ほとんど0円大学 おとなも大学を使っっちゃおう

  • date:2020.7.9
  • author:谷脇栗太

「ひねくれ」視点でカルチャーの扉を開く。立教大学発、フリーマガジン『Seel』編集部に聞いてみた。

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先日「フリペ専門店で聞く! 大学生が作る超個性的なフリーペーパーの魅力」という記事をお届けした。その中でも特にハイセンスで熱量の高い紙面で存在感を放っていたのが、立教大学の学生たちによるカルチャー系フリーマガジン『Seel』だ。ページを開いてみると泥臭いまでのカルチャー愛が溢れる本格的な内容で、大学生活に密着した「学生フリペ」のイメージをいい意味で覆された。

 

『Seel』を作っているのは一体どんな学生なのだろうか? 4月に刊行された最新の「Music meets…」特集号を手に、立教大学のSeel編集部にオンライン取材を敢行した。

 

ディープな視点でカルチャーを発信する『Seel』とは何者だ?

まず最初に言っておこう。大学生でも社会人でも、カルチャーを愛する人は『Seel』を手にとって是非読んでみてほしい。「現代短歌」をエモで切り取ったり、ニッチな「ZINE」カルチャーを熱っぽく語ったり、知るのがちょっと怖い「食」の秘密を掘り下げたりと、毎号ひとつのカルチャーをちょっと変わった視点で掘り下げている、フリーペーパーながら本格的なカルチャーマガジンだ。「THE DOOR TO CULTURE」というコンセプトどおり、1冊読めばそのジャンルで押さえておくべきトピックや面白がり方がわかり、もっと深く知りたくなるだろう。

 

配布場所は学内やイベント出展のみならず、都内を中心にした書店、カフェ、ギャラリー等に設置されている他、Seel編集部のサイトからバックナンバーの取り寄せにも対応している。

ポップでちょっとレトロな紙面が目を引く。一見しただけで熱量の高さが伝わってこないだろうか

ポップでちょっとレトロな紙面が目を引く。一見しただけでも熱量の高さが伝わってこないだろうか

 

そんな『Seel』を発行しているのは、立教大学のサークル「Seel編集部」。

今回、代表の高浦康佑さん、副代表・広報代表の小野塚暁世さん、営業代表の前田月さんにお話をお聞きした。

 


お話を聞いた人

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左から高浦さん、小野塚さん、前田さん。3人とも現代心理学部の3年生。


 

 

――まずは、Seel編集部がどんな団体なのか教えていただけますか?

 

高浦 立教大学に複数あるフリーペーパー制作団体のうちのひとつで、毎号「ひねくれた視点」でカルチャーを発信しているのが僕たちSeel編集部です。現在部員は30名。団体としては10年ほどの歴史があり、年3回発行している『Seel』は最新号で37号を数えます。

 

――『Seel』を発行するうえでのこだわりを教えていただけますか?

 

高浦 「THE DOOR TO CULTURE」というコンセプトを掲げていまして、読んだ方がそのカルチャーに興味をもつきっかけになることや、物事をおもしろおかしく捉える視点を知ってもらうことを意識しています。そして、紙で発行するということにもこだわっていますね。これは先輩から聞かされたことなのですが、修正が容易なwebとは違い、ずっと形に残ってしまう紙のメディアだからこそ、書いたことに責任が持てるのだと思っています。

 

――毎号5000部を発行している『Seel』、反響はいかがですか?

 

高浦 学内では最新号をチェックして読んでくれる人が多いのが嬉しいですね。僕たちは大学の名前を大きく出して活動しているわけではないのですが、学外のイベントに参加した際でも『Seel』を知っていて応援してくださる方がいらっしゃいます。これまで先輩方が築いてこられたクオリティや熱量が読者の方に伝わっているのを感じて誇らしい気持ちになります。


――毎号クオリティの高い発信を続けられる秘密は何なのでしょうか?

 

高浦 全員参加の制作体制でしょうか。部員はwebやイベント等で情報発信を行う広報・企業様と広告出稿の交渉をする営業・紙面のビジュアルを担うデザインの部署に分かれているのですが、紙面の制作には全部員が参加します。まず、全員がそれぞれ考え抜いた企画を持ち寄ってプレゼンし、その中から面白くて『Seel』らしいものを投票によって選びます。テーマが決まったら、編集部全体で企画内容をブラッシュアップして、コンテンツごとに班に分かれて紙面を制作しています。

 

――最初のテーマ選びから紙面の制作まで、部員さん全員が関わって作っておられるのですね。内容の充実ぶりも納得です!

 

「音楽×人生」。最新号はこうして生まれた!

――続いて、最新号「Music meets…」の見どころをお聞きしたいと思います。この号では「音楽×人生」をキーワードに、日常の中での音楽の聴き方や、お気に入りの音楽との出会い方などが取り上げられています。誰もが共感したり日常に取り入れたりできる身近なテーマだと思いました。
この企画を発案されたのは小野塚さんとのことですが、どうして音楽というテーマに挑戦しようと思ったのですか?

 

小野塚 私自身がバンド活動をしていることもあって、音楽は一度扱ってみたいテーマでした。そこで大切になるのが、広大な音楽の世界をどういう切り口で見せるかということです。今回は音楽を聴く側の視点に絞って、「音楽×人生」という切り口で企画を提案しました。大きなテーマなので覚悟は要りましたね。企画段階で内容についてもかなり作りこんでいました。

「人によって趣向や捉え方が全然違うテーマなので、提案には覚悟が要った」と小野塚さん

「人によって趣向や捉え方が全然違うテーマなので、提案には覚悟が要った」と小野塚さん

 

――企画発案者として、小野塚さんが特にこだわったコンテンツはありますか?

 

小野塚 どのコンテンツもものすごく苦労して作ったので選ぶのが難しいのですが、敢えて「前書き・後書き」ページを推したいです。ここは「音楽×人生」というコンセプトを象徴的に伝える大切なページなんです。前書きは「人生は音楽だ。」とありますが、音楽編集ソフトの画面のデザインで、人生のストーリーの積み重ねをひとつの音楽に例えています。後書きは逆に「音楽は人生だ。」というコピーで、スマホのプレイリストを写しています。一曲目が『世界の始まる日』、次に『mama』……もうお分かりでしょうか。

 

「音楽×人生」というテーマをビジュアルで伝える前書きと後書き。

「音楽×人生」というテーマをビジュアルで伝える前書きと後書き。

 

――こちらはプレイリストを人生に喩えているわけですね!

 

小野塚 人生は一曲の音楽で、音楽の積み重ねがまたひとつの人生で……というフラクタルな感じを表現したくて、デザイン担当の部員と一緒に詰めて作っていきました。

 

それではページをめくって本文に入りますが、冒頭は「音楽の起源」ですね。

音楽の起源について考えたことはあるだろうか? 遊びの一環から音楽が生まれたとする「遊戯起源説」、感情の高ぶりと肉体の動きから音楽が生まれたとする「肉体衝動説」などが論じられている

音楽の起源について考えたことはあるだろうか? 遊びの一環から音楽が生まれたとする「遊戯起源説」、感情の高ぶりと肉体の動きから音楽が生まれたとする「肉体衝動説」などが論じられている

 

小野塚 『Seel』のコンテンツはジャンルの初心者から玄人まで誰でも楽しめるように配慮しているのですが、誰もが当たり前に親しんでいる音楽というテーマだからこそ「音楽ってそもそもなんだろう?」という根本的な問いかけから始めることにしたんです。

 

高浦 最初に前提知識をしっかり押さえることで、後のページでひねくれた視点を提示しやすくなるんですよ。こうしたページを担当する班は、学校図書館をフル活用して知識を深めながら記事を作っています。

 

――ネットに情報があふれている中、学校図書館を活用されているのも素晴らしいです。

「日常と音楽の交差点」というページでは、いろいろなシチュエーションを想定してそれに合う音楽が紹介されています。こういう詩的で「エモい」表現や言葉遣いも『Seel』の特徴ですよね。

 

「窓に滴る雨粒を横目に、ぼーっと時間をやり過ごす。なんとなく、このままでいたいなぁなんて思ったり、思わなかったり。」そんな時ヘッドフォンから流れてくる音楽は……? エモい表現でカルチャーをぐっと身近に引き寄せてくれる

「窓に滴る雨粒を横目に、ぼーっと時間をやり過ごす。なんとなく、このままでいたいなぁなんて思ったり、思わなかったり。」そんな時ヘッドフォンから流れてくる音楽は……? エモい表現でカルチャーをぐっと身近に引き寄せてくれる

 

前田 文章については、けっこう格好つけて書いているところがあると思います(笑)

 

小野塚 部員同士で文章を添削していくのですが、そこで『Seel』っぽい文体が代々受け継がれているのかもしれませんね。

 

――そしてサニーデイサービスの曽我部恵一さんへのインタビュー、最後に部員さんによる座談会、とそれぞれの音楽との付き合い方がクローズアップされていきます。

 

毎号その道のプロや有識者が登場するインタビューは必見だ

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「平成生まれの音楽クロニクル」は、5人の編集部員が好きなアーティストや音楽の聴き方を語り合う座談会

「平成生まれの音楽クロニクル」は、5人の編集部員が好きなアーティストや音楽の聴き方を語り合う座談会

 

小野塚 曽我部さんには、新しい音楽との出会い方についてもお聞きしました。「無理に新しい音楽を聴こうとせずに、青春時代に好きになった音楽をずっと聴きつづけていてもいいんじゃないか」という言葉は少し意外でしたが、いい意味で肩の力が抜けました。いいインタビューなので是非読んでいただきたいです。

 

前田 最後の座談会は私も参加しているんですけど、人によって好きなジャンルも聴き方も全然違って、とっても楽しかったですよ。これをきっかけに他の部員が聴いている曲を聴いてみたりもしました(笑)

 

――音楽という切り口から、みなさんが日々どんなことを考えているのかが伝わってきた気がします。身近な人と音楽の話で盛り上がってみたくなりました!

 

『Seel』と僕らのこれから

――そんな最新号を刊行されたばかりですが、みなさんが考える『Seel』のこれからについて聞かせていただけますか?

 

高浦 僕たちのひねくれた視点を面白がってくれる人が周りにいることも嬉しいのですが、読者の方の中にもSeel的な視点がずっと残ってくれたらさらに嬉しいですね。

 

小野塚 私は『Seel』に携わったことでカルチャーや自分の考えを発信する楽しさを知ってしまったので、今後もそういうことに関わっていきたいと思うようになりました。『Seel』を卒業してもカルチャーからは離れられないと思います。

 

前田 読んでいるうちにいろんな角度から物事を見ることができるようになるのが『Seel』の良さだと思っています。「THE DOOR TO CULTURE」の言葉どおり、これからも誰かがカルチャーを好きになる扉であってほしいですね。

 

 

 

ひねくれた視点とは裏腹に、とことん一途にカルチャーに惚れ込んでいる姿が印象的だったSeel編集部のみなさん。学生団体として世代を超えて受け継がれるからこそ、柔軟な視点と変わらぬ熱量を保ち続けていられるのかもしれない。

 

最後にみなさんにそれぞれのオススメの号をお聞きした。Seel編集部サイトのメールフォームよりバックナンバーを1冊から取り寄せることができるので、参考にしてみてはいかがだろうか(品薄のものもあるので、まずはお問い合わせを)。新しいカルチャーの扉を叩いてみよう。

 

高浦さん:「ラップをしよう。」「漫才」ラップや漫才を日常生活に取り入れてみたら……という試みで、日常と地続きにテーマを切り取っている。この2冊に出会い入部を決めた

高浦さん:「ラップをしよう。」「漫才」ラップや漫才を日常生活に取り入れてみたら……という試みで、日常と地続きにテーマを切り取っている。この2冊に出会い入部を決めた

 

小野塚さん:「現代短歌」初めて本格的に制作に参加した号。「エモい」という感情を短歌に、という企画。短歌の世界が一気に身近になる入門書としてオススメ。

小野塚さん:「現代短歌」初めて本格的に制作に参加した号。「エモい」という感情を短歌に、という企画。短歌の世界が一気に身近になる入門書としてオススメ。

 

前田さん:「ZINEってなんだ?」初めて制作に参加した号。個性的な「ZINE」カルチャーを濃厚に紹介。ニッチなものを好きな自分でいいんだ、と肯定してくれる。

前田さん:「ZINEってなんだ?」初めて制作に参加した号。個性的な「ZINE」カルチャーを濃厚に紹介。ニッチなものを好きな自分でいいんだ、と肯定してくれる。


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