ビジュアルの力、判型の妙。
日本全国の大学が発行する広報誌を、勝手にレビューしてしまおうというこの企画「大学発広報誌レビュー」。第18回目となる今回は、多摩美術大学が発行する「tonATELIER(トナトリエ)」を取り上げます。
多摩美術大学は東京都八王子市にキャンパスを構える美術大学。武蔵野美術大学と並んで日本における私立美術系大学の双璧を為す大学といって過言ではないでしょう。
今回ご紹介する「tonATELIER(トナトリエ)」。造語らしいタイトルには「きみのアトリエ」という副題が添えられています。ターゲットとしているのはどうやら受験生のよう。卒業生を中心に、学科・専攻や就職サポート体制、進路・実績といったファクトデータを紹介しています。多摩美術大学で学んだ先にある未来をアピールしようという趣旨のものであるよう。
ページをめくって真っ先に気づくのは、写真とレイアウトの美しさ。クレジットによると撮影を担当している写真家は小林佐考氏とのこと。一人の写真家を一貫して起用することで、テイストを統一していると思われます。デザインを担当するのはCAN DO CREATION。奇抜なデザインを取り入れるのではなく、組版の美しさで読みやすく誌面を整えるアートディレクションは好感が持てます。
また、こうした写真とデザインを引き立たせる判型の妙も見逃せません。一般的に広報誌に多いA4判ではなく、より大判の誌面とすることで写真やレイアウトの美しさを一層印象付けています。仕様も中綴じで比較的安価であるにも関わらず、コストを超える効果を生み出しているのはさすがの一言です。
大き目の誌面を効果的に使うデザインの妙は美術大学ならでは
やはり全国に名だたる美術大学。ビジュアル面での抜かりはまったくありません。一方、企画はもうちょっとひねれないかなというのが正直な感想。Vol.15の特集は「多摩美の表現者たち」、Vol.14の特集は「Graduates’ message」なのですが、どちらも内容は卒業生の紹介です。内容が同じならタイトルも「Graduates’ message」に統一すればいいのでは?と感じてしまいます。
ともあれ、ビジュアル面ではひとつのベンチマークとも言えるクオリティを誇る「tonATELIER(トナトリエ)」。美大志望者であれば一度は目を通しておきたい内容だと言えるのではないでしょうか。