2018年春から内部公開が始まった「太陽の塔」をはじめ、時代を超えて注目を集め続ける岡本太郎。その作品を身近に堪能できるカフェが、京都にある。
京都外国語大学の「カフェタロー」。一般利用OKの学食で、開店から約25年、学生の成長を支えてきた。
9号館(国際交流会館)1階にある
店に入ると、5m×5mというド迫力の作品がまず目に飛び込んでくる。真っ赤な眼からあふれるエネルギー、脈打つような躍動感に思わず足を止めた。
爆発してます!
タイトルは「眼と眼(コミュニケーション)」。言葉より先に眼と眼でコミュニケーションを交わしている姿をイメージした陶板画で、1979年5月に完成した。当初この場所にカフェはなく、ロビーを飾るためのものだった。
では、なぜ岡本太郎の作品がここに?
大学に取材すると、同大の森田嘉一理事長・総長が、岡本太郎の秘書で後に養女となる岡本(平野)敏子氏と、以前から親交があったことがきっかけだという。
森田氏は、現在カフェタローがある9号館(国際交流会館)建設にあたり、京都における国際交流を象徴的に表現するため、太郎の作品をぜひにと考えていたそうだ。
森田氏は「外国語」「コミュニケーション」「建学の精神※」をコンセプトに置き数多くの原画等を見るなかで、大きな眼のデザインに惹かれ、それをもとに敏子氏にコーディネートを依頼した。
(※建学の精神:PAX MUNDI PER LINGUAS 言語を通して世界の平和を)
かくして、滋賀県・信楽のアトリエ(「太陽の塔」背面のレリーフも信楽で製作されている)にて1年がかりの製作が始まった。太郎はたびたび同大を訪れ、壁画の場所にも細やかな指示を出し、関係者に「この場から壁画を絶対に動かさない」ことを何度も約束させたという。
カフェがオープンしたのはそれから数年後だ。学生増加に伴い、メインの学食以外でも食事ができるようにとのことだった。
当時からカフェはセルフサービス。デイリーランチ(550円)、パスタランチ(520円)の日替わりメニューが人気だ。他にもボリューム満点のチーズインハンバーグ(580円)など、がっつり系のメニューもそろっている。
とろけるチーズが男女問わず人気。チーズインハンバーグ(ごはん、味噌汁付)
昼時になると近隣の会社員、時折だが作品目当ての客もやってくる。キャンパス内にあるため一般の方は少し躊躇するかもしれないが、店長の中橋易史さんは「どしどし来てください!」と誰でもウェルカムだ。
20歳から四半世紀、このカフェを切り盛りしてきた中橋さんは、学生と接する毎日で「若さが保てる」と笑う。“タローさん”と呼ばれることもあり、”眼”とともに学生を見守ってきた。2018年4月からは、メニューのリニューアルや、歴史好きの中橋さんが選んだ京都本、雑誌、ガイドブックなどが置かれ、ブックカフェのような雰囲気にもなっている。
16時以降の限定メニュー、外大ラーメン(550円)が新登場。もやしたっぷりのあっさり醤油味で、大きなおにぎり付
変化しているのはもちろんカフェタローだけではない。
京都外大としては2018年4月に「国際貢献学部」が誕生し、国際交流とキャリアデザインの拠点として4号館が大胆に生まれ変わった。
学校建築の第一人者、小嶋一浩氏が手がけた生前最後のプロジェクトで、専門誌にも取り上げられるほど。学生専用の施設だが、外観を眺めるだけでもぜひ訪れてほしい。
階段状のおしゃれなラーニングコモンズ。天井のデザインもかっこいい
ガラス張りの開放感ある空間には、階段状のラーニングコモンズや外国語習得のための支援室があり、当たり前のように多言語が飛び交っている。日本人学生、外国人留学生が一緒に課題をしたり、英語でミーティングしたりしている風景――新時代の「眼と眼」のコミュニケーションがあふれていた。