ほとんど0円大学 おとなも大学を使っっちゃおう

  • date:2019.6.27
  • author:尾畑 菜緒

家族での買い物ついでに、大学の学びに触れる!?「はんだいラボ@EXPOCITY Lab」

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大学のイベントは数あれど、その会場は大学のキャンパスや近隣の公共施設など、アカデミックで少々おカタめな香りのする場所が定番ではないだろうか。そんな中、家族連れで賑わう土曜日のショッピングモールのど真ん中で、大阪大学がイベントをやっていると聞いて、取材に行ってきた。

 

ターゲットは子どもと親。フードコートの真横にある“大学”

やって来たのは大阪府吹田市にある大型複合施設EXPOCITYの「ららぽーとEXPOCITY」3階にある「EXPOCITY Lab」。周りにはフードコートやキッズ向け店舗が並ぶ。

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(左)万博記念公園の隣にあるEXPOCITYには水族館や映画館、観覧車などもあり、週末は家族連れで賑わう
(右)EXPOCITY Lab外観。フードコートやキッズ向け店舗の多い3階フロアの一角に

 

ここで2019年1月から不定期で開催されている「はんだいラボ@EXPOCITY Lab」は、大学で学ぶことや研究を身近に感じてもらえるように、子育て世帯をメインターゲットとして大阪大学共創機構社学共創本部が実施しているプログラム。

 

月1~2回のペースで、「ねぇねぇはかせ、月のうさぎは何さいなの?」「ノロウイルスはどうしていいお薬がないの?」など、子どもたちの興味を引くテーマについて、大阪大学の先生がわかりやすく話をしてくれる。主な対象は小学生で、親子での参加が基本だが、回によっては誰でも参加できる場合も。

 

第7回の今回は「ねぇねぇはかせ、どうしてホタルは光るの?」がテーマ。講師は神吉輝夫先生(大阪大学産業科学研究所准教授)が担当だった。

 

ホタルの光に隠された“ゆらぎ”や“同期”のチカラ

事前申込で集まった参加者は15組30名。子どもたちの年齢は3歳~12歳とさまざま。会場の前方には裸足で上がれるフロアマットが敷かれ、子どもたちはそこに、保護者は後方の椅子に座って聴くスタイルだ。

質問に手を挙げて答えるなど、楽しい雰囲気で授業が始まる

質問に手を挙げて答えるなど、楽しい雰囲気で授業が始まる

 

スクリーンに映るホタルの動画を見ながら、「これが何かわかる人?」「動画を見て何か気づくことある?」など質問を交えながら、授業がスタート。

「ざーっと光が伝わっていくのはホタルが会話しているんだよ」と神吉先生

「ざーっと光が伝わっていくのはホタルが会話しているんだよ」と神吉先生

 

ゆっくり光ったり、点滅したり、波のように光が伝わっていったりと、私たちの目を飽きさせないホタルの光。ホタルがどういうふうに光るかを物理学で考えると、ホタルの数や時間などが絡み合い非常に難解な式になる。ホタルの数が1万匹ほどに増えれば、その計算はスーパーコンピューターでも1日かかるほど複雑に。ホタルがすごいのは、そんな複雑な式なんて全く考えることなく光っているということ。これを実現しているのはニューロンという神経細胞で、ここに電気が流れたときに、ホタルはパッと光を発するのだ。

 

ニューロンは人間の脳や筋肉にもあり、電気が流れた瞬間に発火することで、頭で考えたり筋肉が動いたりする

ニューロンは人間の脳や筋肉にもあり、電気が流れた瞬間に発火することで、頭で考えたり筋肉が動いたりする

 

ホタルの光はなぜ心地いいのだろう? その秘密は「ゆらぎ」にあるという。クリスマスのイルミネーションなど人工の光の点滅は、1秒間に1回だけ光るなど、規則的でフラット。これに対して自然には必ず幅があり、1秒間に1回だったり、0.9秒のときも1.1秒のときもある。「1/fゆらぎ」と呼ばれる、この規則と不規則の間のリズムを、人間の頭や目や耳は、なんかいいな、心地いいなと感じるのだとか。

ホタルだけでなく、人の脳波も「1/fゆらぎ」で動いているのだそう

ホタルだけでなく、人の脳波も「1/fゆらぎ」で動いているのだそう

 

そして、ホタルからホタルに光が伝わったり、たくさんのホタルが同時に光るのはどうして? 神吉先生が見せてくれたのはある実験動画。1枚の板の上でたくさんのメトロノームを動かすと、初めはバラバラだった動きが、時間が経つにつれ徐々に揃ってきて、ついには全部が同じ向きで動くようになる。これは「同期(シンクロナイゼーション)」といわれる現象で、ホタルが光るタイミングが合うのもこの性質を持っているから。

1枚の板を通して相互作用が働き、メトロノームの動きがだんだん揃っていく

1枚の板を通して相互作用が働き、メトロノームの動きがだんだん揃っていく

 

大阪大学では、このようなホタルの持つ「ゆらぎ」や「同期」などを再現する技術を開発した。ニューロンの仕組みを組み込んでいて、世界でもなかなか実現できなかった画期的なもの。この技術を転用したのが「SHAKE SYNC.(TM)」という光るおもちゃ。

 

手のひらサイズのひし形のブロックを振ると光が灯り、また振ると色が変わっていく。片側の端にセンサーがあり、別のブロックの光を近づけると、色がさーっと移ってシンクロしていく様子はまさにホタルのよう。

緑色に光っている群れのお尻に青色の光を近づけると、同期して青色に変化!

緑色に光っている群れのお尻に青色の光を近づけると、同期して青色に変化!

 

最後は子どもたちもブロックを手に取り、“疑似ホタル”の光を自由に体感! 光をつなげたり、輪にしたり、積み上げたり…初めて見る不思議なおもちゃに子どもの創造力が加わって、思い思いの遊び方が展開されていた。

遊び方によって色や動きが変わるブロックにみんな夢中に!

遊び方によって色や動きが変わるブロックにみんな夢中に!

 

買い物帰りに大学の学びに触れる、新しいライフスタイル

話の内容はかなり高度なもので、子どもには少し難しいかも…?と思うところもあったが、先生のやさしい語り口や、動画やおもちゃを使った授業に子どもたちは釘付け。身近なテーマを扱った話は大人にも興味深く、後ろのお父さん・お母さんたちも真剣に聴いていた。

 

「はんだいラボ」の企画・運営を担当している佐伯康考先生(大阪大学共創機構社学共創本部特任助教)は、プロジェクトのねらいについて「とにかく学びのハードルを下げたい」と語る。「大学に対して敷居が高いと感じている方もいるため、買い物ついでに参加できるようにすれば、これまで大学の公開講座に来ていなかったご家族にも開かれたものになるのではと思いました。子どもたちにも、保護者の方々にも、大学で学ぶということを身近に感じてほしい」

 

めざすのは「家族で買い物をしたついでに、大学の先生の話も聞いて帰る」という新しいライフスタイル。できるだけ気軽に参加できるように、参加費は無料、週末でも駐車場料金が安い土曜日の開催を心がけている。

 

参加した保護者に話を聞くと、「以前も参加しておもしろかったので2回目です」「買い物に来たときにポスターを見て知って、お友達と初めて参加しました」「親が聞いてもおもしろくて、親子の会話のネタになりそう」などの声が。着実にファンがついていて、新しい開催情報が出るとすぐに申込で満席になることも多く、申込不要の展示時間も設けるなどの工夫を行っている。

 

会場の「EXPOCITY Lab」の前はエレベーターからの導線になっていて、ベビーカーを押した家族連れが通りがけに覗いたり、ポスターを眺めたりとまさに「買い物ついでに」が展開されていた。最初こそ、ショッピングモールで大学イベント?と驚いたが、未知の楽しいモノ・おもしろいコトを探している子どもや家族連れが集まるこの場所は、大学と相性がいいのかも、と可能性を感じた。

 

今後も月に1~2回程度のペースで開催されるとのこと。気になる!という方は、大阪大学やららぽーとEXPOCITYのWEBサイトで案内予定なので、ぜひチェックしてみよう。


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