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大学発広報誌レビュー第36回 立命館大学「RADIANT」

2025年6月26日 / コラム, 大学発広報誌レビュー

全国の大学が発行する広報誌をレビューする「大学発広報誌レビュー」。今回とりあげるのは、立命館大学が発行する「RADIANT(ラディアント)」です。

 

立命館大学は京都市内に本部を置き、17学部21研究科を擁する総合大学。2025年5月に創立125周年を迎えました。

冊子名「RADIANT」の意味は「光を放つ」「光輝く」。立命館大学の研究活動報として2015年より発行され、これまで「お金」「観光/ツーリズム」「宇宙」「ゲーム・遊び」などのテーマで、さまざまな分野の研究が紹介されています。

(左)「観光/ツーリズム」特集号より、観光とポピュラーカルチャーとの関わりなどに関する記事 (右)「お金」特集号より「eクチコミが消費者行動に与える影響」

 

テーマが一目で伝わる誌面デザイン

 

最新号(2025年3月発行)のテーマは「いのち輝く」。大阪・関西万博(EXPO2025)のテーマ「いのち輝く未来社会のデザイン」にちなみ、脳科学やロボティクス、社会福祉などの研究が紹介されています。

 

上の見開きで登場するのはロボットを使った発達科学の研究。ヒトはどのようにして心や認識を発達させていくのか、ロボットを使ってこの問いの答えを見出そうとするものです。たとえば幼児は身近な大人の行動をマネしますが、その動作を行うのがロボットの場合も、同じようにマネするのでしょうか?

発達科学を専門とする板倉昭二教授(OIC総合研究機構)による実験では、人間とロボットの間にアイコンタクトがあったかどうかで幼児の模倣行動に違いがみられたといいます。アイコンタクトがその違いを引き起こしたのだとしたら「人と関わるロボットがヒト型である必要はないかもしれない」との考察が目を引きます。

 

注目の若手研究者の研究を紹介するコーナーも。下の記事では日本文学研究者が、社会から排除される人の心情と、人を排除する社会の構造を安部公房の作品から読み解きます。

岩本知恵さん(衣笠総合研究機構 専門研究員)の研究紹介

 

例として挙げられている安部公房の小説『赤い繭』は主人公の身体が絹糸になり、繭へと変形するという変形譚。突飛な設定のようですが「主人公にとって変形は決して比喩ではなく、自らの身体認識の変容」という分析が時代背景や社会とのかかわりから示され、興味をそそられます。

 

冊子に掲載された記事はすべてウェブサイトでも読むことができます。下はクラシック・コンサートの鑑賞スタイルに関する2022年の記事。

「クラシック・コンサートの「聴き方」の変遷を追う」

https://www.ritsumei.ac.jp/research/radiant/article/?id=137

 

クラシック音楽のコンサートはおしゃべり厳禁というイメージですが、18世紀までのコンサートでは演奏中に聴衆が立ち歩いたりおしゃべりしたりする光景がごく普通に見られたのだそう。文学部の宮本直美教授はヨーロッパ各国で催されたコンサートのプログラムを精査するとともに「客席の音」にも注目。それまでにぎやかだった客席が19世紀に入ると沈黙し始め、「まじめ芸術音楽」と「ポピュラーなコンサート」が分化していったという経緯と分析が紹介されています。

 

冊子をウェブサイトで読む際、デジタルブックやPDFで閲覧することが多いですが、RADIANTの場合は専用ウェブサイトがあり、ウェブページとして新たにデザインされている点が特徴的です。冊子は特集テーマでまとめられた一体感があり、ページを開いたときの視覚的なインパクトが強い印象。ウェブサイトでは、より読むことに集中しやすいと感じました。

ウェブサイトから冊子版のテーマで記事を検索したり、冊子からQRコードでバックナンバーの注目記事にアクセスすることも可能。紙とデジタルを連携させつつ、それぞれの持ち味をいかした広報活動が展開されているところからも「新たな社会共生価値と創発性人材を生み出すことを目指す」という同大学の研究にかける熱量が伝わります。

文化人類学の視点でみる社会と芸術について、京都市立芸術大学の佐藤知久先生に聞く

2025年3月17日 / 大学の知をのぞく, この研究がスゴい!

旅行に行ったときなど、自分の「常識」では考えられないようなことが自然に行われていて驚くことがあります。でも、その習慣が生まれた背景を知ると納得することが多いもの。文化人類学は、そこにくらす人々の生活に入りこんで、ある文化がどのような文脈のなかで息づいているかを知ろうとする学問とも言えます。

 

今回お話を伺ったのは、文化人類学を専門としつつ、震災の記録活動や美術館のあり方を考える活動などに取り組んでいる京都市立芸術大学芸術資源研究センター教授の佐藤知久先生です。芸術と障害について考える「もぞもぞする現場」というプログラムを知って先生の研究に興味をもち、障害者と美術館、震災の記録活動、それらと文化人類学とのつながりなどについて伺いました。

障害者がバリアなしに美術館を使えるようにするには? 「もぞもぞする現場」

 

――先生は文化人類学をベースに広範囲なテーマで研究されていて、障害者がバリアなしに美術館を使えるようにするための活動「もぞもぞする現場」にも取り組まれています。まずはこの取り組みについて教えていただけるでしょうか。

 

「もぞもぞする現場」の「もぞもぞ」には、「そもそも」と「妄想」という意味もあります。障害者やアーティストを含むさまざまな人が、芸術や美術館のあり方について「そもそも」のところから考え、「美術館をこんな風に変えたらどうか」「こんなことができたらおもしろそう」というアイデアを持ち寄って話しあい、美術館や外部の施設とつながって何かを始めてみようという取り組みです。文化庁の事業の一環で、2022年度にスタートし、現在3年目。5年計画で、私は「言い出しっぺチーム」のひとりとして関わっています。

「もぞもぞする現場」での話し合いの様子。「もぞもぞする現場」は京都にある芸術家支援団体「HAPS(東山アーティスツ・プレイスメント・サービス)によるプログラムで、文化庁の「障害者による文化芸術活動推進事業」に採択されている

 

――「もぞもぞする現場」を通じてめざす美術館の姿は、具体的にはどのようなものでしょうか。

 

たとえば選挙の投票所の建物の手前に階段があると、車いす利用者は投票がしにくくなりますよね。でも、階段がなければスッと投票できる。それと同じことが美術館、あるいは芸術というものについてもあって、美術館で展示したり鑑賞したり、創作したりする場に行くことを阻む「障害」が、美術館や芸術の側にもあるのではないかと思っているんです。そしてそれは、いわゆる障害者に対してだけではなく健常者に対してもあるのではないか。ちょっと近寄りがたい感じとか、美術業界の内輪のためにやっているような感じとか。

 

まずは「階段はあるけどスロープもつける」というような発想で、美術館に入りやすくなるものを作ってみたらどうでしょうか。やっぱりこの「階段」はなくそう、ここの「階段」もなくそう、となって、いずれは多くの「階段=障害」がなくなってしまうかもしれない。逆に「この階段はゆずれない」というものが見えてくるかもしれない。あるいは美術館が、芸術を「見る」ためだけの場所ではなくなって、対話したり、さまざまな傷をなおすための場所になるかもしれない。

いろいろな可能性が考えられますが、それを自分たちの暮らしている場所のなかにある美術館で考えてみようというのが、「もぞもぞ」がめざしているところだと言えます。特に公立の美術館や大学にとって、こういうことは重要なことだと考えています。

 

――これまでに、どのような “妄想” が出てきているのですか?

 

障害者のケアや子どもの教育に携わる方々、アーティストも多く参加していて、「美術館で寝てみたい」「休憩場所を増やす」「対話型鑑賞のバリエーションを増やす」「作品を触れるコーナーを作る」「レプリカが展示されていて、何をしてもよい(壊してもよい)部屋がある」など、さまざまな「現場」からさまざまな “妄想”がもちこまれて共有され、そのうちのいくつかは展覧会場で実践させてもらっています。

“妄想”のひとつ、筆談による対話鑑賞を実践。京都市美術館別館で開催された2024年度 共生の芸術祭「いま、なにしてる?」(主催:きょうと障害者文化芸術推進機構)にて 撮影:有佐佑樹

 

たとえば体の動きが限られていて、ベッド型の移動機器で移動している方は、寝ているわけですね。そういう方がそのまま鑑賞しやすいように、絵を天井に展示して、寝たまま鑑賞するというアイデアもありました。天井画というものはありますが、寝ながら見ることってなかなかない。

あるギャラリーで実際にやってみたんですが、すごく面白くて「これはめちゃめちゃいける」と思いました。

 

――寝ながら絵を見ると、どんなふうに見えるのでしょうか。

 

寝ながら見ると、そもそも絵のどっちが「上」なのかわからない。だから、絵を見るのに最適な場所を、寝転んだまま、ずるずる体を動かしながら探るんですが、この感覚が初体験でした。頭の重さを支えている首の筋肉が重力から解放されると空間の認知のしかたが変わるという科学的知見もあるそうですが、別の重力場にいるような感覚のなかで絵を見るのは、すごく新鮮な体験でした。

アトリエの天井に展示されたドローイング作品を寝ころびながら鑑賞する様子。「もぞもぞする現場」Meet up ⑥「空っぽのアトリエみつしまで、もぞもぞ話す」より

 

もちろん、画家は絵を描くとき、絵のどちらが上なのかということを多くの場合決めています。だからこの絵のどちらが上なのかは、疑ってはいけない常識のように大事なことです。でも、それを取りはらった状態で絵を見ることが新鮮な体験となりうるということは、画家にとっても興味深い現象なのかも、と思います。

「もぞもぞする現場」の4年目、5年目には、実際に美術館の展示としても、ぜひ「寝ながら鑑賞」を実現したいと思っています。

社会問題と芸術と文化人類学の接点

 

――こうした美術館での活動と、先生の専門である文化人類学とはどのようにつながっているのですか?

 

文化人類学を専攻していた大学院生時代に、ある知人がHIVに感染したんです。1992年のことで、AIDSという病気もまだ日本で広く知られておらず、病気を医学的に治すということに加えて、社会的な差別や攻撃からHIV陽性者を守らないといけないということが現実的な課題としてありました。

 

その知人は古橋悌二というアーティストで、ダムタイプ(京都市立芸術大学の学生を中心に1984年に結成されたアーティスト・グループ)のメンバーでした。作品やアーティストとしての活動を通じて、社会の偏見や差別や解きほぐすにはどうしたらいいか。周りにいた友人や仲間たちがたくさん集まって、みんなで考えていたと思います。HIVやAIDSがどう視覚的に表現されているかを、世界各地で制作されたポスターを集めて考える場所をつくったり、手軽に手にとりやすいポストカードやフライヤーを制作したり、クラブイベントを行ったり。「エイズ・ポスター・プロジェクト(APP)」という活動だったのですが、そこに参加したことが、芸術や、芸術に触れる場所としての美術館に対する、私の関わりのひとつの原点になっていると思います。

収集されたポスターの一部。2017年に行われた「エイズ・ポスター・プロジェクト(1993−)アーカイブ」展より 画像提供:京都市立芸術大学

 

――ポスターはどのような内容だったのでしょうか。

 

当時の日本で作られていた啓発ポスターには、感染した人が必要とする具体的な情報がほとんど掲載されていませんでした。ポスターは非陽性者向けで、感染した人を排除するような表現のものが多かったんです。一方、海外のポスターでは、さまざまな人びとのライフスタイルや考え方を尊重しながら、予防方法や、感染後の生活についても、具体的に伝えるポスターが多かったんです。

でも、コロナを経験して私たちの多くが実感したと思うのですが、ウィルスに感染しているときこそ、病気についての情報や生きるための知恵など、多くの情報が必要なんですよね。私たちの活動では、電話相談のための手渡しできるリーフレットや、さまざまな情報を載せたポストカードを作って配布したり、陽性者も非陽性者も楽しみながら「HIVとともに生きる」ためのクラブイベントをしたりしていました。

 

感染が起きやすい、あるいは実際に起きている現場で必要とされている情報から発想するという予防・啓発活動は、コロナの後では当たり前のことのように思えるかもしれません。ですが、エイズ・ポスター・プロジェクトが活動していた頃には、そうでもなかったんです。どうしてこんなにコミュニティに近いところに入りこんで活動できているのかと、社会疫学の研究者たちに驚かれたこともありました。

 

――現場にいる人たちの生活に入りこんで活動されていたというところは、文化人類学らしいという印象を受けます。

 

入りこむも何も、友人関係の中で起きたことだったので、ただやるべきだったという感じです。当初は、AIDSについての活動を文化人類学の研究テーマにしようとも思っていませんでした。

ただ、どんどん活動に入りこんでいく中で、たとえばアメリカのゲイ・カルチャーの歴史や、アメリカのアーティストたちの、HIVに関するとても興味深い活動などを部分的に知ることになりました。作品の展示だけでなく、デモやビデオ作品などを通じて一般の人たちに訴えかけたり、毎週集まって話しあったり。芸術が、一種の文化的な社会運動(cultural activism)として行われている。あるいはそれと混ざり合っていて、こういうことをしている人たちに会ってみたい、話を聞きたいと思ったんです。

 

同時に、海外ではHIV陽性者の置かれた状況や、かれらをケアする方法について、陽性者の立場で考え、研究している文化人類学者がたくさんいることも知りました。感染した人たちがどのように生きているか、その当事者性をベースに研究している人たちがいたんです。

でも、1990年代当時の日本の文化人類学では、こうしたことを研究している人がほとんどいなくて、アカンやんと思うと同時に、これは研究としても「必要だ」と思ったんですね。きちんとした知識として、HIVとAIDSに関する草の根の活動について書き記すことには、すごく意味がある。このとき初めてAIDSに関する活動が研究にもなると思いました。

 

――ベースにあるのは、やはり文化人類学なんですね。

 

文化人類学は、知りたいと思う現場に行って、人類の多様な生き方について記述していく学問です。そうして、多様な生き方を一つの文化のありようとして、世界中の人と知識として共有する。そういう学問のあり方がとても好きなんです。

「がれき処理の光景を見ているのは自分しかいない」震災の記録活動

 

――先生は東日本大震災について記録する活動にも関わっておられます。HIVとは全くちがうテーマのようですが、何かつながりはあるのでしょうか。

 

つながりは大いにありました。震災の記録活動は、せんだいメディアテークという仙台市の生涯学習施設による、「3がつ11にちをわすれないためにセンター」(通称「わすれン!」)という活動です。

当時のテレビやインターネットでは、東日本大震災の被災地はとにかく悲惨な状況だという取り上げられ方でした。それはもちろん、報道としてある程度仕方がないかもしれません。けれど、たとえば仙台市の場合だと、沿岸部は大変な被害を受けている一方、市の中心部では被害はそれほどでもない場合もありました。しかしテレビやネットでは「東北」とひとくくりにされてしまう。そのことに、仙台の人たちはすごくモヤモヤしていたそうです。

 

「被災と復興」のリアリティは、複雑で、複数的で、多様なんですね。そういう多様な現実がいまここにあることを、震災の経験として残していくべきではないか。複数的な被災と復興のプロセスを、自分たちで記録をしていこうと考えた人たちが、2011年5月にわすれン!の活動を始めたんです。

 

「3がつ11にちをわすれないためにセンター」(通称「わすれン!」)ウェブサイト https://recorder311.smt.jp/ 資料提供:3がつ11にちをわすれないためにセンター(せんだいメディアテーク)

 

これはHIVについての話と、ほぼ一緒です。HIVとともに生きることのリアリティは、複雑で、複数的で、多様です。ひとくくりにできるわけがないのに、「病気で大変」だとひとくくりにされてしまう。だから、作品やビデオやポスターで、その多様性を多様なままに示し、多様なままに共有していこうとしていた。そしてここが大事なことなのですが、それを人まかせにするんじゃなくて、自分たちで記録して発信していこうとしていたんです。

 

わすれン!も同じです。記録する人は一般の市民でもアーティストでもいい。アーティストだからといって特別扱いするわけではなく、記録したいと思った人が、映像や写真、音、テキストなどで記録していく。わすれン!の活動は、新しいメディアをつかったアクティビズムとして、AIDSに関する文化的アクティビズムの延長線上にあるように思いましたし、実際わすれン!をはじめた、せんだいメディアテークの甲斐賢治さんは、そう考えていたと思います。

 

――どのような内容が記録されているのですか?

 

内容は本当にさまざまで、淡々と自分の日常生活を記録している人もいれば、がれき処理の様子を撮っている人もいます。ある工務店の方が、仕事として「がれき」を処理していたんですが、そのものすごい光景を見ているのは自分たちしかいないじゃないか、と思ったそうです。メディアも取材していない。でも、いまここですごいことが起きている。これは映像で記録しておいた方がいいんじゃないかと、わすれン!が始まる前に自発的にビデオを買って撮っていたそうです。

また、後に映画「ドライブ・マイ・カー」でアカデミー賞を受賞した映画監督の濱口竜介さんも、東京から仙台に拠点を移してわすれン!に参加していました。

 

こうした活動のあり方について、わすれン!の活動の参加者に聞き取りを行いながら、メディアテークの甲斐賢治さんや北野央さんらといっしょに、その記録活動や活用のあり方について本にまとめました。

本のタイトルにあるコミュニティ・アーカイブとは、市民自らが自分たちの暮らす地域や関係するコミュニティで起きた出来事を記録して、それをアーカイブとして継承していこうとする活動のことです。ここでいうコミュニティは、地域コミュニティだけでなく、職業やセクシュアリティ、障害、関心を共有する人たちのコミュニティのことでもあります。

わすれン!の活動について、2017年までの段階でまとめた『コミュニティ・アーカイブをつくろう!』(晶文社)

 

たとえば門番のようなアーキビストがいて、これは残したほうが良い、これはいらない、と判断していたら、何かを取りこぼしてしまう気がします。わすれン!は、残したいと思う人がどんどん残していける受け皿のようなアーカイブだと思います。

 

――先生にとって、こうした記録を残す動機はどのようなところから出てくるのでしょうか。

 

「リアリティ」は人それぞれだと思うのですが、バラバラだからわからない、わかりあえないというのは、ちょっと違うと思うんです。そもそも自分自身が複雑だし、自分の生きる状況だってどう変わるかわからない。ありえないくらい複雑な人間の生き方を、でも可能なかぎり広く理解していくことは、人間について考えるときに、あるいは人としてこの世の中をサバイブするためにも、有用で必要な態度だと思っています。それに、多様な生き方に触れることは、特に今の世の中にちょっと違和感を感じていたり、自分が凹んでいるときには、解放的でもあります。わかった気になっているのはつまらない、現実はもっともっと興味深い。人間の多様性と可能性に触れるものとして、アーカイブを考えているんです。

これまでに制作された映像DVDはせんだいメディアテークの常設展示スペースに展示され、視聴、上映会、調査研究などに利用できる 資料提供:3がつ11にちをわすれないためにセンター(せんだいメディアテーク)

 

今、私がはたらいている芸術資源研究センターも、わすれン!の発想を延長させているところがあります。芸術家自身によるコミュニティ・アーカイブとでも言いますか。作品として見えているものは、彼ら・彼女らの活動としてはごく一部で、その周囲には、思考したり調べたり試したりインプットしたり、知的にも感覚的にもおもしろいことがいっぱい起こっている。そうした過程から芸術活動がたちあがるわけですが、その過程にあるであろう、芸術活動を生みだし、うながすさまざまなものやことを、仮に「芸術資源」と名づけて、それが何かを考え、考えるために記録し、ある程度共有できるものにする方法を考えていく。そうすれば、次の創造を生みだす芸術を作る上での大事な資源が集まったアーカイブができるのではないか。そんなことを考えているセンターなんです。

芸術は学術と同じくらい重要なもの

 

――先生の芸術資源研究センターでの研究で、特に印象に残っている研究はどのようなものですか?

 

芸術大学に来て今7年目ぐらいですが、芸術と学術は、まったく別々のものというより、実は並べて考えるべきことなんじゃないか、というのが大きな発見としてあります。一般に、ものを考えたり何かを決めたりするときのベースになっているのは、言葉ですよね。話し合って決めたり、議論したり。数値やデータで表すことができる学術的な知識がいちばん確実だという思いが、僕らの社会のベースにはあります。一方で芸術は、情操教育だとか感覚的だとか、あいまいで人それぞれで、下手をすると一種のレジャーみたいにも思われている。でも、芸術はものを考える方法としても、知識としても、「あり」だと思っているんです。

 

大学院生の頃を思い返すと、同世代の芸大生たちは、何をすることがベストなのかを突き詰めてから最適解をめざすのではなくて、もちろんある程度は突き詰めるんですが、ある時点に至ると「あとはやってみてから、どうなるかを考えよう」と、実際に場や状況を、それもパブリックなものとして作ってしまうんですね。そして「環境」を変化させ、その場を生きてみてから、改めて、何が足りないとか、何が効いているのかを考える。こういうことは、学術研究者にはなかなかできません。そして、ギャラリーやシアターや美術館は、そうした一時的な環境変化のための実験室だとも言えます。そして芸術が面白いのは、そこでの変化の質や深さや方向性に(もちろんいくつもの留保は必要ですが)ほとんど限りがない、ということなんです。

 

実際に変化した環境のなかで、その場に来た人たちのリアクションを受け止めながら、その次を考えていく。そういうことを積み重ねている人がたくさんいる。こうした発想で行動を起こし、ものを考えていく。そして芸術の世界には、こうした方法で培われたノウハウとか技術とか感覚、知識が、ものすごく大量にある。方法としての、知識としての芸術的なものの可能性を、最近すごく感じています。

佐藤先生

 

芸術は普遍的な言語と言われますが、言語そのものではないですよね。言語を介していないけれども、しかしある種のプロセスによって構成され、つくられていくものです。だから芸術的な活動には、単に「見たらわかる」ということにとどまらない、洗練や複雑さがあります。そこにはおそらく、非常にたくさんの感覚的な知恵が投入されているのですが、そうした感覚的な知恵を、学術的な知的資源とは別の、芸術的な知的資源として共有できないだろうか。そしてそれを、学術と同じくらい重要な人類の知的活動としてみていきたい…というのが私の「妄想」です。

 

人類学者の山極寿一さんに聞いたのですが、言語を操る能力を得る以前の人類は、音楽の世界に生きていたのではないか、という学説があるそうです。だとすれば、芸術的な能力は日常から切り離されたものではなく、実はあらゆるひとのベースに組み込まれているものだとも考えることができます。芸術というものが人類にとってどんな意味を持っているのかを考えることが、人類学者として芸術に関わることの意味でもあると思います。

 


 

文化人類学というと、文化的にも地理的にも遠くはなれた地でフィールドワークを行うというイメージで、その視点や手法が障害や芸術、セクシュアリティ、震災体験に関する研究にもちこまれるとは考えたことがありませんでした。文化人類学の視点と手法で探索する社会と芸術と人間には、まだまだ豊かなものが埋まっていそうです。

コオロギあり、海洋深層水あり。個性豊かな大学発カレーの試食レポート

2025年3月13日 / 美味しい大学, 大学を楽しもう

本サイトで定期的に登場する顔ぶれのひとつが「カレー」。「おいしい大学カレーを食べたい」というほとゼロ編集スタッフの声をきっかけに、編集部内でカレーの食べ比べを企画しました。

試食したのは大阪公立大学「牛肉と野菜のうまみたっぷりCURRY」、北海道大学「おしょろ丸カレー」、愛媛大学「うちこおろぎスープカレー」の3種です。

上の写真中央「うちこおろぎスープカレー」(コオロギの粉末入りスープカレー)が今回のハイライトですが、まずはふつうに食べやすそうなカレーから試食しました。

大阪公立大学「牛にくと野菜のうまみたっぷりCURRY」

「玉ねぎが130gも溶け込んでいる」「実はおからが入っている」という大阪公立大学の「牛にくと野菜のうまみたっぷりCURRY」。同大学の生活科学部食品栄養科学科の学生が考案し、2017年11月より同大学の生協などで販売されています。

具の存在感たっぷり

 

温めたカレーをお皿にあけると、大きめの具がゴロゴロと出てきました。ひとくち口に入れると、「やさしい味」「甘みがある」。にんにくの風味やスパイスもしっかりと効いていて、具のレンコンや肉もちょうど良い歯ごたえです。

商品説明によると、レンコンは不足しがちな食物繊維を補うため具材に選ばれたとのこと。おからの風味はほとんど感じられませんでしたが、食物繊維が豊富に含まれるため、味を損なわない程度に配合されているそうです。さらに、ルウに溶け込んでいる玉ねぎは約1個分。開発の際、きれいな飴色になるまで玉ねぎを炒めたという学生の声が商品サイトで紹介されていて、やさしい甘みはこの玉ねぎ由来のようです。

 

「ふだん家で食べるカレーのマイルドさと、ちょっと良いカレーの味わい深さの両方がある」「学食でこのカレーを食べれたらうれしい」など、試食したスタッフにも好評。味のよさと栄養面ともに満足度◎でした。

北海道大学「おしょろ丸カレー」

続いて試食したのは北海道大学「おしょろ丸カレー」。

おしょろ丸は、北海道大学水産学部附属の練習船。この船が北太平洋の水深5000mから汲み上げたという海洋深層水がルウに使われています。函館の老舗洋食店「五島軒」との共同開発で、五島軒特製のブイヨンスープと海洋深層水とともに、ひき肉や野菜を煮込んで仕上げられたのがこちら。

 

香りにはほんのりと甘みがあり、口に入れると、まろやかな舌触り。スパイスもしっかりと効いています。海洋深層水入りという解説を読んだためか、ミネラルが豊かに含まれているような気が……。カレーでミネラルを感じる味わいはめずらしいですが「特に感じなかった」という声もあり、個人差がありました。

 

このカレーに使われている海洋深層水は1000年以上前に北極に近い北大西洋で深層へ沈み込んで南極海に達し、太平洋の底を這って北上し、北太平洋に至った深層水だそうです。1000年を超える海水の旅を思うと、ますます味の深みが増します。

海洋深層水を採水する様子。海洋深層水には海の植物が必要とする栄養成分が多く溜まっていることや、深層水が沸き上がることで豊富な生物生産性が維持されていることが販売サイトで紹介されています 引用元: https://www2.fish.hokudai.ac.jp/oshoromaru-curry.html

 

 

採水ポイントと海洋大循環

 

まずはじっくりと深海の風味を味わった後、イカなりタコなり、好みの魚介類を入れてアレンジするのもよさそうです。

愛媛大学「うちこおろぎスープカレー」

最後に本日の本丸、愛媛大学「うちこおろぎスープカレー」です。

愛媛大学が食用コオロギの養殖・食品開発などを手掛ける会社と共同企画し、愛媛県内子町で育てられた食用ウチコウロギを脱脂パウダーに加工したものが配合されています。

 

盛り付け中、黒っぽい固形物が現れると「コオロギか?」とざわめきが(※牛肉です)。

スープカレーという名の通り、とろみはあまりなく、さらさらとしたスープ状です。

 

口に運んでみます。なんだか和風のダシがきいている……?「かつおぶしっぽい」「魚粉が入っているような感じ」「和風っぽい」。こおろぎは粉末にすると、かつおぶしのように感じる人が多いようです。こおろぎパウダーの舌触りが気になるという声もあれば、「これはこれでイケる」という声も。「古民家を改装したカフェで出てくるこだわりカレーみたい」という評もありました。

食卓に上ることが一般的とはいえないコオロギですが、タンパク質のほかにも食物繊維やカルシウム、鉄、亜鉛など、栄養価の高さが注目されています。エビやカニなど甲殻類に似た成分が含まれているそうなので、アレルギーのない方はチャレンジしてみては。

 

今回試食した3品は、大学生協やオンラインで販売されています。栄養価も高く、大学の研究成果がつまった個性豊かな大学開発カレー。ふだんとちょっと違う味わいを楽しみたいとき、おすすめです。

 

大学発広報誌レビュー第35回 東京造形大学広報誌「iizo」

2025年3月6日 / コラム, 大学発広報誌レビュー

全国の大学が発行する広報誌をレビューする「大学発広報誌レビュー」。今回とりあげるのは、東京造形大学が発行する「iizo」です。

 

東京造形大学は東京都八王子市にある美術大学。デザインと美術を「造形」という広い観点から学べるのが特徴で、グラフィックデザイン、アニメーション、インダストリアルデザインなど10の専攻領域があります。

広報誌の名「iizo」(いいぞ)は、在学生や卒業生の活動を「その調子だ、頑張れ」と応援し、肯定する言葉として名付けられたとのこと。2022年創刊、年2回の発行です。

第5号(2024年10月発行)の表紙。誌名のiizoのロゴデザインは「いいぞ」というエールを送る口がモチーフになっている

 

メイン記事のひとつが、「卒業生インタビュー」。これまでに登場した卒業生はジュエリーデザイナー、フォトグラファー、美術教師、広告代理店のアートディレクター、人形彩色作家、ゲーム会社のデザイナーなど多士済々。異業種で活躍する二人の卒業生が、在学中の思い出や卒業後のエピソードを語り合います。

 

最新号(第5号)で登場するのは、一人は絵画教室講師と創作活動、もう一人は漫画家とイラストレーターと、いずれも “二刀流”で活躍する卒業生。進路を決定づけたきっかけや出会い、これまでの道筋についてざっくばらんに語り合っています。迷いや紆余曲折があっても自分らしく好きなことと向き合えればいいと思えるような等身大の会話で、読んでいると「へえ、そうなのか」「自分ならこうする」と、一緒に対話しているような気持ちに。身近なロールモデルとして、自分のキャリアを考える参考にもなりそうです。

情報量たっぷりの誌面

 

もうひとつの目玉記事が、教員へのインタビュー。表現者、教育者、研究者として長く経験を積んできた立場から、卒業生インタビューとはまたちがった気づきが得られる内容です。

オフィス・デザインを専門とする教員のインタビュー記事(第2号 教員インタビュー)。生涯の仕事となったオフィス・デザインとの出会いについて「常にアンテナを張っていたので幸運をキャッチできた」とふりかえる

 

卒業生と教員、2つのインタビューで共通して触れられていたのが、「好きを極める」こととは一見無関係にみえる科目の大切さ。

「将来絶対に使わないだろうと思っていたテキスタイルデザインやプロダクトデザインが必要になった」「高校時代の数学や歴史の内容も、仕事で結構使う」「大学の4年間を振り返って、教養の大切さを感じている。生のOBの声を聞くチャンスがあればよかったな」など。まさにこの広報誌がOBの生の声を届ける存在となっているようです。

 

「iizo」という誌名とコンセプトのとおり、全体に元気のよい色使いとレイアウトで、ポンと背中を押してもらえるような読後感。多方面で活躍する卒業生のインタビューなどを通じて造形分野について幅広く知ることができ、読み物としても楽しめます。公式サイトでバックナンバーの閲覧が可能です。

新年のはじまりはやっぱり日本酒でお祝い!? 大学にゆかりのある日本酒を集めてみた

2025年1月14日 / まとめ, トピック

新しい年の始まりを、とっておきの日本酒でお祝いされた方も多いのではないでしょうか。まだ新年気分の抜けきれない1月上旬ということもあり、今回は大学が開発に関わった日本酒をホトゼロ編集部がリサーチしてご紹介します。どのお酒もオンラインで入手できるので、気になるものがあれば、ぜひ味わってみてください。

 

立命館大学「清酒 勝馬米」

画像引用元:https://choujugura.com/products/01361

 

まず紹介したいのはこちら。立命館大学と小西酒造が共同開発した「清酒 勝馬米」です。このお酒、滋賀県の栗東トレーニングセンターの競走馬の馬フンから作られた堆肥を肥料に栽培された「勝馬米」が使われており、数々の品評会やコンクールでの受賞歴を誇る銘酒。酒米栽培の土壌づくりには同大学の久保幹教授(環境微生物学)の研究成果が活かされているようです。

 

オンラインショップはこちら!→ https://choujugura.com/products/01361

 

帯広畜産大学「畜大酒」

画像引用元:https://chikudai.raku-uru.jp/

 

続いては日本唯一の国立農業系単科大学で、北海道内で活躍する醸造家を輩出してきた帯広畜産大学が生んだお酒「畜大酒」です。なんと帯広畜産大学の大学構内には酒蔵があり、この酒蔵「碧雲蔵(へきうんぐら)」で学生たちがつくったのがこのお酒。なお、売上の一部は同大学の教育・研究費として寄付されるようです。

 

オンラインショップはこちら!→ https://chikudai.raku-uru.jp/

 

東北大学「萩丸」

画像引用元:https://www.tohoku.u-coop.or.jp/app/shopping/goods/index.php?item_uuid=e9154257d120f6978a53edea08ebebfe

 

こちらは東北大学の日本酒「萩丸」。卒業生が育種に携わった酒米を東北大学農学部の農場で栽培、さらに卒業生が育種した酵母を使い、東北大学ゆかりの酒蔵で醸造されたという、まさに東北大学づくしの純米酒です。大学を軸にした、人と人とのストーリーが感じられるのも大学発のお酒の魅力なのかもしれませんね。

 

オンラインショップはこちら!→ https://www.tohoku.u-coop.or.jp/shopping/goods/#tab-drinks

 

山形大学「燦樹(きらめき)」

画像引用元:https://www.tr.yamagata-u.ac.jp/news/2023/news1640.html

 

次に紹介するのは山形大学農学部附属やまがたフィールド科学センター高坂農場で栽培された酒米「出羽燦々」を100%使用し、山形県鶴岡市に酒蔵を持つ『奥羽自慢』で醸造した純米大吟醸「燦樹」。先に紹介した「萩丸」もそうですが、農学部をもつ大学で酒米を栽培するケースは多いようです。「燦樹」は華やかな香りとフルーティで爽やかな甘みが特徴とのことで、新年を祝うお酒にふさわしいと感じました。

 

オンラインショップはこちら!→ https://www.yamagata.u-coop.or.jp/app/shopping/goods/index.php?subcategory_id=9

 

東京大学「博士の昔こうじ甘酒」

画像引用元:https://utcc.u-tokyo.ac.jp/products/detail/6186

 

最後にアルコールが苦手な方や未成年の方も一緒に楽しめるように、ノンアルコールの甘酒をご紹介します。「博士の昔こうじ甘酒」と名付けられたこの甘酒は、“酒の博⼠”と称される東京大学名誉教授、坂⼝謹⼀郎先生が戦中に収集した麹菌株と、東大の農場で収穫された酒米とでつくられています。ビタミン類が豊富に含まれているので栄養ドリンクとして飲むのもおすすめ。牛乳で割ったり、ミルクコーヒーに入れたりしても美味しいそうです。

 

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他にも大学発の日本酒はいっぱい!

特徴的な日本酒(と甘酒)をいくつかご紹介しましたが、大学が開発にかかわった日本酒は他にもたくさんありますので、母校やお住まいのエリアにある大学、さらにはご自身の推し大学などで探してみるのもおすすめです。

 

大学が開発にかかわった日本酒は、地元のスーパーや酒店、大学生協などでのみ取り扱われているものも多いので、購入の際はご注意を。飲んで大学の新たな魅力を知るもよし、とりあえずいい気分になるもよし。大学✕日本酒の世界を、ぜひお楽しみください!

年末大特集 2024年 TOP10記事発表

2024年12月24日 / まとめ, トピック

2024年もそろそろ終わり。みなさまにとってどんな一年だったでしょうか。「ほとんど0円大学」では今年もさまざまな大学の話題をお届けしてきましたが、2024年によく読まれたのはどんな記事でしょう。年末恒例の年間ランキング<トップ10>をお届けします。

※年間PV数(閲覧回数)によるランキング

10位|音楽から見るパクリとは?大阪公立大学でポピュラー音楽を研究する増田聡先生に聞いてみた

音楽、文学、映画など、何からも模倣していない完全オリジナルの表現というものは存在するのでしょうか。「完全パクリレポート」という課題を出して話題となったポピュラー音楽研究者が、音楽とパクリ、文化表現の考え方を語ります。

 

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9位|京都大学学食「カフェテリア ルネ」でハラルフードを食べてみた!

イスラム教徒(ムスリム)のためのハラルフードやヴィーガン対応メニューを提供する京都大学の食堂「カフェテリア ルネ」。ケバブの肉を焼く専用のグリルなど、写真を見ているだけで異国の風と香りが漂ってきそう。

 

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8位|珍獣図鑑(22):海を渡るサワガニ!遺伝子解析で明かされた分散の歴史と驚くべき能力とは

渓流などに生息するサワガニは一生を淡水で過ごしますが、遺伝子を調べると、はるか昔に海を渡って移動し、分布域を広げた可能性があるのだとか。試しにサワガニを海水と同じ濃度の塩水で飼育してみると……? 謎解きのおもしろさを感じるインタビュー。

 

記事はこちら!→ 珍獣図鑑(22):海を渡るサワガニ!遺伝子解析で明かされた分散の歴史と驚くべき能力とは

 

7位|宇宙の広がりから生き方を学ぶ。奥深きインド哲学への入り口を、名古屋大学・岩崎陽一先生に聞いた。

西洋哲学とはまったく異なる文脈で生まれ、3000年の歴史を持つインド哲学。社会が抱える不安定な状況はインド哲学では “やがて滅びゆく世界” の中で必然として捉えられ、その中でどう生きるかという知恵があるのだそう。

 

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6位|珍獣図鑑(25)え、交尾相手の翅を食べちゃうの!?思わず二度聞きしてしまう、リュウキュウクチキゴキブリの不思議な生態

交尾のときにお互いの翅を食べてしまう、一夫一妻制で子育てするなど、昆虫としてはかなり変わった生態をもつリュウキュウクチキゴキブリ。個人的には、閲覧のハードルが今年最も高かった記事。

 

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5位|珍獣図鑑(21):143年ぶり&日本人初の快挙! 超大型ルーキー「リュウジンオオムカデ」の新種発表

辰年である2024年の幕開け、主役を張ったのがリュウジンオオムカデ(琉神大百足)の記事。日本や台湾に生息するムカデ類としては最大種、水中を泳ぐ姿は龍そのもの。見るからに恐ろしげで歩くとカチカチ爪の音がする。新種発表に至るまでの苦労話も興味深いです。

 

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4位|「妖精って何?」佐賀大学・木原先生に聞く、妖精が教えてくれること。

ファンタジーの世界でおなじみの妖精。19歳のとき、アイルランドで妖精に出会ったことをきっかけに妖精を研究しているという先生が、妖精と妖怪と幽霊との違い、妖精を探すときに注目するポイントなどを語ります。

 

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3位|2023年リニューアルした和洋女子大学18階のカフェでランチとグラススイーツを食べてきた!

和洋裁縫女学院を母体として生まれた和洋女子大学(千葉県市川市)の学食は、天気の良い日は富士山も楽しめるという絶景カフェ。眺めだけでなく、エッグベネディクトやノンアルコールカクテル、グラススイーツなど、メニューも魅力的!

 

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2位|珍獣図鑑(24):魚に寄生するパイロット!? 一番乗りがオスからメスに性転換する、カワイイ魔性の甲殻類・ウオノエ

漢字で書くと“魚之餌”。魚に寄生して暮らす甲殻類で、寄生する場所にぴったりフィットするカタチとサイズ。「寄生」と聞くとちょっと怖いイメージですが、ウオノエは宿主の魚とともに成長して平和に共存しているようです。

 

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1位|動物の死体に湧いたウジを全部数える。死体を巡る生き物たちの意外な営みについて日本大学の橋詰茜さんに聞いた

ダントツの1位は、動物の死体をめぐる生物たちの営みに関する研究インタビュー。動物の死体に湧いたウジ、ウジをついばみに来る鳥たちの不思議な行動など、知っていそうで知らなかった事実の数々。日本大学の大学院生とその指導教員が紹介します。

 

記事はこちら!→ 動物の死体に湧いたウジを全部数える。死体を巡る生き物たちの意外な営みについて日本大学の橋詰茜さんに聞いた

 

 

2024年も研究紹介や学食レポートがトップ10入り。それにしても、ムカデにゴキブリ、動物の死体など、例年にもまして閲覧に覚悟の必要な記事が続きましたが、みなさま大丈夫ですか? ご無事でしょうか。

本年も弊サイトをご覧いただき、誠にありがとうございました。来たる2025年もお付き合いのほど、よろしくお願い申し上げます。

年末年始、コミュニケーションのあり方を考える記事まとめ

2024年12月17日 / まとめ, トピック

年の暮れの風物詩のひとつといえば「年賀状の作成」……というのは、過去のものになりつつあるかもしれません。SNSの普及などを背景に2025年用年賀はがきの当初の発行枚数はこれまでで最大の減少率と報じられています。

ただ、手段は変わっても人と人とのコミュニケーションは生活の中で欠かせないもの。今回は、コミュニケーションのあり方を考える記事をふりかえります。

意外にマスク姿でも不自由なし? 手話によるコミュニケーション

 

口を大きく開けたり目を見開いたり、表情豊かな印象の強い手話。コロナ禍のマスク生活ではさぞコミュニケーションに支障が出たのではと思いきや、意外にろう者同士だと、それほど不自由しなかったのだそう。荷物で片手がふさがっていたら片手で、両手がふさがっていたら顔のみで、と「普段から、使えない部分があっても他で補う工夫を自然としているから」と手話の研究者。制約がある中でも情報を的確に伝える工夫があるようです。

 

記事はこちら!→ 手話コミュニケーションはコロナ禍をどう乗り越えた? 関西学院大学 手話言語研究センターで聞いてみた。

 

「そんなつもりじゃなかった……」知っておきたい、絵文字の注意点

 

SNSやメールで欠かせないのが絵文字。文字のみでは伝えきれない表情や感情を補ってくれる便利なツールですが、使い方によっては意図どおりに受け取られないことも。絵文字が相手にどのように伝わっているか、送った側と受け取った側の双方に注目して研究している先生が、研究成果をもとに絵文字を使うときの注意点などを解説します。

 

記事はこちら!→ 絵文字によるコミュニケーションを研究する 中央大学の高橋先生に話をきいてみた

 

えーと、あのー、何を目指して研究するの? 会話の「非流暢性」

 

会話の中で無意識に多用しているであろう「えーと」「あのー」「・・(言い淀み)」。

会話の「非流暢性」を研究する先生によると、人間にとって本質的なのは書き言葉ではなく、子どものころから自然と覚えて話せるようになる音声言語。そして、その音声言語は「宿命的に非流暢」なのだそう。立板に水のように話せなくていい、これからも非流暢でいこう、と自信(?)がもてます。

 

記事はこちら!→ 「非流暢に話す」とは? 京都大学・定延先生に“非流暢性”の 研究とその先にあるものを聞いた。

 

コーパス」ってどのように作るの? 何に活用される?

 

実際に使われている書き言葉や話し言葉を大量かつ体系的に集め、研究に必要な情報を付加して検索・分析できるようにした言葉のデータベースが「コーパス」。記事では、『日本語日常会話コーパス』の開発に取り組んだ先生が、日常会話の収集方法などを紹介。コーパスの活用方法について、音声認識技術などの情報処理分野のほか、医学など思いもよらない分野で役立つ可能性が紹介されています。

 

記事はこちら!→ 私たちの話し言葉は本当に変わってきたのか? 『日本語日常会話コーパス』の開発者、国立国語研究所の小磯先生に聞いてみた

 

 

生活に欠かせないものだからこそ、誤解や苦労も生まれやすいコミュニケーション。できれば気持ちよく、楽しく行いたいもの。これからも「えー」とか「うー」とか言いながら、努めたいと思います。

大学発広報誌レビュー第34回 東京藝術大学「藝える」

2024年12月5日 / コラム, 大学発広報誌レビュー

全国の大学が発行する広報誌をレビューする「大学発広報誌レビュー」。今回とりあげるのは、東京藝術大学が発行する広報誌です。

東京藝術大学は美術学部と音楽学部を有する日本で唯一の国立総合芸術大学。その前身は1887年(明治20年)創立の東京美術学校で、多くの芸術家らを輩出してきました。

 

広報誌の名は「藝える」(「うえる」)。藝えるをうえると読むことにまず驚いてしまいますが、広報誌の紹介によると「藝」には「植える」という意味があるのだそう。もともと「藝」と「芸」は異なる系統の漢字で、「芸」には「草切る、刈る」という意味があるとのこと。

植えると刈るとでは意味が正反対ですが、アートの苗木を植えて育てる場だとすれば「藝」、樹木を剪定して手入れをするように技量に磨きをかける場とするなら「芸」。どちらも大切だから、どちらを使っていても問題ではないそうです。

 

もうひとつ、意外に感じたのはアウトドア雑誌のような表紙と特集記事。最新号(第15号)の巻頭では、大学山岳部の山小屋(黒沢ヒュッテ)の誕生と運営、山小屋における山岳部の活動について綴られています。

 

広報誌の制作者によると、読者に興味をもって読んでもらうため、冊子の冒頭に違和感やひっかかりを作ることを意識しているのだそう(東京藝術大学公式チャンネル「『藝える』制作秘話」)。

 

黒沢ヒュッテは戦後の登山ブームの中、当時山岳部顧問だった建築科助教授の監修により建築。山小屋を利用できるのは大学関係者に限られていますが、2023年より一般の人も参加できる滞在型創作イベント(「アートキャンプ黒沢」)が開かれるなど、一般市民に向けた利用の拡大を視野に入れていることが紹介されています。

山小屋にまつわる思い出を卒業生が語るページも。声楽科OGの「本気の歌唱であわや雪崩発生?」というエピソードが個人的にツボでした

 

下の見開きは、2つ目の特集ページです。上野キャンパス内にある「藝大保存林」とよばれる林地の再生、そしてキャンパスの周囲にある鉄柵を生垣に変える「藝大ヘッジ」。そのプロジェクトの現状と未来像を、プロジェクトにかかわる教授らが語っています。

 

環境保護か植物観察本のような誌面

 

取り組みの発端となるマスタープランを作成した一人、デザイン科の清水泰博教授は、藝大保存林の荒廃が進んでいたこと、そして学生たちに四季の感覚が乏しくなっていたことに問題意識を抱えていたそう。ランドスケープデザイナーの助力を仰ぎ、外来種に浸食されていた一帯に在来種を植えることになります。

 

「そもそも日本の自然から日本の文化が生まれているわけで、藝大の美術なんてまさにそこに根ざしたもの。(中略)自然からインスパイアされてアートをやっている藝大が本物を知らなくていいのか」。その植生は観賞用庭園のような美観優先ではなく、あくまでも自然の状態に近いもの。生垣づくりも同じコンセプトで、季節の変化が感じられるよう半分は落葉樹とするそうです。「植樹はアートでその空間づくりもアート」ということをどう伝え、周辺施設と連携していくか、とその取り組みを語っています。

 

大学広報誌で定番の授業紹介のページも。写真は使われておらず、手描きのイラストのみ

 

誌面全体のデザインは奇をてらわずオーソドックスなもの。過去の特集テーマは芸術と子育ての両立や、「アートを根幹に人類と地球のあるべき姿を探求するため」創設されたという「芸術未来研究場」など。どの号にも、芸術の根っこと向き合う姿勢があらわれていると感じます。

 

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