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  • date:2016.8.1
  • author:中橋 由香

全国同時七夕講演会 大阪市立大学「変化する!?ニュートリノ」に参加してきました。

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みなさん、全国同時七夕講演会という企画はご存じでしょうか。その名のとおり、7月7日の七夕の日や8月9日の伝統的七夕の日を中心に、6月下旬から8月にかけて全国各地で天体や宇宙に関する講演会を行うものです。今年で8回目となるこの企画、今回は7月3日に大阪市立科学館で開催された大阪市立大学の講演会「変化する!?ニュートリノ」に参加してきました。

 

ニュートリノについて知るべく、いざ大阪市立科学館へ!!

2015年、東京大学の梶田隆章教授らはニュートリノが姿を変えることを実験で確かめ、ノーベル物理学賞を受賞しました。
このニュースについては私も耳にしたことがありますが、そもそもニュートリノがどういうものなのかわからず、ただ「すごいなぁ」と感心していただけでした。しかし今回ニュートリノについての講演が開催されると聞き、大阪市立科学館にお邪魔しました。

 

この日の講演は「中学生以上が対象」。これは私でもわかるに違いない!と、いざ会場へ!

直前の会場の様子

直前の会場の様子

会場にはすでに100人ほどの人が! 年齢層は幅広く、ご年配の方から主婦らしき方、大学生くらいの方や中学生も。科学館に遊びに来たと思われるお子さんも数人見かけました。

 

会場にいらっしゃった方にお話を伺ったところ、「元々物理学を学んでいて、現在も講演会などを開催しています。今回はそのヒントになれば」という理由で参加されたそうです。
参加者はやはり物理に興味のある方が多いようですね。

 

今回登壇されるのは、大阪市立大学理学研究科の清矢良浩教授。
「中学生以上が対象ということで、スライドもわかりやすいように作りました」
話す雰囲気が堅苦しくなくて安心しました。会場は和やかなムード、簡単な説明などのあと、いよいよ講演会がスタートしました。

大阪市立大学理学研究科 清矢良浩教授

大阪市立大学理学研究科 清矢良浩教授。高エネルギー物理学専門

そもそもニュートリノとはなにものか?

今回のテーマは「変化するニュートリノ」。そもそもニュートリノが変化するとはなにか、の説明の前に「物質の成り立ち」や「ニュートリノとはなにか」ということから話が始まります。

 

ニュートリノとは中性を表す「ニュートラル(neutral)」と、イタリア語で小さいという意味である「イノ(-ino)」を組み合わせ名付けられている、いわゆる素粒子の一種です。
素粒子とは、現代科学でそれ以上分解できない極小の粒のことなのだそう。

 

私は、ものの極小単位といえば原子かな?と思っていたのですが、この原子すら、さらに小さな粒の素粒子で構成されていると知り、驚きました。さらに素粒子にもさまざまな種類があり、電荷をもつものもたないもの、力の強いもの弱いものがあるとのこと。

 

ちなみに、物質の性質は原子の中に含まれる電子で決まるそうで、電子の数と陽子の数は同じなので陽子の数が変わると物質自体が変わるといっていいそうです。

 

さらに深部へ…クォーク

原子を形作るのは電子と陽子、中性子の3つ。さらに陽子と中性子はクオークという素粒子で構成されている

 

素粒子について

素粒子は、今の科学ではこれ以上分割できない最少の物質

 

このなかでニュートリノは力の弱い素粒子の一種になります。
力が弱いというのはなんだかイメージがしづらいですが、ほかの物質と強く反発したり引き合ったりしない物質なのだそうです。
また、物質は粒子がぴったりくっついて1つになっているように思いますが、ミクロなレベルで見ると、原子核同士の間はスカスカ。

ものと反発する力の弱いニュートリノは、物質の間をすり抜ける性質をもっているんだそうです。

 

実はニュートリノは私たちの身近にある物質の内部には存在していません。ニュートリノは私たちの周りを飛び交っているものなのです。
しかし非常に小さく、ものと反応しないうえ、電気的にも中性なため観測するのも困難。
身近にあふれているのに謎に満ちている……それがニュートリノです。

ニュートリノの検出について

ニュートリノは直接検出できないため、別の方法で観測を行う

では、物質の中に含まれていないのなら、いったいどこからやってくるんでしょうか? そして検出できないのに、どのように検出するんでしょう?

 

物質が変化するときがニュートリノ発生の瞬間。

結論からいいますと、ニュートリノは中性子や陽子が別のものに変化するときに発生します。例えば、年代測定などに使われる炭素14。
これは通常の陽子6つ中性子6つで構成される炭素(炭素12)とは違い、陽子が6つ、中性子が8つで構成されています。

 

「炭素14は徐々に陽子7つ、中性子7つでできている窒素に変化していきます。陽子と中性子の合計数はどちらも14ですが、窒素は炭素14よりも陽子が1つ多く、中性子が1つ少ない物質です」
それにしても違う性質のものに変化すると、いったいどんなことが起こるのでしょうか。

 

「炭素14の場合は中性子が1つ陽子に変化するときに、中性子から電子とニュートリノが放出されます」と清矢教授。

中性子が陽子に変化

「このとき電子と一緒に出てくるニュートリノが電子ニュートリノ。そして、このように性質が変わるときに粒子を放出する物質のことを『放射性物質』といいます」

 

放射性物質といえば原子力発電所などで使用されるウランなどを思い浮かべます。もちろんこのウランからもニュートリノが発生しているそうです。
こういうと危険なものかと思いがちですが、そもそも地球の核にはウランなどの放射性物質が含まれており、日常的にこの核からもニュートリノが放出されているんだとか。
ニュートリノはものをすり抜けるので、地層をすり抜け、地上にどんどん出てきているんだそうです。とはいえほとんど反応しないため、私たちには影響しません。

 

ほかにも、太陽が燃えてエネルギーを作るときにも陽子が中性子に変化するなど物質の変化によってニュートリノが放出され、太陽光などと一緒に何百万も私たちに降り注いでいるようです。ニュートリノがなければ太陽はエネルギーを作ることができないというから驚きです。

 

さらに宇宙にはビッグバンのときに生成されたと思われるニュートリノが無数に存在しているそう。
ニュートリノの謎を探ることで、宇宙そのものの成り立ちを解明できるかもしれないわけです。

 

「ニュートリノはひっそり存在していますが、太陽エネルギー生成の根幹部分にも関わっています。ミクロの世界を理解することは、実はとても重要なことなんです」

 

ニュートリノに質量があることを発見。

ニュートリノは長年その質量は0だと考えられてきました。そう考えられてきた背景は、エネルギー保存の法則やアインシュタインの質量とエネルギーの法則を用いて理解できます。

 

質量といえば単純に重さと捉えがちですが、そもそも質量というのはものの動かしにくさのこと。質量が大きいと、動かす(状態を変化させる)のに必要な力も大きくなります。
もののもつエネルギーは質量から計算することができます(エネルギー=質量×光の速さの二乗)。

 

例えば先の炭素14の変化であれば、変化後の窒素と電子と電子ニュートリノのエネルギーを足すと、炭素14のエネルギーと等しくなります。ところが1930年代の実験結果では、ニュートリノの質量は0もしくはほとんど0だと考えられ、以降60年近く、ニュートリノは質量0と考えられてきました。

 

2015年のノーベル物理学賞は、長年0とされてきたニュートリノに実は質量があったことを示した1998年の発見に与えられました。
現在もニュートリノがどのくらいの質量をもっているのかはわかっていないそうですが、ここまでお話を伺って、これがとんでもない大発見だということはわかります。

 

では質量があることはどのようにして証明されたのでしょうか。

 

粒子の波の重ね合わせでニュートリノの姿が変わる。

「ニュートリノが姿を変えるキーとなるのは『波』です」
突然、波といわれ、混乱してしまいました。どうもこの波の性質をもつことが、質量をもつことを示す「ニュートリノの姿が変わる」という現象につながるようです。
ニュートリノは粒子であると同時に波の性質ももっていて、この波の違いでニュートリノの種類が変わるのだといいます。

 

「波が重なり合うと強めあったり弱めあったりする性質があります。この波の重ね合わせが変わることで性質が変わります。また、異なる波は異なるエネルギーをもちます」

 

ニュートリノは実は1つではなく、異なる質量エネルギー、したがって異なる波の性質をもつニュートリノが合わさって電子ニュートリノやその他のニュートリノになるようです。この波の重ね合わせのパターンが変わることで性質が変わり、それが「ニュートリノが変化する」(「振動する」と表現する)ことにつながるようです。

逆にニュートリノが振動するということは質量エネルギー、つまり質量があることを意味します。

これは地道な観測が生んだ結果のようです。

 

この発見にいたるまでの話は、ニュートリノの観測を行うスーパーカミオカンデのウェブサイトにも掲載されています。

 

スーパーカミオカンデ公式ウェブサイト「ニュートリノとニュートリノ振動」
http://www-sk.icrr.u-tokyo.ac.jp/sk/sk/neutrino.html

 

ミクロ世界の謎は、さらに大きな謎を解く鍵になる。

このニュートリノの質量、すごい発見です。でも、実は私たちが思う以上に重要な発見なんだそうです。

清矢教授は、「ニュートリノが変化することがなぜ物理学の大問題とされるのか。この現象が素粒子物理学のなかで“困ったことになる”ということではありません。困るというより“重要だ”ということなんです。ニュートリノの謎を解くことで、宇宙の始まりなど、大きな謎の解明に迫ることができるかもしれないからです。ミクロの世界を追究することが、さらに大きな疑問を解くことにつながっていくのです」と締めくくりました。

 

途中何度か質疑応答の時間がありましたが、来場者から多くの質問があり、活発な講演会でした。

 

ニュートリノってなに?レベルの私でしたが、今回の講演は興味深く聞くことができました。宇宙の謎という壮大なことも、実はミクロの世界から読み解くことができるとは……。
このニュートリノ、まだまだ謎が多いようで、今後どのような研究に結びついていくのかが楽しみです。

 

大阪市立科学館での講演会は終了しましたが、全国同時七夕講演会は8月中も各地で開催予定です。
講演会のほか天体観測などを行う予定の施設もありますので、興味がある方はぜひ近くの講演会に参加してみてはいかがでしょうか。


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