龍谷大学経営学部経営学科・藤岡章子教授のゼミで取り組んでいる、みかんの“皮”を使ったユニークな商品。前編では「みかんドレッシング」を紹介したが、今回は美容に関する商品にチャレンジした学生たちをレポートする。
「みかん化粧水」ができるまで
みかんの皮を乾燥させて樹脂で固めてイヤリングやピアスを作り、手作り市などで販売したアクセサリーの班。しかしもっとみかんの“皮”ならではの商品を作りたい―。
そこで食品の試作に戻り、みかんブラウニーやみかんスコーンなどを試してみたがピンとこない。そこで原点に返り、みかんの皮って何かいいことあるのか、効能を調べた。
難解な専門用語がいっぱいの論文を懸命に調査
「食べていいのは何となくわかっていたけど、それだけじゃなく、肌につけてもいいことがわかったんです」と話すのはメンバーの橋本都さん。
温州みかん果皮エキスはしわ、しみ、くすみに効能があるという論文を読み、これは化粧品にしたらいい、しかも基礎化粧品ならよさがわかってもらえるのではと考え、化粧水を作ることに決定した。
最終提案の日まであと2週間。しかし、「早和果樹園さんは化粧品を作ったことがないので、『やってみたら』だけでは提案にならないと思いました」。
ある化粧品メーカーから、製造メーカーに委託するOEM生産が一般的だと聞き、それなら、委託先まで探せば納得してもらえるのではないかと考えた。
メンバー全員で手分けをして電話をし、協力先を探した。多くの会社に断られながらも、「配合だけで原料を作っていないところも多いよ。オリジナル原料を作っているメーカーを探しなさい」など、教えてもらうこともたくさんあったという。
20社ほどかけ続け、あきらめかけていた時、とうとう「いいですよ」と言ってくれる会社に出会う。石川県能美市にあるTOWAKOメディカルコスメティック株式会社。ベンチャー的な動きも得意で「大学からの依頼にはできる限り応えたい」と考えていた会社だったという。
企業訪問先にて
労力と時間をかけて準備したかいあって、最終提案の感触はとても良かった。とんとん拍子に開発が進み、2017年2月、ついに「みかん肌まろ化粧水」としての販売が実現した。
使わせてもらったが、少しとろみがあって肌の上でよく伸びる。何より、みかんの香りがすごくいい。「お風呂上りなど、アロマ効果でリラックスできると思います」と橋本さん。
こちらは早和果樹園のみかんを使った原料エキス試作品
かんきつ系にはさっぱり系が多いが、保湿機能をより感じてもらうために少しとろみがほしいなど、メンバーが試作品を自分の肌で試しながら今の形に仕上げていった。アルコールやパラベンは使っていないのでアトピーや敏感肌の人でも使えるのがうれしい。
ラベルも、学生が“初めて使った”イラストレーターソフトで自作したものがそのまま採用されている。橋本さんは「ボトルも質感や色、形、大きさまでいろいろ考えました。モノづくりとは、いろいろ制限がある中でどれだけいいものに近づけるか、みたいなところがすごく大変だけど楽しかった」と話す。
「提案から商品化まで全部自分たちでやったのは初めて。いろいろな人の協力で現実にする難しさを実感しました。手に取る人にとっていい商品にするということが大切だということをしっかり学びました」というのは同じくメンバーの杉本春佳さんだ。
「みかん肌まろ化粧水」、150ml、3240円(税込)。送料無料。オンラインショップで販売中
みかんだけじゃないりんごもある
藤岡ゼミでは、こうした産学連携、農学連携の取り組みを情報発信し、テストマーケティングを行う場としてポップアップストア「龍谷マルシェ」を開催している。定期的に京都・三条名店街の一角に出店。4月には、サイズが小さいので規格外として市場には出回らないが、甘味も香りも濃縮された黄金柑を販売し人気を博している。
このプロジェクトでは、今、みかんの皮への認識を変えるソーシャルキャンペーンとしてグッドデザイン賞への応募を計画中とか。学生と一緒に商品化を進める一方で、ワークショップやシンポジウムのプランが進んでいるという。
さらに、みかんと同様、りんごのプロジェクトも進行中で、2016年12月には期間限定カフェ「りんごのおうち」という取り組みも評判だったとか。りんごプロジェクトの動きも、また誌上でご紹介すると思うのでどうかご期待ください。