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大阪大学公開講座レポート “仕掛け”を使って好奇心で人を動かす「仕掛学」の世界

2016年12月19日 / 大学の知をのぞく, この研究がスゴい!

人に何かを強制的にさせるというのは労力がかかるし、なにより気分がよろしくないものです。しかしそこにおもしろい“仕掛け”があったらどうでしょう?無理やり人を動かすのではなく、ついつい動きたくなるように誘う、そんな“仕掛け”にあふれた世界をめざす学問が「仕掛学」。いったいどんな学問なのでしょうか。

 

毎年、大阪中之島にある大阪大学中之島センターで開かれている連続講座「大阪大学公開講座」。今年で48回目となる講座の11月16日に開催された「気がつけば、仕掛学」に参加してきました。あまり聞き慣れない「仕掛学」という学問。いったいどんな学問なのか、その一端を体験してきました。

 

大阪大学大学院経済学研究科の松村真宏准教授

大阪大学大学院経済学研究科の松村真宏准教授

 

今回登壇されたのは、大阪大学大学院経済学研究科の松村真宏准教授。元々は工学系の研究者として人工知能などを研究されていたそうです。しかし人工知能は人の行動という分野は対象外。どちらかというと人の行動について探求したいという思いから、仕掛けが人に与える影響を研究してみようと思ったのが現在につながっているといいます。

 

そもそも初めて聞く「仕掛学」という言葉、これは松村先生が提唱したもの。さまざまな仕掛けによって人の行動が誘発されるのは経験上私たちも知っているわけですが、そもそもどんな仕掛けがどのように人に作用し、どんな行動に結びつくのか、仕掛けの背景という面から研究されたものはまだないのだそう。

分からないのがおもしろい! ということで先生は「仕掛学」という一つの体系だった学問として、さまざまな仕掛けが及ぼす人への影響を研究されているそうです。

 

ゼロからの研究ですので、まだまだ分からないことも多いそうですが、最近ようやく片鱗が見え始めてきたと松村先生は言います。

 

ところでそもそも、仕掛けとはどんなものなのでしょう。
なんとなく想像するのは、釣りのルアーや機械仕掛けのカラクリなど。先生が研究するのは仕掛けの装置そのものだけではなく、その装置が及ぼす人への影響なども含めたものです。
たとえばこちら。

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天王寺動物園にあるのぞき穴。小さな金属製の筒があちこちに設置されている

天王寺動物園にあるのぞき穴。小さな金属製の筒があちこちに設置されている

 

写真だけ見ると何がなにやらですが、これは天王寺動物園に設置されているのぞき穴です。この穴をのぞくと、その先には動物のフンが展示されています。こういったのぞき穴があるとついつい覗きたくなる心理を利用し、動物だけでなくフンなど、別の方面でも動物をよく知ってもらおうという試みです。
現在、フンは風化してなくなったそうですが、この仕掛けを見つけてついつい覗いてしまう子どもがまだいるようです。

世界中にあるさまざまな“仕掛け”

仕掛けはもちろんこれだけではありません。日本のみならず、世界中でこのような仕掛けがたくさんあります。

 

例えばこれ。こちらはスウェーデンのフォルクスワーゲンのプロジェクトチームの基本理論「楽しみが人の行動を変えるもっとも簡単な方法である」という「TheFunTheory」に基づいた試みの一つです。

 

一見すると普通のゴミ箱ですが、ゴミを捨てると音が鳴る仕組み。動画を見ていただけると分かるのですが、長い長い落下音のあと、ものが底に落ちる音が響きます。

ゴミ箱自体は普通のゴミ箱なのでこんなに深いはずはないのですが、その不思議さとあいまって、ついついその辺に落ちてあるゴミを拾ってゴミ箱に入れてしまうというもの。

仕掛け自体は単純で、既存のゴミ箱に距離センサーとセンサーに反応して音を流す機械を取り付けただけ。

その不思議さからわざわざゴミを探してきて入れる人も出て、通常の1.7倍ものゴミが集まったと言うから驚きです。

 

ほかにも同じプロジェクトから、歩くたびに音が鳴る階段も紹介されました。

 

こちらはスウェーデンのある駅に設置されたもので、階段をピアノの鍵盤に見立て、その上を歩くと異なる音が鳴る仕組みです。音が鳴ることで階段の利用を促します。隣にはエスカレーターがありますが、音の鳴る階段の楽しさに階段を利用する人が増加。動画によると駅利用者のうち66%もの人が階段を選んだというのは驚きです。

天王寺動物園で実験に使用されたライオンの形の消毒器

天王寺動物園で実験に使用されたライオンの形の消毒器

 

また、こちらは松村先生の研究室で実際に製作し、実証実験を行ったもの。天王寺動物園で手の消毒を促すための仕掛けです。真実の口をイメージしたもので、手を入れたくなる心理を利用し、消毒液による消毒を促進することが目的です。実験では多くの人が楽しんで消毒を行う結果に。

「仕掛学」がめざすもの

このように、仕掛けとは少しのきっかけで、それまで見えていた世界が変わる不思議なものです。普段見逃してしまうことに気付くきっかけになったり、そこから人々の行動に変化を促すことができます。
とはいえ、どのような仕掛けがどのような行動を促すか、統計を取ってパターンが見えていても、それがうまくいくかは未知の部分があり、なかなか難しいのが現状だそうです。

現在はさまざまな実験を重ね、アプローチを変えながら事例を集め、より体系だった「仕掛学」を構築している段階だと、先生は言います。さらに研究を重ね体系だった学問になれば、楽しみながら健康増進を行うなど、生活をよりよいものにするために応用できる可能性があります。

 

「仕掛学」というのは初めて聞きましたが、人の好奇心をくすぐり動かすというのは非常におもしろいなと感じました。また、大がかりなものではなく、日常で実践できるのも楽しいですね。

貯金とかちょっとした家事のとっかかりにしたり、日常でもいろいろと工夫ができるのではないかと考えるきっかけになりました。

 

取材協力:大阪大学21世紀懐徳堂

理学部レンドに医学部レンド? 大阪大学限定本格コーヒー誕生の裏側

2016年12月16日 / 大学発商品を追え!, 大学の知をのぞく

これ、なんだかわかりますか?一見すると普通のコーヒーパックです。

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実はこれ、大阪大学生協から販売中の各学部をイメージした本格ブレンドコーヒー、その名も「阪大薫る珈琲 OU-COFFEE」。阪大でなぜコーヒー? 学部をイメージしたブレンドって? いくつも疑問が浮かんでしまい、直接大阪大学に尋ねてきました!

今回お話を伺ったのは、企画に携わっているクリエイティブユニットの伊藤雄一准教授と、コーヒーのブレンドを担当している株式会社matin/北摂焙煎所の宮﨑豊さん。いったいどんな経緯で阪大珈琲は誕生したんでしょうか。

「めっちゃがんばる人を応援する」心から生まれた阪大コーヒー

大阪大学といえば、関西では誰もが知る名門大学。学校をイメージしたものといえば、2015年にオリジナルウィスキー「光吹-Mibuki-」が販売されたのが記憶に新しいです。
今回ウィスキーではなくオリジナルブレンドコーヒーを出そうと思ったきっかけは何だったのか、伊藤先生に尋ねました。

大阪大学クリエイティブユニット 伊藤雄一准教授

大阪大学クリエイティブユニット 伊藤雄一准教授


「『光吹-Mibuki-』は限定で3000本を用意したのですが、ウィスキーブームもありすぐに完売してしまいました。また、ウィスキーは飲む人が限られていて、とくに女性はあまり嗜む人がいません。ブランド向上の取り組みの一環としてオリジナルグッズを出そうという動きがあるんですが、次に出すのであればウィスキーのような限定品ではなく、日常づかいできるものを作ろうということになりました。
ただ、阪大は、こう言ってはなんですが、観光客はほとんど来ない。そのため、グッズを作ったとしても外部の人が買わないだろうな、というのがありました。
なら阪大に所属する中の人のためになって、ちょっと話題性もあって、外への拡がりも期待できるものはなにか? と考えた時、コーヒーにたどり着いたんです」

学内の先生たちはコーヒー愛好家が多く、研究の合間や論文執筆のお供にしたり来客者へ出したりとコーヒーの出番は多い。そこで話題になるのが1つの目的なんだそう。

「お客さんにこのパッケージを出すと、『なにこれ?』ってなりますよね。そこで『阪大が出してるコーヒーやねん』といってもそんなに話が広がらないと思うんですね。ですが例えば『文学部のコーヒーやねん』って言うと『え?』って。『学部ごとにあるの?』って話になると思うんです。そこで『学部ごとにあるよ。理学部のブレンドもあるよ』なんて話になると、話題が広がりますよね。しかもウィスキーと同じく、パッケージには『真理を探求する』とか、『戦士たちに注ぐ』というコンセプトが書いてある。これおもしろいなって話になるんじゃないかと。じゃあついでに帰りに買って帰ろうかとか。そうやって拡がっていってくれることを期待しています」
そんな観点から、大学イメージのブレンドではなく、学部ごとのブレンドを作ろうという流れになったんだそう。確かに学部イメージと言われると、何となく気になってしまいますよね。

各パッケージの表と裏にコンセプトが書いてある。

各パッケージの表と裏にコンセプトが書いてある。


また、阪大の成り立ちも、このコーヒーが生まれた理由に関わっています。
「阪大はもともと大阪の財界や市民の力によって設立された大学。学問をする人を応援しようという気持ちが文化としてあります。先ほども言ったように、研究や勉強のお供としてコーヒーを嗜む人は多い。だからそこに寄り添い応援しようという気持ちでコーヒーを出した、というのもあります。総長も日頃から阪大に所属している人が阪大に所属して良かったと思える大学にしたいと話されているので、その考えも継いでいます」

阪大で頑張る人を応援したい、ということで、パッケージにはギリシャ文字24番目最後の文字「Ω」と「“大”阪大学は“め”っちゃ“が”んばる人を応援します」という言葉を掛けた「O・ME・GA」というキャッチコピーも。応援したい! という強い思いを感じます。

イメージからブレンドを考えるのはやっぱり大変

では実際、この学部イメージブレンドはどんなふうに作られているのでしょうか。宮﨑さんに伺いました。

株式会社matin/北摂焙煎所の宮﨑豊さん

株式会社matin/北摂焙煎所の宮﨑豊さん


「まず大学から各学部のイメージとシチュエーションをいただき、それをコーヒーの味でいえば何になるのか、自分の中でイメージを膨らませることから始めています」

学部ごとのイメージはウィスキー「光吹-Mibuki-」を作る際にとった学生アンケートの情報を活用。学生ならではの歯に衣着せぬ意見がたくさんあるそうです。
素人が考えても、形のないイメージからブレンドを作るのは大変では?と思うのですが、宮﨑さんに尋ねてみると、やはり「大変です」との答えをいただきました。

「新規オープンのカフェに出すコーヒーブレンドを依頼されることもありますが、おおよそオーナーさんの好みの味や、こういうコーヒーを出したいという希望があるので、それに沿ってブレンドを考えています。今回のように、理学部の『真理を追究する』みたいな、イメージとシチュエーションだけでコーヒーを作るというのは初めての試みでした。正直お話しをいただいた時は不安もありました。もちろんやるからにはしっかりやろうという気持ちでしたが」
とはいえ初めての試みなので、企画がスタートした当初はまずお試しとして理学部のブレンドのみを出すことに。

「今回のブレンドは通常カフェの看板メニューとして出せるクオリティのものをパックしています。イメージに合う生豆の選定から煎り方も変えて。例えば理学部は少し浅めの焙煎でコーヒー本来の果実らしさがあるタイプ、文学部は深煎りの苦みがあって濃いもの、という風にすべての学部で違うコーヒーにしています」と、かなりこだわりがあるようです。

初回に出した理学部のブレンドは少しクセがあるため、売れるか不安もあったそう。しかし、売れ行きは好調。8月の初回販売3000パックについてはすぐに完売したほどの人気だったそうです。理学部が好調だったことから11学部すべてのイメージブレンドを出すことが決まり、現在は、医学部、工学部、文学部、外国語学部、歯学部など、すでに8学部のブレンドが大阪大学生協から販売中です。

こういう学部のイメージものを出すことに反対意見はなかったのでしょうか。

「珈琲をグッズとすることに反対はありませんでした。ただ、試作のコーヒーを試飲して学部のイメージに合わないという話は出ました。例えば今度出す予定の工学部のブレンドなどは、結構まろやかで万人受けする珈琲なんですが、『めちゃくちゃ美味しいけど、スッキリしすぎで、工学部のイメージじゃないとか言われないか?』とか(笑)。
でも出来上がったものはどれも好評です。個人の好みもあるのでそこは仕方ないですが、『これから論文を書きます』というツイートに写真付きで阪大珈琲を載せてくれる先生がいたり、濃い珈琲が好きな先生が『僕は(所属は理学部だけど)文学部か~』って言ってくれたり」と伊藤先生。
個人の好みや気分で味を選べるのもこのコーヒーの魅力ですね。

取材時、私は理学部レンドをいただいたのですが、確かに普段飲むコーヒーよりも酸味が強い印象でした。ですが苦みが少なくて後味すっきり、取材中だというのについつい手が伸びてしまうおいしさでした。
ちなみにこの記事を書く時のお供には外国語学部レンドをチョイス。賑やかな味わいという説明通り、コーヒーらしい華やかな香りと味が楽しく、あっという間に1杯飲み終えてしまいました。

取材当時は4学部が発売中でしたが、12月15日には工学部、歯学部、法学部、経済学部が追加され、来年2月には薬学部、基礎工学部、人間科学部が登場予定とのこと。「阪大薫る珈琲 OU-COFFEE」は大阪大学内にある大学生協で1パック120円(生協価格、一般は126円)で購入できます。

皆さんもちょっとしたお土産や自分へのご褒美に、知的な気分で美味しいコーヒーを楽しんでみてはいかがでしょうか。私も今度コーヒー好きの母にお土産として持って行こうかなと思います。

酒粕と牛乳が主役の新しい朝食 帝塚山大学「朝の醍醐味」試食会に行ってきた

2016年12月9日 / 大学発商品を追え!, 大学の知をのぞく

みなさん、朝ご飯はちゃんと毎日食べていますか? 食べた方が体にいいとわかっていても、忙しくてついつい抜いてしまったり、パンだけ、ご飯だけ、お菓子を代わりに……なんていう方も多いのでは?
朝食は1日の活動を始める上で重要です。そんななか、帝塚山大学が株式会社北岡本店と協同し、日本酒醸造の副産物である酒粕を使った朝食にもぴったりな新感覚スイーツ「朝の醍醐味」をプロデュース!
今回は11月10日に開催された試食会に、ほとゼロ編集部も参加させていただきましたので、その様子をレポートします。

 

酒粕に秘められた力と「朝の醍醐味」開発の道のり

「朝の醍醐味」は11月10日からウェブサイトでの販売がスタート。11日プレスリリース配信にあわせ、今回の試食会が開催されました。

 

まずは岩井洋学長のご挨拶から。

 

帝塚山大学岩井洋学長

帝塚山大学大学岩井洋学長

 

「『朝の醍醐味』のネーミングにもある『醍醐』とは仏教用語で牛の乳、牛乳を生成したものの中でも最高級のものを指し、美味しい至高の食べ物のことです。『朝の醍醐味』も名前に違わず最上級のものになったのでは」と岩井学長。

 

続いて、開発に携わった現代生活学部食物栄養学科の稲熊隆博教授にバトンタッチ。稲熊教授からは「朝の醍醐味」完成までの過程や秘めている力について紹介がありました。

 

現代生活学部食物栄養学科 稲熊隆博教授

現代生活学部食物栄養学科 稲熊隆博教授

 

稲熊教授はこれまでにも、学生とともに大和ベジサイダーなど奈良県の特産品を生み出す連携事業を展開しています。今回使用された酒粕は日本酒の醸造の副産物。奈良県は清酒発祥の地といわれ、その副産物である酒粕もまた、奈良県で初めて製造されたものということになります。

酒粕は清酒の絞りかすということで栄養は残ってないのでは? と思いがちですが、実は豊富な栄養素が含まれ、完全食に近いすごい食材なんだそうです。白ご飯などの主食とくらべてもその差は歴然。

100gあたりの栄養価を比較すると、タンパク質は約6倍、食物繊維は約17倍、ビタミンB2は約26倍、ビタミンB6はなんと約47倍!

元は同じ米ですが、発酵食品である酒粕は全体的に栄養価が高いようです。

 

ほかにもコレステロールの上昇抑制効果、血圧降下作用、健忘症予防、肝障害抑制作用、抗うつ、抗肝障害、動脈硬化予防や美容効果など、こんなにすごいの!? と思うような効果が満載。
効用もあり栄養素も豊富な完全食をどのように活用するか、稲熊先生が目をつけたのは、酒粕を朝食にすること。朝食の重要性は認知されているものの、忙しい20代の若者は朝食欠食率が高いそうです。そこで栄養価が高くて食べやすい理想の食を開発し、朝食をとる習慣を身につけてもらおうと考えたのだそうです。

 

朝食欠食率。20代では男性が37%、女性が23.5%と高い

朝食欠食率。20代では男性が37%、女性が23.5%と高い

 

酒粕そのものも栄養価が高い食材ですが、今回はより理想の食をめざして他の食材との組み合わせを試行錯誤。結果、岩井学長のご挨拶にもあった「牛乳」との組み合わせにたどり着いたのだと稲熊教授。
酒粕を使った「朝の醍醐味」を市販の牛乳と合わせることで栄養がより強化され、まさに「醍醐味」と呼ぶにふさわしい理想の食が完成します。混ぜ合わせる牛乳の分量を調節することで、好みの味にできるのも「朝の醍醐味」の特長です。

 

キャッチコピーとパッケージデザイン、宣伝動画には文化創造学科の学生が参画

 

なお、キャッチコピーやパッケージデザインは文化創造学部の学生たちがプロデュース。こちらは文学部文化創造学科の河口充勇准教授から解説がありました。乳製品であること、理想の食という観点から「醍醐味」という言葉を継承して命名したそうです。

 

文学部文化創造学科 河口充勇准教授

文学部文化創造学科 河口充勇准教授

 

キャッチコピーは酒粕を「のこりもの」とみなして効用を強調するため、「のこりものには、福がある!」に決定。ちなみにキャッチコピーの元であることわざ、「残り物には福がある」ですが、英語では「Sometimes the less are better than the wine.(ワインの澱は時にワインに勝る)」となるそうで、この「the less(澱)」は酒粕と同じワインのカスのことだそうで、偶然にも「朝の醍醐味」にぴったりだったとのこと。

 

また、近年国外で日本酒や納豆など日本の食が注目されていること、忙しくて朝ご飯をゆっくり食べられない人やダイエットに興味がある女性にも手にとってもらうことをめざし、販売ターゲットを外国からの観光客や女性に設定。パッケージデザインも女性の目線を意識してつくったそうです。さらに宣伝動画も作成しており、こちらは日本語バージョンと中国語バージョンがあって、外国人観光客にも訴求できるようになっています。

 

副産物に活用の道を!
コラボレーションのきっかけ

 

ここからは製造販売に関わる株式会社北岡本店常務取締役保井喬氏から。帝塚山大学との産学連携の経緯を伺いました。

 

株式会社北岡本店 常務取締役 保井喬氏

株式会社北岡本店 常務取締役 保井喬氏

 

やたがらすなど奈良県でも愛好家の多い清酒醸造を行っている北岡本店にとって、酒粕は日常的に出るもの。以前は通常の廃棄物として処理していたそうですが、現在酒粕は産業廃棄物の対象で、奈良漬けなど一部で使用されている以外は活用されず、有料で処分しなければなりません。
何か酒粕を活用する術はないかと考えて奈良市に相談したところ、大和ベジサイダ―などの奈良の特産品開発の実績をもつ稲熊教授を紹介されたのが産学連携の始まりだとか。

 

連携当初は、そうはいってもしょせんは酒粕、そんなたいしたものにはならないだろうという思いもあったそうです。しかし稲熊教授や学生たちが真剣に取り組み、商品企画が進むにつれ、企画の重みが増していったといいます。

 

現在北岡本店のウェブサイトのみで購入可能ですが、今後販路を拡大する予定とのこと。しかし、「ただ販売するだけでなく『朝の醍醐味』の良さを理解し、丁寧に販売してくれる会社を吟味していきたい」と保井氏。
また、現在プレーンを含め4種類の味がありますが、これだけにとどまらず新しいフレーバーにチャレンジしていきたいと今後の展望についても語ってくださいました。

 

では「朝の醍醐味」を実食!

 

いろいろなお話しを伺ったのち、いよいよ「朝の醍醐味」を実食させていただきました!
この日用意いただいた味はプレーン、いちご、りんご、そしてオレンジの4種類です。

 

試食用の朝の醍醐味は食物栄養学科の学生のみなさんが用意してくれました

試食用の朝の醍醐味は食物栄養学科の学生のみなさんが用意してくれました

 

プレーンは少しお酒の風味があり、レアチーズケーキのような風味でおいしかったです。また他の3つは果物の香りと味がしっかりついていて、あまりお酒っぽさは感じられませんでした。いちごは甘さもあるもののあっさりしたイチゴヨーグルト、りんごも果実の風味があり、リンゴをそのまま食べているような不思議な感覚がありました。オレンジは柑橘系らしいさわやかな香りが印象的。どれも食感がなめらかで、本当にデザート感覚でさらっと食べられ、すべておいしくいただきました。

これで栄養価も高いというのはかなりお得感があります。個人的にはプレーンがとても好みでした。

 

開発に携わった食物栄養学科の山本優里菜さん、湯村理沙さん、宮﨑成美さん、パッケージデザイン等に関わった文化創造学部の前田好美さんに、開発で大変だったこと、オススメの味などを伺うことができました。まず食物栄養学科の3人に開発で大変だったことを伺うと、味の区別を明確にして飽きずに食べるためにどうするかということにこだわったそうです。開発段階では酒粕の風味がどうしても強く出てしまうので、果実の味や香りをしっかり出すことが大変だったと教えてくれました。

 

また、パッケージデザインでは、「手に取りやすくてワクワクする、でも落ち着いた雰囲気を出す」ことを目標に、ゼミ生全員で試行錯誤を繰り返したそうです。ワクワク感を演出するため、パッケージを開ける時朝日が昇るようなデザインにしたそう。「開封の時はぜひワクワクしてください」と前田さん。

 

パッケージに描かれた日の出

パッケージに描かれた日の出

 

現在は北岡本店ウェブサイトから、プレーンセット(3つ入り)、いちご・りんご・オレンジの各フレーバーが1つずつセットになったものがそれぞれ700円(税込)で販売中です。

朝が苦手な方、スイーツ感覚で手軽に食べられる朝の醍醐味を一度おためしください。

立命館大学「『挑戦したいを応援する』運動フェスティバル」に行ってみた!

2016年11月30日 / 大学の地域貢献

健康な体作りにはスポーツが有効!……ですが、頭で分かっていてもなかなか始められない、始めたけれど続かない、という経験がある方も多いのでは。
そんななか、立命館大学びわこ・くさつキャンパスにスポーツ施設「スポーツ健康コモンズ」が誕生しました。今回、地域の方々を対象に「『挑戦したいを応援する』運動フェスティバル」というスポーツイベントが開催されたので、このイベントを取材させていただきました。

 

「『挑戦したいを応援する』運動フェスティバル」は立命館大学「スポーツ健康コモンズ」竣工記念として10月22日に開催。これは、国立研究開発法人科学技術振興機構の「センター・オブ・イノベーションプログラム」に採択された「運動の生活カルチャー化により活力ある未来をつくるアクティブ・フォー・オール拠点」のプログラムの一環となるイベントです。

 

今回は初心者向けの講座を開講し、運動をはじめるきっかけをつくることが目的です。参加者は家族連れやご夫婦、友人同士と思われる方が多く、なんと300人以上の人たちが「スポーツ健康コモンズ」に集まりました。

 

開会式の様子

開会式の様子

 

開会式では立命館大学スポーツ健康科学部学部長である伊坂忠夫教授、スポーツ庁地域振興担当参事官の仙台光仁氏それぞれから挨拶がありました。

 

立命館大学スポーツ健康科学部学部長 伊坂忠夫教授

立命館大学スポーツ健康科学部学部長 伊坂忠夫教授

 

スポーツ庁地域振興担当参事官 仙台光仁氏

スポーツ庁地域振興担当参事官 仙台光仁氏

 

続くオープニングイベントとして、「草津ダンスクラス」の小学生たちと立命館大学唯一のストリートダンスサークル「R.D.C.」がダンスパフォーマンスを披露。子どもたちの元気なダンスと「R.D.C.」の軽快なダンスが会場を大いに盛り上げました。

 

「草津ダンスクラブ」のダンスパフォーマンス

「草津ダンスクラブ」のダンスパフォーマンス

 

ストリートダンスサークル「R.D.C.」によるダンスパフォーマンス

ストリートダンスサークル「R.D.C.」によるダンスパフォーマンス

 

開会式が終わると、いよいよプログラムがスタート。ピラティスやダンス入門、筋肉を支える筋膜をほぐす筋膜リリースストレッチ、ラグビー体験やフットサル体験、キッズテニスにウォーキング指導など、初心者向けに10種類のプログラムが行われ、各自興味のあるプログラムに参加します。また、立命館大学と学術交流協定を結んでいる順天堂大学によるロコモ度測定※もプログラムの1つとして実施されていました。

 

※ロコモ度測定
ロコモとは、筋肉や骨、関節、軟骨、椎間板といった運動に関わる部分に障害が起こり、「立つ」「歩く」といった機能が低下する「ロコモティブシンドローム(和名:運動器症候群)」の略称。この測定では「立つ」「歩く」動作によってロコモ度を計測します。

 

プログラムは各回45分。事前に1人につき2枚チケットが配付されており、1枚につき1つ、プログラムを楽しめる仕組みです。

 

今回私は取材ということで、それぞれのプログラムを見学させていただきましたので、その様子をレポートします。

 

まずはフットサル体験から。

ここでは子どもと大人が入り交じり、ドリブル練習からゲームまでを楽しんでいました。

 

フットサル体験の様子

 

フットサル体験の様子

 

また同じコート内ではラグビー体験も開催。
こちらは小学生が対象で、男の子だけかと思いきや、男女関係なく数人の小学生が集まり、慣れないラグビーボールに悪戦苦闘しつつもプレーに励んでいました。

 

小学生ラグビー体験。パスの練習

小学生ラグビー体験。パスの練習

 

ほかにもキッズテニス、マットを使ったピラティスや筋膜リリースストレッチ、ダンスなど、どこも大盛況!

 

キッズテニス

キッズテニス

 

親子で楽しめるダンス入門

親子で楽しめるダンス入門

 

成人以上が対象のダンスエアロビクス

成人以上が対象のダンスエアロビクス

 

ロコモ度診断。

ロコモ度診断。診断後個別の相談も行われていました

 

大人から子どもまで、どのプログラムも参加者の皆さんが本当に楽しそうだったのが印象的でした。私もやってみたいと思うプログラムがたくさんありました。

スポーツだけじゃない
食べ物からも健康を考えるブースも併設!

今回は、スポーツ体験プログラムだけでなく、「健康」をテーマにした「食」について楽しめるブースも数多く設置されていました。こちらは「スポーツ健康コモンズ」の外にあり、プログラム参加者だけでなく通りかかった学生たちも立ち寄っていました。

 

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ブースは大塚製薬やキリンビールといった企業や自治体のものが中心で、健康に関する食べ物を紹介していたり、試食や購入できるところもありました。

運動を続けるきっかけ作りと仲間作りが大切
コミュニティ創生の場としての「スポーツ健康コモンズ」

ピラティスと筋膜リリースストレッチに参加されたというご夫婦に感想を伺ったところ、「普段運動をしていなくて、たまたま休みだったこともあり参加しました。継続してやらないとと感じました」と語ってくださいました。本当は全プログラムを制覇(!)するつもりだったそうですが、参加できるプログラムが2つのみだったので少し残念だったそうです。しかし終わった後は体が軽くなった、機会があればまた参加したいとのこと。

 

ロコモ測定とダンスエアロビクスに参加した女性からは「とても楽しかった。ロコモでは思っていた以上に筋力の足りなさを痛感しました。筋力をつけないと」という感想をいただきました。

 

皆さんやはり参加されると意識も少し変化するようで、運動を続けることに前向きな意見が多かったです。

 

ところで、普段スポーツイベントなどを見ると、1箇所で1プログラムということが多いように感じます。しかし今回のイベントでは同じグラウンドやアリーナ内で場所を区切り、あえて別々のプログラムをやるといった取り組みがされていました。
何か意味があるのでしょうか。

 

プログラム運営の中心となった立命館大学URAの原健太さんに伺ったところ、「同じ場所で違うプログラムをやると、もう一方のプログラムも目に入ります。そういったことで他の運動に興味をもってもらったり、そのことがきっかけで会話が生まれて、コミュニティが築かれていくと考えたからです」と教えていただきました。

 

見ているだけで楽しそうでしたので、次は私もぜひ一参加者として楽しんでみたい、そう思えるイベントでした。今後も「スポーツ健康コモンズ」で随時イベントを行っていく予定ですので、運動好きの方はもちろん、そうでない方もぜひ注目しておいてください!

関西大学の新キャンパス・梅田キャンパス「KANDAI Me RISE」潜入レポート

2016年10月17日 / 話題のスポット, 大学を楽しもう

今年130周年を迎える関西大学が、学生だけでなく社会人の利用スペースを多く設けた一風変わったキャンパスを梅田に開設しました。その名も関西大学梅田キャンパス「KANDAI Me RISE(みらいず)」。今回はこちらのキャンパスの竣工直後の様子をレポートします。

(アイキャッチ写真提供:関西大学広報課)

 

阪急「梅田」駅茶屋町口から徒歩約5分、JR「大阪」駅からは約10分という場所に新設された梅田キャンパス。建物は8階建てでシンプルな外観になっており、一見して大学の建物だと感じない作りになっています。

 

ちなみに「KANDAI Me RISE」というのはこの梅田キャンパスの愛称で、500件を超える応募作品の中から選ばれたもの。Me(自分)がKANDAI(関西大学)を利用して未来に大きくRISE(飛躍)するという願いを込めたネーミングなのだそうです。

オープニングセレモニーの様子

オープニングセレモニーの様子(提供:関西大学広報課)

 

9月28日(水)に竣工、翌29日にプレス向け内覧会が行われたので、ほとゼロは29日の内覧会に参加しました。

 

大学のキャンパスではありますが、対象は関大関係者だけでなく社会人一般。社会人の学び直しのほか、起業支援、コワーキングスペースを備えた会員制サロンの運営など、社会人が活用できる施設をいくつも設けています。

 

では早速中へ。

 

1階・2階には「TSUTAYA BOOK STORE」と「スターバックス コーヒー」が出店しており、カフェを備えた書店として利用することができます。

 

この書店のコンセプトは「心地よさに出会える場所」。販売している本をカテゴライズした提案型の売り場を展開しており、1階は生活を豊かに過ごすための本、2階ではビジネスに関する本のほか、文具なども取り扱っているようでした。

入り口すぐ横のテラス席。

入り口すぐ横のテラス席。開放感があってきれい!

 

1階奥には「スターバックス コーヒー」の売り場がある

1階奥には「スターバックス コーヒー」の売り場がある

 

1階本棚

1階は雑誌や読み物が豊富

 

2階のカウンター席

2階部分のカウンター席にはコンセントがあり、ちょっとした仕事もできる

 

2階カフェスペース

2階カフェスペース

 

2階文具売り場

2階文具売り場

文具やグッズを販売している売り場。ビジネスマン向けのものが多い

 

2階売り場で「関西の大学を楽しむ本」を発見!

 

2階の売り場では、ほとゼロ編集部プロデュースの「関西の大学を楽しむ本」を発見!!

せっかくなので、ほとゼロ編集部としてはこちらも参考に大学を楽しんでいただきたいところです。


(詳しくは「大学に夢中になろう! ほとゼロプロデュースの雑誌『関西の大学を楽しむ本』発売!!」をどうぞ)

 

さらに同じフロアには関西大学とTSUTAYAが共同運営する起業家支援施設「スタートアップカフェ大阪」が。


すでに九州でTSUTAYAが自治体と共同展開しているスタートアップカフェですが、大学との連携は今回が初だそうです。


こちらには3名のコーディネーターが常駐しており、起業の相談をすることが可能です。また相談業務だけではなく、起業希望者とパートナー企業の間を取りもったり、イベントを開催したりするなど、起業につながる支援を積極的に行っていくとのことです。

スタートアップカフェ大阪

スタートアップカフェ大阪。すでにいくつかのイベントの開催告知が流れている

 

ちなみに、こちらの書店「TSUTAYA BOOK STORE 梅田 Me RISE」で働くスタッフの制服は、大阪に本社をもつ「URBAN RESERCH DOORS」が手がけたオリジナルデザイン。こちらは店内ショップでの販売も予定しているそう。

「TSUTAYA BOOK STORE 梅田 Me RISE」で働くスタッフの方の制服(女性)

 

こちらがその制服。デニムのセットアップがおしゃれ。

 

もちろんこのキャンパスには、本屋やカフェだけではなく、セミナーや会議などに使えるスペースもあります。3階以上の階に入っているので、こちらにもお邪魔してきました。

最上階8階大ホール

 

こちらは最上階8階にある250人収容可能な大ホール。

 

6階~7階は、社会人学び直しプログラムや各種セミナーなどで使われるセミナールームや教室があります。

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セミナールームや教室

セミナールームや教室

 

5階は関西大学キャリアセンター梅田オフィス。就職活動中の学生が利用しやすい環境が整います。

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キャリアセンター梅田オフィス。個別に使えるスペースや電源、相談ブースや鏡があるスペースもある

キャリアセンター梅田オフィス。個別に使えるスペースや電源、相談ブースや鏡があるスペースもある

 

そして残る3階と4階は会員制の異業種交流サロン。

 

こちらは一部コワーキングスペースとしても利用可能です。多目的ルームもあり、交流イベントなどを実施できるとのこと。中は広く、備えられている本もビジネスに関する書籍がほとんどでした。

3階のサロン入り口

3階のサロン入り口

 

3階のライブラリスペース

3階のライブラリスペース。厳選された2000冊の本を利用できる

 

打ち合わせなどに使えるボックス席

打ち合わせなどに使えるボックス席

 

写真右側が作業や学習を行える集中スペース。扉で仕切られている写真左がミーティングルーム

写真右側が作業や学習を行える集中スペース。扉で仕切られている写真左がミーティングルーム

 

さまざまな人とコミュニケーションをとれるコミュニティエリア

さまざまな人とコミュニケーションをとれるコミュニティエリア

 

ミーティングルーム

ミーティングルーム

 

書店やカフェスペース、スタートアップカフェなど、これまでの大学のキャンパスのイメージとは違う、まさに社会人のための施設という色合いが濃いキャンパスでした。

 

とくにスタートアップカフェ大阪は初の産学連携での運営であり、起業をめざす人はもちろん、新規事業をおこしたり今の仕事のヒントを得たい人なども対象に、幅広い支援を想定しているそうです。


勉強のためはもちろん、本やコーヒーを楽しむだけに立ち寄ることもOK。梅田の新しい拠点として、これからどのように発展していくのかが楽しみです。

大学アプリレビューvol.13 古地図で街を探索 金沢工業大学「古今金澤」

2016年9月23日 / コラム, 大学アプリレビュー

みなさん、普段地図は使いますか? 最近はスマートフォンで簡単に場所を検索できるし、ナビまでできて便利ですよね。とくに知らない土地を歩くには必須の地図ですが、もちろん昔の人もさまざまな地図を活用していました。
今回ご紹介するのは、江戸時代に作成された地図で今の金沢市内を散策できるアプリ、金沢工業大学の「古今金澤」です。

 

「古今金澤」は、江戸時代に作成された金沢城下町の本格的な絵地図である「寛文七年金沢図」と現代の地図を組み合わせ、古地図とともに金沢の町を楽しめるアプリです。

地図の画面

起動させるとこのように、下にGoogleマップ、上に「寛文七年金沢図」が表示されます。地図同士の位置が同期しているので、どちらかの地図を動かすと連動してもう一方の地図も動くという仕組み。もちろん、拡大縮小も可能です。

 

上の古地図には約3,600件もの文字の記載がありますが、その多くが加賀藩主前田氏に関わる藩士の氏名なのだそうです。身分別の町割(区画)や重臣の武家屋敷の位置などがたくさん書き込まれており、当時の金沢の様子がうかがえます。

 

地図の画面2

地図を見ると、昔の道がそのまま残っているような場所もある

 

「寛文七年金沢図」は本格的な測量で作成された絵地図だそうですが、縮尺等が異なったり重要度で大きさを変えるなど、現在の地図にそのまま適用はできません。
このアプリでは独自の技術によって、今の地図と古地図の位置関係を補正し、同期されるよう調整されています。

 

アプリはGPSと連動しているので、自分のいる場所と古地図を比べて現地を楽しめます。
その場にいない場合でも、マップを自由に動かせるので、金沢の気になる場所を選択すれば、古地図と今の地図を見比べて楽しむことができますよ。

 

なお、古地図に書かれている文字は、長押しで表示させることも。

 

長押しすると地図に書かれている文字が表示される

さらにそこからウェブ検索で詳しい情報を調べることもできる優れものです!

 

Googleでの検索結果画面

長押しで表示された文字をタップすると、ネット検索画面に移る

 

地図は古地図とGoogleマップの分割表示のほか、古地図のみ、Googleマップのみの三段階に切り替え可能。切り替えは上下のフリックで行います。

 

上にフリックするとGoogleマップに

上にフリックするとGoogleマップに

 

下にフリックすると古地図のみになる。

下にフリックすると古地図のみになる。

 

古地図のみの状態でもGPSと連動して地図がちゃんと動きます。

 

地図だけでなく、「古地図検索」からは、登録されているスポット名から場所がわかる機能も。

 

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登録されているスポットには、詳しい説明付きの場所もあり、「解説を見る」ボタンをタップすることで詳細を見られます。

 

解説が登録されているスポットは、画面に「解説を見る」項目が表示されます

解説が登録されているスポットは、画面に「解説を見る」項目が表示されます

 

解説の詳細画面

解説の詳細画面

 

解説は、江戸末期から明治時代に掛けて編纂された金沢の郷土資料である「金澤古蹟志」の一部。金沢の百科事典とも言うべき資料だそうで、かなりの情報が掲載されています。

 

また、「写真を撮る」機能では、古地図と共に景色の写真を撮影も可能です。

 

「写真を撮る」画面。古地図と実際の風景をあわせて写真を撮影できる。※画面ははめ込みです

「写真を撮る」画面。古地図と実際の風景をあわせて写真を撮影できる。※画面ははめ込みです

 

北陸新幹線の開通と相まって観光地として人気が高まっている金沢。当時の城下町に思いを馳せながら、金沢の町を楽しんでみるのはいかがでしょうか?

魅せる研究成果 関西大学「豊臣期大坂図屏風コンサート」の裏側に迫る

2016年9月21日 / 大学の知をのぞく, この研究がスゴい!

2016年8月9日に大阪・フェスティバルホールで開催された、関西大学創立130周年記念「豊臣期大坂図屏風コンサート」。前回その模様をレポートしましたが、この取り組みの裏には大学の研究成果を違うアプローチで見せる工夫がなされています。


今回はこのコンサートの企画に携わった、関西大学URAの舘正一(やかたまさかず)さんにお話を伺いました。

お話を伺った関西大学URAの舘正一さん

お話を伺った関西大学URAの舘正一さん

 

URAとはUniversity Research Administrator の略で、文部科学省が進めています大学等において研究開発について知識があり、研究資金の調達・管理、知財の管理・活用等を行う専門職のことです。研究資金を得るためには、広く研究を認知してもらうことも必要なため、広報活動も重要な仕事になります。


舘さんは今回のコンサートでは、とくに外部への広報活動で関わっていたとのこと。

「豊臣期大坂図屏風コンサート」が開催された理由。

――さっそくですが、今回どのような経緯で「豊臣期大坂図屏風」をテーマにしたコンサートが開催されたのでしょうか。


舘さん
オーストリアのグラーツを拠点に活動するソプラノ歌手の計盛恵子さんがこのコンサートを企画し、関西大学に提案してくれたことがきっかけです。

 

題材となっている「豊臣期大坂図屏風」はその名の通り、16世紀、豊臣一族統治時代の大坂の様子を描いた屏風で、国内ではなくオーストリアのエッゲンベルグ城にある「日本の間」に今も飾られています。計盛さんはエッゲンベルグ城でこの屏風を目にし、今回のコンサートを企画されました。

 

この屏風は2008年に「関西大学なにわ・大阪文化遺産学研究センター(現・関西大学なにわ大阪研究センター)」に撮影写真が持ち込まれたことがきっかけとなり、以降、関西大学で継続して研究されています。


その縁で計盛さんが関西大学へコンサートの企画を提案。ちょうど関西大学が創立130周年を迎えるということもあり、記念事業の一つとして「豊臣期大坂図屏風コンサート」を開催するに至りました。

 

参考:「偶然が生んだ奇跡の屏風 関西大学「豊臣期大坂図屏風」の謎に迫る」

 

 

――コンサートを拝見しましたが、屏風絵をイメージした新曲、本当に良かったです。このコンサートを開催するにあたり、とくに大変だったのはどのようなことでしょうか?

 

舘さん
海外とやりとりをしなければならなかったことですね。


今回は第三部で、プロの音楽家集団であるグラーツ・フェスティバルストリングスと関西大学の学生が合同演奏を行うことになっていました。ですが、練習時間をあまり取ることができなかったので、事前に演奏について打ち合わせを重ねました。※

 

打ち合わせは楽譜をやりとりしながらメールで行いましたが、指揮者のタクトの振り方ひとつとっても、オーストリアと日本ではやり方に違いがあるようで、普段当たり前に行っている部分を一つひとつ確認しながら話し合いをしなくてはなりませんでした。

 

※グラーツ・フェスティバルストリングスは日本での公演の前8月1日にグラーツ市エッゲンベルグ城でもコンサートを開催。8月4日に来日したため、学生との練習期間は4日程度だったそうです。

 

また、当日配布のパンフレットにも苦労しました。


今回はオーストリアとのコラボだったため、パンフレットは日本語とドイツ語の2カ国語で作成しています。


このドイツ語ですが、ドイツで使用されているものとは少し違い、オーストリアで通じるドイツ語で翻訳しています。国が違うと言葉も変化するため、ドイツで使用されているドイツ語に翻訳するだけでは不十分です。大学外に配付する資料なので、この分野に明るい教員にしっかりと確認してもらいながら制作しました。

当日配布されたパンフレット

当日配布されたパンフレット。すべて日独2カ国語になっている

 

――コンサートには約2000人の方がいらしたと伺っています。当日もかなり賑やかでしたが、どのような方がいらしていたんでしょうか。

 

舘さん
大学関係者が6割、それ以外の方がおよそ4割来場されました。関係者以外をターゲットにした広報にも力を入れていたので、結果としては良かったと感じています。

 

――関係者以外への広報にも力を入れたとのことですが、何か理由があるのでしょうか?

 

舘さん
「豊臣期大坂図屏風」の研究自体はそれほど新しいものではなく、2006年から現在まで、継続して研究しています。もちろん研究成果は何度も発表され、研究しているセンターのファンともいえる方が一定数いらっしゃいます。


しかし逆に言うと、そのファンの方以外にアプローチができていないという課題もありました。


今回はコンサートという、これまでとは違う形での発表の機会に恵まれたので、この研究の認知を高めるために、関西大学とは縁が遠い方々へのアプローチを積極的に行いました。

 

――広報をするうえで気をつけられた点はどのような部分でしょうか。

 

舘さん
私は、広報する上で重要なのはストーリーづくりだと考えています。
ですので、音楽が好きな人に向けてはプロの音楽家によるコンサートであること、屏風についてご存じの方に向けては屏風を前面に押し出して、それぞれのターゲットに“刺さる”ストーリーを練り、新聞、ポスター、チラシ、ネット広告などのターゲットに応じた広告手法を用いました。

 

――コンサート当日、工夫された部分はありますか?

 

舘さん
屏風を研究していたことがこのコンサートにつながったと、理解してもらえるような展示を行いました。
具体的には、これまでの成果を展示するように、「関西大学なにわ大阪研究センター」に要請し、当日会場の一部に研究成果のパネルや屏風のレプリカを展示したり、屏風を超高精細に閲覧することができるタブレット端末用アプリの試作品を展示したことです。

 

これらの展示物は今回新たに作ったものではなく、これまで成果発表のたびに少しずつ作りためてきたもの。10年続けてきた研究の成果を来場者に見ていただくことができました。

 

――私も拝見しましたが、当日は多くの人が屏風のレプリカやアプリに興味をもっていましたね。

 

舘さん
そうですね。展示して大変良かったです。

当日展示された解説パネルと解説を眺める来場者

当日展示された解説パネルと解説を眺める来場者

 

大学にあるシーズと世の中のニーズをいかにつなげるかが鍵

――今回のコンサートは研究発表という面では、かなりおもしろい取り組みだと感じました。このような研究成果の広報が果たす役割は、どのようなことでしょうか。

 

舘さん
今の大学の研究は、どのようにして大学外から資金を調達するかにかかっています。


昔であれば、先生方も研究に集中していればよかった。しかし今は、自分のやりたい研究のために、公的な機関や企業などの外部から資金を調達しなければならなくなっています。

 

一般論かもしれませんが、産学連携でも社会連携でも、そこには資金や社会のニーズが絡んでいます。これまで大学はシーズ(技術やノウハウ)をもっていたので、ただ外部から話が来るのをまっていればよかった。


しかし今は大学が率先して社会のニーズを掘り起こし、そこにどんなシーズを当て込めるかを考えていかなければならない段階に入っています。

 

ですので、世間のニーズを探るためにも研究成果を外部へ伝え、大学の持っているシーズを広く知っていただくことは大切だと考えています。そして掘り起こしたニーズと大学のシーズをどのように結びつけていけばいいのかを考えて、実行するのが、新しい職種である我々のような立場の仕事ではないかなと思っています。

 

――ありがとうございました。

 

いろいろとお話しを伺いましたが、今回のような形での研究発表は今後もありえるとのこと。大学にはさまざまな研究があり、おもしろいと思えるものがたくさんあるので、このような新しいスタイルの研究発表が今後も継続して行われていけばいいなと感じました。


今後もどんな研究発表があるかに注目していきたいです。

大坂図屏風をオーケストラで体感 関西大学「豊臣期大坂図屏風コンサート」

2016年9月9日 / 体験レポート, 大学を楽しもう

8月9日(火)夜、フェスティバルホール(大阪市北区)で関西大学130周年記念「豊臣期大坂図屏風コンサート」が開催されました。関西大学で2006年から研究されている「豊臣期大坂図屏風」。以前「偶然が生んだ奇跡の屏風 関西大学「『豊臣期大坂図屏風』の謎に迫る」でも取り上げたこの屏風を、音楽という全く違う視点から楽しむイベントを取材しました。

 

会場に到着したのは夕方17時半ごろ。開場1時間前ですが、すでに多くの来場者の姿が。小さなお子さん連れのご家族や教職員、会社帰りの人など、さまざまな方が会場に集まっていました。


会場外のホワイエには、「豊臣期大坂図屏風」のレプリカと説明、そしてこのコンサートで初公開となるタブレット端末用アプリの試作版が展示されていました。

タブレット端末用アプリの試作版

タブレット端末用アプリの試作版

 

タブレット端末用アプリは「豊臣期大坂図屏風」を手で拡大縮小して楽しんだり、屏風に描かれている風景の説明を見るなど、直感的に屏風絵を楽しめるもの。まだ試作段階とのことで、完成がとても楽しみです。

豊臣期大坂図屏風を解説するパネル。

豊臣期大坂図屏風を解説するパネル。

 

「豊臣期大坂図屏風」の等倍レプリカ。写真を元に制作されているそうだが、屏風本来の姿で見る大坂図はとても華やかだ

「豊臣期大坂図屏風」の等倍レプリカ。写真を元に制作されているそうだが、屏風本来の姿で見る大坂図はとても華やかだ

 

屏風や説明を興味深く眺めている方も多く、関心の高さが伺えました。

 

フェスティバルホールの緞帳には、この「豊臣期大坂図屏風」の図案が使用されています。


私も初めて拝見しましたが、客席から見てもわかる、非常にきれいな緞帳でした。

 

今回のコンサートは、今も屏風があるオーストリアグラーツ市とのコラボレーションであり、大坂図屏風をテーマにした新曲2曲が披露されました。

 

コンサートの前に第一部では、エッゲンベルグ城の研究員であり屏風発見の立役者であるバーバラ・カイザー氏から、「豊臣期大坂図屏風」についてドイツ語で講演があり、続く第二部からいよいよコンサートがはじまりました。

第二部はグラーツ・フェスティバルストリングスによる華麗な演奏

まずは今回のコンサートのため、グラーツ市に縁のある音楽家たちによって組織されたグラーツ・フェスティバルストリングスによる3曲の演奏。

演奏の様子

大坂図の緞帳をバックに壮大な新曲を披露

 

1曲目はフーゴ・ヴォルフ作曲のイタリア風セレナーデ。そして2曲目と3曲目は今回のコンサートのために書き下ろされた「豊臣期大坂図屏風」をテーマにした新曲です。

 

2曲目の『大坂城下町八景』は、現代音楽やジャズ、電子音楽の分野で活躍しているオーストリア出身の作曲家、クリストフ・レッシ氏が作曲。

 

この曲はオーストリア伝統の楽器であるハックブレッドとコラボし、8扇からなる大坂図屏風と同様、8楽章が途切れることなくつながり、一つの楽曲になっています。「さくら」など日本の童謡にあるフレーズが、曲をつなげるモチーフとして散りばめられていて、どこか懐かしさを感じる不思議な曲でした。

ハックブレッドのソリストを務められたヘンマ・プレシュベルガー氏(提供:関西大学広報課)

ハックブレッドのソリストを務められたヘンマ・プレシュベルガー氏(提供:関西大学広報課)

 

続く3曲目は、大阪府出身の音楽家である杉本友樹氏が手がけた『義太夫三味線と弦楽のための協奏的譚詩』。それぞれ異なるイメージの3楽章から構成され、屏風が海を渡り再発見されるまでのストーリーと、屏風に描かれた豊臣一族統治時代の大坂をイメージした曲です。

 

弦楽の華やかな音と三味線の日本的な音が合わさり、豊臣一族統治時代当時の賑わいがありありと想像できる力強さと華やかさを感じました。

三味線を演奏された鶴沢清尤氏。洋楽にも通じる三味線奏者(提供:関西大学広報課)

三味線を演奏された鶴沢清尤氏。洋楽にも通じる三味線奏者(提供:関西大学広報課)

第三部はプロと学生のコラボレーション

第三部ではグラーツ・フェスティバルストリングスと、関西大学の学生たちで組織された関西大学交響楽団、関西大学グリークラブ、関西大学混声合唱団ひびきが登壇。アントニオ・ドヴォルザーク作曲の交響曲第6番第1楽章・第4楽章、混声合唱とオーケストラのためのカンタータ『土の歌』より『大地讃頌』を奏でました。

 

最後は関西大学学歌でコンサートが締めくくられました。

第三部の様子

第三部の様子

 

屏風については先日もお話を伺っていましたが、屏風をテーマにコンサートをすることが想像できず、どうなるのかと思っていました。


しかし披露された新曲はどちらもすばらしく、知識としてだけではなく屏風そのものを多角的に楽しむことができました。

 

今回の取り組みは、大学の研究成果をどのようにアピールするかという活動にも関わっているとのこと。

 

ではどのようにしてコンサートが実現したのか、次回はその内容を伺います。

 

(次回掲載は9月中旬を予定しています)

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