学生の目線から丸ごと一冊を企画・編集。
日本全国の大学が発行する広報誌を、勝手にレビューしてしまおうというこの企画「大学発広報誌レビュー」。第25回目となる今回は、新潟大学が発行する「新大広報」を取り上げます。
旧制官立大学と旧制高校を起源にもつ新潟大学は、本州日本海側では最大規模の総合大学です。2005年からどの学部に在籍しているかにかかわらず、ほとんどの学部の授業を選択できるようにするなど、早期から学士力の向上に取り組んでいます。さて、今回取り上げる「新大広報」は、学生が主体となって企画・編集を行っている、主に在学生を対象とした広報誌。10名程度の学生編集スタッフがさまざまな企画を考え、学びやサークル活動のインタビュー、学内の施設紹介など、学生目線から大学の魅力を紹介しています。
2021年7月発行「新大広報」No.219の巻頭を飾るのは「講義&初修外国語特集」。新潟大学が開講している「個性化科目」を紹介しています。酒どころ・新潟らしい講義として日本酒の文化的・科学的な知識や教養を幅広く学ぶ「日本酒学」や、将来に向けて子育てへの理解を深める「大学生のための役に立つ育児学」など、文字通り個性的な講義をピックアップ。また、外国語科目を履修中の学生がどこで苦戦しているか、どこに面白さを感じているかなどのコメントも掲載しています。大学生の目線から紹介される授業紹介は、大学案内とはまた違ったリアリティと魅力を感じさせます。
飾らないコメントが引き出せるのも学生取材ならでは
その他のページも、在学生、卒業生、ゼミ・研究室紹介、部活・サークル紹介をそれぞれ見開きページで展開し、読みごたえのある構成となっています。大学広報誌の多くは、プレスリリース的なTOPICSページを設けていますが、「新大広報」には一切なし。バックナンバーをさかのぼってみても、どの号も学生による連載企画だけで構成されています。1冊丸ごとの企画・編集を学生スタッフに任せるというこの方針自体が、学生が存分に活動できるキャンパスであるというメッセージを伝えているように感じました。
取材対象学生の思いと魅力がしっかりと伝わる誌面
発刊して13年目を数える「新大広報」は、年4回の発行ペース。学生スタッフを主体としたスタイルで、現在まで途切れることなく続いているというのがすごい。もちろん職員スタッフによる後ろ支えがあってのことと思いますが、代々の学生スタッフが企画・編集のスキルと思いを受け継ぎ、キャンパスにも「新大広報」が浸透し愛されてきた証とも言えそうです。学生スタッフによる取材時の裏話が読める編集後記まで、たっぷり楽しめる一冊でした。
誌面に載せきれなかった取材の裏側も紹介