ほとんど0円大学 おとなも大学を使っっちゃおう

  • date:2016.5.27
  • author:中橋 由香

総展示数359点!すこしなつかしい「和ガラス」の世界

関西大学博物館平成28年度春季企画展

プラスチックや樹脂製品が一般的でなかった頃、日用品としてさまざまなガラス製品が使われていました。そんな数々の和ガラスを堪能できる、関西大学博物館の平成28年度春季企画展「なごみのガラス―坂崎幸之助 和ガラスコレクション―」を楽しんできました!

大阪はガラスの街だった?!商業ガラスの街大阪

大阪とガラス、今の街並みを見ていると無関係なように思いますが、造幣局が大阪市内にあり、造幣で余剰となったソーダ灰(ガラスの材料)が安価で下げ渡されていた大阪天満界隈では、近年までガラスが盛んに生産されていました。全盛期には全国のガラス製造業者の約7割が大阪にあったというから驚きです。


しかし第二次世界大戦後は、産業構造の変化や公害問題による郊外移転、後継者不足による廃業などが相次ぎ、今や大阪がガラスの街であった面影は残っていません。

 

関西大学博物館の学芸員である山口さんによると、「大阪が商業ガラスの中心地であったことは事実なのですが、それを知らない方がほとんど。そこで大阪のかつての産業を知っていただきたいと思い、大阪で始まり、大阪に根ざした関西大学で和ガラスの展示会を行おうと企画したのです」とのこと。

 

企画を立案したものの、当時生産されていたのは安価な日用品ばかり。高価な工芸品や美術品ではないためコレクターもおらず、なかなか展示品を集めることができなかったそう。


しかし今回、「信頼ネットワークの構築」や「学問による社会問題の解決」などをテーマに、天神橋筋商店街で研究活動を行う社会連携施設STEPとのつながりで、偶然THE ALFEEの坂崎幸之助氏とコンタクトを取ることに成功。今回の展示会が実現したそうです。

 

なぜTHE ALFEEの坂崎氏が?と疑問が浮かびますが、坂崎氏は多趣味なことで有名な人物。今回展示されている和ガラスコレクションもその一つなのです。


ガラスに魅了された坂崎氏は、ガラスであれば何でも蒐集されているそうで、おはじきや駄菓子のケースから、日用品として親しまれたプレス皿、さらにビールや飲み物についてくるノベルティ、ラムネの瓶など……板ガラス以外は何でもある(!)そうです。

 

「これまでにも和ガラスの展示会はありましたが、大阪でこの数の展示はめずらしいです。また、こういった日用雑貨としてのガラス製品は、今の若い世代には馴染みのないもの。当時どんなふうに使っていたのか思いを巡らせたり、今身近にある日用品のルーツを考えるきっかけにしてもらえれば」と山口さん。

 

また、訪れる方の中には「まだうちにもあるかもしれない」「よく使っていた」と、懐かしい話に花を咲かせる方もいらっしゃるようです。

日常を彩る和ガラスの世界

実際どんなものが展示されているのか、ここでその一部をご紹介します。

ペロペロ(金コップ):写真撮影 長浜アートセンター 田中仁

ペロペロ(金コップ):写真撮影 長浜アートセンター 田中仁

 

こちらはペロペロと呼ばれる駄菓子の器。小さな器に砂糖菓子が入っていて、そのままペロペロとなめて食べていたので、名前もそのまま「ペロペロ」というのだとか。


子ども向けなので、動物の形をしたものなどいろいろな形があります。

樽型醤油差し

写真撮影 長浜アートセンター 田中仁

 

こちらは樽型の醤油差し。

氷コップ

写真撮影 長浜アートセンター 田中仁

 

かき氷などを盛るための氷コップ。


喫茶店などで氷菓子を提供する際に使われていたもの。足つきの氷コップは主に明治時代ごろ盛んに使用されていたそうです。

プレス皿(角皿)

写真撮影 長浜アートセンター 田中仁

 

昭和の時代に大量生産されたプレス皿の角皿。このほかにもさまざまな種類の模様が施されたプレス皿が展示されています。

 

また、今回は坂崎氏が火付け役となったウランガラスも多数展示されています。


ウランガラスとは、ガラスの色づけにごくごく微量のウランを使用した色つきガラスのこと。ブラックライトを当てると内部のウランが反応し、鮮やかな蛍光色に発光します。

 

当時珍しいものではなかったそうで、「当時は(ウランと)意識せず、ガラスの色づけに使われていました。日用品の中にもこのガラスを使ったものが数多くあります」と山口さんが教えてくださいました。今回の展示では、ブラックライトを当てたウランガラスも見ることができます。

展示されているウランガラスの一部。ブラックライトの光を浴びて妖しく輝きます。:写真撮影 長浜アートセンター 田中仁

展示されているウランガラスの一部。ブラックライトの光を浴びて妖しく輝きます。:写真撮影 長浜アートセンター 田中仁

 

展示品には「National」の刻印が入ったランタンなど珍しい一品も。おそらく、松下電器がNationalの登録をした当時に生産されたものではないかとのこと。


その他にもガラスでできた目薬の小瓶など、今では目にすることのないものが多数展示されています。

工業品だけでなく、骨董的価値の高いガラス製品も展示されています。

工業品だけでなく、骨董的価値の高いガラス製品も展示されています。

「大阪とガラス」コーナーも必見!

その他にも、「大阪とガラス」というテーマで当時大阪で生産されていたガラス製品を集めたコーナーもあります。社名が刻印されたプレス皿やガラス製ビーズ、ガラス製のボタンなど、本当にいろんなガラス製品が大阪の地で作られていたことが伺えます。

 

今回の展示には坂崎氏のコレクションに加え、関西大学博物館が所蔵する美術品や、エジプトから出土したガラス玉なども展示。古代から近現代まで、ガラスの歴史を一度に楽しめる展示になっています。

 

展示品の中には坂崎氏の直筆コメントが添えられているものや、こんなものまで!と思うようなもの、紹介しきれないガラス製品が盛り沢山。


ユニークなものでは洗眼器や、「穴が空いた靴下を繕うために使う」ガラス製品や、今で言うスライドフィルムのようなものもありました。どんなものなのかは、ぜひ直接お確かめください。

 

また、来月6月13日(月)は坂崎氏を交えての学術シンポジウムも開催予定です。


レトロで懐かしい和ガラスの世界に、ぜひ一度触れてみてください。


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