龍谷大学経営学部経営学科・藤岡章子教授のゼミでは、昨年あたりから、みかんの“皮”を使ったユニークな商品が学生の提案によって生まれている。そのうち、みかんの皮を練り込んだ「みかんうどん」については、「ほとんど0円大学」が企画・制作に携わった『関西の大学を楽しむ本』(エルマガムック2016)に掲載したが、まだまだ続きがあるとのことなので、お話を聞きにうかがった。
「みかんドレッシング」、乞うご期待
藤岡ゼミでみかんの皮の商品化が始まったのは、和歌山県有田市のみかん生産者でジュースなどの加工品も手がけている早和果樹園との出会いから。「ジュースの製造過程で出てくるみかんの皮がもったいないので、何かできないか」という話になった。
さっそく商品化に取りかかった学生たちは、アイデアを試作しては地域イベントなどで売ってみることにした。テストマーケティングだ。ある班は、みかんの皮でみかん染めをしたトートバッグを手作り市に出してみたが、全然売れない。
またある班は、みかんの皮を乾燥させて樹脂で固めてイヤリングやピアスにした。こちらは売れたことは売れたが、「ただ面白いから、記念に買ってもらっただけ」。学生たちは、「なんでみかんの皮なのかという理由がない。もっとみかんの皮のよさを活かした商品でないと」と気づく。
京都手作り市へ出店したみかん染めトートバック
京都手作り市へ出店したアクセサリー
早和果樹園への最終提案の日までに、もう時間はあまり残っていなかった。みかん染めが売れなかった班は、さらにみかんカード(柑橘類の果汁や果皮に卵黄、砂糖を混ぜたものでパンやクラッカーに塗って食べる)を経て、ドレッシングの開発へとシフトした。
みかんカード(みかんバタークリーム)のディップソース
みかんで作ったドレッシングは他にもあるが、皮が入っているのは売りになると考えた。みかんの皮と果汁、合うだろうと思うありったけの調味料をテーブルの上に並べ、班のメンバー4人でかたっぱしからブレンドを試す。「果汁が少なすぎるとみかんの風味がなくなるし、皮を入れ過ぎるとドロッとし過ぎてビンから出てこない。微妙な調整に苦労しました」と話すのはメンバーの一人、古味栄里奈さん。
ひたすら試作し、調整し、工夫した
試行錯誤の結果、和風とごまの2種類のブレンドを用意して最終提案に臨む。野菜だけでなく豚しゃぶ、牛焼肉、鯛の刺身も用意して早和果樹園側に試食してもらったところ、非常に好評だった。「調合の段階で、皮の苦みやみかんの香りが肉や魚にも合うとわかったので、いろいろ試していた。決め手になってよかったです」
試食会の様子
刺身にも相性◎
提案したレシピで商品化が決定。みかんの風味がよくきいて皮の食感が面白く、苦みがアクセントの大人な味…食べてみたいと思いますよね?
しかし残念ながら、製造工程の課題をいろいろとクリアする必要があり、まだ市場には出ていない。また、製造する機械を導入するのも簡単ではない。
メンバーの一人伊藤駿さんは、「早和果樹園さんにとってドレッシングは初めての商品。利益の見通しが立って初めて設備投資ができるわけで、そういうビジネスの現実を見ることができて本当に勉強になりました」と話す。
とはいえ、手作りで作った商品を龍谷マルシェ※で売ったところ、用意した40本がまたたく間に完売したというから、ますます期待が高まる。「たくさんの人のつながりがあって、一つの商品が世に出るということがよくわかった」と話すメンバー太田耕平さんは、ホテルや学校給食などに使ってもらえたらと販売後に思いを馳せている。
龍谷マルシェで販売。好評を博した
パッケージはこちら
藤岡先生は「何とか販売にこぎつけたい」とのことなので、みかんドレッシング、乞うご期待である。一方、みかんアクセサリーを試作した班も、まったく別の商品に挑戦しようとしていた。その商品とは?!後編をお楽しみに。
※産学連携、農学連携の取り組みを情報発信する場としてポップアップストア「龍谷マルシェ」を開催している。定期的に京都・三条名店街の一角に出店。