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  • date:2020.7.28
  • author:蔵麻子

東京藝大発!おうち時間にスマホで楽しむ新体験『ご協力願えますか』の開発の裏側を聞いてみた。

Works『ご協力願えますか』

この春から、新型コロナウイルスの影響で外出自粛を余儀なくされた私たち。今も気の抜けない毎日が続いていますが、なかには「おうち時間をいかに楽しむか」に工夫を凝らした方も多いと思います。

 

そんな皆さんにご紹介したいのが、スマホ1つで楽しめるコンテンツ『ご協力願えますか』です。

 

これは、LINE NEWSで公式配信されているちょっと変わった映像実験番組。

手掛けたのは、ピタゴラスイッチの企画制作でも知られている佐藤雅彦氏と、東京藝術大学大学院映像研究科佐藤雅彦研究室の修了生を中心としたチームです。

「得も言われぬ気持ち」を体験。

まずはスマホを手に、コチラ から『ご協力願えますか』シーズン1にアクセスを。
すると、唐突に表示される空き缶の画像。

1-02

 

そして、画面の指示に沿ってスマホを握ると…。

1-03

 

空き缶がメコッとなりました! 何でしょう、この得も言われぬ不思議な感覚…。

 

映像と手の感触がリンクする不思議。

この映像は、一見すると空き缶が潰れる様子を描いただけのもの。なのに何故でしょう、「スマホを握る」という動作と合わさっただけで、まるでスマホと空き缶が一体化したような、次元を超えて空き缶に触れたような気持ちが微かに湧いてきます。

 

他にも衝撃的だったのが、6本ある動画の最後に登場するリンゴの映像。

1-04

画面の中を落ちてゆくリンゴを、スマホを動かして追い、受け止めるのですが、最後には何故か自分の手でキャッチしたような気持ちになってしまう、何とも言えない面白さです。

 

この『ご協力願えますか』は2019年夏にリリースされ、シーズン1は全4回・計24本の実験映像をLINE NEWSで楽しむことができます。

 

さらに2020年5月24日より、シーズン2『またまた、ご協力願えますか』が配信開始。自分の指が削られて(!?)かつお節になっちゃう体験が待ってますよ。

season2top

「ご協力その1」から「その5」まで、映像やアニメで飽きずに最後まで楽しめる。

「ご協力その1」から「その5」まで、映像やアニメで飽きずに最後まで楽しめる。

 


制作者の頭の中ってどうなってるの?

視聴者にちょっと変わった協力を依頼するスタイルで、私たちがこれまで体験したことのない不思議を体感させてくれる『ご協力願えますか』シリーズ。一体全体、制作者の頭の中はどうなっているのでしょうか? ムクムクと興味が湧いてきます。

 

という訳で、『ご協力』シリーズの企画・制作をメインで担うお二人に制作の舞台裏を伺いました。

平瀬 謙太朗さん(左)/豊田 真之さん(右) 東京藝術大学大学院 映像研究科 佐藤雅彦研究室を修了し、その後、デザインスタジオ「CANOPUS」を立ち上げ。佐藤雅彦教授と共に3名で番組内容を企画し、平瀬さんがプロデュース、豊田さんが映像・音楽のディレクションを担当。

平瀬 謙太朗さん(左)/豊田 真之さん(右)
東京藝術大学大学院 映像研究科 佐藤雅彦研究室を修了し、その後、デザインスタジオ「CANOPUS」を立ち上げ。佐藤雅彦教授と共に3名で番組内容を企画し、平瀬さんがプロデュース、豊田さんが映像・音楽のディレクションを担当。

 

―『ご協力願えますか』はどのようなきっかけで生まれたのでしょう?

 

平瀬さん(以下敬称略):多くの人が使っているコミュニケーションアプリ「LINE」が、2019年から『VISION』というオリジナル動画コンテンツの配信をスタートすることになり、その立ち上げに際してご相談をいただきました。

「スマートフォン専用の動画コンテンツとして、他の動画メディアとの差別化を意識し、ただ観て時間を消費するものではなく、視聴者に気づきを提供できるコンテンツにしたい」というご相談でした。

難しいテーマですが、”スマートフォン専用の映像コンテンツ” という枠組みに新しい表現の可能性を感じ、佐藤雅彦教授と豊田に一緒に新しいものをつくりませんかと相談したのが始まりです。

 

―そうだったんですね。最初から、今のような形を想定していたのでしょうか?

 

平瀬:最初は全然違うものを相談していました。例えば、「コミュニケーション」ということをテーマにしたコント番組とか。でも、佐藤教授とは単に「面白い」だけではなく、「面白くて、実験的な新しいもの」を世の中に提案したい、という相談をしており、企画会議を延々と続けて3ヶ月ぐらい経った頃に、やっと、今の『ご協力願えますか』のアイデアの元のようなものがボンヤリと見えてきました。

撮影風景。左が佐藤雅彦教授

撮影風景。左が佐藤雅彦教授

 

―3ヶ月!新しい発想を生み出すには、やっぱり時間がかかるんですね。でも実験的すぎて、LINEに企画を通すのが難しかったのでは?

 

平瀬:視聴者に気づきを与えるために、実験的な内容にしよう、と決めた頃から、少し挑戦的なコンテンツになるという感覚がありました。だから早々にLINEの担当の方には「もしかすると、一般の人がついてこられないかもしれません」とお伝えしたんです。そうしたらLINEさんは大変懐が深くて、「いいですよ、挑戦してください!」というお返事をいただき、すかさず「言いましたね?」と。

 

豊田さん(以下敬称略):視聴者のみなさまに全く理解されない覚悟もしていたのですが、実際にローンチしてみたところ、僕らが思っていた以上にすんなりと理解・体感してくださった方が多く、ホッとしました。これは番組ナビゲーターとして登場していただいた女優の加藤小夏さんが上手く機能したことも大きいかもしれません。ティザー映像や番組内で「どういうこと?」みたいな視聴者側に立った発言をしてもらうことで、コンテンツと視聴者をつなぐ役割を果たしてくれました。

 

『ご協力願えますか』でナビゲーターを務めた加藤小夏さん。実験的な映像を抵抗感なく楽しんでもらうための案内人のような存在です。

『ご協力願えますか』でナビゲーターを務めた加藤小夏さん。実験的な映像を抵抗感なく楽しんでもらうための案内人のような存在です。

 

平瀬:番組の企画が決まってからは、ひたすら企画会議です。佐藤研究室の修了生や在学生の方々にも参加していただき、企画だけだと100本以上アイデアを出しました。そこから可能性がありそうなものを片っ端から豊田に試作してもらい、自分たちでも体験してみて良かったものを選定して番組を作っています。試作だけでも50本ほど作ってもらったかな?

 

―どんなミーティングだったのか、気になります。

 

平瀬:これは、すごく怪しいのですが、企画会議で誰かがアイデアを発表すると、すかさず他のメンバーが「ちょっと待って! やってみるから」とスマホ片手に目をつぶって、頭の中でその内容を想像します。やがて、想像の世界から帰ってきたみなが「いーねー」「面白いねー」などつぶやけば、次は試作です。集まってはそれの繰り返しでした。

 

―怪しいですね(笑)豊田さんはどんなワークを担当されたんですか?

 

豊田:僕は普段はどちらかというと音楽がメインなのですが、『ご協力』シリーズでは映像もSE(音響効果)もすべて担当しました。ただ、このコンテンツに関しては、音ありきのアイデアは入れていません。スマホでは、音をOFFにして映像を見てることも多いので、音なしでも成り立つアイデアだけで構成しています。もちろん音楽も楽しんで作ったので、音をONにして観ていただけたらうれしいです。

まるで怪盗でも現れそうなサスペンス調のテーマ曲も豊田さん作。タイトル画面で流れる「ダダドゥダ・ダダドゥダ」というイントロが印象的なこの曲のタイトルは『挑戦状』。皆さん、覚えて帰りましょう。

まるで怪盗でも現れそうなサスペンス調のテーマ曲も豊田さん作。タイトル画面で流れる「ダダドゥダ・ダダドゥダ」というイントロが印象的なこの曲のタイトルは『挑戦状』。皆さん、覚えて帰りましょう。

すべてはリンゴから生まれた。

―体験して不思議だったんですが、映像に「ご協力」していると生まれる「映像と手の感触がリンクするような感覚」。これって何ですか?

 

平瀬:それこそが『ご協力願えますか』で私たちが試みている部分です。この番組で僕らが一番やりたかったのが、映像による視覚刺激によって身体表象(体から生まれる感覚や気持ち)を起こすことでした。

 

どうやって身体表象を起こすかを議論する中で、僕らは気づかずにスマートフォンからさまざまな情報を得ていることに気づきました。スマートフォンは画面からの視覚情報だけでなく、重さや手に持った時のサイズ感など、いろんな情報を持っています。そこに気づいたことで、スマートフォンという手にもてる小さな映像メディアならではの表現をつくれるようになりました。

 

豊田:きっかけは第1回のラストに登場する、「ニュートン」のアイデアが生まれたときです。リンゴを落としてキャッチするだけ、という、何かわかりやすいオチがあったりするわけではない映像ですが、そこに突き抜けた面白さがある。それを成立させているのが身体表象です。

 

平瀬:この映像では、映像の中でリンゴをキャッチしたとき、視聴者がスマートフォンの重さをリンゴの重さとして受け止める事で、「リンゴをキャッチした」という身体表象がおきています。

私たち人間は、視覚情報と触覚情報を同時に得ると、無意識の内に両者を関連づけて解釈しようとする能力があります。手の感覚(触覚情報)と、リンゴをキャッチした映像(視覚情報)をつなげて、自分がリンゴを受け止めたような気持ち(身体表象)を生み出しているんです。奥が深いです。

私たち人間は、視覚情報と触覚情報を同時に得ると、無意識の内に両者を関連づけて解釈しようとする能力があります。手の感覚(触覚情報)と、リンゴをキャッチした映像(視覚情報)をつなげて、自分がリンゴを受け止めたような気持ち(身体表象)を生み出しているんです。奥が深いです。

 

豊田:「ニュートン」は自分たちの中でも手応えがあっただけでなく、視聴者アンケートでも一番人気だったのが驚きでした。また、実は「ご協力願えますか」という言葉が最初に出たのも、このリンゴのアイデアが出た時でした。佐藤教授の「リンゴをキャッチして『ご協力願えますか』と言う文字が出てくるってどう?」というアイデアがきっかけだったので、いろんな意味で印象深い作品です。

 

―リンゴ、おもしろかったですね。「落とさないようにしなきゃ!」とどこかで思ってしまうのが不思議です。さて、セカンドシーズンが始まりましたが、内容はさらに実験的に?

 

平瀬:はい。セカンドシーズンでは、シーズン1を作るなかで私たちが気づいた「身体表象を生み出す表現のルール」を、さらに発展させたものを展開していきます。今度こそ世の中から「何これ?」と言われてしまうかもしれない、という不安も実はあるのですが、それも覚悟の上での挑戦です。

 

―実際に体験しましたが、問題なく楽しめると思いますよ!

 

平瀬:新しい表現を生み出したいと思うとき、どうしてもハイテクノロジーなメディアにその可能性を求めてしまいがちですが、実は、既存のメディアにも、まだまだ開拓されてない表現や気づかれていない新しいアイデアがあると思っています。

世の中がこんなふうになって、例えばZoomだって以前からあるものですが、面白い使い方が工夫されるようになりましたよね。

僕らが願うのは、『ご協力願えますか』をきっかけに、「スマホでこんなことができるんだ!」とたくさんの人に気づいてもらうこと。それが一番うれしいですね。

企画し、試作することを積み重ね、驚きの創造力がめいっぱい込められた数秒間ができあがる

企画し、試作することを積み重ね、驚きの創造力がめいっぱい込められた数秒間ができあがる

プラモデル…!?こちらがどんな映像になっているかはシーズン2をご覧あれ!

プラモデル…!?こちらがどんな映像になっているかはシーズン2をご覧あれ!

シーズン2へ、レッツトライ!

平瀬さんと豊田さんのインタビュー、いかがでしたでしょうか?

 

私は『ご協力願えますか』を初めて体験したとき、得も言われぬ気持ちのその先に、何かが変わりそうな予感を感じました。それって「世の中がどう変わろうと、不自由を自由に、つまらないを楽しいに変えるのは、自分の気づき次第」ということだったんだなと、お二人から話を伺って気づいたのです。

 

まだ体験していないあなた、お手元のスマホから『ご協力願えますか』へ。きっと新しい世界が開けますよ。


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