ダムカレーとは、カレーをダム湖に見立てたユニークなカレーのこと。日本ダムカレー協会によれば、2019年6月現在、全国170種類を超えるとされています。
大阪府茨木市にも「安威川ダムカレー」が9種類存在しています。ダムは建設中なのですが(2022年完成予定)、地元の店舗がそれぞれ個性ある一品を提供しており、知る人ぞ知るダムカレーエリアになっています。
茨木市内にある梅花女子大学が携わったこちらに引き続き、2019年8月には立命館大学の学生による新作が誕生!取材に行ってきました。
“いばきた”に足を運ぶきっかけに!
茨木市は、関西圏のなかでも「住みよいまち」「利便性の高いベッドタウン」として評価が高く、毎年人口が増えているイメージのいいところ。一方、市の面積の約半分が山間地で、茨木市北部地域(いばきた)では、若者の人口流出や高齢化が深刻な問題となっています。
そこで地域活性化の一助になろうと活動するのが、経営学部「地域プロモーション」ゼミの学生です。約20名が所属しており、茨木市の北部整備推進課と連携した取り組みを行っています。
中でも4回生の小薗梨菜さん、坂口茉由さん、作田純香さんのグループが企画したのが、自分たちで新しい「安威川ダムカレー」をつくるというもの。3人はまず2018年秋頃から、既存の販売店舗へヒアリング調査を行いました。
左から小薗梨菜さん、坂口茉由さん、作田純香さん。企画の経緯を話してくれた
「ダムカレー単体ですごく利益が出ているというわけではありませんでした。でも、どの店舗も地域に貢献したい、だから続けていくんだと強く思っていたのが印象的でした」と小薗さん。マニアがいるコンテンツだけに、ヒアリングをしたすべての店舗で近畿圏以外から来客があったそう。確実に人を呼び込んでいる―3人のやる気も高まっていきました。
最大の難所、デザインと試作品づくり
市からは価格を700円にするというオーダーがあったものの、それ以外は任せてもらえたという3人。メニュー試作と販売店は、集客力の面からキャンパスにあるダイニングカフェ「Camping Kitchen」に協力を仰ぐことになりました。
「Camping Kitchen」
また、インスタグラムを使っている20代をターゲットに置き、写真映えするデザインを思案。店側の都合も考慮しつつ、SNSで発信したくなるデザインや、既存の安威川ダムカレーとの差別化には相当悩んだといいます。
2019年3月頃のデザイン画。はじめは自由にデザインしていたが、提供に時間がかかったり、技術的に難しかったりと、店側と何度も話し合った
立命館の「R」を入れたいし、いばきたに関心を持ってもらうため、周辺の豊かな自然も表現したい。特にこだわったのが、安威川ダムの特色を再現する点でした。
安威川ダムは、人工的なゲート操作が必要なく、一定水位以上になると自然に流れるように造られた「自然調節型放流」という形をとっています。
なんだかマニアが喜びそうな「自然調節型放流」の仕組みを再現したい。3人は全国のダムカレーを徹底的に調べ、始めからカレールーありで提供するのではなく、ルーを客自らかけて“放流”するというアイデアにたどり着きました。
放流シーン。立命館の「R」をいれるため、卵を使って彩りも良くなった
ところが、カレーとごはんの比率、ごはんの形、卵ののせ方、形など、さまざまな条件がそろわないとルーがうまく流れません。3人は就職活動をしながらも店側と試行錯誤を重ね、1ヶ月半かけて新作を完成させました。
「経営やマーケティングの知識が生かされて、形に残せたことがよかった」と坂口さん。卒業後、営業職となる作田さんは「自分たちがこうしたいというだけではダメだと実感できた。お客さんはもちろん、提供するお店の立場やメリットを考えるという視点も大切にしていきたい」と振り返りました。
今後は、ダムカレーを提供する際に使うトレーに、観光情報が載っているシートを敷くなど、さらに力を入れていくそうです。
「いばきたは、アクセスがあまりよくないということに加え、これまで関心がなかった人をいかに呼び込むか、というところはすごく難しいですね」と3人は口をそろえます。地域活性化の実態や難しさを目の当たりにすることも大切な学びですし、1つの商品を完成させたことは大きな達成感となったはず。新しいスタートを切ったダムカレープロジェクトが、マニアを超えた広がりになるよう応援したいと思います。
それでは実食!早めの来店がカギ。
「Camping Kitchen」の入口。こちらを目印に!
8月からお披露目となった「安威川ダムカレー Camping Kitchen Ver.」。提供は金曜日15食限定なので、ほぼ開店と同時に店を訪れました。客はまばらでしたが、私の前に並んでいた人も後ろの人も、ダムカレーを注文。雨だったのに、この勢いならすぐ売り切れてしまいそうです。
カウンターで受け取ったのはこちら!唐揚げは竜王山を、サラダはいばきた周辺の自然豊かなパノラマに見立てています。カレーは“放流”するため右の容器にスタンバイ。
ドリンク付きで700円(税込)はうれしい!
学生たちがこだわった卵とごはんの形にも注目を。この絶妙なくぼみがうまく流れる仕組みに不可欠だったんですね。
では放流―!!
いい感じにアボカドの通り道へ
こういう仕掛けだと、自分の手で安威川ダムカレーを“完成”させたような感じがして、より楽しめる気がします!
まずはカレーから。最初マイルド、後からピリっと辛さが増すカレーとふわふわ卵の食感がおいしい。サラダは、素揚げのレンコン、ブロッコリー、ポテト、カボチャ、水菜、紫玉ねぎ、パプリカなど思いのほか種類豊富。どれもカレーと相性がいいし、サラダとしてもカレーの具としても味わうことができます。さらにアツアツの唐揚げは、写真で見るよりかなり大きくて、ボリューム満点!
こうしてモグモグしている間にも、「安威川ダムカレー入ります!」とスタッフの声が何度も響いていたので、1時間足らずで10食近くは売れていたかもしれません。
ダムカレーを提供する各店舗で配布しているカード。マニアはこれをコンプリートするのだ
大阪いばらきキャンパスは、学生だけでなく一般の方も多く訪れます。楽しみたい方は早めの来店を!
大阪いばらきキャンパス。公園やカフェがあり、地域に溶け込んでいる