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全国のALOOK で販売!京都精華大と鯖江のコラボ眼鏡!!(前編)

2016年10月24日 / 大学発商品を追え!, 大学の知をのぞく

日本初の試みが京都精華大学で実現した。眼鏡の聖地とも呼ばれる日本トップの生産地・鯖江にある(株)ボストンクラブとALOOK や眼鏡市場ブランドでおなじみの眼鏡小売チェーン(株)メガネトップが、同大学デザイン学部 プロダクトコミュニケーションコースとコラボレーション。学生がデザインした眼鏡が商品化され、2016年11月11日より全国のALOOK(一部店舗を除く) で販売される。プロのハートを射止め商品化を実現させた、3人の学生のサクセスストーリーを追った。

これが商品化された「SEIKA モデル」

まずは完成した眼鏡を紹介しよう。セットとなるセリート(メガネ拭き)のデザイン、専用ケースの生地セレクトやロゴも学生が手がけた。
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【商品名:結(yui)】
和服姿の女性に似合う眼鏡をテーマに、結婚祝いに使われる飾り紐「淡路結び」をモチーフとして取り入れ、「人と人、人と眼鏡の絆を末永く結ぶ」願いを込めてデザイン。和装時は髪をアップにすることが多いことから、サイドにネイルのような模様をあしらいポイントに。テンプル(ツル)の裏側には淡路結びの文様が描かれ、眼鏡を外した後も「和」を演出。


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【商品名:DIGNITY】
動物の美しい曲線美をデザインに生かしたいという考えから生まれた眼鏡。DIGNITY とは威厳や品格の意。鷲(ワシ)をモチーフに美しく力強い印象を与えるラインを追求し、レンズの上のブリッジには厚みを持たせる一方で斜めにカットを入れてスタイリッシュに。羽毛をイメージしたテンプルを伸ばすと、飛翔する鷲を思わせるデザインとなっている。


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【商品名:hanagoromo】
桜をモチーフに、綺麗と可愛いを兼ね備えた「凛かわいい」眼鏡を追求。花だけでなく樹木として見ても美しい桜を、花びらと幹の色のグラデーションで表現。「花筏(水面に散った桜の花びら)」、「花嵐(散り乱れた桜)」、「花あかり(満開の桜が闇夜をほのかに明るく見せる様)」をイメージして色展開をしている。フロントのサイドには桜の花びらの形が。

浴衣姿で企業担当者にプレゼン。まさかの商品化!

先ほど紹介した眼鏡をデザインしたのが、長谷川千波さん、藤田悠貴さん、北野瑠菜さんの3名だ。彼らは京都精華大学デザイン学部プロダクトコミュニケーションコースの学生であり、昨年2015 年に開講された「アイウェア・デザイン」講座を通じて商品化された眼鏡のプロトタイプを作り上げた。同講座の講師は、福井県鯖江市のアイウェアデザイン会社・(株)ボストンクラブのデザイナーである笠島博信氏と脇聡氏。なおデザイン系の大学において、アイウェアデザインを専門的に学ぶ授業は日本初の試みだ。

左から長谷川千波さん、藤田悠貴さん、北野瑠菜さん

左から長谷川千波さん、藤田悠貴さん、北野瑠菜さん


DIGNITY をデザインした藤田悠貴さんは「受講当初は、自分のデザインが商品化されるなんて想像もしていませんでした」と当時を振り返る。「ですが講師のお二人が、僕らの作品を見て『思った以上に意欲的で面白い。何もしないのはもったいない』と。完成した作品をオープンキャンパスで展示するときに、(株)メガネトップ商品開発部の方を招いてくださったんです。プレゼンの機会もいただけたので、僕らも気合をいれて臨みました」。

結(yui)をデザインした長谷川さんは「周りからのアドバイスで浴衣姿でプレゼンに臨んだ」と照れ笑い。「女性向けの小物や雑貨のプロダクトを手がけてみたいと思っていたので、この講座を受講しました。プロのデザイナーから求められるレベルは高く、授業というより仕事を教えられている感覚で緊張感がありました」と語る。

hanagoromoをデザインした北野さんは、眼鏡制作を通じてデザイナーとしての覚悟を学んだという。「講師のお二人がいう『自分が欲しい眼鏡を作ればいい』という言葉を最初は素直に受け止めていたのですが、制作を通じてその奥の意味に気付きました。デザイナーをめざすなら自分が作りたいものに責任を持たなければいけないんだ。『自分が欲しい眼鏡=自信を持って売れる眼鏡』をデザインしなければいけないんだなと」。

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(株)ボストンクラブでの見学会や学生によるプレゼンテーションの様子。プレゼンでは、招かれたメガネメーカーの社員も真剣に聞き入った

「アイウェア・デザイン」講座を受講したのは、藤田さん、長谷川さん、北野さんを含む17 名の学生。デザインから制作まで、彼らが手がけた眼鏡は、斬新なアイデアにあふれており、オープンキャンパスに招かれた眼鏡メーカーの社員たちを驚かせ、その場で商品化を打診されることに。それも一度に3名が選ばれるというサクセスストーリーに、選ばれた本人たちはもちろん大学側も驚いた。

だが、商品化までの道のりは平坦ではない。
次回、鯖江のプロたちから「商品」を作る厳しさを学んだ、学生たちの姿を紹介する。

後編はこちら

京都市民と佛大生がつくる祇園祭。知られざる祭りの裏側に迫る

2015年7月13日 / 大学の地域貢献

祇園祭とは平安時代から続く日本の大祭。7月の1ヵ月間を通じてさまざまな行事が行われるが、特にクライマックスとなる宵山・山鉾巡行の前後4日間(7月14日〜17日)には国内外から多くの観光客が訪れる。今回、この祇園祭を裏方から支える町衆とも呼ばれる人々の中から、綾傘鉾保存会を取材。知られざる祇園祭の裏側をお届けする。

厄よけの粽(ちまき)はご利益にも注目!

祇園祭の起源は平安時代に始まった、厄よけ・無病息災を祈願する御霊会(ごりょうえ)だ。山鉾が巡行する今のスタイルができたのは室町時代。町衆と呼ばれる商工業者が私財を投げ打ち、町ごとに風情を凝らした山鉾を作るようになったのだ。山鉾の中には、長い歴史の中で姿を変えたり戦乱で失われた山鉾もあるが、綾傘鉾は550年以上前から今の形を保つ。現在33基ある山鉾の中でも2基しかない「傘鉾」であり、祇園祭当初の姿を今に残す古式ゆかしい鉾である。

 

また宵山前後の祇園祭に繰り出すと買いたくなるのが、各山鉾の会所で売られている「粽(ちまき)」。「ちまき」と言っても食べるちまきではなく、笹の葉で作られた厄よけのお守りのこと。主となる「厄よけ」のご加護に加え、「勝運向上」「学問向上」「夜泣き封じ」など山鉾ごとに独自のご利益が込められているのが特徴だ。ちなみに綾傘鉾の粽のご利益は、町内にある大原神社の信仰にちなんだ「安産・縁結び」。こうしたご利益に注目して粽を選んでみるのも祇園祭の通な楽しみ方なのである。

悪いモノが家に入るのを防いでくれるものなので、購入した粽は玄関の外側に飾るのが正解。1年経ったら購入した山鉾の会所に返しに行こう。難しければ神社の納札所に返却してもOK。八坂神社がベストだが近所の神社の納札所でも問題ない

 

知られざる後継者問題を、学生が救う?!

歴史ある祇園祭だが、実は後継者問題を抱えている。市内にオフィスビルや賃貸マンションが増え、町衆として祇園祭を支えてきた古くからの住民が郊外に流出してしまったためだ。綾傘鉾でも町衆として残るのは高齢者ばかりの6軒だという。しかし綾傘鉾保存会の方々の表情は明るい。というのも同保存会では佛教大学の学生・卒業生が、綾傘鉾の伝統を守るため奮闘しているからだ。

 

綾傘鉾保存会と学生をつないだのは、佛教大学歴史学部の八木透教授である。

「20年ほど前に私が綾傘鉾保存会の理事を務めることになり、有志の学生を募って祇園祭を手伝ってもらったのが始まりです。参加希望者が多かったため、2001年からは『祇園祭研修』という大学の授業にしました。受講者の中には『これが目的で佛教大学に来た』という学生もいて、嬉しい限りですね」。

 

八木教授の指導のもと、学生たちはまず大学で祇園祭について勉強。その後、現場実習として綾傘鉾保存会で粽作りから鉾の組み立てまでを手伝い、宵山の前後4日間(7月14日〜17日)は山鉾巡行や会所での粽の販売を担当する。取材日も45名の学生が集まり、保存会の方々と3800個の粽づくりに取り組んでいた。

 

興味深いのが、参加する学生のほとんどが京都府外の出身だということ。さらに同保存会には青年部があるのだが、そのメンバーのほとんどが佛教大学卒業生。「彼らは『祇園祭研修』をきっかけに保存会活動を続けているメンバーで、普段は京都外に住むものの、毎年祇園祭の時期になると近くは大阪や三重などの関西圏、遠くは関東圏から駆けつけて来るんですよ」と八木先生。参加した学生に少し話を聞いてみた。

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(左)佛教大学の八木透教授。専門は民俗学 (中)粽作りを手伝う学生たち (右)粽作りに参加した学生。左から秋山さん(広島出身)、林さん(福井出身)、下城くん(熊本出身)

 

「広島出身なので、祇園祭の裏方を体験できることなんてまずないと思って参加しました」と話すのは秋山香莉さん。「人の縁を結ぶ大切な粽なので気持ちを込めて作りました」と今日の作業を振り返った。林紀予さんは「歴史ある祇園祭を現代まで続けている京都って素敵。福井にある私の地元にも昔は祭りがあったらしいので、調べてみたいと思うようになりました」と、祇園祭を通じて故郷の祭礼への関心が増したことをコメント。また熊本出身の下城孔星くんは「祇園祭について学んだ知識を次の代に引き継いでいくのが大事だと感じています。卒業生の先輩たちが青年部として和気あいあいと活動してるのも憧れますね」と今の想いを述べてくれた。どうやら、京都の歴史や文化へのリスペクトが、彼ら学生たちと綾傘鉾保存会をつないでいるらしい。

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(左)鉾町の中でも町内に神社があるのは綾傘鉾だけ。祇園祭限定で佛教大学の学生が巫女姿や揃いの浴衣姿で粽を販売する (中)大阪から手伝いにかけつけた青年部の2人も佛教大学卒業生 (右)30年以上綾傘鉾を守り続けてきた寺田進理事長

 

綾傘鉾保存会理事長の寺田進さんも、佛教大学の学生や卒業生たちに大きな期待を寄せている。

「祇園祭の中には歴史に埋もれてしまった伝承や文物も少なくありません。しかし大学や学生さんが関わるようになったことで、明らかになることが増えてきました。綾傘鉾では数年前から祇園祭限定で、江戸時代まで活躍していたという大原巫女を復活させ、女学生の方に巫女役をお願いしています。また今年は青年部が貴重な版木を発見。彼らには我々の後継者として、次の世代の綾傘鉾保存会を作って欲しいと期待しています」。

 

後継者問題だけでなく、歴史や途絶えた伝統の復活にも一役買っている佛教大学の学生たち。あなたも京都で学ぶ・住む機会があれば、保存会をお手伝いしてみてはどうだろう。日本が誇る大祭を裏方から支える楽しさを、存分に味わえるはずだ。

 

 

D&DEPARTMENT KYOTOで京都のロングライフデザインを考える(後編)

2015年5月25日 / 話題のスポット, 大学を楽しもう

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ロングライフデザインが息づく京都の街で

ロングライフデザインをテーマにしたプロジェクトショップD&DEPARTMENTの10番目の店舗が京都に誕生した。お寺の境内という立地もさることながら、芸術大学とのコラボレーションという新しい試みに注目が集まる『D&DEPARTMENT KYOTO』。オープンから約4カ月が過ぎた2015年4月、満開の桜に彩られた同店で、仕掛人のナガオカケンメイ氏にお話を伺った。(ショップをレポートした前編はこちら)

 

>『D&DEPARTMENT KYOTO』はこれまでのD&DEPARTMENTとは、趣が違うように感じるのですが…

 

ナガオカケンメイさん(以下N):京都店は全然違いますね。我々D&DEPERTMENTのミッションとは、その土地に長く続くものを紹介する場を作ることなのですが、その意味ではD&DEPERTMENTは京都ではあまり機能してないんです(笑)。というのも、京都の人々は地元の魅力や、長く続くものを継承していく大切さをご存知だからです。京都店で取り扱いをしている商品の作り手さんの中には、学生たちとそんなに歳が変わらない方もいます。20代で老舗の何代目かを継がれていたりする。継承とは、昔からあるものを継ぐことと、新しいものを取り入れることの両方を行わなければならないのですが、京都の作り手の方々はそのことを常に考えていらっしゃいますね。日本の多くの地方が、その土地の魅力を自分たちでは理解できず、若い人たちに伝えることもできていないのですが、京都は違います。

 

>京都にはロングライフデザインが息づいているんですね。その中で『D&DEPARTMENT KYOTO』はどのような役割を果たしているのでしょう?

 

N:我々のターゲットは若い人たちなので、『D&DEPARTMENT KYOTO』をきっかけに京都の若者へ、自分たちの土地や土地のものに対しての関心を湧かせる仕組みとしては、上手くいっているのかなと思います。従来の大型バスで巡る観光でなく、違う視点で京都を見れるようになる…観光がデザインで若返ると。

 

また、物が大量にあることが豊かさの証しでなくなり、デザイン自体の意味が変わる時代になってきました。奇抜だったりカッコいいものを作るのがデザインではない。形の話はどうでもよくって、生活者の暮らしが豊かになるモノづくりを提案できているかが大切です。むしろ「新しいものは作らない」「継承されてきたものをさらにどう育てていくか」というデザインの世界が実はリアルにあるんですね。そこを考えるのが、これからのデザイン教育の現場に重要だと思っています。京都はまさに「デザインを育てる」教育ができる格好のステージですよね。

 

>2013年より京都造形芸術大学で、『D&DEPARTMENT KYOTO』を通じてデザインを学ぶ学生への指導も行われていますね。

 

N:京都造形芸術大学は、いち早く「デザインは育てるものだ」と宣言した学校です。といっても普通はあまりピンとこないかもしれません。でも、僕にたまたま声をかけてくれたのが京都のこの大学で、僕のやりたいこととフィットしたんですよ。京都造形芸術大学の学生はこのプロジェクトを通じて、京都の作り手さんたちが悩み葛藤している現場にお邪魔することができます。それがとてもいい刺激というか教育になっていると思います。

 

>単にモノをデザインするのではなく、「仕組み」をデザインすることがこれからますます各地域で必要になってくると私も感じています。その意識が高い京都にできたD&DEPARTMENTで学べる学生さんが羨ましいです。

 

N:でも学生にしたら、「よぉし作るぞ!」と大学に入ってきたら「作るな」「育てるんだ」って言われて、悩みますよね(笑)。…ですが、教室で生活者のためのデザインを考えるのは難しい。一方、お店に立てば「あれは使いづらい」とか「もっと良いのを出せ」とか、お客さんにいろいろ言われるリアルがある。現実を目の当たりにして初めて、何を生み出したら生活者のためにいいのかが考えられると思うんですね。

だからなるべく学生には『D&DEPARTMENT KYOTO』の店頭に立ってもらいたいと思っています。今後は、京都の作り手とコラボレーションした商品を作っていく計画なので、お客さんとの対話からヒントを得て欲しい。「売り場が生んだデザイン」が一番リアルだと思います。そういう体験を京都店で学生とできると面白いし、これから生まれる“京都セレクション”にも注目してほしいですね。

『D&DEPARTMENT KYOTO』店内で、京都造形芸術大学の学生による商品説明に耳を傾けるナガオカケンメイ氏

『D&DEPARTMENT KYOTO』店内で、京都造形芸術大学の学生による商品説明に耳を傾けるナガオカケンメイ氏

 


ナガオカケンメイさんプロフィール

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1965年北海道生まれ。D&DEPARTMENT代表。47都道府県にD&DEPARTMENTをつくることをめざし、生活者と作り手が集い、その土地「らしさ」について学び、対話できる場を提供している。2013年より京都造形芸術大学教授就任。学生とともに『D&DEPARTMENT KYOTO』を立ち上げた。生活者の目線に立った「売り場でデザインを育てる」大切さを、学生に伝えている

 

 

D&DEPARTMENT KYOTOで京都のロングライフデザインを考える(前編)

2015年5月22日 / 話題のスポット, 大学を楽しもう

お寺の境内にショップ&カフェが登場

京都のあるお寺に、若者が集まっているらしい。

噂の場所は、京都・四条河原町の繁華街からほど近い場所にある本山佛光寺。ここに2014年11月、「ロングライフデザイン」をテーマにしたセレクトショップD&DEPARTMENTがオープンした。以来、寺の檀家や寺社仏閣巡りに訪れた年配層はもちろん、地元の若者までが足しげくここを訪れているという。

実はこの店舗の正式名称、『D&DEPARTMENT KYOTO by 京都造形芸術大学』という。

D&DEPARTMENTといえば、毎日デザイン賞受賞のデザイン活動家・ナガオカケンメイ氏が立ち上げた、デザインとリサイクルを融合したプロジェクトショップ。ロングライフデザインをテーマに「その土地に長く続くモノ」を紹介し、物販・飲食・出版・観光を通じて地域の魅力とその土地らしさを見直す活動を展開している。
直営店は東京店・富山店・大阪店・福岡店だが、D&DEPARTMENTの思想に共鳴した地域の有志とのパートナーシップも6店舗ある。京都店は京都造形芸術大学がパートナーとなった、10番目のD&DEPARTMENTなのだ。

本山佛光寺。境内の「和合所」と呼ばれる棟がショップに、「茶所」だった場所がカフェとなった。内装を手がけたのは京都造形芸術大学の教授でおあるgrafの服部氏

本山佛光寺。境内の「和合所」と呼ばれる棟がショップに、「茶所」だった場所がカフェとなった。内装を手がけたのは京都造形芸術大学の教授でもあるgrafの服部氏

ショップ店内。中央で取り扱っているのが京都のロングライフ商品。小津安二郎監督が作品中で使用した清水焼や、玄米茶発祥のお茶屋の茶葉などのアイテムが並ぶ

ショップ店内。中央で取り扱っているのが京都のロングライフ商品。小津安二郎監督が作品中で使用した清水焼や、玄米茶発祥のお茶屋の茶葉などのアイテムが並ぶ


デザインを通じて寺というコミュニティや観光が若返る

この京都店、D&DEPARTMENTの中でも一風変わった存在だ。
芸大がパートナーというのも異色だが、お寺の境内という立地も初の試み。

 「お寺に出店すると決まって、一番びっくりしたのは僕らです」と笑うのは、京都造形芸術大学4回生の山﨑修平さんだ。彼は『D&DEPARTMENT KYOTO』の立ち上げに関わった学生スタッフの1人。
「でもお寺って立地は面白い。お寺ってなんだろうって考えたとき、今でこそ寺離れが進んでいるけれど、昔はお寺が地域のコミュニティだったんだと彿光寺の方から教えられました。『D&DEPARTMENT KYOTO』は、お寺の夢とD&DEPARTMENTの夢が合体した場所なんだと思います。老若男女がここにやってきて、ロングライフデザインて何だろう、お寺って何だろうと考える場になっているんです」。

D&DEPARTMENTの定番商品は人の生活に密着しているロングセラーアイテムだ。そこに京都店では、独自の京都セレクトを追加。この店を訪れた地元の年配者が「懐かしい!昔家にあったわ!」と喜ぶ京都のロングライフデザインであったり、お寺に関係するアイテムが並んでいる。取材した日も3名のお客さんが購入して行った念珠は、『D&DEPARTMENT KYOTO』の隠れたヒットアイテムだ。 

山﨑さんは京都セレクトへの想いをこう語ってくれた。
「僕らは作り手を訪ねてまわり、ロングライフデザインにはその土地のストーリーがあることを知りました。そしてストーリーを知ることで、僕らはいつの間にか京都のいろんなところを旅していたんです。この体験で得たストーリーを、僕らは『D&DEPARTMENT KYOTO』で店員としてお客様に伝えています。モノを通じてお客様とつながり、お客様にも京都セレクトをきっかけに、京都の作り手や産地を訪ねる旅をしていただけたらいいなと思うんです」。

ナガオカケンメイ氏に、鈴木松風堂の和紙を使った和雑貨をプレゼンする山﨑修平(右)さん。鈴木松風堂は紙で筒(紙管)を作ることを発明した創業121年の老舗だ

ナガオカケンメイ氏に、鈴木松風堂の和紙を使った和雑貨をプレゼンする山﨑修平(右)さん。鈴木松風堂は紙で筒(紙管)を作ることを発明した創業121年の老舗だ

 

世の中の意識をデザインで変える

デザインやモノ作りを学ぶ芸大生の学びの場としても機能している『D&DEPARTMENT KYOTO』。私たちは、次々に新しいモノを消費し続ける暮らしが、本当は豊かではないことに気づき始めている。また、自分たちが住む街や故郷が、本来の個性を失ったリトル東京でいいのかという疑問にも。『D&DEPARTMENT KYOTO』は、古き良き物の価値と継承しつづける努力を知る誇り高き京都で、地域の個性を守り育てることの意義を私たちに教えてくれている。

次回、『D&DEPARTMENT KYOTO』の仕掛人であるナガオカケンメイ氏をインタビュー。京都における同店のミッションと、次代のクリエーターに伝えたい想いを紹介する。(後編こちら)

 

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