを述べつつ、池端氏に生涯学習について尋ねました。少し考えた後、脚本家として学び続ける必要性を「ものをつくることの基本は雑学」と話し始めた池端氏。「一つのことを深く掘り下げる学者と違って、世の中のことを広く浅く勉強する。何にでも興味を持ち、ちょっとだけ勉強する。そこからまた枝葉がついて次につながり、世界が広がっていく」と、自身の生涯学習論を話してくれました。生涯学習と聞くと大層に聞こえますが、“ちょっとだけ勉強する”と言われたら、ハードルが低くて取り組みやすいですね。

 

光秀や信長の生きた戦国時代と違い、今は人生100年時代。いろいろなことに興味を持ち、“ちょっと学んでみる”時間も機会もたくさんあります。何歳になっても、気負いせず、好きなことを学んだり、新しいことに触れたりしたいと思いました。

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