大阪・堺市の名産といえば、皆さん何が思い浮かびますか? 包丁をはじめとする刃物や、泉州タオルなどを思い浮かべる方も多いのでは。
しかし実は仏壇などに供える線香の国産品が初めて作られたのは堺なのだそうで、現在もさまざまな線香がつくられています。
プール学院大学短期大学部では、7年前から授業の一環として、学生と地元企業がコラボしたオリジナルの線香を製造・販売しています。その名も「やまとなでし香」。
今回は10月15日に開催された堺祭りで「やまとなでし香」が販売されると聞き、取材に伺いました。
「やまとなでし香」はプール学院大学短期大学部の学生と地元堺の企業である奥野晴明堂が手がける線香です。一般的に仏壇に供える線香とは異なり、さまざまな香りをつけ、ルームフレグランスとして楽しみます。
プロジェクトには毎年希望者を募り、お香のコンセプトから香りの決定、実際に販売する線香の製造まで携わります。毎年製造する香りは2種類。パッケージデザインも含め、学生と企業が二人三脚で取り組むのがこのプロジェクトの特徴です。
販売は月1回堺東商店街で行うほか、堺祭りや学園祭でも行います。
今年は「和と洋」をコンセプトに、ベチバーと椿の2種類のお香を展開。聞き慣れないベチバーですが、これはインドなどで栽培されている稲科の草木で、シャネルの香水No.5をはじめさまざまな香水の基材として使用されている香りなんだそう。華やかでエキゾチックな香りが魅力的です。
もう一方の椿は、華やかさのなかに不思議と落ち着くような和の雰囲気を感じる香りになっています。
それぞれプロジェクトの説明と香りの説明がついている
過去のプロジェクトで製造したお香も販売。お香のほかに伝統技法「注染」で染めたオリジナル手ぬぐいも販売している
注染で染めた手ぬぐいと椿のやまとなでし香
「やまとなでし香」プロジェクトは既存の産学連携といった側面だけでなく、学生が架空の会社を立ち上げ、役割分担をして運営するという形態を取っています。そのため学生はそれぞれ社長、副社長、広報といったように役割を分担し、社名の設定なども行いプロジェクトを運営しています。そのため、コンセプトを決める際も学生がやりたいと思っていることだけでなく、「売れる商品をつくる」ことが重視されます。
今年度社長を務める森本朝子さんにお話しを聞くと、「今年はテーマを決めるまでがとくに難航しました」とのこと。今年はとくに香りのテーマ決めが大変だったそう。
「漢字で対になるテーマに、ということはすぐに決まったものの、『和と洋』のほかにも、先輩たちが取り組んだことがある『朝と夜』など、いろいろな案が出ては意見が割れ、なかなか絞ることができませんでした。奥野晴明堂の皆さんからも意見をいただきながら、わかりやすく、これまでやまとなでし香のテーマになったことがない『和と洋』というテーマに決めました」と森本さん。
テーマが決まったあと、香りを選定するときも奥野晴明堂からアイディアをもらいながらさまざまな香りを吟味。洋の香りでは現在のベチバーの香りを、和の香りでは椿の香りを使うことを決定したのだそう。
「販売するものは製造から箱詰め、販売まで、自分たちも関わります。お香の製造も一部行いますが、つくっている最中はあまり現実感がありませんでした。しかし、お香を切りそろえて箱詰めし、実際に商品になったものを手に取ると、自分たちの手で作ったんだという実感と愛着が湧きました。『すべて学生の手で作ったんだ』という達成感があります」(森本さん)
椿のお香。桐箱を使った高級感あるパッケージ。デザインには学生ももちろん関わっている
お香は1箱30本入りで1000円(税込)。お香の販売は毎月第3日曜に堺東商店街で行われるほか、堺市の観光センターでも販売されています。
皆さんも一度、オリジナルのお香の香りに癒されてみてはいかがでしょうか。