大阪の三木博士が化石を発見し、新種であると発表した植物・メタセコイア。メタセコイアは発見当時は絶滅したと考えられていたものの、その後中国にて生存が発見された珍しい植物です。そんなメタセコイアの化石発見から75年、生存を発見してから70年をむかえました。(「国境を越えた学者のこころ『メタセコイア物語』(前編)(後編)」)
それを記念し、大阪市立大学と公益財団法人大阪市博物館協会が連携し、「生きている化石「メタセコイア」-化石発見75周年・生存発見70周年記念-」と題し数々のイベントを開催。その中から、大阪市立自然史博物館で行われたオープンセミナーと特別陳列の模様をお届けいたします!
メタセコイアを発見してみよう
オープンセミナーでは「国境を越えた学者のこころ『メタセコイア物語』(前編)(後編)」で監修をつとめてくださった大阪市立自然史博物館の塚腰実学芸員が登壇。
「三木博士が化石を発見して、『新種である』と同定※1し、メタセコイアと名付けたのが75年前になります。本日は一旦この情報を忘れてしまい、メタセコイアの化石をみて『これは未知の植物だ』と同定した三木博士の体験を追体験してみましょう」とスタートしました。
※1:自然科学で、分類上の所属を決定すること。
塚腰先生は最初に、メタセコイアにはそっくりの木が2種類あると説明がしてくれました。
「セコイア」と「ヌマスギ」です。素人のわたしからするとどちらも一緒に見えてしまうぐらいよく似ています。
セコイア
ヌマスギ
では、セコイア、ヌマスギをじっくり観察してみましょう。
まずは葉が付いた枝の部分を見てみます。
セコイアの葉は互生
ヌマスギの葉も互生ですが、少し形がちがう!
葉の部分を見ると形が違うのが分かりますね。
どちらも互生※2ではありますが、セコイアにはくびれが見られます。秋に芽をつくり休眠し、翌年さらに葉を伸ばすのです。このくびれはその境目にあたるんです! この特徴から、セコイアは常緑樹であることがわかります。
※2:植物の葉が、茎の一つの節に1枚ずつ方向を変えてつくこと
次はこちらの球果(雌花が成長したもの、マツで言えばマツボックリ)をごらんください。
鱗片がらせんに配列されています(セコイア)
こちらはなんだかまん丸!(ヌマスギ)
全然ちがいます! これを見れば別の木であることはすぐに判明しますね。
と、これらを踏まえたうえでメタセコイアの話に戻ります。
メタセコイアの葉
メタセコイアの球果
これらは三木博士が実際に研究に用いた化石たちです。
三木博士はここからどのようにして未知の植物(新属の植物)であると発見したのでしょうか。
メタセコイアの葉がついた枝の化石
まず葉からは以下の要素を導き出しました。
・枝の長さは一定(くびれがない)。
→セコイアではない。1年分の枝で落葉樹である。
・枝の先端に芽がない。
→セコイアではない。落葉樹である。
・葉は対生※3。
→ヌマスギ、セコイアではない。
※3:葉が茎の一つの節に2枚向かいあってつくこと
メタセコイアの球果の化石
そして球果からは…
・球果の鱗片が十字対生になっている(縦から見た断面図では対生に)
→セコイアの変異と考えられているが本当にそうだろうか?
・球果の柄に対生の葉の痕がある。
→葉が対生する球果と枝は同じ植物のものである。
これらの判断からこの化石は未知の植物のものである!とわかったわけです。
ちなみに、こちらが現生するメタセコイアの葉と球果です。
現生するメタセコイアの葉
現生するメタセコイアの球果
確かに化石と同じ特徴をもっていますね!
三木博士は「中学校までに習う植物の知識があれば誰でも新種であることは判明できた」とおっしゃっていたそうです。確かに説明してもらうと分かりやすいお話ではありました。それでもわたしには絶対発見できなかった自信があります…。みなさんはいかがでしょうか?
こうして、未知の植物であることが発見されたメタセコイア。
この後、絶滅したとされていたメタセコイアが中国で生きていることが判明…というドラマが起きるのですが、そちらについては「国境を越えた学者のこころ『メタセコイア物語』」にて!(何度もすみません…)
メタセコイアの活用方法
メタセコイアは25-35メートルにもなる巨木。
近年そんなメタセコイアを材木として利用することもはじまっているのだとか。
「メタセコイア バスケット」と検索してみるとかわいい商品もありますよ♪
塚腰先生は材木としての利用以外に、メタセコイアの春の枝を「おひたし」にして食べることにチャレンジ!
残念ながら今のところは落選だそうです……(この話に会場は笑いに包まれました)
こうしてオープンセミナーは終了。
歴史的発見をていねいな説明で聞くことで、しっかり理解することができました。
この後、特別陳列会場にて塚腰先生が説明をしてくださるとのことで、場所を移ります。
貴重な資料の数々
特別陳列会場はたくさんの人で賑わっていました!
展示されている一点、一点説明している塚腰先生。参加者のみなさんは分からないことがあれば積極的に質問されていました。
三木博士が実際に採集し調べた化石
メタセコイアの普及に尽力したメタセコイア保存会の資料
メタセコイア保存会の会計資料。細かな字でびっちりと書かれています。几帳面さがうかがえます…。
こちらはメタセコイアの苗。水挿しなどで簡単に増やせるそうです。苗木の間は水をたっぷり必要とするので、育てられる際はご注意を!(とっても大きくなるので、植える場所を確保してから育ててあげてください)
身の回りに当たり前のように存在している植物に特別な歴史があることを知って以来、街中で「あれはヌマスギ? セコイア? メタセコイア?」なんて考えるようになり、なんだか楽しくなっています。
みなさんもぜひ、ヌマスギなのか、セコイアなのか、メタセコイアなのか、手にとって考えてみてください!