洗足オンラインスクールで「対位法」が学べる!?
ほとんど0円大学の編集部に最近加わったばかりの私に対し、同じ編集部の音楽がそこそこ好きな人(以下編集A)が「洗足オンラインスクールの対位法学習がすごすぎる!」と話しかけてきた。
洗足オンライン…?対位法…?なんのことだろうか…?
編集Aからは、「誰でも無料で対位法が学べるウェブのシステムが出来たんだよ。ピアノの経験があるのなら試しにやってみたら」と無茶なことを言われたが、よくわからないながらなんだか面白そうな予感がしたので、とりあえず調べてみることにした。
洗足オンラインスクール・オブ・ミュージックとは、洗足学園音楽大学が運営しており、音楽史のクイズや譜読み練習、リズム練習といった、音楽を学ぶ人たちの理解の手助けをしてくれるサイトだ。
対位法が学べるシステムというのは、2020年4月8日に対位法学修支援システムとしてリリースされた「地球の旋律線」のことである。
洗足学園音楽大学によると、「《対位法》とは複数の旋律を互いに調和するように重ね合わせる技法で、例えば J.S. バッハの作品に多く見られる」とのこと。
「地球の旋律線」では、自分で作成したメロディーの組み合わせをコンピューターが評価し、得点として可視化してくれるという。
正直私は細かい話はよくわかっていないが、とりあえず「対位法」とやらに挑戦してみることにした。これまで私は、作曲とは感覚的に行うもので、言葉や数字では説明できないんじゃないかと思っていたが、どうやら必ずしもそうではなく、得点として数値化できる側面もあるらしい…。ということで、誰でも使えるというこの「地球の旋律線」で、作曲の世界の一端を少し覗いてみようと思う。
話が少し戻るが、編集Aも言っていたように私は小学生の頃ピアノを習っていたため、楽譜を読むことは可能だ。しかし作曲に関しては全く経験がない。
こんな私がつくるメロディーは、一体どんなものになるのだろうか…?
ともあれさっそくウェブサイトを覗いてみた
ウェブサイトを開き「スタート」をクリックすると、次のような文章が音楽とともに流れた。
時は21世紀の初頭
遥か遠い《ペロタン星》より
地球へメッセージが送られた。
我はペロタン星のペロティヌス
地上のすべての国々は・・・
ペロタン星人は、
ついに地球への侵略を開始した。
古代より伝わる伝説によれば
ペロタン星人は
美しいメロディーを聴くと
戦意を喪失して撤退するらしい。
我々は
美しいメロディーを発信し
地球を侵略の手から
守らなければならない。
地上のすべての国々のために
つまり、ペロタン星人に「このメロディーは美しい」と感じてもらうことができたら、侵略の手から地球を守ることができる…という仕組みらしい。
この画面を開くと音楽が流れる仕組みになっているのだが、編集Aによるとこれはペロタン(ペロティヌス)という800年ぐらい前の作曲家が作った『地上のすべての国々は』という曲。ペロタン星人というキャラクターは、このペロタンを基にして作られているということか。
中世のフランスで活躍したというペロタンは、複数のメロディーラインを組み合わせる「対位法」的な曲の作り方を発展させた人だった。それでキャラクターに抜擢されたのだろう(名前の響きもなんか良い)。
そして宇宙人設定なだけあって、確かにこの画面で流れるペロタンの曲はどこか宇宙的である。『西洋音楽史』(岡田暁生著)によると、中世ヨーロッパでは、天体の動きの背後にある秩序を探求するのが音楽という学問が持つ最も大事な意味だった。異星人モチーフの設定もうなずける。ひとくちに音楽といっても、現代の私が楽しみとして聞いている音楽とはかなり違う価値観で捉えられていたわけだ。
先ほどの文章が終わると画面が切り替わった。
「挑戦者プロフィール」、「定旋律集の選択」、「旋法の選択」、「課題の選択」、「類の選択」、「C.F.を置く声部の選択」…なにやら選択肢が沢山出てきた。
ここでは例えば「まほうつかい」や「ゆうしゃ」などゲームのように様々な職業を選択できるが、職業によって得点が左右されることはない。
「定旋律集の選択」という項目もある。定旋律というのは、あらかじめ設定されているメロディーのこと。この定められたメロディーに対して、自分で別のメロディーを作って組み合わせることになる。
ほかにも、上声(高いほうのメロディーを担うパート)と、下声(低いほうのパート)のどっちを定旋律にするか、といったような選択をしていく。
いよいよ作曲に挑戦
作曲画面
すべてを選択した後、いよいよ作曲画面に切り替わった。「作曲する」というボタンをクリックすると、上声または下声の音符が動かせるようになる。また、実際に音符を動かすと、ピアノの音色が流れる仕組みになっている。
5分後…。私なりに(ほぼ適当ではあるが)とりあえず作曲ができたので「作曲完了」をクリックした後「再生」をクリックしてみた。
「♪♪♪~」
音楽が流れ、なんとなく「良い音」のように感じた。自身で納得がいったため、「送信」をクリックしてみた。
すると画面が切り替わり、「この旋律は0点!『地球から 誤送信かと思うような音が聴こえてきた ペロ。』」とペロタン星人から無惨な判定が返ってきた。
初めて作成したメロディー
※せっかくなので音源をアップ↓(「地球の旋律線」では音は抽出できないので別のソフトに音符を入力し直しています)
「ぜ、、、0点!?」まさか自分が「良い音」だと感じた曲が0点だったとは…。「初めて作曲したから仕方ない…もう一度挑戦してみよう。」動揺する気持ちを抑えて、もう一度作曲してみることにした。
幸いにも私の家には電子ピアノがある。実際にピアノで下声と上声を弾いてみて、良いと感じた音であれば、「良い曲」と判定されるに違いない。ピアノで下声に合わせて良いと感じる上声はどれか、ドレミ…と探してみた。
10分後…。私なりに「良い曲」が完成した。
「再生」をクリックし、パソコン上でもどんな曲か確認してみた。自分で言うのもなんだが、「今回はだめなところがないんじゃない…?」と感じた。
期待しながら「送信」をクリックしてみた。
結果は…。「この旋律は0点!『地球から やる気のない音が聴こえてきた ペロ。』」と返事が返ってきた。
………。
この後何度も挑戦したのだが何度作曲しても0点であった。ちなみに編集Aは最高49594点だったそうだ。編集Aのように高得点を出すと、自身で作曲した楽譜データがペロタン星人から頂けるようだ。
私の0点の結果ばかりで申し訳なくなってきたため、編集Aの作曲した曲も載せておく(これが良いメロディーなのかは私にはよくわからないが)。
編集Aによると、ペロタン星人が好むメロディーを作るにはいくつかルールがあるようだ。例えば最初の小節ではここに音を置いてはいけない、といったような決まりがある。よく見ると楽譜の下、「ペロタン星人からの通信ログ」にも何小節目の音が気になるといったアドバイスが書いてある。このアドバイスも参考にしながら、ルールを覚えていくことで、高得点を出すことができるようになり、対位法も身についていく。
ネットでこのシステムの評判を少し調べてみると、自宅で対位法について勉強できるのが嬉しい、といった感想もあった。例えば音楽学校などでも、対位法は先生に添削してもらうのが一般的で、ネットで自動添削できる機能は画期的なのだ。
再挑戦に向けて…
ちなみに作曲の結果についてTwitterで呟くことができるリンクが張られていた。他の人の結果が気になったため、少し呟きを見てみることにした。
すると、高得点を出している人が多く見受けられた。そして「癖になる!」、「対位法学修サイト凄く楽しい!」とこちらのサイトを心から楽しんでいる方をかなり発見することができた。
私も次は、もう少し対位法のルールを身につけてから再挑戦し、ペロタン星人に「地球から 会心の旋律が聴こえてきた ペロ。」などと言わせたいと密かに意気込むのであった。
ぜひみなさんも作曲をして、ペロタン星人の侵略から地球を守ってみてほしい