ほとんど0円大学 おとなも大学を使っっちゃおう

  • date:2016.8.17
  • author:一村 歩郁

身近だけど不思議がいっぱい…ネコの動きを科学的に解明!@京都大学(前編)

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先日、なんとなくケイタイの画面を眺めているときに飛び込んできたニュース「ネコは物理法則を理解していると京都大学の研究者が発表」。
ネコが物理法則…? 一体どういうことなのか、今回論文を発表された高木佐保さん(京都大学大学院 文学研究科 博士課程)に直接お伺いしてきました。

「ネコ」の研究スタートのきっかけ

高木さんは大学で心理学を学んでおり、外部講師として授業を行っていた藤田和生教授(京都大学 文学研究科)の解剖など動物の身体を傷つけることなく、動物の心や行動を解明する研究方法に感銘を受け、京都大学大学院へと進学。これまでネコ以外にラットやデグーといった動物の心理学の研究をしてこられました。

今回ネコの行動を研究するきっかけとなったのは、高木さんがネコと暮らすなかで「なにかを思慮深く考え、行動している」と感じたから。このネコがいなければ今回の発見はうまれなかったのかもしれません。ネコさん、お手柄ですね!

高木佐保さん:京都大学 文学研究課 博士課程

高木佐保さん:京都大学 文学研究課 博士課程

 

高木さんは、今回発表した「ネコは物理法則を理解している」という論文をまとめるにあたり、まずは各国のネコの因果理解に関する研究データを集めはじめました。ですが、ほとんどデータがなく、唯一あったのが「ひもひき課題」とよばれるものでした。

「ひもひき課題」とは?
ひもの先に報酬となるおやつなどを取り付け、ひもをひっぱると報酬が貰えることを覚えさせます(画像でいうA)。その後、「ひもをのばす(B)」「報酬のあるもの、ないものの2本を並べる(C)」「報酬のあるもの、ないものの2本を交差させる(D)」など、条件を難しくしていき、ひもと報酬の因果関係を理解しているのか、という実験です。
結果、ネコが報酬を得ることに成功したのはA・Bの条件下でした。
ひもひき課題


ひもひき課題は主に視覚を用いた実験であるため、ネコの生態学的の特性上、妥当性を欠いた可能性がありました。これまでの研究で、ネコは待ち伏せ型の捕食者であることが知られており、草陰に潜み、獲物の位置を音で判別することができるのが得意とされています(Turner and Meister,1988)。

そこで今回は、ネコが得意とされる「聴覚」を使った実験を行うことにしたのです。

ネコの聴覚を使い、「物理法則」を理解しているかを確かめる

高木さんは、今回の論文を書くにあたり、3種類の実験をしました。
そのどれもがネコの聴覚を使ったもので、実験を行うことで生まれる疑問を徐々に解明していきました。

実験1
実験1は、ネコは聴覚を使い物体の存在の有無を理解しているのかを確かめる実験です。

被験体はイエネコ38匹。
使用されたのは「不透明の筒」「ワイヤレススピーカー」「木製の物体」の三つ。
実験手順はとてもシンプルで、筒の中に木の物体を入れたものを振り、ガラガラと音を鳴らすというもの。

そして条件は3つ。
・物体条件=筒を振る動きと、物体の音が一致している。
・ホワイトノイズ条件=筒を振る動きと、物体の音が一致していない。
・空箱条件=筒には何も入っておらず、振っても音がしない。
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一体ネコはどのような反応を見せるのでしょうか。
「このとき立てた予測は、『物体条件>ホワイトノイズ条件≒空箱条件』というもの。筒を振る動きと同期している音から物体の存在を推測し、物体がないと考えられるホワイトノイズ条件と空箱条件には注意をひかないだろうと考えていました」と高木さん。

しかし、結果は空箱条件より物体条件・ホワイトノイズ条件でネコの注意をひくことができたものの、物体条件とホワイトノイズ条件に対するネコの反応に有意差は見られないというものでした。

すると、ネコはただ単に音が好きだから反応しているだけで、物理法則は理解していないのでは…? という疑問が生まれます。そしてこの結果から実験2が行われました。

実験2
実験2は、実験1で生まれた疑問「物体の音を好んでいたのでは?」を解決することが目的です。被験体は32匹のイエネコです。

実験は、以下の手順で行われました。
①筒を振る。
②筒を置き、ネコに自由に探索行動時間を与える。

筒を振る条件は3つです。
・同期条件=筒を振る動きと、物体の音が一致している。
・非同期条件=筒を振る動きと、物体の音が一致していない。
・空箱条件=筒には何も入っておらず、振っても音がしない。
(※同期条件と非同期条件の音は同じです。筒を振る動きが異なります。)
ŽÀŒ±2

この実験の結果はというと、筒を振っている間、自由探索時間ともに同期条件と非同期条件、同期条件と空箱条件の間に有意差が!

実験2について高木さんに伺うと「実験2ではスピーカーから“ガラガラ”と音を流しました。音に合わせて箱を振る練習が結構難しかったです(笑)。この実験で改めてネコが物理法則を理解しているのでは? という予測が真実味をおびてきたなと思いましたね。
もし、実験1の『音が好きだから反応していただけ』という可能性が真実だとすると同期条件非同期条件ともにネコの注意をひくはずですが、結果はそれとは異なりました。そこでネコは箱の中になにかが『ある』『ない』ということを音から判断している可能性を改めて感じました」

ただし、visual preference(音と動きが同期したものを見つめてしまう反射のような行動)ではないかとの疑問があったため、これを検証すべく、乳幼児に用いられることの多い期待違反法(期待する行動とは違うものを見せる実験方法)を用いた実験として、実験3ではネコに手品のような、物理法則に反する事象をみせて反応を調べました。

発表された論文のメインとなる、実験3の内容は後編にてご紹介いたします!
後編はこちら!

ご協力くださる飼い主さま募集!

今回のような研究にご協力くださるイヌ、ネコの飼い主さまを募集しております。
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・イヌの募集条件
京都大学の研究施設まで来てくださる方
・ネコの募集条件
ご自宅での実験にご協力いただける方(関西近郊)

・お問い合わせ先
京都大学院 文学研究科
心理学教室 藤田研究室 CAMP-NYAN
campnyan@gmail.com


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