全国の大学が発行する広報誌をレビューする「大学発広報誌レビュー」。今回とりあげるのは、東京造形大学が発行する「iizo」です。
東京造形大学は東京都八王子市にある美術大学。デザインと美術を「造形」という広い観点から学べるのが特徴で、グラフィックデザイン、アニメーション、インダストリアルデザインなど10の専攻領域があります。
広報誌の名「iizo」(いいぞ)は、在学生や卒業生の活動を「その調子だ、頑張れ」と応援し、肯定する言葉として名付けられたとのこと。2022年創刊、年2回の発行です。

第5号(2024年10月発行)の表紙。誌名のiizoのロゴデザインは「いいぞ」というエールを送る口がモチーフになっている
メイン記事のひとつが、「卒業生インタビュー」。これまでに登場した卒業生はジュエリーデザイナー、フォトグラファー、美術教師、広告代理店のアートディレクター、人形彩色作家、ゲーム会社のデザイナーなど多士済々。異業種で活躍する二人の卒業生が、在学中の思い出や卒業後のエピソードを語り合います。
最新号(第5号)で登場するのは、一人は絵画教室講師と創作活動、もう一人は漫画家とイラストレーターと、いずれも “二刀流”で活躍する卒業生。進路を決定づけたきっかけや出会い、これまでの道筋についてざっくばらんに語り合っています。迷いや紆余曲折があっても自分らしく好きなことと向き合えればいいと思えるような等身大の会話で、読んでいると「へえ、そうなのか」「自分ならこうする」と、一緒に対話しているような気持ちに。身近なロールモデルとして、自分のキャリアを考える参考にもなりそうです。

情報量たっぷりの誌面
もうひとつの目玉記事が、教員へのインタビュー。表現者、教育者、研究者として長く経験を積んできた立場から、卒業生インタビューとはまたちがった気づきが得られる内容です。

オフィス・デザインを専門とする教員のインタビュー記事(第2号 教員インタビュー)。生涯の仕事となったオフィス・デザインとの出会いについて「常にアンテナを張っていたので幸運をキャッチできた」とふりかえる
卒業生と教員、2つのインタビューで共通して触れられていたのが、「好きを極める」こととは一見無関係にみえる科目の大切さ。
「将来絶対に使わないだろうと思っていたテキスタイルデザインやプロダクトデザインが必要になった」「高校時代の数学や歴史の内容も、仕事で結構使う」「大学の4年間を振り返って、教養の大切さを感じている。生のOBの声を聞くチャンスがあればよかったな」など。まさにこの広報誌がOBの生の声を届ける存在となっているようです。
「iizo」という誌名とコンセプトのとおり、全体に元気のよい色使いとレイアウトで、ポンと背中を押してもらえるような読後感。多方面で活躍する卒業生のインタビューなどを通じて造形分野について幅広く知ることができ、読み物としても楽しめます。公式サイトでバックナンバーの閲覧が可能です。