スポーツニュートリションカフェとは?
近畿大学に、新しい学食ができた。いや、「学食」などともう呼んではいけないないのかもしれない。スポーツする身体をメンテナンスするのにも役立つほどの健康的なメニューを提供し、しかも、学食イメージを塗り替える先端的なオーダーシステムを取り入れていると話題になっているのだ。一般人も自由に使えるというので、取材させていただくことにした。
近畿大学では2014年から、「超近大プロジェクト」として東大阪キャンパスの大規模整備に着手しており、図書館などこれまでの大学を超えるような新世代設備が誕生している。その一環として、2019年には7号館が新たに竣工し、1階にはフードゾーンとして2タイプの食堂とベーカリー、アイスクリームショップが9月にオープンした。
その目玉となるのが「DNS POWER CAFÉ」。アメリカのスポーツ用品ブランド、アンダーアーマーの日本総代理店、株式会社ドームが東京に展開している、スポーツニュートリション(スポーツ栄養食)カフェ「DNS POWER CAFÉ」とコラボして開発したメニューを提供する。
パワープレートという定食系メニュー、パワーヌードル/パスタ、MRSというオリジナルスムージーのほか、ノンフライドチキン、ゆで卵などの単品もある。パワープレートは、ビーフ、ポーク、チキンの3種から選べるコンビネーションメニューのほか、種類や量を選んで自分好みにカスタマイズが可能。パワーヌードル/パスタとしては、プロテインを練り込んだDNSオリジナル麺を使ったうどん、ラーメン、パスタが用意されており、炭水化物の塊ではないヘルシー麺類を味わうことができる。
食券や行列にさよなら
せっかくなので、パワーランチを体験させていただくことにしたが、驚きなのは入口のセルフオーダー機8台のうち6台がキャッシュレス対応なこと。学食といえば、食券を買ってカウンターに出してという流れが一般的で、昼時の集中する時間帯では何度も並ばなければならずイライラさせられることも多かった。それが入り口のセルフオーダー機でメニューを選ぶと厨房に情報が回るので、カウンターに直行するだけで注文した料理を受け取れるうえ、キャッシュレスだから支払いでモタモタすることもない。
パワープレートのコンビネーションメニューからビーフを選んだ。「DNS POWER CAFÉ」の責任者、鎗山高生さんからビーフが人気と聞いたからだ。なかでも一番人気は、カスタマイズのメインとして用意している、赤身ビーフステーキだとか。さすが、スポーツが盛んな近畿大学だと思っていると、「アスリートに人気というより女子学生がたくさん来てくれている」と鎗山さん。「全体に、調理の時に油をほとんど使わないメニューばかりなんです。一品として出している唐揚げも、スチームコンべクションを使ってノンフライで仕上げます」。
レシートには番号が打ってあり、注文した料理ができると、壁面にいくつか掲げてあるディスプレイに番号が表示される。スマートというか、カウンター前で並ぶ必要はないわけだ。さらに、レシートには注文料理の栄養価が記載されており、ディスプレイにも素材や栄養価などを含めたメニューの紹介が次々と映し出されている。筋肉増量や体重ントロールのために最適な栄養の取り方を示したおしゃれなPOPもさりげなく置かれているなど、「健康になるだけでなく、健康になるための知識も身につけてほしい」と鎗山さんの話を裏付けるような工夫が目白押しだ。
できあがったパワープレートランチは、カフェらしさ満載の彩りがよくて食欲をそそる顔つき。まとまりもよくて、女子人気が高いのもうなずける。味はもちろんおいしくて、これで健康にいいなら言うことはない。白米のおよそ半分の糖質、脂質となる「こんにゃく米」を選ぶことができるので、選んでみた。普通のご飯とどこが違うのかわからないおいしさだった。
プレートランチは、ビーフが900円、ポークが750円、チキンが680円。
モバイル注文でまさにパワーランチ
「DNS POWER CAFÉは職員にも大人気なんです」と話すのは取材に立ち会ってくれた、広報課の職員さん。このカフェ専用のアプリを使うと、事前予約ができるのだという。しかも、その日のコンディションに合わせて主菜や主食カスタマイズも簡単。牛赤身ステーキ、チキンブレスト、スチームポークなどの中から好きなメインを選び、50gから250gまで50g刻みで量を選び、主食も糖質や脂質を控えた「こんにゃく米」か「十六穀米」かを選ぶことができる。選んだものごとにカロリーや金額も加算されていくので、ダイエット具合や懐具合との相談もばっちりである。
「仕事前に朝イチでパパッと予約し、お昼に12時ぴったりに受け取るようにしているんです。1時間の休憩を効率的に使えるでしょう?」と、先ほどと同じ職員さん。週4で利用しているとか。ビジネスパーソンのランチとしては、本当にありがたい工夫だろう。アプリはもちろん、学内外問わず誰でも入手できる。持ち帰りができるので、近隣の方はぜひお試しください。
2人でつつけるたこ焼き&ちゃんこ
このフードゾーンにはもう一つ、「THE CHARGING PIT&DINER」という食堂もある。こちらは一般的なものを中心に、90種類ものメニューが揃う。中でも特徴的なのは、近畿大学が開発した食材を生かしたオリジナルメニューがあること。現在のところ、薬学部の先生が開発に協力した「近の鶏卵」を使った「近の鶏卵ふわとろオムライス」、近畿大学が支援する会社が開発した「におわないブリ」を使った「近の炙りブリ丼」の2種類だが、今後は近大マグロや近大みかんなど近畿大学産食材を使ったメニューをさらに増やしていきたいという。
一番の人気メニューは、近の鶏卵のオムライス。
そして、それ以上の目玉といえるのが、セルフキッチンコーナーだ。IH仕様のたこ焼きプレートを使って、たこ焼きを焼きながら食べられる。2人分で500円。オープン以来、大ヒットで、多くの学生がフーフーいいつつ楽しんでいるという。
「学食は昼の時間を過ぎると、がらんとしてしまいます。そのイメージを払拭したかった」と鎗山さん。カップルらしき二人連れも見かけるとか。冬場は、近畿大学相撲部監修のちゃんこ鍋を出す計画もある。塩ちゃんこをベースに季節の具材を使うのが近畿大学相撲部流。レシピを聞きながら開発中だ。
学食は安さとボリューム、は確実に過去になっている。「THE CHARGING PIT&DINER」には、200グラムのサーロインステーキを1500円で出しているが、ちゃんと注文する学生がいるという。一般人なら負けてはいられません。おいしものを食べて健康になりたい方、ホットな新時代学食をぜひ体験してほしい。