忙しい日はさっと食事を済ませたい。でもヘルシーで満腹感のあるものがほしい。そんなワガママに応えてくれる新たなカップスープが登場した。
武庫川女子大学の生活環境学部食物栄養学科の学生が、株式会社大森屋と共同開発した「トマト&豆乳仕立て野菜たっぷりスープ」だ。2018年8月から全国のスーパーを中心に販売されている。
大森屋といえば海苔やふりかけといったイメージが強いが、こんなおしゃれスープがあるとは驚き。といっても、武庫川女子大学とのコラボは2回目だ。2016年発売の「ゆず香る野菜たっぷりスープ」が好評だったため、シリーズ第2弾が実現したという。
第1弾商品「ゆず香る野菜たっぷりスープ」
今回はトマト&豆乳という、ありそうでないかも、という組み合わせがポイント。トマトの酸っぱさが豆乳によってまろやかに仕立てられ、キャベツやニンジンなど野菜もたっぷり。大麦パフがいいアクセントになっていて食べ応えもある。
さらに一食で1日必要量の1/3の野菜、1/2の鉄分が摂取できるうえ、カロリーは控えめ(69kcal)と、うれしいことばかりなのだ。
この取り組みは、同社で働く食物栄養学科の卒業生の提案で始まったそう。これまで海苔を使ったレシピコンテストを3回開催し、優秀作は同社のWEBサイトにも掲載されている。
そこから商品開発の話が持ち上がり、学生からアイデアを募集。選ばれた学生は、同社の社員とともに、商品開発会議に参加できる。食品関係の仕事をめざす学生にとっては、まさに夢のようなコラボだ。
第2弾では、10~20代の女性向けスープをテーマに、2017年秋頃に案を募り、18件のアイデアの中から8人の学生が選ばれた。
ほとゼロ取材には7名の学生が集まってくれた。前列左から瀬沼玲衣さん、竹ノ内七海さん、村上奈実子さん/後列左から福田史織さん、福田彩乃さん、城山彩奈さん、小西優美さん(食物栄養学科4年生)
野菜をたくさん入れたい、豆乳を使いたい、一杯で満足感のあるものに、洋風スープはどうか――それぞれが考えた案をたたき台に、月1回、計5回のミーティングが行われたという。
ミーティングの様子。商品開発に携わってきた社員3~4人も参加した
ミーティング資料を見せてもらったところ、新商品開発までの過程やマーケティングデータを配布したり、学生一人ひとりの案に対して、これまでの経験やコスト面を考慮したコメントを返すなど、大森屋もかなり丁寧に対応していることがわかる。
おいしさや栄養面についてはもちろんだが、売れる商品にするためには、どう付加価値をつけるのか、コストは、類似品は、など、あらゆることを考える必要がある。学生たちはプロから意見をもらうことで視野が広がり、モチベーションアップにつながったと話してくれた。
学生による提案資料やミーティング資料。細かく検討事項が書き込まれていた
試食会。「生姜&豆乳」「カレー&豆乳」といった案も試したが、類似品があることや好みが分かれることもあり「トマト&豆乳」に決定した
「トマト&豆乳」が決まってからも、さまざまな課題にぶちあたったという。例えば、ベースとなるトマトの色が濃すぎても、薄すぎてもおいしく見えないため、色のバランスを何度も試したこと。カット野菜が大きさによっては沈んでしまい、彩りが見えなくなってしまうこと。満足感を出すため、玄米のおこげを入れる案があったが、技術的に難しく、大麦パフに落ち着いたこと。一つひとつをクリアし、今の完成形となった。
パッケージデザインにも学生が携わった。デザイナーと直接打ち合わせし、ポップでおしゃれなものを目標にしつつ、栄養面もしっかり伝わるデザインが生まれた。
「トマト&豆乳仕立て」は手書き風。よく見るとかわいいハートがある
この経験が糧となり、最初の段階で「トマト&豆乳」を提案していた竹ノ内さんは、卒業後、商品開発の仕事をすることに。「売れるものはもちろん、健康のことを考えた機能性食品にも携わっていきたい」。一方、村上さんはデザイナーとのやりとりで「デザインやマーケティングへの関心が高まった」と新たな道を見つけたようだ。
おこげ案の提案者、福田史織さんは大学院で研究を続けるという。さらに福田さんは「この夏は酷暑で、しんどいから食べないという人もいますが、何も食べないのが一番よくない。1つでお腹がふくれてカロリーも低いのでぜひこのスープを取り入れてほしい」と話してくれた。
暑いとつい冷たいものばかり口にしてしまうが、温かいスープで野菜や鉄分をしっかりとって、体力を落とさないようにしたいところだ。
他にも「ハード系のパンと合う」「ご飯、チーズ、バジルを入れてリゾットにしてもいいかも」と教えてもらった。確かに、おいしいに違いない・・・ぜひ試してみてほしい。
次はどんなスープが生まれるのか、第3弾にも期待が膨らむ。
バゲットとも相性◎