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  • date:2018.11.13
  • author:羽田理恵子

怪談・妖怪はコワクない!「京都アカデミアウィーク2018」で不思議な世界に目からウロコが落ちまくり。

“京都”のあらゆる分野をテーマにした「京都アカデミアウィーク」が今年も東京・丸の内で10/1(月)~10/5(金)に開催されました。プログラムで目を引いたのは、京都と言えばコレという定番ではなく、ひとあじ趣向が異なる京都精華大学の「京都の怪談、アジアの妖怪」講座。京都の異界が見えてくる?(昨年の京都アカデミアウィークの様子はこちら

 

「京都アカデミアウィーク」の会場となったのは、新丸ビルにある「京都アカデミアフォーラム」。京都の大学が連携した、東京の活動拠点かつ情報発信地で、理系・文系の講座が年間を通して行なわれています。近隣県から参加するのにも抜群のアクセスです。

 

物語は時代によって激変する!?
鬼太郎からタイ王国まで。

 

さて「京都の怪談、アジアの妖怪」講座にやってきました。京都の怪談が、どのような道のりで東南アジアの妖怪まで辿り着くのだろう。講師は京都精華大学の堤邦彦先生。日本を代表する説話・伝承と怪談文芸の分野の研究者です。

 

堤先生によれば、説話・伝承・怪談はひとつの物語でも地域や時代で違う姿になり、別の意味を持ってくるといいます。昔話「桃太郎」を例にとると江戸時代の黄表紙(大人用の絵本)では桃太郎は遊郭でどんちゃん騒ぎをしていたそう…。幕府の検閲逃れの作品で、大人な桃太郎にびっくり。

 

次に紹介されたのは、妖怪マンガの巨匠・水木しげるによる「墓場の鬼太郎」。現在の「ゲゲゲの鬼太郎」です。鬼太郎にはルーツがあり、昭和初期の怪奇紙芝居「コケカキイキイ」(墓の下で生まれた怪人)、さらに昔話「子育て幽霊」に遡るそうです。

 

龍谷ミュージアムで開催された「水木しげる 魂の漫画展」で購入された「墓場の鬼太郎」

龍谷ミュージアムで開催された「水木しげる 魂の漫画展」で購入された「墓場の鬼太郎」

(龍谷ミュージアム「水木しげる 魂の漫画展」の記事はこちら

 

「子育て幽霊」とは、妊婦中に亡くなった女性が埋葬された墓の下で出産し、幽霊となって飴などを買って子どもを育てるというお話です。東北から奄美大島まで日本全国にあるお話ですが、文献を辿ると室町時代の京都に至るとか。そう、鬼太郎も墓の中での出産だったんですね。

 

「子育て幽霊」と深い関わりがあったのが京都の寺院です。堤先生が『奇異雑談集』(室町期成立・1687年出版)から「国阿上人発心の由来の事」と東山六道の辻に伝わる「幽霊子育て飴」の伝説(飴の由来によると舞台は1599年(慶長4年)の京都)を読み解いていきます。

 

京都には室町~江戸時代まで、異界を連想させる蓮台野や鳥辺野など、あの世とこの世の境のような場所があり怪談が多数語られていたとか。鴨川から六道の辻、清水寺の近くまで…古地図と現代地図の対比がイメージをさらに膨らませてくれます。

 

また、幽霊の母親に飴で育てられた子どもが高僧になったという伝説まであります。

 

墓中で生まれたと言われる京都・立本寺の高僧・第二十世日審上人。過去帳によると1666年(寛文6年)に亡くなっている。リアルです

墓中で生まれたと言われる京都・立本寺の高僧・第二十世日審上人。過去帳によると1666年(寛文6年)に亡くなっている。リアルです。

 

堤先生が調べたところ、伝説とお坊さんの伝記の内容が一致していたとのこと。トンチで知られる一休禅師も亡くなったお母さんから生まれたという俗伝もあるとか。

 

幽霊となった母親が買って子どもの命を繋いだと言われる飴。袋の裏にはその由来が書かれています。

幽霊となった母親が買って子どもの命を繋いだと言われる飴。袋の裏にはその由来が書かれています。

 

飴は450年以上の歴史を持つ「みなとや幽霊子育飴本舗」(京都・東山)で購入可能。鴨川を渡り清水寺に向かう途中の松原通にあります

飴は450年以上の歴史を持つ「みなとや幽霊子育飴本舗」(京都・東山)で購入可能。鴨川を渡り清水寺に向かう途中の松原通にあります。

 

店内で堤先生が手に取った洒落たパンフレット。聞いてみたら京都精華大学の学生制作のイラストだったそう(笑)

店内で堤先生が手に取った洒落たパンフレット。聞いてみたら京都精華大学の学生制作のイラストだったそう(笑)

 

幽霊のお話から今度は死者と生者の結婚について。それは“冥婚”と呼ばれ、アジア全域の習俗だそうです。中でもタイでは幽霊となった妻が家族と暮らす伝説が語り伝えられています。

 

タイを代表する怪談「メー・ナーク」(ナーク母さん)は幽霊となった妻と子どもが、夫と3人で生活をし、幽霊の妻が事実を隠そうと本当のことを知っている村人を殺してしまいます。そこで徳の高い僧侶が呼ばれ彼女の魂を鎮めるというもの。タイ国内で1999年に公開された映画は、「タイタニック」を超えた動員数だったそうです。

 

メー・ナークを祀った祠は、庶民信仰の場として今も多くの参詣で賑わっています。タイでは今も暮らしの中に怪談があり、災いから守る僧侶も深い関わりを持っています。時代や地域によって解釈が変化する怪談・妖怪の世界ではありますが、前述の「子育て幽霊」のように、幽霊になっても家族を守ろうとする女性の強さは変わらないと感じました。

 

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歴史を紐解き、文学を読み解く。

 

堤先生によれは、このような先生の研究は「風土、気候、宗教、地理学的な問題も影響するので文化人類学に近いですね。特に怪談研究には民俗学的な要素がすごく入っています」とのこと。
「衝撃的な事実の中で、やむにやまれぬ思いがマグマとなり怪談になることもある。例えば四谷怪談。天保の飢饉の直前で世の中が悪くなり貧民窟がたくさんできた時代に作られています。世の中の崩壊が見える時代に、崩壊の序曲として怪談は語られてきた。文学的要素と同時に、その時代を読み解くことが怪談研究には必要ですね」。

文学としての怪談ではなく、地域性、当時の世相など、多角的に見ることで物語は異なるものに読み解けるのですね。怪談・妖怪はコワモノではない、人間の真理と深遠な世界がここにありました。
不思議な幽霊・妖怪の世界に誘われたい方は、堤先生が主催されている百物語の館へ。

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