学生食堂といえば安くて量が多い学生のための施設、そんなイメージをもつ方も多いのでは。最近はおしゃれな場所も増えていますが、やはり昔ながらのイメージはなかなか消えません。 ですが、京都精華大学にはそんなイメージを根本から変えてしまう学生食堂があります!
キャンパス“外”の学生食堂「REATA(れあた)」を訪ねてみた。
京都精華大学には一風変わった学生食堂があるらしい。そんな話を聞きつけ、前回サテライトスペース「kara-S」の取材でもお世話になった京都精華大学にお邪魔してきました。
参考:芸大生の作品がいつでも買える!?京都精華大のサテライトスペース「kara-S」
出町柳駅から貴船に向かう叡山電車に揺られ、訪れたのは京都精華大学。 今回お邪魔した「REATA」は、大学キャンパス内ではなく、キャンパスの“外”にあります。
ちなみにキャンパスの“外”とはいうものの、学校の敷地からはすぐ近く、最寄り駅からも徒歩2、3分の距離にあります。
まずは外観。学生食堂とは思えないシックな佇まい。
内装も同じく、とてもおしゃれ。 取材時は解放されていませんでしたが、外のお席もあります。そこから見える景色もなかなかのもの。
外の席から見える風景。右側に見えるのが京都精華大学のキャンパス
壁にも学生の方々の作品が飾られ、静かな空間。私たちが想像するようないわゆる「学生食堂」の雰囲気はあまり感じません。 私もこんな学生食堂で学生時代を過ごしたかった……と思わずため息が。
そもそも、なぜこのような学生食堂をつくることになったのか。京都精華大学専務理事の石田さんにお話を伺いました。
京都精華大の力で復活!「REATA」の物語
当時の様子を知る専務理事の石田涼さん
「この『REATA』ができたのは2002年。その前は『りとるれあた』というレストランがありました。私が赴任した80年代の後半は今ほど叡山電車も便利ではなくて、この大学は陸の孤島でした(笑)。一度登校すると、食事できる場所というのは学内の食堂と『りとるれあた』と、もう1軒のレストランくらいしかありませんでした」
89年までは叡山電鉄と京阪電鉄が連絡しておらず、京阪三条からバスに乗って出町柳へ向かい、そこから叡山電車に乗る必要があったそうです。当時この場所にあった「りとるれあた」は、京都市内から貴船や鞍馬に向かう途中にあるということもあって、少し立ち寄って食事をするにはもってこいだったようで、さまざまな方が利用されていたそうです。
「けれど叡山電車が便利になってお客さんが減ったのか、『りとるれあた』ももう一軒のレストランも2000年になるころには閉店してしまいました。一方で京都精華大学は2000年にマンガ学科、環境社会学科など、学科を増設し、学生数を増やしていきました。
90年代から設備増強を行って学生食堂も広く改装していましたが、新学科ができてくると足りなくなってきた。どうしようと思っていたときに、元『りとるれあた』の土地が売りに出されていたので購入したんです。そしてそこに新しく学生食堂を建てようと。キャンパス外ですがすぐ近くでしたし、じゃあここにと」
なるほど。「REATA」の名前は「りとるれあた」からきているんでしょうか?
「そうですね。せっかくだし馴染みのある名前の方が良いだろうということで、『りとるれあた』の名前をいただいた『REATA』という名前が採用されました」
ところで、いわゆる学生食堂っぽくないシックな建物と内装は、どのようにして決められたんでしょうか。
「この場所自体は更地になっていたので建物をいちから建てる必要がありました。せっかく新しく建てるならということで、建築コースの卒業生の力を借りました。コンペ形式でデザインを募って、その中で今の建物のデザインになったんです。椅子や机はいろんな所から集めてきたものですね」
中華レストランだった『りとるれあた』
「元々ここにあった『りとるれあた』なんですが、名前の由来はアメリカの古い映画『ジャイアンツ』(56年)に出てくる牧場の名前から取られたようです。ですが、そんな名前に反して『りとるれあた』は中華料理店だったんですよ」
なんと?!今の「REATA」は定食などを取り扱う食堂です。復活させた当時、中華料理店にというお話しはなかったんでしょうか。
「カフェ形式にしようか、という話はありました。うちの大学は海外からの留学生も多いので、いろんな国の料理を扱うエスニックよりのカフェはどうだろうと。けれど当時の理事長のこだわりもあって、学生食堂らしい和風の定食などを扱う今の形が採用されました」
そうして生まれ変わった「REATA」。学生や先生方はもちろん、理事長や学長が来ることも多いのだそう。学生食堂というと職員の方はともかく、あまり役員の方が利用するというのは聞きません。
「学校によっては先生と学生、役員でそれぞれ専用の場所を設けるところもある。表だって分けていなくても、価格帯的に学生は利用しづらかったりする場所もあります。でも京都精華大学は、教職員も学生も、学長や理事長も分け隔てないことが信条です。昔も今も、食堂に来てみれば理事長がいたりするのも普通の光景で、もちろん『REATA』も同様です」
この日もいろいろな方が『REATA』を訪れていましたが、皆さん周りを気にすることなく普通に食事をしていました。
学生や教職員の発表の場としても
実は「REATA」は学内者であれば無料で貸しきり可能だそう。そのため学生や先生のイベントごとに使用されることもあるそうで、
「過去には振りコピサークルの『しかいろクローバー』や人文学部教員 小松正史のピアノライブも行われて盛況でした」
とのこと。
またイベントだけでなく、教職員の方々の歓送迎会やゼミの打ち上げなどにも利用されることが多いとか。
前回うかがった「kara-S」もそうですが、学生や先生が発表したり気軽に利用できる場がたくさんあるというのは、とてもうらやましいなと感じてしまいました。
「REATA」の味は?
さていろんなお話しをおうかがいしましたが、肝心のお料理について。せっかくなのでと一番の人気メニューをいただきました。
「REATA」オススメは「丹波あじわい鶏焼定食」。
しっかり焼き目の付いた丹波鶏を塩でいただくことができます。もともとの丹波鶏自体のおいしさが塩で引き立てられて、さすがオススメメニュー……本当に美味しかったです。
ご飯とお味噌汁、たっぷりのキャベツがついて650円(2015年8月現在)
「REATA」は学外者も利用できますので、ぜひ一度この味を堪能してください!