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  • date:2017.4.13
  • author:椎木伶奈

京都造形大を舞台に、芸舞妓が舞い踊る「都をどり in 春秋座」

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(撮影:表恒匡)

 

4月の京都は、花より団子より「都をどり」!?

日本のみならず、世界中から訪れる花見客でごった返す4月の京都。もちろん桜も良いけれど、同じく多くの人を魅了するものに「都をどり」がある。通常は座敷で芸舞妓が少人数で舞う「京舞」を、舞台に立って集団で披露する、なんとも華やかな催し。かつて京都在住だった私も、観たことはないけれど耳馴染みはある、京都の春の風物詩だ。

 

「都をどり」の歴史は古く、1797年(寛政9年)から続く京舞井上流の三世井上八千代氏によって、1872年(明治5年)に創始された。元々は、東京遷都後の京都を盛り上げるべく開催された、「京都博覧会」の余興(附博覧)として企画されたのが始まり。それまでにはなかった女性が舞台で舞い踊る興行であり、幕を閉めず背景を変えることで場面転換をしながら、春夏秋冬を長唄と共に表現するという手法や構成も斬新そのもの。世界中から訪れる観客に強烈なインパクトを与えた。

 

第1回公演の成功を受けて、翌1873年(明治6年)には第2回公演を実施。祇園の花見小路通西側にあった建仁寺塔頭清住院が「祇園甲部歌舞練場」に改造され、会場となった。そして1913年(大正2年)には、歌舞練場を同じく祇園の花見小路近くである現在の場所に新築移転。途中、大修理のために四条南座で上演された以外は、毎年春にこの歌舞練場で上演されてきた。

 

馴染みの祇園界隈を離れ、今年は芸大のキャンパスが舞台に!

 

ところが2016年10月より、歌舞練場は耐震対策のために一時休館中。今年の「都をどり」はどうなる!? と思いきや、なんと会場を、北白川の京都造形芸術大学に移して開催されるという。なぜなら、京舞井上流五世家元の井上八千代氏は、同大学芸術学部の教授を務めており、さらに学内には本格的な歌舞伎劇場「京都芸術劇場 春秋座」があるのだ。

 

というわけで、今年は「都をどり in 春秋座」と題し、史上初の祇園以外の場所での開催に。しかも大学のキャンパスということで、何かが起こる予感満載! 本番を前に、3月31日に行われた稽古の総仕上げ「大ざらえ」に潜入し、歴史が変わる瞬間を目撃してきた。

 

まず、大学正面から左手奥にある春秋座へと続く外回廊のガラス面には、「都をどり」をテーマに学生たちが制作した「ウエルカムアート」が。春秋座のホワイエには、同じく学生たちの手による色とりどりの反物がディスプレイされている。これは、「板締め絞り」と呼ばれる、奈良時代から伝わる伝統的な技法でつくられたもの。劇場内の舞台左右、お囃子方が座る場所にも、同様の技法で学生たちが手がけた緞帳が設置されている。あらゆる分野のアーティストを目指す学生たちが集まる、京都造形大ならではの会場演出の数々。キャンパスに足を踏み入れた瞬間から、「都をどり」の世界に引き込まれていくのだ。

 

学生の手によるウェルカムアート

学生の手によるウェルカムアート

学生の手によるウェルカムアート

 

めくるめく「都をどり」の世界に酔いしれて

今年の演題は「洛北名所逍遥(らくほくめいしょそぞろあるき)」。春秋座での開催にちなみ、京都造形大がある洛北の美しい山や川、ゆかしい寺庵などの名所を巡る全六景の演目が繰り広げられる。

 

第二景の、芸舞妓が夏の貴船川床で蛍を眺めながら納涼を楽しむ様はとても優雅。一転、鞍馬山での牛若と母・常盤御前の再会と別れから、牛若と天狗たちのダイナミックな立ち回りを見せる第三景は、躍動感が溢れる。第四景は秋の圓光寺で美しい紅葉狩り。第五景は、雪が降りしきる冬の大原寂光院を舞台に、健礼門院の寂しいわび住まいが描かれる。そして舞台は暗転し、静寂の後に広がるのは、満開の桜が咲き誇る「祇園甲部歌舞練場」。第六景は「都をどり」本拠地に思いを馳せながら、出演者総出で舞い踊り、華やかなフィナーレを迎えるのだ。

 

牛若と常磐御前の再会

牛若と常磐御前の再会

 

第三幕牛若と天狗の立ち回り(撮影:表恒匡)

第三幕牛若と天狗の立ち回り(撮影:表恒匡)

 

初めて観る「都をどり」は、正に圧巻の一言。芸舞妓たちの艶やかな姿にうっとりし、さまざまな世界観を作り上げる舞台装置に目を奪われ、両脇から聞こえてくる演奏や唄に聞き惚れる。45分の公演時間の中で、それぞれに全く趣が異なる六景がテンポ良く繰り広げられるのも魅力で、観ていて一瞬たりとも飽きることがなかった。

 

ちなみに、初心者の方には是非、音声ガイドの利用がおすすめ。公演中、片耳にイヤホンをつけておけば、各演目の場面設定やストーリーのあらすじから、芸舞妓が身に付けている着物やかんざしなどの衣裳、京舞井上流の特徴、各舞の振りの意味などの解説が、絶妙なタイミングで流れてくる。おかげで私は、初見ながらかなり楽しむことができた。

 

舞台の前後も見どころ多数。会期は4月23日まで!

「都をどり」の第一回公演から、舞台と合わせて提供されて人気を博しているお茶席も、会場が変われどもちろん実施。芸舞妓が円椅子に掛けて披露する立礼様式のお点前なので、茶道の所作が分からない人でも気負うことなく楽しめる。興味のある方は、公演前に楽しんでみては。
また、お茶席2階の「芸術館」では、「都をどり」の衣裳や史料、歴代ポスターの原画などを展示。より理解を深めたい方はこちらもお見逃しなく。

 

さらに帰り際には、お土産コーナーもチェック。「板締め絞り」の手ぬぐいや、芸舞妓を描いた缶バッジ、和風アクセサリーなど、学生たちが制作した記念グッズが販売されている。また、京都土産の定番である八つ橋やおたべも、学生が「都をどり」をテーマにデザインした、オリジナルパッケージのものが並ぶ。

そんなこんなで、大満足で会場を後に。ちなみに帰り口では、番傘に5人の舞妓が投影された「おみおくりプロジェクションマッピング」に見送られた。最後までぬかりのない「都をどり in 春秋座」。開催は4月23日(日)までなので、興味のある方はお早めに!

 

<公演概要>
■会場
京都芸術劇場 春秋座
京都市左京区北白川瓜生山2-116 京都造形芸術大学瓜生山キャンパス内
■期間
2017年4月1日(土)~23日(日) ※10日(月)、17日(月)は休演
■時間
1日3回公演/13:00~、14:45~、16:30~
■入場料
茶席付特等観覧券4,600円、壱等観覧券3,500円 ※別途、音声ガイドは有料

 

※「都をどり in 春秋座」の今年公演分チケットはすでに完売しております。

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