朝ドラ『まんぷく』を見ている方なら、外観にどこか見覚えがあるのでは?武庫川女子大学の甲子園会館(旧甲子園ホテル・国登録有形文化財)は、ヒロイン・福子が働いていたホテルのロケ地で、萬平との結婚式の記念写真も撮影されたスポット。阪神間モダニズムを感じるこの場所で、今年13回目を迎えたライトアップイベントに参加した。
JR甲子園口から徒歩10分ほど、松林の向こうに甲子園会館が現れた。旧帝国ホテルを手掛けたフランク・ロイド・ライトの愛弟子、遠藤新による設計とあって、エキゾチックで華麗な姿は圧倒的な存在感!朝ドラ効果なのか、開場時には点灯式を待つ人々であふれかえっていた。
1930年竣工の甲子園会館は、かつて「東の帝国ホテル、西の甲子園ホテル」とうたわれた高級社交場だった。その後海軍病院・米軍の将校宿舎を経て、1965年に武庫川学院の教育施設として再生。現在は、同大の生活環境学部建築学科、生活環境学研究科建築学専攻のキャンパスになっており、一般向けの見学会(事前予約制)や生涯学習講座・オープンカレッジの場としても活用されている。
点灯式では、それまでうっすらと建物を照らしていた照明をいったん落とし、星空が見えるほど真っ暗に。そして建築学科の学生によるカウントダウンで一斉にライトアップ!凛とした冬の空気の中、建物の個性的なモチーフが幻想的に浮かび上がり、人々から歓声があがった。
同大音楽学部によるオープニングコーラスが会場を盛り上げる
正門にある高さ15mのヒマラヤ杉もキラキラに
キャンパス全体もライトアップされていて、建物の裏手に広がる庭園も見学できる。ちょうど紅葉が見ごろを迎えており、モダニズム建築と紅葉という和洋折衷な空間はなんだか新鮮!寒さを忘れて散策を楽しんだ。
正面からだけでなく庭園側の姿もすてき!
見学者からは「京都行かんでもいいなぁ」の声がちらほら
光の演出は、建築学科の1、2年生全員が授業の一環で行ったもの。約200基のライト、約10万個の電球とキャンドルを用意し、1週間前に灯具、チューブライトを設置。開催の数日前には試験点灯し、照明効果を確認しながら向きを調整するなど細かい作業が行われたそうだ。
モダニズム建築と紅葉の競演が見事
周遊の後は甲子園会館の内部へ。中央は正面玄関、ラウンジとなっており、左右に広がる廊下は建築学科のスタジオやホ―ルにつながっている。客室だった2階部分も公開され、建築学科の取り組みを紹介したパネルや学生制作の模型が展示されていた。
ラウンジではグッズの販売も
ホテル時代は食堂だったというスタジオ。ここが教室とは・・・!
落ち着いた中にも豪華さを感じさせる全体のオーラもさることながら、ディテールの豊かさも見どころだ。ライト建築らしい幾何学模様のモチーフに加え、打出の小槌のレリーフ、市松格子の意匠、波模様の柱など日本的な表現がいくつもあり、じっくり鑑賞するのもおもしろい。
独特なモチーフが施された西ホールでは、附属中学校・高等学校のオーケストラ部による演奏会などが行われた
見学者のお楽しみはまだある。ライトアップ特別メニューだ。甲子園会館の食堂では朝ドラにちなんだ「まんぷく丼」(鳥の照り焼き丼750円)、ハンバーグステーキ(900円)などがあり、まんぷく丼は早々に完売していた。
2007年に建てられた校舎、建築スタジオの方にも喫茶コーナーがあり、西宮市にあるライト洋菓子店によるケーキセットを販売。初代店主が甲子園ホテルの製菓長を務めていたそうで、当時のケーキを再現したオールドファッション(バタークリームケーキ)をぱくり。程良く濃厚なバタークリームがおいしい!
オールドファッション。ドリンク付750円
貴重な建築の美とともに、イルミネーションやスイーツまで楽しいことづくしで、毎年訪れるファンがいるのは納得。大学にとっては、パンフレット配布やグッズ販売(産学連携商品のスープ等)のほか、学内公認ボランティア団体「ブラウンライスボランティア」)による募金活動などを行うことで、オープンキャンパスとは違った幅広い層にPRできる機会にもなっていた。
学校給食プログラムのレッドカップ販売、イエメンの子どもたちへの緊急支援募金を呼びかけるボランティアメンバー
別の校舎(建築スタジオ)にも学生の作品が並び、学びの様子もわかる
20時の閉門時間まで客足は途絶えることなく、2日間で6,878名が来場。地域に愛されるイベントはこれからも息長く続いていきそうだ。