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大学発広報誌レビュー第14回 京都造形芸術大学「瓜生通信」

2016年9月16日 / コラム, 大学発広報誌レビュー

大学広報誌界の雄が満を持して放つ、ハイクオリティWebマガジン。

日本全国の大学が発行する広報誌を、勝手にレビューしてしまおうというこの企画「大学発広報誌レビュー」。第14回目となる今回は、京都造形芸術大学が発行するWebマガジン「瓜生通信」を取り上げます。

京都造形芸術大学は京都市左京区に本拠地を置く芸術系大学。前身である京都芸術短期大学の開学から数えて、来年で40周年を迎えます。

今回ご紹介するWebマガジン「瓜生通信」。あれ?と思った方はたいへん記憶力が良い。実は第5回で取り上げた紙媒体の広報誌「瓜生通信」のWebマガジン版なんです。(第5回はこちら

まだ開設されたばかりのようでそれほど記事数は多くありませんが、そこは紙版でもたいへん尖った内容でクオリティの高い誌面を生み出していた京都造形芸術大学。Web版でも大学発とは思えない非常に質の高い内容となっています。

最新の「SPECIAL TOPIC」として取り上げられているのは、本年度開催されている「第15回 ヴェネチア・ビエンナーレ 国際建築展」における日本館の出展作家である、家成俊勝氏。建築ユニット「ドット・アーキテクツ」のメンバーであるとともに、京都造形芸術大学の教員でもあります。驚きなのは、編集部がヴェネチアまで取材に赴き、特別表彰受賞すぐのコメントを動画で収録するなど、現地での生の声をレポートしているということ。記事のクオリティももちろんですが、こうした取材に人員を送る大学の懐の深さに脱帽します。

取材班をヴェネチアに派遣して生の声を取材する

取材班をヴェネチアに派遣して生の声を取材する



また、2014年にアメリカのアカデミー賞短編アニメーション部門にノミネートされたことも記憶に新しい、アニメーション監督 森田修平氏のインタビューも掲載されています。彼、京都造形芸術大学の卒業生なんですね。仕事に対する姿勢やこだわりなど、しっかりと聞き取られています。

世界的な活躍をする卒業生へのインタビューも

世界的な活躍をする卒業生へのインタビューも



今回Webマガジン版が創刊されたことでもっとも変わったことは、やはり動画でしょう。圧倒的にビジュアル面での情報量が多くなり、音声も使えることから取材対象の生の声を発信することが可能となっています。

また、紙版でもそうだったように、Webマガジン版でも制作にあたっているのは学生によって組織された編集部。Webでは彼らの顔写真やプロフィールもクレジットとして掲載されることで、より「学生たちがつくっている」印象が強くなっています。自身の実績として、就職活動などの際には強力な武器のひとつとなるはずです。

まだまだスタートしたばかりで今後の成長に期待するばかりですが、大学広報誌界でもひときわ異彩を放っていた京都造形芸術大学の「瓜生通信」がWebマガジンを創刊したことは、たいへん大きなインパクトを持ったニュースであることはまちがいないでしょう。

大学発広報誌レビュー第13回 近畿大学「KINDAI FAMILY」

2016年8月26日 / コラム, 大学発広報誌レビュー

これが近大の「地力」。 保護者と大学をつなぐ広報誌。

日本全国の大学が発行する広報誌を、勝手にレビューしてしまおうというこの企画「大学発広報誌レビュー」。第13回目となる今回は、近畿大学が発行する保護者向け広報誌「KINDAI FAMILY」を取り上げます。

大阪府東大阪市に本拠地を置く近畿大学は、2016年現在早稲田大学や明治大学を上回る日本で最大の志願者数を誇る総合大学。最近では近大マグロや奇抜な広告展開でメディアに取り上げられる機会も多く、日本でも有数の「元気の良い」大学であるといえるでしょう。

今回ご紹介する「KINDAI FAMILY」は、近畿大学が在学生の保護者向けに発行している広報誌。就職活動や研究成果など保護者の関心の高いトピックスを集めて、年に2回、成績通知書に同封して送付しています。

成績通知書を送付するという点もそうですが、近畿大学は学生の学習状況を保護者に伝えることにたいへん熱心です。昨年9月からは「近大UNIPA(ユニパ)」という保護者用のポータルサイトを開設しており、授業の出席状況がリアルタイムに把握できるほか、大学に直接問い合わせができる窓口をサイト内に設けるなど、保護者とのパイプラインの役割を果たしています。
学習状況の保護者への開示については、「大学生にもなって自己管理もできないのか」という一部の意見もあったようですが、自己管理を徹底することは当然として、多くの学生にとっての出資者である保護者への情報開示は説明責任のひとつなのではないかと思います。

「KINDAI FAMILY」には、この「近大UNIPA」の使い方や機能の説明を始め、「保護者のための就職読本」と銘打った現代の就職活動のノウハウを伝える企画、子供達が普段どんなものを食べているのかを紹介する「近畿大学全キャンパス学食巡り」など、8Pの小冊子とは思えない盛りだくさんの内容が盛り込まれています。特に就職活動については保護者が就職活動をしたであろう20〜30年前とは様変わりしていますから、改めて「就活の現在形」を知ることは子供の就活をサポートする上で非常に重要です。

保護者向けポータルサイトの使い方を紙面でレクチャー

保護者向けポータルサイトの使い方を紙面でレクチャー

生活の基盤となる「食」の説明も

生活の基盤となる「食」の説明も


全ページを読み終えて感じるのは、近大マグロや奇抜な広告といった「派手」な面ばかりに目が行きがちな近畿大学ですが、保護者へのフォローに代表される「地味」な努力も怠っていないということ。こういった地力に支えられているからこそ、大胆な一手を打つことができるのでしょうね。

大学発広報誌レビュー第12回 国士舘大学「ウゴパン」

2016年7月8日 / コラム, 大学発広報誌レビュー

おもしろさ、読みやすさを追求した、広報誌トレンドの典型例。

日本全国の大学が発行する広報誌を、勝手にレビューしてしまおうというこの企画「大学発広報誌レビュー」。第12回目となる今回は、国士舘大学が発行するフリーマガジン「ウゴパン」を取り上げます。

国士舘大学は東京都世田谷区に本拠地を置き、政経、体育、理工、法、文、21世紀アジア、経営の7学部と大学院を要する私立の総合大学です。

今回ご紹介する「ウゴパン」。そのタイトルは「動いてパンセ」の略なのだそう。「パンセ(Penser)」とは、フランス語で「考える」を意味する言葉。行動しながら思考する、といったニュアンスでしょうか。ポップな語感とは裏腹に、哲学的なネーミングですね。

内容はというと、まずは一見して目を引くのが巻頭インタビュー。最新号である43号では、女優の山本美月さんを起用。バックナンバーでは、千葉雄大さん、広末涼子さん、マキタスポーツさん、桐谷美鈴さん、山崎賢人さんといった、旬の面々を取り揃えています。

毎号の巻頭インタビューは有名芸能人を起用

毎号の巻頭インタビューは有名芸能人を起用


アイキャッチに徹した内容かと思いきや、そこはやはり大学の広報誌、続く企画は教員による時事問題の解説という比較的オカタイ内容。とはいうものの、「ドナルド・トランプ」や「BABY METAL」といった多くの読者が興味を持つであろう絶妙なネタが取り上げられており、思わず読み込んでしまいます。

誰もが関心のある時事ネタを教員が解説

誰もが関心のある時事ネタを教員が解説


また、各号「特集」が設けられており、こちらのテーマ設定も「【最低限の会話力をつける超入門】コミュ能力の基本!(43号)」など、「アラハタ(アラウンド・ハタチ)」に刺さる内容。誌面も文字量の多さを意識させないイラストを多用したライトなデザインで思わず「ちょっと読んでみようか」と思わされるものとなっています。

特集は「アラハタ世代」に刺さるテーマ設定

特集は「アラハタ世代」に刺さるテーマ設定


制作には「国士舘大学 メディア研究会」に所属する学生編集者たちが関わっているとのこと。ただ、誌面のクレジットを見ると、小さなコラムや特集のアンケートを担当しているのみのよう。せっかく学生編集部が携わるのであれば、もう少し学生の活躍の場が広がってもよいのでは?と感じます。

ともかく、ここまで「おもしろさ」「読みやすさ」を徹底した大学広報誌は、これまでなかったのではないでしょうか。読者の間口をとにかく広げて、読み込むうちに大学への興味を抱いてもらうという、大学広報誌のトレンドにおける、ひとつの典型例といえそうです。

大学発広報誌レビュー第11回 金沢工業大学「カナザワケンチクサンポ」

2016年6月24日 / コラム, 大学発広報誌レビュー

建築の目線からひもとく
新しい街の魅力。

日本全国の大学が発行する広報誌を、勝手にレビューしてしまおうというこの企画「大学発広報誌レビュー」。第11回目となる今回は、金沢工業大学が発行する散策マップ「カナザワケンチクサンポ」を取り上げます。

金沢工業大学は、名称こそ「金沢」が入っていますが、石川県野々市市に本拠地を置く工業大学。「教育付加価値日本一の大学」をめざし、高い就職率を誇ることでも知られています。

今回ご紹介する「カナザワケンチクサンポ」は、金沢市と金沢工業大学による連携事業「金沢の建築文化発信事業」の一環として、建築系学科で学ぶ学生たちが制作する金沢市内の散策マップです。単なる観光案内ではなく、そこは建築を学ぶ学生らしく、歴史情緒溢れる金沢の「建築物」を切り口に、金沢市内の街歩きを提案する内容となっています。
現在までに5号が発行されており、金沢市のプロモーション事業に使われるほか、金沢駅の観光案内所等でも配布されています。

金沢の建築物を効率よく観覧するルートが提案されている

金沢の建築物を効率よく観覧するルートが提案されている


街歩きを提案する散策マップは数あれど、「カナザワケンチクサンポ」は「建築」という目線からの編集がなされており、新しい発見にあふれています。例えば一般的な散策マップに、「築約110年。明治40年に建てられた元金沢貯蔵銀行。外観は黒漆喰仕上げの塗篭土蔵造りで、腰壁には金沢の赤戸室石のコントラストが(一部抜粋)」などという文言はなかなか出てこないでしょう。
建築に疎い旅行者にも「それならひとつ見てみようか」と思わせてくれる、専門の立場から見た新しい金沢の魅力がちりばめられています。これなら一度金沢を旅したことのある方でも、ちがった目線から新しい街の表情に出会えるかもしれません。

専門目線のコアな情報が新しい発見を提供してくれる

専門目線のコアな情報が新しい発見を提供してくれる


大学にとって、学生の「地力」を正しく社会に発信するのは容易なことではありません。その点「カナザワケンチクサンポ」は、散策マップという広く一般に利用されるツールを学生が手がけることによって、金沢工業大学で学ぶ学生の知識や情報収集力、発信力といった総合的な力を伝えることができています。
学生たちにとっても形ある実績を持つことは、就職活動の際にも有効なツールとなることでしょう。世に出る前の学生たちに、学びを通してこうした自らを売り込むツールを与えてあげる。それもこれからの大学の責務のひとつとなっていくのではないでしょうか。

大学発広報誌レビュー第10回 明治学院大学「白金通信」

2016年5月18日 / コラム, 大学発広報誌レビュー

統一したビジュアルイメージで、
「ブランドイメージ」を醸成する。

日本全国の大学が発行する広報誌を、勝手にレビューしてしまおうというこの企画「大学発広報誌レビュー」。第10回目となる今回は、明治学院大学の広報誌「白金通信」を取り上げます。

「白金通信」という媒体名称は、明治学院大学のメインキャンパスが位置する東京都港区白金台から取られたもの。白金台といえばバブル期に一部のセレブな女性たちが「シロガネーゼ」と呼ばれてもてはやされましたが、実際は庶民的な住宅も多く暮らしやすい街でもあります。

「白金通信」は少し小さめの判型でB5サイズ。紙質は手さわり感のあるマット系の用紙を採用しています。中面のデザインも徹頭徹尾やわらかい色合いと白場を活かしたレイアウトが貫かれており、しっとり落ち着いた印象は明治学院大学の持つイメージとも合致するのではないでしょうか。

ゆったり白場を持たせた清潔感あるデザイン

ゆったり白場を持たせた清潔感あるデザイン


一方企画面は、卒業生へのアンケートや学内外のトピックス紹介、サークルやゼミの紹介に、数ページを割いた学生広報チームによる学生企画といった極めてスタンダードなもの。取り立てて注目すべき点が見当たらないといえばそれまでですが、逆にいえば押さえておくべきところはしっかり押さえていると捉えることもできるでしょう。

今回このコラムで紹介するにあたり、明治学院大学が発行する広報誌以外の媒体や、オフィシャルサイトも参照したのですが、驚いたのはすべてのメディアでビジュアルイメージがきちんと統一されているということ。これは大学が「社会に伝えたい大学のイメージ」をしっかり把握し、堅持しているからに他なりません。

白金通信とも統一がとれたデザインの大学案内(左)大学院案内(右)

白金通信とも統一がとれたデザインの大学案内(左)大学院案内(右)


明治学院大学といえば、2005年にアートディレクターの佐藤可士和氏を起用して全学的な「ブランディング」に取り組んだ大学です。一般的にブランドとは、消費者が抱くメーカーに対するイメージのようなもの。好意的な場合もあれば批判的な場合もあり、よりよいブランドを積極的に構築していこうという取組がブランディングというわけです。

佐藤可士和氏の手によるビジュアルアイデンティティ

佐藤可士和氏の手によるビジュアルアイデンティティ


ブランディングのためには社員一丸となった理念や行動の統一と共に、世の中に発信していくビジュアル要素を管理し統一していく必要があります。パンフレットでは陽気で快活な印象だったものが、同じキャンペーンのCMでは知的で寡黙な印象だと、消費者はメーカーにどんなブランドイメージを抱けばよいか戸惑ってしまいます。

特に大学は「教育」という一見すると形のないサービスを商品とするだけに、しっかりとしたブランドイメージの構築は長期的な経営という視点から考えても死活問題です。その点、「白金通信」を中心とした各種のツールは、「明治学院大学とはこのような大学なのだ」という確固たるスタンスを打ち出していると感じられます。

こういったブランディングは、歴史ある大学はもちろんですが、これから歴史を積み重ねていく新設大学にこそ必要な取組だといえるでしょう。どのようなイメージで歴史というレンガを積み上げていくのか。その舵取りは早い方がいいことは言うまでもありません。

大学発広報誌レビュー番外編 「学生LINKジャーナル」

2016年4月25日 / コラム, 大学発広報誌レビュー

関西の学生による、
本格的ジャーナリズムへの挑戦。

日本全国の大学が発行する広報誌を、勝手にレビューしてしまおうというこの企画「大学発広報誌レビュー」。今回は、番外編として、関西の学生が本格的ジャーナリズムに取り組むフリーペーパー、「学生LINKジャーナル」を取り上げます。

発行団体としての「学生LINKジャーナル」が発足したのは2012年、朝日放送OB小関道幸氏の呼びかけにマスコミ業界へ内定していた関西の学生たちが応える形で発足しました。約2〜3ヶ月に一度のペースで、現在までに16号が刊行されています。

2016.4号(16号)

2016.4号(16号)


コンセプトである「学生と社会の架け橋に」の通り、誌面は学生フリーペーパーでよくあるファッションチェックや学生アンケート等ではなく、積極的に時事問題に切り込んでいくというもの。例えば最新号の特集は「学校と教育 学内カーストの影」、前号である第15号の特集は「戦争と平和 安保法制、成立」といった具合。

現代社会を取り巻くさまざま問題に果敢に切り込む。

現代社会を取り巻くさまざま問題に果敢に切り込む。


取材も綿密に行われており、第15号では辺野古の現実を伝えるために沖縄まで足を運んだというから驚きです。デザインに若干の拙さは感じるものの、編集方針も明確で文章も骨太。とてもじゃないが「学生レベル」とあなどることはできないクオリティです。

なにより「学生LINKジャーナル」が価値あるメディアだと感じるのは、単に背伸びをしてジャーナリズムの真似をするのではなく、しっかりと「学生」という目線に軸足を置きながら記事を展開しているということです。現代を生きる若い学生たちが社会をどのように見ているのかが、一つ一つの記事からリアリティを伴って伝わってきます。

記者が現場で取材し記事を書くからこそ、リアリティが生まれる。

記者が現場で取材し記事を書くからこそ、リアリティが生まれる。


「学生と社会の架け橋に」。このコンセプトに基づいて発行される「学生LINKジャーナル」は、同じ学生たちに社会に潜むさまざまな問題に関心を持ってもらうメディアであるとともに、大人たちにとっても、未来を担う若者たちがこの社会をどのように見ているのかを知ることができる、つまり双方向の「架け橋」であると言えるでしょう。

大学発広報誌レビュー第9回 東京工業大学「Tech Tech」

2016年3月25日 / コラム, 大学発広報誌レビュー

少年の心をがっちりつかむ、
「応援したくなる」広報誌。

日本全国の大学が発行する広報誌を、勝手にレビューしてしまおうというこの企画「大学発広報誌レビュー」。第9回目となる今回は、東京工業大学の広報誌「Tech Tech(テクテク)」を取り上げたいと思います。

東京工業大学は文部科学省が選定する「スーパーグローバル大学」の一校として選出されているほか、英国「タイムズ・ハイアー・エデュケーション」誌による大学ランキングでは、日本国内で3位、アジア圏で21位(共に2015年)を獲得するなど、日本を代表する理工系総合大学です。

その東京工業大学が発行している広報誌が「Tech Tech」。名称の由来は明確ではありませんが、「テクノロジー」と人の歩みの擬音語である「てくてく」をかけたものであると考えてまちがいないでしょう。主に高校生をターゲットとしていることがWebサイト上には明記されています。「東工大のリアルを伝える広報誌」とキャッチコピーが添えられ、年に2号が発行されています。

近年「リケジョ」と呼ばれる女子理系学生にスポットライトが当たるブームがありました。とはいえ理系学生の多くが男子学生であることは紛れもない事実。「Tech Tech」は、そんな理系男子のロマンチシズムを鷲掴みにする心踊る企画にあふれています。

最新号である28号の第1特集は、「重力波の理論を”今”実証する」、第2特集は「消えた火星の広大な海謎に迫る」です。
いかがですか?理系ならずとも男性であれば内に潜む少年の心が首をもたげるのではないでしょうか。

もちろんそこは日本の誇る理系総合大学。看板だけ大仰で、ページをめくると「アインシュタインにちょっと詳しい教員のインタビュー」などですませるようなことはしません。
アインシュタインが100年前に予言した「重力波」。それを観測すべく開発が進められている大型重力波検出器「KAGURA(カグラ)」の研究には、東京工業大学の大学院理工学研究科が参加しています。
この特集では、「世紀の発見」を目指して研究に取り組む現場を綿密に取材し、わかりやすい言葉で大学の取り組みを紹介しています。

ケレン味あふれる「KAGURA」の容貌に胸が高鳴る

ケレン味あふれる「KAGURA」の容貌に胸が高鳴る


その制作方針は第2特集にも貫かれています。かつて広大な海に覆われていたであろう火星。現在ではなくなってしまったその海の行方を探るこの企画。冒頭から惑星科学の一人者である教員の大胆な仮説が提示され、読者は一気に引き込まれます。文字通り天文学的な時間と距離の彼方に、海に覆われた火星を想起させてくれる、なんともロマンに溢れた内容となっています。

火星に水が存在するならあるいは生命体も?!と空想がかきたてられる

火星に水が存在するならあるいは生命体も?!と空想がかきたてられる


これらふたつの特集に共通して言えるのは、一見すると無機質でつまらなく思えてしまうかもしれない理系の研究に「夢がある」と思わせてくれること。特集を読み終えた頃には、嫌が応にも「東京工業大学、がんばれ!」と応援の念を抱かざるを得ない気分になってしまっているのです。

大学広報誌の大きな役割のひとつが、単に活動を紹介するだけでなく、読者にその大学の「ファン」になってもらうということ。「Tech Tech」が見せてくれる科学の「夢」には、多くの(特に男性)読者をシンパにしてしまう不思議な魔力が秘められています。

大学発広報誌レビュー第8回 津田塾大学「plum garden」

2016年2月10日 / コラム, 大学発広報誌レビュー

考えるよりも感じさせる。
ビジュアルコンシャスなWebマガジン。

日本全国の大学が発行する広報誌を、勝手にレビューしてしまおうというこの企画「大学発広報誌レビュー」。第8回目となる今回は、少し趣向を変えて、津田塾大学のWebマガジン「plum garden」を取り上げます。

津田塾大学は1900年(明治33年)に開校された「女子英学塾」を前身とする女子大学。東京の千駄ヶ谷と小平に2つのキャンパスを有しています。学部は学芸学部のみの1学部体制で、英文学科、国際関係学科、数学科、情報科学科の4学科が設置されています。

今回ご紹介する「plum garden」は、紙媒体の広報誌ではなくWebマガジンです。Blog形式の記事をCMSで積み上げていく形で構成されており、それぞれの記事は以下の3つの方法で抽出をかけることができます。

 1.「ひと」「まなび」「キャンパス」「イベント」の4つの切り口で抽出
 2.「授業」「歴史」「数学科」など、埋め込まれたタグで抽出
 3.「わたしと津田塾大学」「津田塾探訪」といった連載別に抽出

タグのみでも良い気はしますが、タグの概念を持たない読者には1と3の抽出方法も必要なのかもしれません。

記事はCMSを使ったブログ形式

記事はCMSを使ったブログ形式


「plum garden」が印象的なのは、とにかく写真が美しいこと。2016年現在、Webマガジンはパソコンよりもスマートフォンで読まれること主流です。じっくり読みこむ人もいるでしょうが、どちらかといえばフリックを繰り返しながら「読み流す」人の方が多いでしょう。その際、好意的な印象を残すためには一字一句の文言よりも一瞬で目に飛び込む美麗なビジュアル要素が非常に重要な要素となります。考えるよりもまず、感じさせなくてはいけません。
「plum garden」に掲載されている写真は、一眼レフならではの「ボケ味」を活かした魅力的な写真が多く、十分に及第点以上のクオリティであるといえるでしょう。

それぞれの記事に添えられた写真は本格的

それぞれの記事に添えられた写真は本格的


Webマガジンと紙媒体のもっとも大きくちがう点は、動画が使えたり紙面の制限がなくテキストや図版をふんだんに使えるということはもちろんですが、なにより「記事発行のタイミングに制限がない」、そして「部数の制限なく情報をリーチさせることができる」という点だと思います。

紙媒体の広報誌は、多くの大学が年間3〜4回のペースで発行しています。しかしWebマガジンであればひとつの記事が完成した段階でいつでも情報を発信することができます。大学に対する興味・関心を持続させるためには、短いスパンで数多くのネタを届けることが重要です。

また、紙媒体であれば部数を増やせば増やすほどコストがかさんでしまいますが、Webマガジンであれば、どれだけの読者に読まれてもコストは変わりません。つまりページビューが増えれば増えるほどにコストパフォーマンスがよくなるというわけです。

こう書くとあらゆる面でWebマガジンが優秀であるように思えるかもしれませんが、じっくり読みこむ記事を掲載する場合や、来客や訪問の際に大学を紹介するツールとして考えると、やはり紙媒体に軍配を上げざるをえないでしょう。

Webマガジンと紙媒体。今後多くの大学が両者を併用することになるでしょう。どちらが優れているわけでなく、それぞれの特徴を活かした展開が求められることは言うまでもありません。

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